京葉線千葉貨物ターミナル駅と新港信号場/その2

千葉貨物ターミナル駅跡地を行く103系電車。2000年8月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)

前回の記事でその成り立ちをご紹介した京葉線千葉貨物ターミナル駅ですが、記事最後の写真を撮影したのと時を同じくしてこの貨物駅に大きな変化が訪れることとなります。2つ目となるこの記事では貨物駅の一部を利用して新設された「新港信号場」の建設記録についてご紹介しようと思います。

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京葉線千葉貨物ターミナル駅と新港信号場/その1

京葉線で貨物列車運行開始

前回の記事最後で休止となり雑草に覆われた貨物駅の写真を載せました。このこの写真を撮影した直後の1999(平成11)年11月、京葉線で貨物列車の運行が開始されることが新聞報道で明らかになりました。

京葉臨海鉄道
環境にやさしくISOコンテナ導入
積載量20トン従来の2倍「排ガスなし」大量輸送

京葉工業地帯を走る貨物専用列車を運行している京葉臨海鉄道会社(本社・千葉市、中村重雄社長)が、新たに地球環境にやさしい国際標準規格のコンテナ「ISOコンテナ」を導入することになり、五日夕、袖ヶ浦市北袖の京葉久保田駅で第一号コンテナ列車の出発式が行われた。
(中略)
出発式で中村社長が、「来年暮れにはJR京葉線への乗り入れも決まり、ますます、京葉工業地帯から全国へ向けてのコンテナ、貨物輸送が充実する。ISOの導入で安全で安い輸送を確立したい」とあいさつ。
(以下略)

引用元:読売新聞千葉版1999(平成11)年11月6日(土)
※赤文字は引用者による。

この記事を読んだ瞬間、「あの千葉貨物ターミナル駅跡地に何か手を加えるのではないか?」という期待を持ちました。そして、この新聞記事を読んだ数日後あの陸橋に行ってみると案の定なにやらこれから工事を始めると思しき準備が始まっているではないですか!
この日から1年間に渡る私の「定点観察」が始まったのでした(笑)今思えば、この時点ですでに現在の“ブログレポート”の下地ができていたのかもしれません。

■新港信号場建設の歩み
MSPaintで作成
新港信号場建設前後の線路配置。貨物駅構内の配線は前回の記事を参照。

千葉貨物ターミナル駅付近の京葉線は上り線が高架、下り線が地平を走る構造となっていました。これは当初東京方面から来た貨物列車が平面交差なしに千葉貨物ターミナル駅へ入線できるよう考慮されたためです。
京葉線の貨物列車運行に際しては速度が遅い貨物列車と速い旅客列車をどう共存させるかが問題となり、解決策として出されたのが休止中の千葉貨物ターミナル駅への追い越し設備の設置でした。この追い抜き設備は「新港信号場」と呼ばれ、既存の上り本線に接する形で地平に線路を敷きここに上り線を移動し、開いた線路を下り列車の待避線に転用しています。このうち、東京方は貨物駅から本線に進出するために設置された取り付け線を流用しています。また、既存の上り線高架橋には下に線路を通せるように張り出しがあり、新設された線路はこれを避けるためカーブしています。
なお、京葉線ではこのほかJR貨物の機関車がATS-Pに未対応であったため、暫定措置として各停車場の場内・出発信号機に対するのATS-SFの速度照査地上子の設置が行われています。

●1999年11月~2000(平成12)年1月
1999年11月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み) 1999年11月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
左:1999年11月の様子。剥がされた線路の脇にトラックが停まっている。
右:本線との境目では測量らしき作業が行われている。
※2枚ともクリックで拡大


貨物駅の一番本線寄りにはトラックが数台停まっており、本線との境目では測量らしき作業が行われていました。また、唯一最近使われていた形跡があった貨物駅の一番本線よりの線路(着発線)はレールが剥がされました。

●2000年2~5月:新線の敷設
2000年2月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み) 2000年4月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
2000年5月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み) 2000年5月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
左上:2月の様子。既存の砂利を撤去して信号ケーブル用(?)の側溝を置いている。
右上:4月の様子。アスファルトで舗装された。横を通過するのは485系お座敷列車「宴」
左下:5月の様子。いよいよ軌道敷設が始まった。現在は定期運用が消滅した183系がが通過。
右下:東京方の取り付け部分。防音壁の交換が行われた。
※4枚ともクリックで拡大


いよいよ本格的な工事が始まりました。まずは上り線に並行して新しい線路が建設されるわけですが、ただ元の地盤に線路を敷くのではなく、一度アスファルトで舗装してからその上に砂利を敷き、レールを敷設するという方法がとられました。これは路盤の強度を確保しつつ騒音を防止するための策であると考えられます。昼間工事が行われている間は作業員の安全確保のため、列車接近時に「ププププ・・・・」という警報音がなるようになっていました。
また、3月頃から新港陸橋(位置関係は前回の記事を参照)から東京方の貨物駅構内の線路が順次撤去されました。それもそのはず、この年の3月31日をもって千葉貨物ターミナル駅はついに正式に廃止となってしまったのです。鉄道ファンとしてはわずかながら「復活するのでは?」と期待していただけにこの結果はとても残念に思えてなりません。

●2000年6~7月:上り線切替
2000年7月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み) 2000年7月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
2000年7月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み) 2000年7月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
左上:新旧接続点脇を通る103系電車。
右上:切替前日の接続点。上り線の線路には砂利の代わりに土のうが詰められている。
左下:切替後の接続点と脇を行く乗務員訓練運転中のEF65。
右下:東京方のコンテナホーム入口付近。205系は新上り線を通過中。
※4枚ともクリックで拡大


新線の軌道が一通り完成するといよいよ本線部分にも手が加えられました。上り線の新旧接続点では架線柱の移設などが行われ、架線や通信ケーブルなどが懸架されました。新線への切替は7月上旬に行われ、切替間近になると上り線の軌道は砂利が抜かれ、代わりに土のうでまくらぎを固定する形に変わり、25km/hの徐行がかけられました。線路の切り替えは7月上旬に早朝の一部列車を運休して行われました。(この際、同時に海浜幕張駅への折り返し設備(2・3番線東京寄りのクロスポイント)設置工事も行われた。駅貼りのポスター等ではこちらのみが告知されていた。)切替完了とほぼ同時にEF65形電気機関車を使用した乗務員の訓練運転が開始され、開始から数日間は記念のヘッドマークをつけた機関車も見られました。

●2000年8月~11月:下り線との接続
2000年10月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み) 2000年11月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
左:貨物駅の敷地に搬入された分岐器の資材
右:下り線に挿入された分岐器
※2枚ともクリックで拡大


上り線の切替が完了したあとは旧線を下り線に接続し、待避線に転用する工事が続きます。下り線との接続は東京方・蘇我方とも制限60km/hの片開き分岐器(当然ですが本線がスルー側です)となっています。上下線に挟まれた狭いスペースでの施工となったため、あらかじめ貨物駅の敷地を利用して組み立てておき、それを3分割くらいにしてクレーンで吊り上げ、線路敷内に搬入し下り本線に挿入という形をとったようです。また、この作業と並行して蘇我方にあった貨物駅への分岐が撤去されています。

●2000年12月:貨物列車運行開始
2000年12月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み) 2000年12月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
左:千葉貨物ターミナル改め新港信号場を行くEF65けん引の貨物列車
右:線路の撤去が続く
※2枚ともクリックで拡大


1年に及んだ工事が無事終わり、12月2日ダイヤ改正からいよいよ貨物列車の運行が開始されました。市原・袖ヶ浦方面は石油関係の工場が多いことからコンテナ車よりもタンク車のほうが比較的多く見られるのが特徴です。
千葉貨物ターミナル駅構内への分岐点では引き続き線路の撤去工事が行われています。しかし、どういうわけか撤去されたのは分岐点周辺の一部だけであり、新港陸橋から蘇我方の線路はほとんどが相変わらず放置されたままとなってしまいました。

●2001年1月以降
2001年1月撮影 データ不明(プリント写真をスキャナで取り込み)
雪の中を行く103系電車。左奥では再開発の工事が始まった。

2000年3月31日に千葉貨物ターミナル駅が正式に廃止となったことを受け、翌2001(平成13)年の1月から早くも跡地の再開発が始まりました。これまで貨物駅の東京方には廃墟と化した屋根付きホームなどが残っていましたが、1月中にこれらは全て解体されています。

次回はここからさらに7年が経過した現在の千葉貨物ターミナル駅跡地の状況についてお伝えする予定です。
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