カテゴリ:鉄道:建設・工事
相鉄線星川駅高架化工事(2016~2017年取材)
公開日:2017年01月31日12:00

相鉄線星川駅と天王町駅では現在高架化工事が行われています。昨年6月にこの工事について調査を行いましたが、日が経ってしまいましたので、今月上旬に特に変化が大きい天王町駅を中心に再調査を行いました。今回は昨年調査した星川駅周辺の状況と合わせて現在の状況をお伝えします。
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相鉄線星川駅高架化工事(2013年9月・2014年4月取材)(2014年5月20日作成)
相鉄線星川駅高架化工事の概要
相模鉄道本線星川~天王町間連続立体交差事業は相鉄本線和田町~天王町間の全長1.9kmを高架化するものです。
星川駅周辺は保土ヶ谷区役所が存在し、保土ヶ谷区の行政上の中心地となっています。また、駅の南東には1985(昭和60)年に閉鎖された日本硝子横浜工場跡地を利用して野村不動産が開発を行っている「横浜ビジネスパーク(YBP)」が存在し、星川駅の乗降客数は1日当たり2万7千人に上っています。しかし、星川駅は駅前のスペースが狭小でバスなどの乗り入れができず、地域の拠点駅としては不十分な施設となっています。この星川駅を含む和田町~天王町間には9箇所の踏切が存在し、星川2号踏切で交差する市道鶴ヶ峰天王町線を中心に常時激しい交通渋滞が発生しています。特に星川駅は優等列車と各駅停車が接続を行う駅であることから停車時間が長く、この問題は深刻です。
このため、相模鉄道と横浜市は和田町駅東側の横浜新道付近から天王町駅までの線路を高架化し、踏切を解消するとともに、交差する一部道路の拡幅、線路に並行する道路を新設を行い、交通渋滞の緩和、地域分断の解消、駅周辺の施設との連携強化を図ることとなりました。事業は2001(平成13)年に着工準備採択を受け、翌2002(平成14)年6月5日に都市計画決定、同年9月13日に事業認可がそれぞれなされ、工事が開始されました。


星川駅の高架化前後の断面図(左・1)と天王町駅の高架化前後(計画変更前後)の断面図(右・2)
高架化着工前の星川駅は島式ホーム2面4線の両側に留置線が3本取り巻く配線となっていました。高架化後は同じく島式ホーム2面4線となりますが、留置線は横浜方面の本線脇に移設して高架橋の幅が広くなり過ぎないようにします。駅部分の高架橋は2層構造で、2階が改札口、3階がホームとなり、2階の改札口は地上時代の橋上駅舎と同様南側の商業ビル(星川SFビル)と直結する予定です。
一方、天王町駅は環状1号線の立体交差化のため40年前に対向式ホーム2面2線の構造で高架化済みとなっています。当初計画では天王町駅は現在の高架橋を取り壊し、島式ホーム1面2線に全面改築することになっていました。しかし、事業に必要な用地買収が非常に難航したため、現在の高架橋の大半を残したうえでホームや線路の形状を一部変更・かさ上げし、星川駅周辺の高架化区間へ接続する計画に変更されました。
当初は2012年度の完成を目指して進められていた星川駅の高架化工事ですが、上記の用地買収難航と計画変更、ならびに列車の運行・利用者への安全対策や環境対策に伴う追加工事が発生したことから、2011(平成23)年9月に完成予定を2018(平成30)年度へ6年延期することが決定しました。これに伴い、総工費は当初計画より90億円増しの約470億円となり、差額は横浜市が80億円、相鉄が10億円ずつ負担することになっています。
下り線の高架橋が完成し、軌道敷設が進む
星川~和田町間では、2007(平成19)年から3年間かけて上下線が北側の仮線に移設されました。移設が完了した部分より高架橋の建設が進められ、2015(平成27)年までに高架橋本体の工事は完了しました。以後は軌道敷設、架線、信号などの設置が進められています。また、天王町駅付近については計画変更が確定した2013(平成25)年秋以降既存の高架橋を取り壊して星川駅の高架橋に接続する新しい高架橋の建設が進められています。今回は昨年6月に調査した全区間の様子に加え、変化が激しい天王町駅について今月追加で調査した様子をお届けします。
●星川~和田町間


左(1):和田町駅側の新旧接続点。高架橋の床が出来上がったところ。2015年5月11日撮影
右(2):同じ場所の1年後。軌道敷設が進む。2016年6月19日撮影
(2011年9月10日の同じ場所の様子)
星川~和田町間の横浜新道との交差付近にある新旧接続地点では、2009年11月に仮線切り替えが完了しました。仮線は急なS字カーブで北側に迂回しているため、45km/hの速度制限がありますが、高架化後はこれが元の直線に戻るため速度制限は解消されます。仮線切り替え後は2014年にかけて下り線の高架橋が建設され、現在は軌道敷設も完了しています。高架橋に敷設された軌道は最近主流の弾性まくらぎ直結軌道(高架橋床に設置した台座の上に防振ゴムを敷いてコンクリートまくらぎを置くタイプ)となっています。
上(1):相鉄線に並行する市道から建設中の高架橋を見る。2016年6月19日撮影
左下(2):高架橋は鋼材とコンクリートの合成桁になっている。2015年5月11日撮影
右下(3):高架橋の高さが特に低いところは薄い桁が採用されている。2015年5月11日撮影
左下(2):高架橋は鋼材とコンクリートの合成桁になっている。2015年5月11日撮影
右下(3):高架橋の高さが特に低いところは薄い桁が採用されている。2015年5月11日撮影
星川~和田町間の高架橋は距離の割に交差する道路が非常に多いことから、全て橋脚と高架橋の床面が別構造になった桁式となっています。桁は鋼製で、騒音低減のため表面をコンクリートで覆った構造になっています。星川駅近くにある星川2号踏切で交差する市道鶴ヶ峰天王町線は、高架化工事着工時に踏切と直角で交差するよう前後の道路がS字に付け替えられています。高架化完成後はこれを元の直線に戻すとともに、道路幅が現在の6.6mから16.0mに拡幅される予定になっています。
一方、地上へ降りる区間で道路と交差している部分では桁下の高さを確保するため表面コンクリートで覆わず、さらに桁自体も非常に薄いものを使用しています。和田町駅寄りの踏切1か所はこれでも桁下高さが確保できないこと、民家へ通じる私道で交通量が極端に少なかったため、着工時に踏切自体を廃止しており、仮線跡地に今後新設される道路(区画街路4・5号線)で迂回する形となる予定です。
●星川駅


星川駅構内では上り線側でも橋脚を立てる工事が開始された。2016年6月19日撮影
星川駅構内は着工後2010(平成22)年にかけて線路やホームが高架橋の柱に重ならない位置に移設され、橋上駅舎も背の低い仮の物に改築されました。改築完了後は跡地で高架橋の本体工事が進められています。星川駅構内の高架橋は鋼製の柱の上にコンクリートの床板(スラブ)を載せる構造になっています。これまでは先に使用開始となる下り線側を中心に建設が進められてきましたが、2014年までにホームの工事まで完了したことから、上り線側についてもスペースの確保できる部分から柱を立てる工事が開始されています。現時点では地上を電車が走行していることから、2階床を支える梁はほとんど未設置となっています。


星川SFビル2階のデッキから見た工事中の高架駅。2014年にホームまで完成しており変化はない。2016年6月19日撮影
●天王町駅

天王町駅の計画変更前後の線形比較。新しい計画ではホーム途中から上り勾配になる。
現在の天王町駅は、対向式ホーム2面2線で、星川駅に向かって下り勾配になっています。当初の計画ではこの高架橋は全て取り壊し、新たに星川駅に向かって上り勾配になった島式ホーム1面2線(図中の赤い線)を建設することになっていました。しかし、前述の通り高架橋の拡幅に必要な用地買収が非常に難航し、当初完成予定の2012年になっても全く工事に着手できない事態となりました。そのまま計画を維持した場合、地権者への多額の補償金の支払いや土地収用法による用地の強制取得が必要となり、コストアップや事業長期化につながるため、計画を大幅に見直すことになりました。
新しい計画では横浜方3分の1の高架橋を残し、上り勾配の開始地点を駅の中央に変更します。(図中の青い線)このままでは星川方のホームのすぐ先にある道路(天王町1号踏切)の桁下高さが十分確保できなくなってしまうため、ホームを出た直後の地点から急勾配で線路を上昇させます。加えて、高架化完了後さらに踏切跡地の道路を少し掘り下げることにより、道路構造令で定められている最低3.8mの桁下高さを確保できる見込みです。高架橋を一部流用するため、天王町駅のホームの形状は当初計画の島式1面2線ではなく対向式2面2線のままになります。星川方の高架橋は天王町駅が島式ホームになることを前提に南側に寄った形で完成してしまっているため、天王町駅構内の線路を南側にS字にカーブさせ、完成済みの高架橋に接続します。
この計画変更により、2018年度の完成予定の確実性が増すほか、5億円程度の事業費縮減が可能とされています。2014年1月に行われた横浜市の都市計画審議会においてこの計画変更は可決され、以後それに基づいて急ピッチで工事が進められています。

天王町駅ホーム端から星川方面を見る。下りホームの裏手で新しい高架橋の建設が進む。2016年6月19日撮影
天王町駅では、星川方の高架橋を取り壊すため2013年に横浜寄りに2両分仮設ホームが建設され、列車の停止位置が移動しました。使用停止となった星川寄りのホームはその後取り壊されており、軌道部分も高架橋を改築するため鉄骨で仮支えした状態になっています。既存の高架橋の取り壊し作業は、柱や梁を輪切りにして大きな塊(重量10トン程度)のまま搬出する新工法を採用し、大幅なスピードアップを図っています。
▼参考
特殊降下機を利用した軌道仮受直下での既設高架橋解体 | 2014年度 | 最新情報 | 東急建設株式会社
→既設高架橋の解体作業の写真がある

高架化後に使用する新ホームに切り替えられた天王町駅下りホーム。今立っている場所は新しい下り線の線路敷になる。2017年1月9日撮影
※クリックで拡大(1500×544px/135KB)
高架橋の取り壊しと並行して下りホーム裏手では高架化後に使用する新しいホームの建設が進められ、昨年7月30日に下り線の新ホームの使用を開始しました。これに伴い、高架下の改札口へ通じる階段・エレベータも新ホーム側に移動し、上下エスカレータも新設されました。高架下のコンコースもレイアウトが変化しています。新ホームは途中から上り勾配になっているため、ホーム端では現ホームとの間に段差が生じています。現ホームは鉄骨や木材で組んだ仮設構造になっており、星川寄りでは高架線への切り替え準備のため屋根も撤去されています。


左(1):天王町駅下り線新ホーム上にはエスカレータが設置された。
右(2):新ホーム使用開始に伴い高架下のコンコースも拡張された。(同じ場所の2015年5月11日の様子)

ホーム端のフェンス越しに新しい下り線を見る。桁下高さを確保するためホームが終わったところから急上昇している。
現ホームの床下では新しい下り線の軌道敷設が行われており、そのまま星川方面の高架橋へ続いています。ホームのフェンス越しに星川方面を見ると天王町1号踏切の桁下の高さを確保するため、ホームが終わったところから線路が急上昇しているのが確認できます。
3月に下り線を高架化
完成予定が6年も延期されるなど大幅に遅れている相鉄線星川駅高架化工事ですが、横浜市道路局が発行している事業PR紙「星天ニュース」の2016年10月発行号において2017(平成29)年3月に下り線を高架化する予定であることが発表されています。相鉄に関しては現在建設進められている「相鉄・JR直通線」「相鉄・東急直通線」でも度重なる完成延期や事業費の大幅アップが生じており、人口の多い横浜市での新線建設や改良工事の難しさをうかがわせています。
▼参考
踏切を減らす(連続立体交差事業)|未来への取り組み|相鉄グループ
横浜市 道路局 企画課 鉄道と道路の立体交差化
相模鉄道本線(星川駅~天王町駅)連続立体交差事業 天王町駅部の計画変更について - 横浜市道路局(PDF/2.23MB)
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