常磐線各駅停車・千代田線E233系2000番台(2010年9月5日取材)
公開日:2011年01月18日01:23

東京メトロ千代田線と相互乗り入れを行っている常磐緩行線では現在新型車両E233系2000番台の導入が進行中です。昨年9月にこの車両について調査をすることができましたので、詳しく解説することいたします。
■JR東日本の標準車両E233系




左上:中央線E233系0番台(2007年9月1日武蔵小金井駅)
右上:京浜東北・根岸線E233系1000番台(2010年2月6日浦和駅)
左下:京葉線E233系5000番台(2010年7月10日千葉みなと駅)
右下:東海道線E233系3000番台(2009年1月6日品川駅)
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E233系はJR東日本の首都圏における標準車両として2006(平成18)年に中央線に導入が開始されたのを皮切りに、京浜東北・根岸線(2007(平成19)年)、東海道線(2008(平成20)年)、京葉線(2010(平成22)年)と各線に導入が進んでいます。このE233系は1つ前の世代の車両であるE231系を基本としつつ、更なるサービス向上を目指して
●故障に強い車両
動力系統、パンタグラフなど主要機器をを二重化し、故障が発生しても運転が継続できるようにする。
●ユニバーサルデザイン
車両の床面高さを下げ、ホームとの段差を縮小して足の不自由な乗客や車椅子での乗降をスムーズにできるようにした。また、車内の荷物棚、吊革の高さを下げ、身長の低い乗客でも利用しやすくした。
●快適性の向上
エアコン内に空気清浄機能を追加、抗菌加工された吊革の採用、座席幅の拡大(1人当たり45cm→46cm)
●情報化社会への対応
ドア上部に液晶ディスプレイ(LCD)を設置し、駅の案内や運行情報、動画広告などを配信する。
といった改良が行われています。このE233系の思想は首都圏を走る民鉄各社にも影響を与えており、例えば同じ東京メトロ千代田線を走る小田急4000形はE233系の基本設計をそのまま流用しています。
■常磐線E233系2000番台での変更点
常磐緩行線用のE233系はこれまで他線で導入されてきたE233系の使用を基本としていますが、地下鉄線に乗り入れる上での制約により以下のような仕様変更が行われています。
●車体幅の縮小
東京メトロ千代田線内のトンネル縮小限界に対応するため、車体幅を2800mm(他番台は2950mm)とした。このため、車体すそ部分は絞込みが無く平面となっている。
●先頭車前面への貫通扉の設置
地下鉄線内には車体とトンネル壁面の間隔が狭い箇所があり非常時に側面から非難することが困難であるため、先頭車前面左側に非常時に避難通路となるドアを設けた。(鉄道の技術上の基準を定める省令75条で規定)これにともない、ヘッドライトはHIDからシールドビームに変更された。
●走行性能を向上
東京メトロとの協定に従い、加速度を3.3km/h/s(=0.92m/s2)、減速度を4.7km/h/s(=1.31m/s2)と高く設定し、駅間が短く急勾配が存在する地下鉄線内での走行に対応させた。
●保安装置はATC
保安装置は走行線区にあわせてATC-10形(東京メトロ新CS-ATC)とATS-SNを搭載。また、工場などへの回送時は可搬式ATS-Pの取り付けが可能。
●車内の広告用ディスプレイの非設置
地下鉄線内では映像の配信設備が未整備であるため、車内の広告用LCDが非設置となった。(増設の準備は行われている。)
●ドア間隔の変更
側面の乗降扉は他社の車両に合わせて4820mm(他番台は4940mm)とした。なお、駆動方式は3000・5000番台と同じリニアモータ式である。

取手駅に停車中の常磐緩行線線E233系2000番台
常磐緩行線E233系2000番台の第1編成は2009(平成21年)5月に東急車輛で製造され、同年9月より営業運転を開始しました。これにより207系900番台が廃車となりましたが、その後はしばらくの間1編成のみでの運行が続きました。2編成目が登場したのは昨年夏のことで、以後は残る203系の置き換えを行うべく増備が続けられており、余剰となった203系は順次長野総合車両センターに回送され解体されています。


左:E233系2000番台車内
右:消火器ボックスの位置が変更された車端部
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車内はE233系の他番台とほぼ同一の構成となっており、車端部の網棚もこれまで通り他の箇所よりも低くなっています。なお、車体幅が縮小された結果、車端部に設置されている消火器ボックスは座席に干渉することになったため取り付け位置が従来よりも高い位置に変更されています。


左:ドア上部のLCD。他番台で広告用として設置されている左側は準備のみの状態。
右:車外側面の行先表示。表示内容は他番台と同一。
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車内のドア上部には他番台と同様液晶ディスプレイが設置されていますが、他番台では主に広告用として使用されていた左側のディスプレイは取付け用の窪みのみが準備された状態にとどまっています。これは走行区間の半分を占める東京メトロ千代田線内でリアルタイムの映像更新ができないためと考えられます。なお、東京メトロでは現在千代田線に新型車両16000系の導入を進めており、同形式には広告用の車内ディスプレイが搭載されていることから、今後東京メトロとの協議により千代田線内に映像の配信システムが整備され使用可能になった場合、このE233系2000番台でも広告用ディスプレイの追加搭載が行われる可能性があります。(ディスプレイのシステム自体は三菱電機のトレインビジョンであることから、問題となるのはソフトウエアと費用負担のみであると思われる。)
車外の行先表示については他番台とほぼ同一の表示内容となっています。

常磐線各駅停車E233系2000番台運転台
運転台はE233系の他番台と同じ全面ディスプレイとなっており、アナログメータは一切設置されていません。ディスプレイは運転席のパネル部分に3つ設置されており、左から計器(速度計・ブレーキ圧力計など)、TIMS、保安装置(ATC/ATS)の動作表示となっています。
■小田急線乗り入れの準備?

E233系2000番台先頭車の屋根のアップ。中央に謎の突起が…
※クリックで注釈入りの画像を表示
3年前、千代田線に乗り入れを行っているもう一つの鉄道会社である小田急4000形の調査した際、同形式にJRの乗り入れ準備が行われていることについて触れました。こうなるとこのE233系2000番台でも小田急への乗り入れに関して何らかの準備がなされているのではないかと気になるのが自然でしょう。
といわけで先頭車の屋根を観察すると…先頭車の運転台上部、中央には円筒形の突起があります。小田急4000形ではこの位置に小田急用の空間波無線アンテナが設置されています。よって、公式には明言されていないもののこの突起は小田急用の列車無線アンテナの台座と見て間違いなさそうです。一方、運転台は小田急4000形とは異なりJRデジタル列車無線の送受信器の脇にある不自然なフタ(1つ前の写真、デスク上にある白い受話器の右側)以外に機器の追加スペースと思しき空間は見当たりません。これは計器類が全面的にディスプレイ化されたことから、将来もし小田急への直通が行われる場合はソフトウエアを変更して表示内容を追加することで対応するためと考えられます。(列車無線の送受信器だけはディスプレイで対応できないため、前述のような「フタ」が設置されているものと思われる。)
このE233系2000番台は2010年度以降に10両編成17本を導入し、203系を全車両置き換える計画となっています。常磐緩行線に2編成存在する209系1000番台は置き換え対象とはなっておらず、今後もこのE233系2000番台とともに使用される予定です。東京メトロ16000系とともに今後大きく変化する常磐緩行線・千代田線の車両に注目です。
▼参考
常磐緩行線(東京メトロ千代田線直通)に新型電車を導入 - JR東日本
E233系2000番台,常磐線内で試運転|鉄道ニュース|2009年5月21日掲載|鉄道ファン・railf.jp
【JR東】E233系2000番代 営業運転開始 (RMニュース)
常磐緩行線・地下鉄千代田線直通用E233系2000番台 - 交友社「鉄道ファン」2009年9月号(通巻581号)57~63ページ
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