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京葉線千葉貨物ターミナル駅と新港信号場/その3・終
公開日:2008年09月17日14:24

これまで2回お送りしてきた京葉線千葉貨物ターミナル駅と新港信号場の続きです。最終回の今回は2008年現在の千葉貨物ターミナル駅跡地の状況についてのレポートです。
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京葉線千葉貨物ターミナル駅と新港信号場/その1
京葉線千葉貨物ターミナル駅と新港信号場/その2
8割以上が売却済み
千葉貨物ターミナル駅は2000(平成12)年4月の廃止直後から再開発コンペが行われ、その年の冬から早速再開発が始まりました。その後も跡地の売却は順調に進み、今年夏現在では跡地の8割以上が売却済みとなっています。以下、現在の状況を千葉みなと駅側(南側)から順に写真でご紹介します。(構内の配線については冒頭の関連記事の「その1」をご覧下さい。)
●千葉みなと駅寄りの引上げ線


左:駐車場として利用されている線路跡
右:駐車場内に現在も残る信号機
※2枚ともクリックで拡大
千葉みなと駅側には京葉線の本線の高架橋に沿って引上げ線(機回し線?)がありました。この部分は現在すべて駐車場として利用されています。高架橋の脇には現在も信号機(もちろん電源は切れている)が数本残されており、ここにかつて線路があったことを示しています。
●食品線分岐部


左:食品南線の踏切跡。舗装は中途半端に補修を繰り返しているらしくガタガタだ。
右:食品北線の踏切跡。正面の「千葉県ナースセンター」の駐車場も廃線跡で、不自然にカーブしている。
※2枚ともクリックで拡大
2本延びていた食品線は千葉貨物ターミナル駅を出るところで公道と交差します。この踏切は食品線が廃線になった直後に撤去されましたが、現在も踏切があった部分は舗装がほかと違っているほか、周囲から見ると盛り上がっており、事情を知っている者には「ここに踏切があった」ということが判る状態になっています。(この道路は交通量が多いので徒歩や自転車で通行する際は十分ご注意ください。)


左:上の踏切の背後。カーブしながら奥へ消えていく柵が食品北線の廃線跡。2000年4月頃撮影。
右:同じ場所の現在の様子。工場の拡張用地に充てられ、廃線跡は消滅した。
※2枚ともクリックで拡大
一方、踏切から先の廃線跡ですが、ほとんどは廃線とともに工場の拡張用地に充てられたため、痕跡は全くと言ってよいほど残っていません。(商売敵であったトラックの発着場に転用されている部分があるのはなんとも皮肉といえよう。)また、食品線敷設にあたって一部が切断されて廃道となった道路は、隣接してマンションが建設されたため「復活」しています。
●貨物駅本体

陸橋から千葉みなと駅方面を見る。103系に代わりに入った201系だが、早くも引退の噂が聞こえ始めた。
新港陸橋から南側の跡地は大型の倉庫が1棟建つほかは駐車場として利用されています。この部分は周囲の道路からのアクセスが悪いため跡地利用の計画がまとまっていないようで、現在も照明塔やレールが雑草に埋もれた形で残っています。ただ、照明塔に関しては海が近い立地もあってサビが進行しており、地震による倒壊の危険性などを考えるとそう遠くないうちの撤去が予想されます。

陸橋から東京方面を見る。山手線から転属してきた「田の字窓」の205系が通過。
一方陸橋から北側の跡地は南側から健康診断などを専門としている「ちば県民保健予防財団」、幅数十メートルの空き地を挟んで建設中の「大和ハウス千葉センター」、3月に新宿町から移転してきた「ちばシティバス新港車庫」、ディスカウントストア「Mr.Max」、スーパーの「ベルクス」、ショッピングモールの「ミハマニューポートリゾート」と続いています。(リンクは各施設のWebページに飛びます。)


左:ちばシティバス車庫。ちなみに新宿町の旧車庫では早くもマンションの建設が始まっている。
右:手前から「Mr.Max」、「ベルクス」、「ミハマニューポートリゾート」の各店舗と続く。
※2枚ともクリックで拡大
この中で一番最初に出来上がったのが北側の「ミハマニューポートリゾート」です。この施設ができた2002(平成14)年当時は隣接して貨物駅の詰所(工事事務所に利用?)や照明塔が残存していました。その後、2005(平成17)年頃になってこれらを撤去し、跡地に「ベルクス」「Mr,Max」が進出するという流れをたどっています。「ミハマニューポートリゾート」はオープン当初そのアクセスの悪さや中途半端なテナント構成により非常に苦しい経営を強いられ、テナントがめまぐるしく入れ替わる状況でしたが、隣接して「ベルクス」「Mr.Max」ができてからは1日を通して滞在できるようになり、当初のような閑散ぶりではなくなっています。(ただし、周辺にはガーデンウォーク幕張やアリオ蘇我といった競合する施設が多数あるため、抜本的な経営状況の改善とはなっていない模様。)
現在わずかに残る空地も「売地」の看板が掲げられており、今後数年で貨物駅の痕跡は完全に姿を消すものと思われます。
●ふ頭線(未成線)の用地?


左:貨物駅北端の航空写真。空地がカーブしながら工業地帯へ消えていく。
右:航空写真の「↑」の地点。現在も荒地のまま残る。
※左写真は(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和58年)に筆者が加筆
※2枚ともクリックで拡大
このほか、千葉貨物ターミナル駅北端から工業地帯へ向けて不自然なカーブを描く空地が延びています。これについては「その1」の記事で参考文献とした「京葉臨海鉄道二十年史」に「新港線」「ふ頭線」なる未成線が存在したことが記されており、この空地はその線路敷として確保した用地の名残であると考えられます。
おわりに
この千葉貨物ターミナル駅は地元の「廃線跡」でありながら、その近さゆえ最近はほとんど見に行くことがなくなっていました。しかし、ここ1年ほどで急速に再開発が進み、この貨物駅が完全に姿を消すことが時間の問題となったため、Web上にレポートを作成しようと考えました。信号場の施設工事は当時「この写真がなんの役に立つのか?」「フイルム代の無駄では?」と疑問に思いつつ撮っていたのですが、後年このように思わぬ形で役に立つことになり「記録すること」の大切さを思い知らされた限りです。
今後、貨物駅の痕跡は消えてしまうものと思われますが、このレポートをご覧頂き在りし日の千葉貨物ターミナル駅について思いを馳せていただければ幸いです。
▼参考
忘却の彼方 その1続編 千葉貨物ターミナル編 袖ヶ浦55た・797のページ/ウェブリブログ
よっちんのデジもの: 今日も彷徨いました(貨物線跡?)
(終)
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