中央線グリーン車連結に向けた12両化工事2022(2)三鷹~八王子

ホーム本体の工事が完成した東小金井駅を通過するE353系

2024年度のグリーン車サービス開始に向けて進められている中央線ホーム延長工事のレポートの続きです。2回目の今回は三鷹駅から八王子駅までの11駅の現状をお伝えします。

中央快速線グリーン車連結プロジェクトの概要

各駅の工事状況 (1)東京~吉祥寺間

前回の記事を参照

各駅の工事状況 (2)三鷹~八王子間

三鷹~八王子間のホーム延長箇所一覧
三鷹~八王子間のホーム延長箇所一覧 ※クリックで拡大

 三鷹駅から西側の中央線は複線となっているため、上位種別列車の追い抜きができるよう待避線が多く設けられています。武蔵小金井駅と豊田駅には車両基地が併設されており、終日この駅止まりの列車が設定されています。また、武蔵境・東小金井・武蔵小金井・国立の4駅は、2000年代後半に実施された連続立体交差事業により高架化されています。高架化当時はまだ中央線のグリーン車連結計画はなかったため、いずれの駅も10両編成を前提にした設備となっており、ホーム延長のため施設を大規模に改造する必要があります。

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三鷹駅
三鷹駅東京寄りで延長中のホーム 当初計画ではシーサスを2組とも奥に移設することになっていたが、手前のシーサスを急角度の分岐に換えて全長を短縮するのみにとどまった。
その先にある引上線も終端を下り線側に曲げて12両対応に延長した 参考までに着工前(2020年10月3日)の引上線。終端は直線
左上:三鷹駅東京寄りで延長中のホーム
右上:当初計画ではシーサスを2組とも奥に移設することになっていたが、手前のシーサスを急角度の分岐に換えて全長を短縮するのみにとどまった。
左下:その先にある引上線も終端を下り線側に曲げて12両対応に延長した
右下:参考までに着工前(2020年10月3日)の引上線。終端は直線。
1枚目:三鷹駅東京寄りで延長中のホーム
2枚目:当初計画ではシーサスを2組とも奥に移設することになっていたが、手前のシーサスを急角度の分岐に換えて全長を短縮するのみにとどまった。
3枚目:その先にある引上線も終端を下り線側に曲げて12両対応に延長した
4枚目:参考までに着工前(2020年10月3日)の引上線。終端は直線。

 三鷹駅は島式3面6線のホームで、快速線は北側の2面4線を使用しています。2面あるホームはいずれも本線+副本線(待避線)という扱いになっており、昼間は快速と特別快速・特急の追い抜きが実施されています。また、当駅は複々線区間の終端でもあるため、駅の西側には各駅停車の車両基地である三鷹車両センターが併設されています。
 三鷹駅は以前特急が停車していたため、本線の4・6番線は11両分のホームがありました。また、併設の三鷹車両センターには稀に特急車両が入線することがあり、信号システム上は12両の停車にも対応していました。しかし、そのままホームを延長すると信号機やポイントまでの余裕が不足してしまうことから、ポイントの移設等が必要となりました。高尾寄りのポイントを移設しようとした場合、配線変更の範囲が三鷹車両センター構内まで及び、膨大な工事量となってしまいます。そのため、東京寄りの上下線にあるシーサスクロッシング(両渡り交差分岐器)の移設が検討されました。
 当初は2組あるシーサスを両方とも線形はそのままに東京方面へ移設することが考えられていました。しかし、実際の工事では下り線側(下り本線から5番線に入るポイント)のみ交換されたところで工事が終了してしまいました。現地に設置された速度制限標識を見ると、ポイント交換後は分岐側の制限が45km/hから35km/hに低下しており、以前と比べて急角度のポイント(12番→10番)に交換されたことがわかります。後述する東小金井駅と同じく、使用頻度が低い下り線側のポイントを急角度にすることで全長を短縮し、ホーム延長に必要なスペース(約12m)を作り出したようです。
 現在はポイントの交換が完了し、跡地では特急用に設置されていた細いホームを一旦取り壊して新しい床板を敷き詰める作業が行われています。東京寄りの上下線間にある引上線についても下り線を緩行線側に移設して上下線間隔を広げ、引上線の終端を下り線側に曲げることで12両対応に延長しています。

三鷹駅3番線は東京寄りのポイントが移設不可能なため、高尾寄りで延長している。
三鷹駅3番線は東京寄りのポイントが移設不可能なため、高尾寄りで延長している。

 なお、下り副本線の3番線は、東京寄りに緩行線につながる渡り線があるため、この線路のみ高尾寄りにホームを延長しています。屋根も延長するようで、ホーム上にはカバーで覆われた作りかけの支柱があります。

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武蔵境駅
武蔵境駅東京寄りで延長されたホーム。現ホームではホームドア設置のための床面改修が開始されており、床を再度貼り換えるのを避けるため舗装が先送りされている。
武蔵境駅東京寄りで延長されたホーム。現ホームではホームドア設置のための床面改修が開始されており、床を再度貼り換えるのを避けるため舗装が先送りされている。

 武蔵境駅は対向式ホーム2面2線で、南側に隣接して西武多摩川線のホームがあります。西武多摩川線は西武鉄道の他の路線とは独立しているため、車両のメンテナンスの際はJR中央線・武蔵野線(新秋津駅)経由で武蔵丘車両検修場(西武池袋線東飯能~高麗)に輸送しています。武蔵境駅の高尾寄りにはこのための連絡線があるため、上下線でホームの延長方向が異なり、上り線は東京寄りに0.5両分、高尾寄りに1.5両分、下り線は東京寄りに2両分となっています。
 東京寄りの延長部分は昨年までに床面の舗装を除きほぼ完成しており、以後ほとんど変化していません。床面の舗装については、ホームドアの設置準備が開始されたことから、阿佐ケ谷駅のような手戻り工事を回避するため敢えて先延ばししているものとみられます。

武蔵境駅上り第一場内信号機 武蔵境駅上り第二場内信号機 武蔵境駅上り第三場内信号機
場内信号機移設直前の2021年7月25日に撮影した上り列車の前面展望。左から順に第一場内、第二場内、第三場内で、第三場内を延長されるホームの外側に移設するのに合わせてその手前の信号機も間隔を調整した。
場内信号機移設直前の2021年7月25日に撮影した上り列車の前面展望。上から順に第一場内、第二場内、第三場内で、第三場内を延長されるホームの外側に移設するのに合わせてその手前の信号機も間隔を調整した。

 上り線高尾寄りの延長予定地には第三場内信号機が設置されており、移設が必要でした。当駅付近の上り線は、運転間隔を詰めるため信号機が非常に密な間隔で設置されていたことから、信号機どうしの間隔が適正になるよう第一・第二場内信号機についても同時に移設されました。写真は移設直前の2021年7月に撮影した上り列車の前面展望で、元々武蔵境駅のホームから500m離れた位置にあった第一場内信号機(信号機が上下2段に付いたもの)がさらに50mほど手前に移動したことがわかります。

信号機の移設が完了し、跡地で床板の敷設中。 ホーム端に追加された金属製の床板
左:信号機の移設が完了し、跡地で床板の敷設中。
右:ホーム端に追加された金属製の床板
上:信号機の移設が完了し、跡地で床板の敷設中。
下:ホーム端に追加された金属製の床板

 現在は古い信号機の支柱の撤去も完了し、跡地でホームの床板を敷く作業が進められています。
 当駅に限らず、中央線の12両化対象駅では、今年に入りホームの先端に縞鋼板でできた細い床板を数m分追加する工事が行われています。この床はホームの延長方向とは逆のホーム端にも追加されているのを確認しており、全体としては2~5mほど全長が伸びた形となっています。幅は50cmほどしかないため明らかに乗客の乗降を目的としたものではなく、緊急時に乗務員が通行する目的で設置されたものとみられます。
 中央線の特急で使用されているE353系は、1両の長さがE233系よりも0.5m長い上、先頭車については貫通構造とするためさらに1mほど長くなっています。E233系基準で作られたホームにE353系が停車した場合、両端がはみ出してしまい、乗務員が乗降できなくなることが予想されます。追加された床はこのはみ出す分を埋めるため設置されたものと思われます。

▼脚注
※E233系の普通車は先頭車、中間車ともに全長20,000mm、グリーン車は20,500mmで12両編成では241,000mmとなる。対してE353系は先頭車が21,430mm、中間車が20,500mmとなっており12両編成(9両+3両)では249,720mmとE233系より9mほど長くなる。ただし、E353系の乗務員室扉は先頭から少し後ろに入ったところにあるため、ホームを両端2~3m伸ばせば出入りはできると思われる。




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東小金井駅
東小金井駅高尾寄りで延長中のホーム。床板を敷設中。 中線のポイントの分岐角度を急にすることでホーム延長スペースを捻出した。
ホームの本体が概ね完成し、中線から下り線への出発進路も再開された。 下りホーム東京寄りで延長されたホーム
左上:東小金井駅高尾寄りで延長中のホーム。床板を敷設中。
右上:中線のポイントの分岐角度を急にすることでホーム延長スペースを捻出した。2021年3月30日撮影
左下:ホームの本体が概ね完成し、中線から下り線への出発進路も再開された。
右下:下りホーム東京寄りで延長されたホーム
1枚目:東小金井駅高尾寄りで延長中のホーム。床板を敷設中。
2枚目:中線のポイントの分岐角度を急にすることでホーム延長スペースを捻出した。2021年3月30日撮影
3枚目:ホームの本体が概ね完成し、中線から下り線への出発進路も再開された。
4枚目:下りホーム東京寄りで延長されたホーム

 東小金井駅は上り線が島式ホーム、下り線が片面ホームの2面3線となっています。真ん中の線路は上下線共用の中線となっており、朝ラッシュ時の上り列車の交互発着や回送列車が使用しています。当駅も上下線でホームを延長する向きが異なり、上り線(1・2番線)は高尾寄りに2両分、下り線は東京寄りに0.5両分と高尾寄りに1.5両分となっています。
 当駅も12両化を考慮しておらず、中線のホーム端からポイントまでの余裕がほとんどありません。そこで三鷹駅と同様に高尾寄りの下り線との渡り線を急角度のポイント(16番→10番)に付け替え、全長を短縮することでホーム延長に必要なスペースを作り出すこととしました。分岐角度の変更に伴い、下り線に接続する渡り線の線形を変更することになりますが、この区間はまくらぎの周囲をコンクリートで固めた弾性まくらぎ直結軌道と呼ばれる構造になっており、移設するには一度周辺のコンクリートを壊す必要があります。このため、工事期間中は中線から高尾方面に進出するルートが一時使用停止とされました。
 現在これらの工事は完了しており、跡地ではホーム床板の敷設が完了し屋根の設置が進められています。

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武蔵小金井駅・豊田車両センター武蔵小金井派出
武蔵小金井駅高尾寄りで延長中のホーム 下り本線の1番線は東京寄りにも0.5両分延長している
左:武蔵小金井駅高尾寄りで延長中のホーム
右:下り本線の1番線は東京寄りにも0.5両分延長している
上:武蔵小金井駅高尾寄りで延長中のホーム
下:下り本線の1番線は東京寄りにも0.5両分延長している

 武蔵小金井駅は島式ホーム2面4線で、高尾寄りの地上には豊田車両センター武蔵小金井派出(車両基地)があります。当駅は高架化工事中ホームの高尾寄りに車両基地へ通じる仮のポイントなどを設置していた名残でスペースに余裕があることから、下り本線の1番線は高尾寄りに1.5両、東京寄りに0.5両、それ以外の3線は高尾寄りに2両分ホームを延長します。
 2020年までにホーム延長予定地にあった信号機が移設され、現在は跡地でホーム本体の工事が進んでいます。床板は完成し、屋根の骨組みの組み立てが行われています。

終端の外周道路から見た豊田車両センター武蔵小金井派出。手前では洗浄台の延伸工事中。
駅側に独立している引上線は終端に道路があるため5mほどしか延長できなかった。
10両までしか対応できなかったため車両基地の本体側に移設された洗車機(画面下・動画のキャプチャ)
左:終端の外周道路から見た豊田車両センター武蔵小金井派出。手前では洗浄台の延伸工事中。
右上:駅側に独立している引上線は終端に道路があるため5mほどしか延長できなかった。
右下:10両までしか対応できなかったため車両基地の本体側に移設された洗車機(画面下・動画のキャプチャ)
上:終端の外周道路から見た豊田車両センター武蔵小金井派出。手前では洗浄台の延伸工事中。
中:駅側に独立している引上線は終端に道路があるため5mほどしか延長できなかった。
下:10両までしか対応できなかったため車両基地の本体側に移設された洗車機(画面下・動画のキャプチャ)

 武蔵小金井駅高尾寄りの地上には中央線沿線の大規模車両基地の一つである豊田車両センター武蔵小金井派出があります。かつて武蔵小金井電車区という独立した車両基地だった名残で、現在も床下や屋根の機器の点検ができる検修庫や洗車に使用する作業台など一通りのメンテナンス設備が設置されています。
 車両基地構内の線路のうち、検修庫に隣接して設けられている洗浄台など一部の線路が10両分の長さしかありませんでした。そのため、車止めの移設や入口側のポイントの入れ替えなどにより12両対応に延長する工事が進められています。
 また、自動洗車機については駅側に独立した引上線の入口に設置されていました。引上線は本線の高架化前から位置や長さがほとんど変わっていません。引上線の車止めの先には既に道路が整備されており、5mほどしか延長することができず、そのままでは12両編成で洗車機が使えなくなってしまいます。そのため洗車機は車両基地本体の留置線内に移設されました。

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国分寺駅
国分寺駅東京寄りで延長中のホーム 高尾寄りで延長中のホーム
左:国分寺駅東京寄りで延長中のホーム
右:高尾寄りで延長中のホーム
上:国分寺駅東京寄りで延長中のホーム
下:高尾寄りで延長中のホーム

 国分寺駅は島式ホーム2面4線で、上下線とも外側が待避線、内側が本線のレイアウトになっています。当駅は上下線とも両方向に1両分ずつホームを延長します。現在は床板の敷き詰めが完了しており、東京寄りでは屋根の設置が進んでいます。

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西国分寺駅
西国分寺駅高尾寄りで延長されたホーム 東京寄りの端も使い切れるよう屋根が延長された
左:西国分寺駅高尾寄りで延長されたホーム
右:東京寄りの端も使い切れるよう屋根が延長された
上:西国分寺駅高尾寄りで延長されたホーム
下:東京寄りの端も使い切れるよう屋根が延長された

 西国分寺駅は対向式ホーム2面2線となっています。当駅はホームの周辺に将来の複々線化に備えたスペースがふんだんに存在することから、それを利用して高尾寄りに2両分ホームを延長します。昨年までにホーム本体の工事は概ね完了しており、その後ホーム背面の金網柵が付いた程度で大きな進展はありません。ホームを全長一杯まで使い切れるよう、反対側のホーム端でも屋根が延長されています。

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国立駅
国立駅東京寄りで延長された下りホーム。右のドアの中にある空間の使途は不明。 高尾寄りで延長されたホーム
左:国立駅東京寄りで延長された下りホーム。右のドアの中にある空間の使途は不明。
右:高尾寄りで延長されたホーム
上:国立駅東京寄りで延長された下りホーム。右のドアの中にある空間の使途は不明。
下:高尾寄りで延長されたホーム

 国立駅は東小金井駅と同じ2面3線のホームとなっています。中線の東京寄りは武蔵野線新小平駅へ通じる連絡線(国立支線)に直結しており、武蔵野線方面へ向かう列車(むさしの号など)は必ず中線を通過します。
 当駅の中線は貨物列車など長編成の走行を考慮して本線との分岐までかなりの余裕があります。上りホームはその余裕空間を使い高尾寄りに2両分延長、下りホームは延長を考慮していないことから両方向に1両分ずつホームを延長します。現在はホーム床の舗装以外は完成した状態となっています。下りホーム東京寄りの延長部分にはドアが付いた部屋が用意されていますが、使用目的については不明です。

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立川駅
立川駅青梅線ホーム青梅寄りで完成した延長工事
青梅線ホーム2番線東京寄りで延長されたホーム
中央線ホーム4・5番線高尾寄りで延長されたホーム
左:立川駅青梅線ホーム青梅寄りで完成した延長工事
右上:青梅線ホーム2番線東京寄りで延長されたホーム
右下:中央線ホーム4・5番線高尾寄りで延長されたホーム
上:立川駅青梅線ホーム青梅寄りで完成した延長工事
中:青梅線ホーム2番線東京寄りで延長されたホーム
下:中央線ホーム4・5番線高尾寄りで延長されたホーム

 立川駅は青梅線1面2線、中央線2面4線、南武線1面2線の計4面8線の島式ホームがあります。また、中央線・南武線から平面交差せずに青梅線と直通できるよう短絡線や待避線も設けられるなど大規模な駅となっています。特急停車駅であるため、中央線ホームのうち本線の3・6番線は12両、副本線の4・5番線は11両の停車に対応しています。
 ポイントや橋上駅舎の支柱などの既存施設を避けながらホームを延長するため、青梅線ホームの1番線は青梅寄り、2番線は両方向、中央線ホームの4・5番線は高尾寄りにそれぞれ延長します。いずれも現在はホーム床・屋根ともに工事は完了していますが、延長された部分にはまだ入ることはできません。

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日野駅
日野駅東京寄りで延長されたホーム 高尾寄りも端まで使い切れるよう点字ブロックが延長された
左:日野駅東京寄りで延長されたホーム
右:高尾寄りも端まで使い切れるよう点字ブロックが延長された
上:日野駅東京寄りで延長されたホーム
下:高尾寄りも端まで使い切れるよう点字ブロックが延長された

 日野駅は島式ホーム1面2線で、高尾寄りの上下線間には回送列車などが使用する待避線があります。当駅は東京寄りに2両分ホームを延長します。また、既存ホームを一杯まで使い切れるよう高尾寄りのホーム端も点字ブロックを延長しています。こちらも現在工事は完了していますが、延長された部分にはまだ入れません。

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豊田駅
豊田駅東京寄りで延長中のホーム
豊田駅東京寄りで延長中のホーム

 豊田駅は島式ホーム2面4線で、東京寄りの上下線間には引上線、高尾寄りには中央線のメインの車両基地である豊田車両センターが併設されています。ホームと豊田車両センターをつなぐ入出庫線は上下線とも立体交差化されており、終日当駅始発・終着列車が設定されています。
 当駅は両方向ともホームとポイントが密着して設置されており、ホームを延長するスペースが全く存在しませんでした。そこで、東京寄りの上下線間にあったシーサスクロッシングを片渡りに簡略化した上で移設し、ホーム延長に必要なスペースを作り出すことにしました。
 シーサスの移設・撤去は2021年中に完了し、現在は跡地でホームの床板を敷き詰める作業が行われています。また、下り1番線の東京寄りにも車両基地から出庫してくる車両が停止位置を超えて下り線に進入しないよう安全側線が設置されていました。この安全側線もホーム延長予定地内にありましたが、現在はATS-Pによりオーバーランが確実に防止されているため不要であり、今年春に撤去されました。
 なお、ホーム延長に伴い移設された上り線の出発信号機には現在のところ入換信号機が併設されておらず、下り線についても信号機の支柱自体が設置されていないことから、東京寄りの引上線は使用不可能な状態となっています。この引上線は途中に踏切があり、列車が停車すると長時間に渡り踏切を遮断してしまうため、工事以前からほとんど使用されていませんでした。このため、使用が再開されることなく撤去される可能性もあります。

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八王子駅
12両化に備えて停止位置が変更された八王子駅2番線 参考までに移動前(2020年11月15日)
左:12両化に備えて停止位置が変更された八王子駅2番線
右:参考までに移動前(2020年11月15日)
上:12両化に備えて停止位置が変更された八王子駅2番線
下:参考までに移動前(2020年11月15日)

 八王子駅は北側から八高線と中央線上りの島式ホーム、中央線下りの島式ホーム、横浜線の島式ホーム(行き止まり)の3面6線となっています。当駅はかつて平坦線用と高尾以西の山岳路線用の機関車を付け替える基地があり、現在も東京寄りには貨物列車が乗り入れる石油基地があるため構内が広くなっています。
 当駅は特急停車駅であるためホームの延長は不要です。特急と一般列車の停止位置を揃える必要があるため、今年5月16日に上り2番線の停止位置が東京寄りへ10m移動しました。

終電繰り上げによる工事のスピードアップ

 さて、敢えて触れませんでしたが2年前の記事を先にお読みいただいていた方はおや?と思いになったのではないでしょうか。
 三鷹駅の工事は中央線を運休して実施するはずだったのではないかと。

シーサスの交換が始まり、ホームに一番近い分岐器が撤去された三鷹駅東京寄り。
シーサスの交換が始まり、ホームに一番近い分岐器が撤去された三鷹駅東京寄り。2021年3月30日撮影

 2021年3月13日に実施されたダイヤ改正では、三鷹駅東京寄りのポイント移設に備え、ポイントを使用していた休日ダイヤの東京発三鷹行き快速が廃止されました。中央線のグリーン車連結発表直後専門誌に掲載された最初の計画では、ポイントの移設作業は通常の終電~始発の間に終わらないことから、快速線を一部運休して実施することとされていました。しかし実際の施工では、終電後に線路上を走行可能な大型クレーン車を使い、数ブロックに分割したポイントを一気に撤去・再敷設することで、運休せずに移設を完了させてしまいました。このように工事の大幅なスピードアップが実現できた大きな理由は、 2021年の同改正で実施された終電の繰り上げです。

2021年1月20日から開始された首都圏JR各線終電繰り上げに関する告知ポスター(京葉線稲毛海岸駅で撮影)。この実績を踏まえ、JR東日本は3月の改正から正式な終電繰り上げに踏み切った。
2021年1月20日から開始された首都圏JR各線終電繰り上げに関する告知ポスター(京葉線稲毛海岸駅で撮影)。この実績を踏まえ、JR東日本は3月の改正から正式な終電繰り上げに踏み切った。

 新型コロナウイルスの感染拡大以前から首都圏では団塊の世代の大量退職、働き方改革の動きにより特に深夜帯の通勤利用が減少傾向にありました。ここに到来したコロナ禍により、首都圏各線とも終電の利用者数は以前の3~4割減少という劇的な変化を遂げることになりました。折しも首都圏の鉄道各社では高度経済成長期に作られたインフラが一斉に老朽化を迎え、その更新が必要になっていることに加え、連続立体交差(高架化・地下化)やホームドア設置など大規模改良工事が目白押しとなっています。いずれも作業時間は毎晩終電から始発までの3時間ほどしかなく、終電間際にダイヤ乱れが発生しようものならその日は作業が中止になってしまうなど、スケジュール管理に大変苦慮しているところでした。また、これらの作業は典型的な3K労働(きつい・汚い・危険)でもあり、労働人口が減少し続ける中で機械化の推進による労働環境向上が急務となっています。
 新型コロナウイルスの感染拡大第3波最中の2021年1月、政府や東京都は2回目の緊急事態宣言を発令するとともに鉄道各社に対し終電の繰り上げを要請しました。実際に終電を繰り上げた結果、著しい混雑や積み残しなどの問題が発生しなかったことから、JR東日本は3月のダイヤ改正より首都圏各線で正式に終電を繰り上げることを決定しました。繰り上げ幅は路線によりバラツキがありますが、中央快速線の場合30分ほど終電が早くなっています。この終電繰り上げにより工事作業ができる時間が大幅に拡大し、三鷹駅では駅の反対側にある保線基地で組み立てたポイントを現場まで線路上を走行して運搬するだけの時間を確保することが可能となりました。これにより運休が不要になっただけでなく、1日あたりの動員人数を平均40名削減するという効果も得られています。

三鷹駅の西側にある保線基地。(この先の高架化以前に撮影したもので、現在とはレイアウトが若干異なる。)ここで組み立てたポイントを鉄道クレーン車を使って敷設箇所まで運搬した。なお、この写真を撮影した跨線橋は耐震性の問題により近日中に撤去予定。
三鷹駅の西側にある保線基地。(この先の高架化以前に撮影したもので、現在とはレイアウトが若干異なる。)ここで組み立てたポイントを鉄道クレーン車を使って敷設箇所まで運搬した。なお、この写真を撮影した跨線橋は耐震性の問題により近日中に撤去予定。2007年10月28日撮影

 品川駅の見学ツアーで社員の方々からも直接伺いましたが、鉄道敷地内の工事は毎晩分刻みで立てられたギリギリのスケジュールの下、現場の職人芸ともいえる技術でなんとか遂行されてきました。今回の終電繰り上げは一般人の我々からすれば高々数十分と感じるかもしれませんが、「その数十分、あるいは数分足りない」ことで思い通りに工事が進められないというのがこれまでの現場の実情だったのです。
 今年4月、JR東日本はホームドア設置など駅のバリアフリー化推進のため、上乗せ運賃導入を発表しました。終電繰り上げによる作業時間拡大と合わせ、これらの改良も今後さらに促進されることが期待されます。

三鷹駅の工事で活躍した大型クレーン車は同年11月に実施された青梅線拝島駅の工事でも再び抜擢されました。そして、今週末実施される青梅駅の線路切替工事に向け、現地で今待機をしています。次回はそれらを含む青梅線内の工事の現状ついてお伝えします。

▼参考
中央快速線等へのグリーン車サービスの導入について - JR東日本ニュースリリース(PDF/149KB)
中央快速線等へのグリーン車サービス開始時期および車内トイレの設置について - JR東日本ニュースリリース(PDF/298KB)
変革のスピードアップのための投資計画 ~2022年度設備投資計画~ - JR東日本ニュースリリース(PDF/1.02MB)
2021年3月13日(土) 首都圏における終電繰り上げ等のお知らせ:JR東日本
終電時刻の繰り上げによる施工効率の向上などについて - JR東日本ニュースリリース(PDF/2.0MB)
中央快速線グリーン車導入~東京西部エリアの更なる鉄道サービスの向上に向けて~ - 日本鉄道施設協会誌2019年1月号64~67ページ
中央快速線グリーン車導入に伴う地上設備改修工事 - 土木施工2019年11月号93~96ページ
中央快速線グリーン車導入 - 東工技報第34号(2020年度)349~364ページ
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