阪急甲陽線(余計なおまけ付き) - 関西旅行2010(13)
公開日:2011年02月23日19:40

昨年8月の関西旅行の続きです。
西宮北口駅の周辺を周った後は阪急神戸線に乗り、1駅となりの夙川(しゅくがわ)駅から出ている支線の阪急甲陽線に乗りました。今回は甲陽線の概要と終点甲陽園駅の改良工事について解説いたします。(文末に“余計なおまけ”もありますが鉄道とは無関係な話題ということで「続き」の部分に書かせていただいております。)
▼関連記事:「関西旅行2010」1つ前の記事
阪急西宮北口駅と今津線高架化工事 - 関西旅行2010(12)(2011年2月9日作成)
■阪急甲陽線の概要
阪急甲陽線は阪急神戸線夙川駅から直角に分岐し、真北へ向かう全長2.2kmの支線です。現在は3両編成2本を使用したワンマン運転が行われており、途中駅の苦楽園口駅で常時行き違いを行うダイヤとなっています。終点甲陽園駅の北は六甲山へ続く急斜面となっており、甲陽線の線路も夙川駅から甲陽園駅までは一貫して急な上り勾配となっています。(夙川駅と甲陽園駅の標高差はおよそ40m。)
沿線は戦前、阪神電鉄や阪急電鉄が利用客誘致の施策の1つとして開発した「苦楽園」や「甲陽園」※と呼ばれる関西地区屈指の高級住宅地となっていおり、乱開発による住環境の悪化を防ぐため、住宅の最低敷地面積を定めた建築協定が存在するなど、現在もそのブランドは全国で通用するクオリティとなっています。
▼参考
西宮市ホームページ:建築協定について(案内・一覧表)
▼脚注
※:苦楽園、甲陽園と、同時期に開発された高級住宅地である甲子園、甲東園、香櫨園(こうろえん)、甲風園、昭和園(地名としては現存せず)を総称して「西宮七園」という。
■甲陽園駅の改良工事

阪急甲陽線の終点、甲陽園駅。
阪急甲陽線の終点、甲陽園駅は昔ながらの木造駅舎となっており、2003(平成15)年には国土交通省近畿運輸局の「近畿の駅百選」に選定されています。
今回訪問時、この甲陽園駅ではホームの構造を変える大規模な改良工事が行われていました。この発端となったのは2008(平成20)年9月に発生した脱線事故です。この事故以前の甲陽園駅は線路が2本あり(西側が「1号線」、東側が「2号線」)、その両側と線路間にそれぞれホームがある3面2線の構造となっていました。(ただし西側の1面は柵で仕切られており、使用されていなかった。)この事故では1号線へ向けて駅入口のポイントを走行中の列車の2両目の1軸と3両目の2軸が脱線しました(けが人は無し)。その後行われた調査の結果、事故の原因はレールの変形(軌道狂い)が基準値を超過していたこと、交換して間もない車輪であったため車輪がレールに馴染んでおらず摩擦が急激に増大して車輪が乗り上げたものと推定されました。事故後は安全のため1号線の使用は停止されていましたが、2010(平成22)年に入ってからは事故の原因となったポイントを撤去し、線路を1号線に1本化する工事が開始されました。この工事では合わせて狭小だったホームの拡幅も行われており、今回訪問時は撤去された2号線の線路上にホームの基礎となるコンクリートを敷き並べているところでした。

甲陽園駅進入時の前面展望。手前にあった1・2号線の分岐は跡形も無く撤去されており、奥では2号線の線路跡にコンクリートを敷き詰めている最中だった。
▼参考
近畿の駅百選 - 国土交通省近畿運輸局
阪急電鉄株式会社甲陽線甲陽園駅構内列車脱線事故 - 鉄道事故インフォメーション - 運輸安全委員会
甲陽園駅|阪急電鉄 鉄道情報ホームページ
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※2011年2月24日:タイトル等いくつかミスがあったため修正しました。
■「早朝強制ハイキングコース」を求めて…
この記事の読者の方で、8月の旅行中に私(筆者)のTwitterをご覧になっていた方が何名いらっしゃるかは不明ですが、このときのリアルタイムレポートをご覧になっていた方であればそろそろ筆者の勿体ぶりに気づいているのではないでしょうか?西宮北口駅、甲陽園駅と来たらもうアレしかないでしょう。そうです。
「涼宮ハルヒの憂鬱」です。
涼宮ハルヒシリーズは角川書店から出版されている谷川流原作のライトノベル(小説)で、無意識のうちに世界を自分の思い通りに改変してしまう特殊能力を持つ高校生の主人公、涼宮ハルヒが引き起こす数々の無理難題にその仲間たちが巻き込まれる様子を描いたものです。この涼宮ハルヒシリーズは2006(平成18)年と2009(平成21)年にはテレビアニメ化され、さらに2010(平成22)年には劇場版である「涼宮ハルヒの消失」が公開され、8億円を超える興行収入を記録。来る2011年5月には4年ぶりとなる新刊「涼宮ハルヒの驚愕」が発売されるなど現在に至るまでヒットを続けています。作者である谷川流氏は西宮市出身であることから、西宮市内の風景が度々登場しており、その地点を周るという旅が熱心なファンの間で人気となっています。(このような行為をアニメファンの間では「聖地巡礼」という。)
今回は、2010年に角川書店から発売された映画「涼宮ハルヒの消失」の公式ガイドブックを見ながら、甲陽園駅周辺の「聖地巡礼」をしてみました。(以下、一部に本編のネタバレに近い内容が含まれておりますのでご注意ください。)

阪急甲陽園駅前から東を見る。
甲陽園駅は作中では文字が違う「光陽園駅」として登場しています。作中では駅から東に続く道路も登場しており、その途中にはハルヒと同じ北高(後述)の生徒である長門有希・朝倉涼子が住むマンションがあることになっていますが、実際にモデルとなったマンションはこの道路の途中ではなく、甲陽園駅南側の阪急甲陽線沿いにあります。


左:甲陽園駅前から高台へ続く階段
右:道82号線と夙川に架かる銀水橋
※クリックで拡大
甲陽園駅前から続く階段と住宅地を抜けた先にある兵庫県道82号線は作中でハルヒたちが通う北高への通学路として描かれています。この県道82号線は六甲山を越えると、別の県道に接続しながら三田市方面まで続いており、甲陽園駅周辺は付近を流れる夙川を橋で右へ左へ交わしながら山の斜面を急傾斜で登る形となっています。作中では「早朝強制ハイキングコース」という台詞が飛び出しますが、まさにその名に恥じない上り坂です。


左:県道沿いにある夙川学院短大
右:同じく県道沿いにあるガソリンスタンド(コスモ石油)
※クリックで拡大
アニメ版では県道沿いの建造物も正確に描かれており、たとえば県道の銀水橋の直後にある夙川学院短期大学や明礬橋の手前にあるガソリンスタンド(コスモ石油)が描かれていたりします。

兵庫県立西宮北高校(裏門)

門の前から今来た方向を見る。眼下には西宮の市街地が広がる。
明礬橋の先で県道から左に折れ、住宅地の中を進んだ先にあるのが作中でハルヒたちが通う高校「北高」のモデルになった兵庫県立西宮北高校にたどり着きます。校門の前で今来た方向を振り返ると眼下には西宮の市街地が広がっています。この地点の標高は約190mで、甲陽園駅前からさらに150m登ってきたことになります。
校門前の風景はアニメ版で頻繁に登場しているほか、映画「涼宮ハルヒの消失」では“バグ”により世界を改変した長門有希にキョンが修正プログラムを打ち込もうとしたところ、その後ろから復活した朝倉涼子がナイフを持って襲い掛かるというシーンが展開されています。
甲陽園地区のほかにも涼宮ハルヒシリーズの「聖地」は西宮・神戸周辺にいくつか存在しますが、この他については専門のサイトに解説を譲ることとして今回はここで引き返しました。ちなみに、帰り道では長門有希が描かれた痛車※とすれ違いました。
▼脚注
※痛車(いたしゃ):ボディーにアニメのキャラクターを描いた車のことで、ファンが自嘲的な意味を込めて呼ぶようになったらしい。(イタリア車=イタ車のもじり。)
▼参考
SOS Dan web site
涼宮ハルヒの憂鬱・京アニサイト【トップページ】
公式ガイドブック 涼宮ハルヒの消失 - 角川書店2010年
※注意:本記事の取材は全て公道上から行っております。住宅敷地内、学校敷地内への無断立ち入りは住民・関係者への多大な迷惑となりますので厳禁です。
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