中央線グリーン車連結に向けた高尾駅線路工事(2023年10月2日取材)

高尾駅に停車中のE233系と211系

中央快速線東京~高尾間と青梅線立川~青梅間では、現在グリーン車サービス開始に向けた施設の改良が進められています。この一環として今週末10月21日(土)に中央線を一部運休して高尾駅構内の線路改良工事が実施されます。10月初めに工事直前の状況を調査してまいりましたので現地の様子をレポートします。

中央線グリーン車サービス開始と施設改良

中央線E233系H57編成に増結されたグリーン車(サロE233-1・サロE232-1)。乗降時間短縮のため初の両開きドアになっており、従来の普通列車グリーン車と比べ各部の寸法が大幅に変更されている。
中央線E233系H57編成に増結されたグリーン車(サロE233-1・サロE232-1)。乗降時間短縮のため初の両開きドアになっており、従来の普通列車グリーン車と比べ各部の寸法が大幅に変更されている。

 中央快速線東京~大月間と直通運転を実施している青梅線立川~青梅間では、2025年春にグリーン車のサービスを開始する予定となっています。常磐線や宇都宮線などこれまでグリーン車サービスが導入された路線では、普通車をグリーン車に「置き換える」という対応をしてきました。一方中央快速線は朝ラッシュ時に最短2分間隔で運転される混雑路線であるため、これまでと同じ手法を採用すると普通車の混雑が著しく悪化してしまう恐れがあります。そのため、現在の10両編成にグリーン車を2両「増結」する方針とされました。増結される車両は、乗降にかかる時間を短縮するためJR東日本の普通列車グリーン車としては初となる両開きドアが採用されています。

中央線では10両編成の普通車にグリーン車2両を「増結」する。
中央線では10両編成の普通車にグリーン車2両を「増結」する。

 中央線は12両編成の特急列車が既に運行されていますが、特急が停車しない駅についてはホームなどの各設備が10両編成を前提にしたものとなっています。また、青梅線立川~青梅間は最大編成長が10両編成となっているため、これらの各駅ではホームの延長等の改修工事が必要となっています。
 ホーム延長にあたってはコストや工期を抑えるため、安全に問題のない範囲内でホームの延長方向や幅を工夫し、可能な限り施設の移転を回避することとしました。また、JR東日本では2032年度を目標に首都圏の在来線17路線330駅でホームドアを設置することを決定しています。中央線ではホームドア導入に必要となるブレーキの自動化装置(TASC)を先行整備し、駅停車時のオーバーランを確実に防止することでホームの余裕長を限界まで削減し、コストと工期を圧縮することとしました。

ホーム延長工事中の国分寺駅 拝島駅五日市線ホームでは列車の停止位置を変更してホーム端の線形を変更した
左:ホーム延長工事中の国分寺駅
右:拝島駅五日市線ホームでは列車の停止位置を変更してホーム端の線形を変更した
上:ホーム延長工事中の国分寺駅
下:拝島駅五日市線ホームでは列車の停止位置を変更してホーム端の線形を変更した

 上記の工夫に加え2021年の終電繰り上げによる夜間の作業時間拡大の効果もあり、大半の駅では通常運行を維持したままホーム延長を完了させていますが、それでもなお一部の駅では運休を伴う大規模な工事が必要となっています。これまで青梅線では4回に渡り列車を一部運休して駅構内の配線を変更する工事が実施されてきました。今週末工事が実施される高尾駅もその1つとなっています。

高尾駅の12両対応工事の概要

着工前の高尾駅の構内配線
着工前の高尾駅の構内配線

 高尾駅は関東平野の西端に位置しており、当駅を境に沿線の地形は山岳地帯へ大きく変化します。このため、東京発着の快速は大半が当駅で折り返し運転を実施しており、当駅以西は3ドアの短編成列車(211系)がメインに変わります。折り返し運転に対応するため、当駅は島式2面4線のホームに加えて本線の外側に複数の留置線が設けられています。このうち北側の1番線(電車着発線)は行き止まりとなっており、車止めの先は北口の改札とホームが地続きとなっています。
 当駅のホームは特急が停車していた時期があったため1番線を除き11~12両分の長さがありました。また、3・4番線は東京寄りのポイントまで余裕があったため線路に特に手を加えることなく12両へのホーム延長が可能です。一方1・2番線はホームの東京寄りのすぐ先に留置線へ出入りするためのポイントが多数設置されており、それらを移設してホーム延長スペースを捻出する必要がありました。また、その北側に6本ある留置線は全て10両分の長さになっており、こちらも延長が必要となっています。
 高尾駅の12両化ではコストや時間に不確実性がある用地買収は行わない方針とされたため、留置線の本数を3本に削減して現況の用地内で収容長さの延長を図ることとなりました。削減された留置機能は、電車が青梅線拝島駅に新設された留置線(2022年3月使用開始)へ、保守機材が高尾~相模湖間(旧小仏信号場跡)へ分散移転させています。


左:2021年3月~2022年3月の高尾駅配線変更。下り線から2番線に入るポイント①と2番線から引上線に入るポイント②を撤去した。
右:着工前に1番線の端から東京方面を見たところ。手前のポイント②と奥のポイント①を撤去した。
上:2021年3月~2022年3月の高尾駅配線変更。下り線から2番線に入るポイント①と2番線から引上線に入るポイント②を撤去した。
下:着工前に1番線の端から東京方面を見たところ。手前のポイント②と奥のポイント①を撤去した。

 高尾駅の12両化工事は2021年春から開始されました。工事はまず構内配線上必須ではなかった下り本線から2番線(上り本線)に入るポイント①と2番線から引上線に入るポイント②を撤去しました。引上線は大月方面から来たローカル列車の一部が折り返しに使用していましたが、ポイント②の撤去によりそれが不可能となったため、運行区間の短縮や豊田駅まで回送する等の変更が実施されています。

2022年3月以降の高尾駅配線変更。収容3~6番線が使用停止となり、12両への延長工事が行われた。
1番線中央から見た留置線。左のバラストが白くなっている部分が収容3・4番線で、入口のポイントを奥に移設して外側を大回りするように敷き直すことで12両対応に延長している。
引上線終端は路盤を用地内に収めるため盛土ではなく高架橋で延長している。
左:2022年3月以降の高尾駅配線変更。収容3~6番線が使用停止となり、12両への延長工事が行われた。
右上:1番線中央から見た留置線。左のバラストが白くなっている部分が収容3・4番線で、入口のポイントを奥に移設して外側を大回りするように敷き直すことで12両対応に延長している。
右下:引上線終端は路盤を用地内に収めるため盛土ではなく高架橋で延長している。
上:2022年3月以降の高尾駅配線変更。収容3~6番線が使用停止となり、12両への延長工事が行われた。
中:1番線中央から見た留置線。左のバラストが白くなっている部分が収容3・4番線で、入口のポイントを奥に移設して外側を大回りするように敷き直すことで12両対応に延長している。
下:引上線終端は路盤を用地内に収めるため盛土ではなく高架橋で延長している。

 2022年3月ダイヤ改正では当駅留置線の代替となる青梅線拝島駅の増設留置線の使用が開始されました。これにより当駅留置線のうち北側の収容3・4番線が使用停止(5番線と保守機材線は廃止)となり、入口のポイントをずらして12両対応に延長する工事が進められています。留置線の出入りに必要となる引上線の延長も進められており、終端部分に新しく高架橋が作られました。



線路改良工事直前の状況


10月20~22日に予定されている配線変更のイメージ。1・2番線入口のポイントを交換し、1番線へ出入りする線路と2番線から引上線に入る線路がX字に交差する配線に変わる。

 10月20日(金)深夜から22日(日)早朝にかけて実施される工事では、1番線・2番線入口にあるポイントを撤去し、2番線から引上線に入るX字型の新しいポイントに入れ替えます。これにより1番線から引上線・留置線には出入りできなくなる代わりに2・3番線から引上線・留置線に出入りできる構内配線になります。
 ここからは工事を3週間後に控えた10月2日に調査した高尾駅構内の様子をレポートします。

下り列車から見た高尾駅の線路工事個所。バラストが袋詰めに変わっている。
左:下り列車から見た高尾駅の線路工事個所。バラストが袋詰めに変わっている。
右:同じ場所を上り列車から見る。2番線から引上線に入るポイントだけは事前に敷設されている。
上:下り列車から見た高尾駅の線路工事個所。バラストが袋詰めに変わっている。
下:同じ場所を上り列車から見る。2番線から引上線に入るポイントだけは事前に敷設されている。

 こちらは下り列車の高尾駅到着時と上り列車の高尾駅発車時に列車内から見た工事箇所の状況です。ポイントを入れ替える予定の1・2番線東京寄りでは線路のバラスト(砂利)が黒い袋詰めに変わっており、この上を通過するルートには全て45km/hの速度制限が設けられています。新しく挿入されるX字型のポイントのうち、2番線から引上げ線に入る方向だけは現行のレールと重ならないため先に敷設が済んでいます。


左:1番線隣の留置線には国内に2台しかない鉄道クレーン車が集結した。
右:クレーン車の横では新しく挿入するポイントが組み立てられている。
上:1番線隣の留置線には国内に2台しかない鉄道クレーン車が集結した。
下:クレーン車の横では新しく挿入するポイントが組み立てられている。

 線路の延長工事のため一時使用停止になっている1番線北側の留置線では、10月20~22日の工事で挿入される新しいポイントの組み立てが進められています。その両側には青梅駅の工事でも使用された鉄道クレーン車(KRC810N)がスタンバイしています。工事当日はいくつかに分割して梯子状に組み立てられた軌框ききょうをクレーン車を使って敷設場所まで直接搬入します。


左:1番線のホーム延長状況。出発信号機が未移設のため床板を敷いたところで中断している。
右:3・4番線は運転機器の取り付けまで完了している。
上:1番線のホーム延長状況。出発信号機が未移設のため床板を敷いたところで中断している。
下:3・4番線は運転機器の取り付けまで完了している。

 ホームの延長工事は、前記した通り元々スペースがあることや支障となるポイントの撤去が既に完了していることから、4線全てて順調に進んでいます。3・4番線は床面の舗装や非常停止ボタンなど運転機器の設置まで完了しています。1番線は新設中のホームの途中に出発信号機があるため床面までの完成ですが、これらの支障物は10月20~22日の工事でホーム外に移設されるため、近日中に完成するものとみられます。ホームの先にある黒いビニールで包まれた物体が新しい1番線の出発信号機です。

10月21日(土)の運転変更計画

高尾駅構内に掲出されている運休のお知らせ
高尾駅構内に掲出されている運休のお知らせ

 高尾駅の工事は10月20日(金)23時頃から22日(日)4時20分頃までの約30時間に渡り実施されます。21日(土)は終日に渡り高尾駅の1番線(電車着発線)使用できないため、当駅で折り返している中央線快速電車を中心に行先変更や運休が発生します。また、同日夜は電気設備の工事のため、八王子~相模湖間が完全に運休となる時間帯があります。

①始発~19時20分頃
東京~豊田間・高尾以西は通常通りの運転本数。高尾駅折り返し設備が一部使用できないため、高尾行きの快速電車は運転区間を豊田・八王子まで短縮もしくは相模湖まで運転区間を延長する。そのため、豊田~八王子間は通常の85%、八王子~高尾間は通常の60%の運転。

②19時20分頃~19時50分頃
高尾駅構内の高圧電気設備工事のため、豊田~相模湖間が運休。相模湖~大月間は通常の90%の運転。八王子~高尾間では19時頃からバス代行輸送を開始。この時間帯高尾駅を通過する以下の特急列車は全区間運休

下り:
あずさ49号松本行き(新宿19:00発)
かいじ51号竜王行き(東京19:15発)
あずさ53号松本行き(新宿20:00発)

上り:
あずさ50号千葉行き(松本17:20発)
かいじ52号新宿行き(甲府19:02発)
あずさ54号新宿行き(松本18:40発)


③19時50分頃~20時30分頃
豊田~八王子間は運転再開。立川~八王子間は通常の60%の運転。

④20時30分頃~終電
引き続き八王子~高尾間は終電まで運休・バス代行輸送を実施。立川~八王子間・相模湖~大月間は通常の80~90%の運転。この時間帯の特急列車は高尾以東を運休とし、下りは高尾始発、上りは高尾終着として運転。

下り:
あずさ65号松本行き(高尾21:28発)
かいじ67号甲府行き(高尾22:37発)
かいじ69号甲府行き(高尾23:27発)

上り:
かいじ64号(高尾21:13着)
かいじ66号(高尾21:42着)
あずさ68号(高尾22:21着)


 当日は中央線と並行・交差する京王電鉄・西武鉄道・多摩モノレールの全線で振替輸送を実施します。
 今年5月には青梅線東青梅駅の単線化工事も実施されました。こちらについても現地調査済みですので近日中にレポートを作成します。

▼参考
中央快速線等へのグリーン車サービスの導入について - JR東日本ニュースリリース(PDF/149KB)
中央快速線等へのグリーン車サービス開始時期および車内トイレの設置について - JR東日本ニュースリリース(PDF/298KB)
中央快速線等グリーン車導入に伴う中央線高尾駅線路切換工事列車の運休等について - JR東日本ニュースリリース(PDF/1.5MB)
中央快速線グリーン車導入~東京西部エリアの更なる鉄道サービスの向上に向けて~ - 日本鉄道施設協会誌2019年1月号64~67ページ
中央快速線グリーン車導入に伴う地上設備改修工事 - 土木施工2019年11月号93~96ページ
中央快速線グリーン車導入 - 東工技報第34号(2020年度)349~364ページ
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