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羽田空港アクセス線建設工事2023②大汐線改修区間の現状
公開日:2023年05月31日17:38

前回の記事では、羽田空港の歴史と羽田空港アクセス線の計画決定までの歴史について解説しました。最初の着工が発表された羽田空港アクセス線(仮称)東山手ルートは、田町~東京貨物ターミナル駅の休止中貨物線(大汐線)を改修して流用する区間と、東京貨物ターミナル駅~羽田空港間の完全新規建設区間に分かれています。2回目の今回は、北半分の大汐線改修区間の歴史と現状についてレポートします。
大汐線建設の経緯と休止まで
大汐線は貨物専用の東海道線の貨物列車専用支線として1973(昭和48)年10月1日に開業しました。大汐線が計画された当時は高度経済成長期真っ只中であり、首都圏外延部へ向けて爆発的な勢いで宅地開発が進んでいました。そのため各路線とも通勤ラッシュ時は乗車率が300%に達する異常な混雑が常態化していました。この「通勤地獄」とも言われたラッシュに対峙するため、首都圏では1965(昭和40)年より「通勤五方面作戦」と称した大規模設備改良が開始されました。
(1)東海道線
東京~大船間は三複線化、大船~小田原間は複々線化し、東海道線・横須賀線・貨物列車の線路を分離する。
(2)中央線
中野~三鷹間を複々線化する。東京(大手町)~中野間は並行して地下鉄東西線を建設し、実質的に三複線化する。
(3)高崎・東北線
赤羽~大宮間を三複線化する。
(4)常磐線
綾瀬~取手間を複々線化する。綾瀬駅以西は地下鉄千代田線を建設し、実質的な複々線の機能を確保する。
(5)総武線
東京~千葉間を複々線化する。東京(大手町)~西船橋間は並行して地下鉄東西線を建設し、実質的に三複線化する。
五方面作戦の計画当時、東海道線は東京~大船間で横須賀線と線路を共有していました。今後の人口増加を加味した場合、朝ラッシュピーク時の運行本数は両路線とも20本以上が必要となり、複線では到底処理しきれないことは自明でした。そこで、この区間では新規に線路を増設して東海道線と横須賀線の線路を分離することにしました。


東海道線・横須賀線東京~大船間線路分離前後の走行経路比較
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①東京~品川間
東海道線に並行して横須賀線専用のトンネル(東京トンネル)を新設する。東京駅からは総武線の線増線(総武快速線)と相互直通運転を実施する。
②品川~鶴見間
首都圏外周を経由する武蔵野線と品川~川崎の臨海部を経由する貨物専用線(大汐線・羽田トンネル)を新設し、貨物列車をそこに移行して新鶴見操車場経由の貨物線を横須賀線に転用する。途中経由する大井ふ頭には東京貨物ターミナル駅を併設する。
③鶴見~大船間
横浜市内陸部を通る貨物列車専用のトンネルを新設し、横浜駅を経由していた貨物列車をそこに移行して空いた線路を横須賀線に転用する。途中経由する横浜市保土ヶ谷区には貨物用の横浜羽沢駅を新設し、東海道線各駅で取り扱っていた貨物を集約する。(このルートは現在特急「湘南」の一部が走行しているほか、2019年より鶴見~横浜羽沢間が相鉄・JR直通線の一部に組み込まれている。)
品川~鶴見間の貨物新線が経由する大井ふ頭には、貨物の積み降ろし基地である東京貨物ターミナル駅を設けることになりました。当時国鉄では貨物列車の輸送効率化のため、車扱い方式からコンテナ方式※1への刷新を進めており、品川・大崎・大森など周辺の各駅で扱っていた貨物を東京貨物ターミナル駅へ移転・集約することを計画していました。そのため、東京貨物ターミナル駅は将来の年間貨物取り扱い量を1,200万トン※2まで想定し、長大なコンテナ貨物列車の乗り入れに対応できるよう115万m2という広大な敷地が確保されました。
また、当時東海道新幹線は東京側の車両基地が品川駅にありましたが、増発に次ぐ増発によりその容量が限界に達しつつありました。そこで東京貨物ターミナルの隣に新しい車両基地を設け、大汐線に並行して新設する回送線で東京駅と接続することとしました。
▼脚注
※1:車扱い貨物列車は貨車を1両単位で利用する方式で、各地に散在している貨物取扱駅で荷物を積み込んだ貨車を操車場に集合させ、行先別に貨車の編成を組み替えながら目的地へ向かう。編成の組み替え作業に多くの時間と労力を要することから、昭和40年代以降急速に荷主離れが進み、国鉄赤字の元凶となった。現在主流のコンテナ方式は、発送元で荷物を積み込んだコンテナをトレーラーで貨物駅まで持ち込み、組成済みの貨車に積み替えて送り先最寄りの貨物駅へ「直行」させている。これにより1本の貨物列車に様々な品目の荷物を混載しつつ、旅客列車のように固定された時刻で高速に輸送できるようになった。(なお、現在も車扱いは一部残存しているが、それらは「海沿いにある石油の陸揚げ基地から内陸部の備蓄基地へガソリンを運ぶ」といった発着地や品目が固定された専用列車となっている。)
※2:現在の東京貨物ターミナル駅の取扱量はその2割程度に留まっており、空いた敷地にはヤマト運輸、Amazonなどが利用する物流倉庫(エフプラザ東京・東京レールゲート)が建設されている。

浜松町駅前にあった世界貿易センタービル最上階の展望台「シーサイドトップ」から見た汐留シオサイト。旧国鉄汐留貨物駅を再開発してつくられた街であるが、その土地売却プロセスには多くの問題点が指摘されている。2008年3月1日撮影
こうして完成した大汐線ですが、わずか数年で国鉄の貨物輸送は衰退期に入ってしまいました。また、国鉄の経営悪化がいよいよ深刻となり、分割民営化や遊休資産の処分が検討されるようになりました。大汐線の起点だった汐留貨物駅は、扇形に広がる敷地形状により長編成のコンテナ貨物列車に対応できないことから、東京貨物ターミナル駅に機能を譲り1986(昭和61)年に廃止されました。跡地は国鉄債務償還のため売却され、現在は汐留シオサイトの高層ビル群になっています。
残った浜松町駅までの大汐線は、青函トンネル開業後北海道へ直通するカートレインの発着場として利用されました。この列車は貨車と客車を同じ列車に併結し、自家用車と旅客を同時に輸送できるという優れモノでしたが、乗用車の大型化により積載できない車種が増え利用率が低下したこと、浜松町の発着場が都営地下鉄大江戸線の工事により使用できなくなることから、1997(平成9)年をもって運行を終了しました。

札の辻橋から東京方面を見る。右手前の錆びた線路が大汐線で、新幹線を挟んだ反対側の東海道線や山手線とは線路が接続されておらず盲腸線となっていた。2019年6月2日撮影
大汐線の汐留側はこれ以外に接続する駅や施設はありません。また、品川駅構内では東海道新幹線の線路の下をくぐって東海道線・横須賀線と接続する線路がありましたが、これについても新幹線品川駅新設に伴い廃止されたため、大汐線は完全に行き止まりとなり使途を失うことになりました。そのため大汐線は以後20年以上に渡り休止線として半ば放置されることになります。
羽田空港アクセス線への再生
時は流れて2013年、首都圏の国鉄を継承したJR東日本は羽田空港への新しいアクセス鉄道事業に参入することを表明しました。前回の記事でもお伝えした通り、この羽田空港アクセス線(仮称)は「東山手ルート」「西山手ルート」「臨海部ルート」の3方向で計画されています。このうち、東山手ルートは全線がJR東日本の営業区間となること、構造物の北半分は休止中の大汐線を活用でき、事業の難易度が比較的低いことから、このルートを最初に開業させる方針となりました。開業すれば現在30分前後を要している東京駅~羽田空港間の所要時間が約18分へ大幅に短縮され、海外の主要空港とも遜色のないアクセスを実現できます。
大汐線活用区間は田町駅付近の「東海道線接続区間」、田町~東京貨物ターミナル間の「大汐線改修区間」、「東京貨物ターミナル内改良区間」の3つに分かれています。2019年以降発表されている環境影響評価(環境アセスメント)や業界誌の資料によると以下のような整備手法が計画されています。
①東海道線接続区間(約1.5km)



上:東海道線接続区間の線路位置。田町駅北側の引上線を廃止し、線路の位置をずらして新幹線をアンダーパスする単線トンネルを新設する。
※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector」で公開されている空中写真に加筆。
左下:田町駅引上線の現状断面
右下:羽田空港アクセス線接続部分完成後の断面
※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector」で公開されている空中写真に加筆。
左下:田町駅引上線の現状断面
右下:羽田空港アクセス線接続部分完成後の断面
上:東海道線接続区間の線路位置。田町駅北側の引上線を廃止し、線路の位置をずらして新幹線をアンダーパスする単線トンネルを新設する。
※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector」で公開されている空中写真に加筆。
中:田町駅引上線の現状断面
下:羽田空港アクセス線接続部分完成後の断面
※クリック/タップで拡大※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector」で公開されている空中写真に加筆。
中:田町駅引上線の現状断面
下:羽田空港アクセス線接続部分完成後の断面
前述の通り田町駅付近の大汐線は他の在来線と線路が接続されていません。一方田町駅北側の山手線内回り・外回りの間には引上線が1本ありました。この引上線は2019年の品川駅再開発に伴う線路切替など工事の際に使用されることもありましたが、通常は早朝・深夜のごく少数の列車が使用するに留まっています。
羽田空港アクセス線整備にあたっては、この引上線を廃止して山手線外回り・京浜東北線南行・東海道線上り線をそれぞれ西側に1線ずつずらし、東海道線の上下線間から大汐線へY字に接続する線路を設ける計画とされました。東海道新幹線の下をくぐる部分は地表を切り開くと工事が非常に大規模になってしまうことから、シールド工法でトンネルを掘削することになっています。なお、新幹線の線路は回送線への分岐があり線形変更がほぼ不可能であることに加え、沿線にもビルが密集していることから、2線分の追加用地を確保するのが非常に困難となっています。そのため東海道線との分岐から次の大汐線改修区間入口までは、完成後も単線となる計画です。
②大汐線改修区間(約3.4km)

大汐線改修区間の位置。既存の高架橋や線路を改修するため新規の用地確保は不要。
※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector」で公開されている空中写真に加筆。
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札の辻陸橋から先は1973年に大汐線として新規に建設された区間です。この区間はほぼ全線が複線の高架橋となっており、羽田空港アクセス線への転用に際して新たな用地買収や施設の追加は不要となっています。長年の放置により施設が荒廃していることから、レールなど線路部品の取り換え、橋脚の耐震補強、橋桁の再塗装など補修を実施し、営業線としての機能を回復します。
③東京貨物ターミナル内改修区間(約2.5km)

東京貨物ターミナル駅内改修区間の線路位置。上り線は現在よりも東側に移設し、上下線間には15両編成対応の留置線を新設する。救援センター踏切は2019年計画時下り線を高架化することになっていたが、2022年以降は道路側を陸橋化する計画に変更された。
※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector」で公開されている空中写真に加筆。
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東京貨物ターミナル駅構内は、前記した通り将来の取扱量増加に備えて線路を増設できるスペースがふんだんに確保されています。大汐線の本線は駅構内の東端を通過しており、その上下線間にも線路を増設するためのスペースが用意されていました。しかし、実際には取扱量が期待通り増加しなかったため、線路は増設されず用意されていた土地は物流倉庫や駐車場として利用されています。
羽田空港アクセス線への転用にあたっては、貨物列車との交差支障を回避するため、大汐線上り線を東側(下り線側)に新たに敷設し直します。また詳細は次回の記事で説明しますが、羽田空港新駅(仮称)はホームの建設に必要な最小限のスペースしか確保できませんでした。そのため、運行に必要となる列車や保守機材の留置線は東京貨物ターミナル駅構内の上下線間隔を広げてその中に設けることとされました。この上下線間隔が広がっている部分の隣にはりんかい線八潮車両基地があり、新木場方面から入出庫線経由で来る「臨海部ルート」や大井町方面から新規に建設される「西山手ルート」※3もこの場所で接続する予定です。
現在大汐線下り本線には駐車場や倉庫に出入りするための踏切が2箇所設けられています。南側の八潮踏切はすぐ近くに代替ルートとなる陸橋があるため当初から廃止することが決まっていました。一方北側の救援センター※4踏切は、2019年5月に発表された最初の環境アセス資料によると、大汐線下り線を高架化する計画となっていました。しかし、2022年以降新たに発表された環境アセスや専門誌の資料では、逆に道路の方を陸橋化して踏切を廃止し、大汐線下り線は現行通り地表を走行するよう変更されています。
▼脚注
※3:現在公表されている環境アセスメント資料の一部には、西山手ルートのトンネル位置が既に描き込まれている。
※4:国際救援センターは1983年に日本政府が開設した難民支援施設で、2006年に新宿区のRHQ支援センターへ機能が移転し閉鎖された。
着工準備が進む
ここからは今年1月に全線を踏破した大汐線田町~東京貨物ターミナル間の現状をレポートします。
●東海道線接続区間(田町駅~札の辻橋)
左:2022年3月ダイヤ改正から使用が開始された田町駅品川寄りの渡り線。早朝に大崎から回送されてくる外回り始発電車が使用している。
右上:品川寄りの渡り線と入れ替わりで東京寄りの引上線は廃止され、入換信号機も使用停止となった。
右下:ホーム端の詰所は解体が進む。
右上:品川寄りの渡り線と入れ替わりで東京寄りの引上線は廃止され、入換信号機も使用停止となった。
右下:ホーム端の詰所は解体が進む。
上:2022年3月ダイヤ改正から使用が開始された田町駅品川寄りの渡り線。早朝に大崎から回送されてくる外回り始発電車が使用している。
中:品川寄りの渡り線と入れ替わりで東京寄りの引上線は廃止され、入換信号機も使用停止となった。
下:ホーム端の詰所は解体が進む。
中:品川寄りの渡り線と入れ替わりで東京寄りの引上線は廃止され、入換信号機も使用停止となった。
下:ホーム端の詰所は解体が進む。
前記した通り、田町駅では現在も大崎駅から回送されてくる山手線外回りの始発電車が設定されています。そのため北側の引上線廃止に先立ち、田町駅南側の山手線内・外回りの間に代替となる渡り線を新設する工事が実施されました。渡り線の新設予定地はわずかにカーブする線形となっていたため、この先の高輪ゲートウェイ駅方面の線路切替と合わせて直線への修正が行われました。
渡り線は2022年2月に完成し、翌月のダイヤ改正以降引上線は使用停止となり入換信号機にはカバーが被せられています。ポイントの挿入の際は軌道が一時通常のバラスト軌道に改造されていましたが、現在は前後の区間と同様TC型省力化軌道とロングレールの組み合わせに戻されています。
2023年に入って以降は、直下にシールドトンネルの立坑※4が作られる田町駅のホーム北端で、現在は使用していない詰所の解体工事が開始されています。また、ホーム本体についても掘削に向けて仮設構造に作り変える工事が進められています。

札の辻橋の下に残されていた大汐線の線路は撤去された。
札の辻橋の下には大汐線が現役当時に使用されていた線路が長らく残されていました。この部分は今後トンネル化され不要になるため、2022年秋に線路が撤去されました。シールドトンネルのもう1つの立坑※5は札ノ辻橋の南側に設けられます。
▼脚注
※5:現在公表されている資料にはどちらが発進・到達立坑になるのかは明記されていない。
●大汐線改修区間(札の辻橋~若潮橋梁)
大汐線の高架橋区間は全線で東海道新幹線大井車両基地への回送線と並走しています。この付近は多数の運河があり、運河と交差する部分では回送線と大汐線が同じ橋脚を共有している部分もあります。新幹線側の高架橋は現役であるため定期的に塗装などのメンテナンスが実施されている一方、大汐線側の高架橋は1997年の休止後はほぼ放置状態となっています。架線は落下による地上への被害を防止するため全区間で取り外されているほか、橋桁の塗装も全く行われておらず表面が劣化しています。ただ、建設が1970年代と新しく良質な鋼材を使用していることもあってか、腐食により部材が欠けていたり穴が開いてしまうといった深刻な損傷までは至っていないようです。


左:新芝運河から見た大汐線と新幹線回送線。
右:芝浦併用橋。区道のトラス橋が大汐線と回送線の橋脚を兼用している。
右:芝浦併用橋。区道のトラス橋が大汐線と回送線の橋脚を兼用している。
上:新芝運河から見た大汐線と新幹線回送線。
下:芝浦併用橋。区道のトラス橋が大汐線と回送線の橋脚を兼用している。
下:芝浦併用橋。区道のトラス橋が大汐線と回送線の橋脚を兼用している。
札の辻橋をくぐると大汐線と回送線は高浜西運河の上を斜めに横断しながら高架橋へ上がっていきます。ビルの裏に隠れて見えませんがこの付近から大汐線は複線になっています。ビルの荷捌き場や運河の上を通過するため、この部分は鋼製の桁橋が多く使用されています。
その中でも特徴的なのが、高輪橋架道橋(通称「お化けトンネル」)へ向かう道路の途中にある「芝浦併用橋」です。この橋梁は高浜西運河、区道、回送線・大汐線の三重交差になっていることから、区道のトラス橋(芝浦橋)が上を通る回送線・大汐線の橋脚を兼用しているという国内でも非常に珍しい構造となっています。回送線を支える脚はトラスの中に納まりきらず、上弦材を無理矢理延長して接合しているという素人目には少々不安に感じる形状です。


左:高浜橋から見た大汐線・回送線高浜第二西運河橋梁。
右:旧海岸通りを跨ぐ高浜架道橋は大汐線がトラス橋、回送線が箱桁になっている。
右:旧海岸通りを跨ぐ高浜架道橋は大汐線がトラス橋、回送線が箱桁になっている。
上:高浜橋から見た大汐線・回送線高浜第二西運河橋梁。
下:旧海岸通りを跨ぐ高浜架道橋は大汐線がトラス橋、回送線が箱桁になっている。
下:旧海岸通りを跨ぐ高浜架道橋は大汐線がトラス橋、回送線が箱桁になっている。
運河を渡って芝浦水再生センター側の陸地に取り付くと旧海岸通りと交差します。この橋は回送線が箱桁、大汐線がトラス橋という構造になっています。桁を支えているコンクリートの橋脚は回送線のものが鋼板で補強されているのに対し、大汐線のものは建設時のコンクリートのままとなっています。1970年当時の設計では現在の耐震基準を満たさないことから、今後鋼板を巻くなどの補強が行われるものと思われます。
左:高浜運河を渡った直後にある港南第1架道橋。
右上:真下の浜路橋交差点横の橋脚は2017年頃に耐震補強が実施された。
右下:モノレール横の円柱も2022年に耐震補強済み
右上:真下の浜路橋交差点横の橋脚は2017年頃に耐震補強が実施された。
右下:モノレール横の円柱も2022年に耐震補強済み
上:高浜運河を渡った直後にある港南第1架道橋。
中:真下の浜路橋交差点横の橋脚は2017年頃に耐震補強が実施された。
下:モノレール横の円柱も2022年に耐震補強済み
中:真下の浜路橋交差点横の橋脚は2017年頃に耐震補強が実施された。
下:モノレール横の円柱も2022年に耐震補強済み
旧海岸通りを過ぎると、高浜運河や首都高速1号羽田線、東京モノレールと交差します。高架橋になっている首都高やモノレールをオーバークロスするため、線路は地上から20mという高い場所を通っています。こ
この付近も大汐線側は休止後メンテナンスがされておらず、同じ形状の橋が並んでいる首都高の交差部分では大汐線側の錆びが目立っています。橋脚についても大汐線側は長らく放置されていましたが、羽田空港アクセス線への転用が具体化し始めた頃から少しずつですが耐震補強が進められています。一例として、見るからに新しい鋼板で巻かれているモノレール横の円柱橋脚は、Googleストリートビューの過去画像から2021年6月から2022年9月の間に鋼板巻きによる補強が実施されたことがわかります。


左:京浜運河橋梁。線路の位置が非常に高いため、上路式トラス橋が採用されている。
右:品川ふ頭内の高架橋は耐震補強工事中。
右:品川ふ頭内の高架橋は耐震補強工事中。
上:京浜運河橋梁。線路の位置が非常に高いため、上路式トラス橋が採用されている。
下:品川ふ頭内の高架橋は耐震補強工事中。
下:品川ふ頭内の高架橋は耐震補強工事中。
京浜運河を渡って品川ふ頭に入ると、周囲の風景は一変しコンテナやトレーラーヤードといった港湾・物流施設が広がるようになります。品川ふ頭内は回送線・大汐線の高架下のほぼ全てが倉庫などのテナントとして利用されています。この付近もとりあえず高架下の利用に関係ない部分から耐震補強が開始されており、1月の調査時も遮音板で覆われた橋脚があるのが確認できました。
●東京貨物ターミナル内改修区間(若潮橋梁~大井中央陸橋)


左:天王洲南運河を渡る若潮橋梁。右の大汐線のトラスは長らく塗装がされておらず錆が目立つ。
右:首都高速湾岸線の上を通る大井北部陸橋から田町方面を見る。ここから先は東京貨物ターミナル駅の入換作業で線路を使用している。
右:首都高速湾岸線の上を通る大井北部陸橋から田町方面を見る。ここから先は東京貨物ターミナル駅の入換作業で線路を使用している。
左:天王洲南運河を渡る若潮橋梁。右の大汐線のトラスは長らく塗装がされておらず錆が目立つ。
右:首都高速湾岸線の上を通る大井北部陸橋から田町方面を見る。ここから先は東京貨物ターミナル駅の入換作業で線路を使用している。
右:首都高速湾岸線の上を通る大井北部陸橋から田町方面を見る。ここから先は東京貨物ターミナル駅の入換作業で線路を使用している。
天王洲南運河を渡ると大井ふ頭に入ります。ここから回送線・大汐線ともに線路は地平に戻り、大井車両基地と東京貨物ターミナルへ向けて敷地が東西へ大きく広がっていきます。また、この付近から地下に旧京葉線台場トンネルを転用したりんかい線八潮車両基地への入出庫線が並走するようになります。
左:大汐線線路敷に設置されていたJR東日本東京支社技術訓練センター
右上:2011年7月に北部陸橋から見たセンターの様子。訓練用の模擬軌道が設置されていた。
右下:同じ場所の今年1月の様子。訓練用設備は全て取り壊され更地化された。
右上:2011年7月に北部陸橋から見たセンターの様子。訓練用の模擬軌道が設置されていた。
右下:同じ場所の今年1月の様子。訓練用設備は全て取り壊され更地化された。
上:大汐線線路敷に設置されていたJR東日本東京支社技術訓練センター
中:2011年7月に北部陸橋から見たセンターの様子。訓練用の模擬軌道が設置されていた。
下:同じ場所の今年1月の様子。訓練用設備は全て取り壊され更地化された。
中:2011年7月に北部陸橋から見たセンターの様子。訓練用の模擬軌道が設置されていた。
下:同じ場所の今年1月の様子。訓練用設備は全て取り壊され更地化された。
東京貨物ターミナル入口には大井北部陸橋があり、東京貨物ターミナル駅構内を見渡すことができます。この陸橋は上から臨港道路、大汐線・新幹線回送線、首都高速湾岸線、りんかい線入出庫線(地下)という四重交差になっています。
大井北部陸橋を過ぎてすぐの地点には、休止中の大汐線の線路敷を活用してJR東日本東京支社の技術訓練センターが設置されていました。社内ではこの施設を「ななかまど」と呼んでおり、様々な種類のポイントや短いプラットホームが設置され、保線担当社員の研修に利用されていました。2022年4月には鉄道開業150周年を記念し、一般向けの有料公開イベントも開催されていました。しかし、年末になりこの施設が突如取り壊され更地に戻されてしまいました。

救援センター踏切に掲出されていた駐車場明け渡し要請の看板。3月には踏切自体が閉鎖された。
一方その「ななかまど」の先には、JR東日本のグループ会社であるジェイアール東日本都市開発が管理する駐車場が広がっていました。こちらについても2022年9月末限りで閉鎖となり、今年3月には駐車場に通じていた救援センター踏切も閉鎖されました。閉鎖された施設はいずれも羽田空港アクセス線の予定地であることから、着工に向けた準備が開始されたものと考えられます。
その先、りんかい線八潮車両基地がある大井中央陸橋から先に関しては1月時点では特に変化はありませんでした。次回はその先羽田空港までの新規建設区間の現状、そして将来整備が計画されている臨海部ルートや西山手ルートについて解説します。
▼参考
大井ふ頭・汐留間線路増設工事 - 東工1974年5月号(第25巻第3号)
大井ふ頭ターミナル新設工事記録 - 東工1977年2月号(第28巻第1号)
「東京貨物ターミナル」「新幹線大井車両基地」 - 国有鉄道1973年11月号
※上記3点のリンクは国会図書館デジタルコレクション。利用者IDをお持ちの場合、ログインするとご自身のPC・スマホ・タブレットから閲覧可能です。
羽田空港アクセス線(仮称)整備事業|東京都環境局
→「環境影響評価書」「事後調査計画書」「変更届(令和5年4月4日)」が公開中。PDFファイルの閲覧にはMicrosoft EdgeまたはGoogle ChromeとAdobe Acrobat Reader DCがインストールされたWindowsパソコンが必要です。これ以外の環境ではダウンロードができてもエラーになるまたは画面が白1色になり何も表示されません。
羽田空港アクセス線構想 - 交通と統計2020年1月号
羽田空港アクセス線構想 : 交通研究委員会 - 汎交通2021年度(2)
首都圏輸送改善に向けた運転設備整備他 - 東工技報第35号(2021年度)
羽田空港アクセス線整備」~都心からのダイレクトアクセスを目指して~ - 日本鉄道施設協会誌2022年3月号
羽田空港アクセス線(仮称)の本格的な工事に着手します - JR東日本ニュースリリース(PDF/2.87MB)
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