カテゴリ:鉄道:民鉄・公営の車両
千葉モノレール「URBAN FLYER 0-type」(2:車内・デビュー記念イベント編)
公開日:2012年07月28日23:52

2012年7月8日、千葉モノレールで新型車両「URBAN FLYER 0-type(アーバン・フライヤー・ゼロタイプ)」の営業運転が開始されました。今回は2記事に渡りこの「URBAN FLYER 0-type」の特徴や営業運転初日に実施されたデビュー記念イベントの模様などをお伝えしてまいります。2記事目の今回はアーバンフライヤーの車内の特徴と営業運転開始初日に開催された記念イベントの模様をお伝えします。
その1:概要・車外編はこちら
■車両内部の特徴




上段:「URBAN FLYER 0-type」の車内。座席は背もたれが高い個別シートとなっている。
下段左:車端部の優先席は一般席とは配色が逆になっており、上部には荷物棚が付く。
下段中:乗降ドアは床面近くまでガラス窓となっており、視界は良好。
下段右:乗降ドア上部には3色LEDを使用したLED表示器が設置されている。4枚とも2012年7月16日撮影
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アーバンフライヤーの車内は最近の鉄道車両では主流の寒色系(ホワイト・グレー・ブラック・ネイビーなど)の色遣いとなっています。また、座席は従来の1000形とは異なり片持ち式となっており、座席下には暖房用のヒーターが吊り下げられています。座席の形状は通勤電車では珍しい背もたれの高い個別シート(ハイバックシート・1人当たりの幅は47cm)となっており、高級感を演出するとともに定員通りの着席を促しています。座席の表地(モケット)はブラックとオレンジの2色を用いており、一般席と優先席で配色を逆転させることで区分をしています。また、表地の素材はメッシュ状のものを使用しており、夏場でもムレにくく、快適な座り心地を実現しています。さらに、両端の座席には大型の袖仕切りを設置しており、立席客との接触防止も考慮されていること、優先席部分のみ荷物棚が設置されていることなどの特徴があります。
乗降ドアは1000型と同じ両開き式ですが、ドアに設置されている窓ガラスは床面近くまで拡大されており、眼下に広がる街並みを一望できます。また、各ドア上部には3色LEDを使用した案内表示器が設置されており、行先、次駅などの案内を行います。さらに、ドア開閉時にはチャイムが鳴り、注意喚起を行います。チャイムの音は東武鉄道の50000系列に似たものですが、50000系列より音量が大きく、音程も若干異なります。



上段:運転室後部。客室との仕切りはガラス部分が大幅に拡大された。
下段左:運転室中央の床面はガラス張りになっている。
下段右:仕切り壁右上にある車番・製造メーカー・製造年の表記。3枚とも2012年7月16日撮影
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運転室と客室の仕切りはガラス部分が大幅に拡大され、前面に広がる街並みの風景を楽しむことができるようになっています。そして、最大の特徴は運転室床面中央がガラス張りになっていることで、ここからも真下にある道路や街並みを見ることができます。 なお、2007年に発表された最初の構想では運転台非使用時(後部側になった場合)は助手席側を客室として開放することが考えられていましたが、省令との整合性などの諸問題から、この方法は取りやめとなった模様です。この構想の名残として、運転室後部は座席を設置せず、展望スペース嫌車いすスペースという扱いになっています。また、運転室に向かって左側(運転席後部)には機器室と思われる出っ張りが設置されており、この部分は前を見ることができません。(同様の機器室は連結面側にも存在する。)
ちなみに、このアーバンフライヤーはイベント用車両として使用することも考えられています。このため、運転席後部の天井は照明は直管形の蛍光灯ではなくダウンライトとなっていること、空調の吹き出し口がラインフローではなくスポット式(建物で使用するルーバーが付いた正方形の整風板)になっていること、スピーカーの取り付け台座が内蔵されていることなど数々の準備がなされています。

「URBAN FLYER 0-type」の運転台。パネル右側にはTISモニターが設置されている。2012年7月16日撮影
運転台は1000形と同じく右手操作のワンハンドルマスコンとなっています。マスコンは力行4段、ブレーキ6段(常用5段+非常)となっており、新たに定速運転機能も追加されています。また、省令の改正で搭載が義務付けられた運転状況記録装置に対応させるため、高機能なモニターが新たに設置されています。モニターの表示内容は東京メトロの各車両や東急5000系列などに酷似しており、車両の製造メーカーが三菱重工・三菱電機であることから、三菱電機のTISシステムを使用したものであると考えられます。このモニター設置に伴い、1000形で運転台パネル部分に設置されていた機器動作表示灯と主回路電流計は廃止されており、計器は速度計(ATC対応)と圧力計(元空気溜・ブレーキシリンダ)のみとなっています。
千葉モノレール"URBAN FLYER 0-type"前面展望・千葉みなと→千葉 - YouTube 音量注意
続いて、実際にアーバンフライヤーに乗車して撮影した千葉みなと駅→千葉駅の前面展望と千葉駅の発車シーンの動画です。
発車の際車外スピーカーから流れる乗降促進放送は1000形では電子ベルのみでしたが、このアーバンフライヤーではメロディと音声(「扉が閉まります。ご注意ください。」)に変更されています。発車メロディの採用にあたっては、千葉大学と共同で利用者への印象評価実験を行い、乗降促進の効果を持たせつつ「喧しさ」を感じさせないメロディーに仕上げられています。
発車後の加速は1000形とは異なりVVVFインバータ制御であることから、回路の切替による前後動が無くなり乗り心地が大幅に向上しています。一方、モーターの回転音はVVVFインバータ特有の電磁音が若干感じられますが、惰性走行中は音が出ないため、全体としては静粛性が向上しています。起動時の電磁音はやはり三菱電機製の電機品を使用しているためか、同社製のVVVFインバータを使用しているJR東日本のE233系に近い音となっています。
駅間走行中は1000形と同じく次駅・乗り換え案内の自動放送が流れます。主要駅(千葉駅到着時など)では新たに英語の案内も追加されており、スピーカーの性能が向上したことから、音質は1000形と比べて格段に良くなっています。
■デビュー記念イベント(千葉駅)も開催
この「URBAN FLYER 0-type」は2011年末に萩台車両基地に搬入され、各種調整を経た後2012年1月下旬より夜間の試運転を開始しました。試運転開始当初は報道発表が実施されていなかったため、車体全体を黒いシートでマスキングした状態で運転されていましたが、春頃からはこのマスキングを剥がし、動物公園~千城台間を中心に昼間にも試運転を行うようになりました。そして去る7月8日(日)よりいよいよ営業運転が開始されました。


営業運転初日に千葉駅で開催されたイベント。左はコンコースの会場の様子(中央のURBAN FLYERロゴの幕の前に建つのが大澤社長)、右はホーム上で行われた出発式の様子。
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※イベント・出発式の動画は→こちら
営業運転開始初日は千葉駅で千葉都市モノレール(株)の大澤雅章社長出席のもと、盛大な記念イベントが開催されました。記念イベントは午前9時過ぎに始まり、2階コンコースで大澤社長の講演や地元サークルによるよさこいソーランなどのパフォーマンスが披露されました。続いて、11時過ぎには営業運転初列車となる11時13分発の千城台行き臨時列車が入線し、ホーム上で出発式が執り行われました。なお、臨時列車は当日早朝より配布された整理券を入手した乗客が乗車しました。


3階改札口コンコースで開催されたパネル展(左)とモノレールオリジナルグッズ・記念乗車券の販売(右)
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イベントではこのほかに3階改札口コンコースで千葉モノレールの歴史とアーバンフライヤーの特徴を解説したパネル展と、千葉モノレールオリジナルグッズ(アーバンフライヤー関連)の販売会、地元特産の食品などの販売会もあわせて開催されました。モノレールオリジナルグッズと記念乗車券は昨年発売された「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」コラボ乗車券と同様、千葉モノレール公式サイトや鉄ホビダイレクト(ネコパブリッシング・ホビダスショッピング)にて通信販売も実施されています。アーバンフライヤーのデビュー後も新商品も続々投入中されていますので、まだ入手されていない方はぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか?

記念イベントで販売されたグッズ(の一部)
■アーバンフライヤーと千葉モノレールの今後
千葉モノレール新型車両"URBAN FLYER 0-type"走行シーン - YouTube
「URBAN FLYER 0-type」は現在2編成4両が運行されており、今年度中に1編成、2013年度と2014年度にそれぞれ1編成ずつ増備を行い、1000形初期車を淘汰する計画です。また、その先の増備については新造費用が1両当たり2.9億円に上ることもあり、需要を見極めながら行うとされています。
このように新型車両の導入で活気付く千葉都市モノレールですが、一方でその経営状態は良好とは言い難いのが現状です。これはインフラの整備が急速に進められたためその費用の償還が重い負担となっていること、1号線の千葉~県庁前間の利用者数が予測を大きく下回ったためです。千葉~県庁前間は当初予定されていた星久喜(市立青葉病院)に至る区間の一部として建設されたものですが、元々このエリアは既設の鉄道駅(JR千葉駅・京成千葉中央駅など)から徒歩圏内であったり、路線バスが充実している(しかも、モノレール開業後に対抗策として運賃を値下げした)ことから、利用がほとんど見込めない状態となっています。このため、2002(平成14)年~2004(平成16)年にかけて行われた千葉モノレールの経営再建に関する検討会では「千葉~県庁前間の廃止・撤去も視野に入れるべきである」という極めて厳しい指摘がなされました。

県庁前駅の先で途切れた軌道。ここから先の延伸が実現する日は来るのだろうか?2012年7月8日撮影
その後、千葉モノレールはインフラの一部を千葉市に無償譲渡するなどの策を講じ、2006(平成18)年度には開業以来初となる黒字化を実現しました。しかし、これは端的に言えば負債を市に肩代わりさせることで成し遂げられたものであり、本質的な赤字体質は何ら解決していないことになります。2007(平成19)年の北海道・夕張市財政破綻後、実質公債費比率※が18%を超える場合は地方債の発行に制限が付くようになりました。千葉市の実質公債費比率は2010(平成22)年度の数字で21.4%で、政令指定都市の中では極めて高い部類に入ります。このため、モノレールについても最大限の支出圧縮が求められるようになり、当初計画されていた県庁前~市立青葉病院間の延伸も無期限で凍結されることになりました。
▼脚注
※ 実質公債比率:自治体の収入に対する負債返済の割合を示す。
▼参考
千葉市:財政健全化の取組結果(平成22年度)について

千葉駅前交番(通称「フクロウ交番」)の上空を行く「URBAN FLYER 0-type」。2012年7月16日撮影
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このように将来千葉モノレールの歩んでいく道は決して平坦なものではありません。アーバンフライヤーはこの窮地を脱する救世主となりうるのでしょうか?市民の1人として注目してまいりたいと思います。
▼参考
千葉モノレール(公式Web)
→アーバンフライヤーとモノちゃん号時刻表
Urban Flyer 0-type(facebookページ)
千葉市:都市モノレールのページ
編集長敬白: 千葉都市モノレール0形登場。
【レポート】千葉モノレール新型車両"URBAN FLYER"披露、パノラマデッキで眺望を楽しむ | 旅行 | マイナビニュース
千葉都市モノレール、新型車両の内覧試乗会 : 千葉 : 首都圏 : 鉄道ニュース : 新おとな総研 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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→上2つは千葉モノレール萩台車両基地公開イベントについて
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