カテゴリ:鉄道:建設・工事
JR御茶ノ水駅改良工事(2017年8月17日取材)
公開日:2017年09月23日06:29

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夏コミ終了後は、次期新作の取材と並行して首都圏各地の鉄道工事について再調査を進めています。今回は8月中旬に調査したJR中央線御茶ノ水駅の改良工事についてお伝えします。現地では長らく続いていたのり面の補強や既設ホームの仮設化が完了し、橋上駅舎の建設が始まるなど進展がありました。
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JR御茶ノ水駅改良工事(2016年1月14日取材)(2016年7月15日作成)
JR御茶ノ水駅の概要と改良工事の経緯
JR御茶ノ水駅は文京区と千代田区の区界を流れる神田川の渓谷の中に位置し、中央線と総武線が分岐する拠点駅となっています。中央線では当駅のみが方向別ホームとなっており、快速と各駅停車が同一ホームで乗り換え可能です。新宿方面は快速線と緩行線の相互に乗り入れ可能な配線になっており、中央線と総武線を直通する特急「あずさ」「新宿わかしお」の運行に使用されています。また、このポイント周辺は千葉方面から来た総武線の引上線としても使用可能になっており、早朝・深夜は総武線を当駅折り返しとする代わりに東京駅から来る中央線の列車を全区間各駅停車として運行しています。また、周辺には東京メトロ丸ノ内線御茶ノ水駅・千代田線新御茶ノ水駅があり、徒歩数分で乗り換え可能です。
御茶ノ水駅が開業したのは、今から110年前の1904(明治37)年に中央線の前身である甲武鉄道の飯田町~御茶ノ水間が開業した時のことです。開業当初は現在よりも水道橋駅寄りに駅がありましたが、この駅舎は1923(大正12)年の関東大震災で倒壊し、その後の駅周辺を含めた復興事業の一環で1932(昭和7)年に現在の場所に移転しました。移転に際しては、高頻度で列車が運行されることを前提にホームやコンコースなどの施設が最小限のサイズで建設されました。
移転から80年が経過した現在の御茶ノ水駅は、その設計思想通りに列車が運行されていることもあり、混雑はしつつも大規模な改良をせずに機能を維持しています。一方、この間に駅周辺には大規模な医療施設が建設され、バリアフリーへの非対応が問題視されるようになっています。JR御茶ノ水駅はその立地と極端に効率化された構造ゆえに設備の追加が容易ではなく、1980年代末にもJR東日本主催のデザインコンペにより改良案が示されたものの、技術的に困難であるという理由から撤回されてしまいました。

2013年4月にJR御茶ノ水駅聖橋口前に完成した「御茶ノ水ソラシティ」。
しかし、それから二十数年の時がたち、小型の建設機械や地盤強化技術が著しく向上した結果、狭隘かつ高頻度で列車が運行される大都市の鉄道駅でもバリアフリー化に必要な建物の増築が可能となりました。折しも、JR御茶ノ水駅南側では2006年に丸の内に移転した日立製作所本社跡地を再開発した「御茶ノ水ソラシティ」が完成し、駅の利用者数が増加することが見込まれました。この混雑への対応も必要であることから、JR東日本は2010年度より大規模改良工事に着手しました。
JR御茶ノ水駅の改良工事は、1990年代の計画とほぼ同等の内容になっており、線路の上空に2~3階建ての橋上駅舎を建設します。同時に聖橋口の位置を変更し、改札口の前に駅前広場を設置します。工事は2段階に分けて実施される計画となっており、以下のような手順となっています。
●Step1:西側半分の橋上駅舎を建設し、聖橋口を仮設改札口に移転する

御茶ノ水駅改良工事第1段階では橋上駅舎の西半分を建設する。
第1段階は御茶ノ水橋口に接続する橋上駅舎を建設し、エレベータ・エスカレータを設置します。橋上駅舎の東端には線路南側の茗渓通り沿いで買収した土地を利用し、現行の聖橋口の代替となる仮設の改札口を設置します。聖橋口の改札口と橋上駅舎は閉鎖し解体します。
●Step2:東側半分の橋上駅舎を建設し、駅前広場を新設する


御茶ノ水駅改良工事第2段階では橋上駅舎を東側に拡張し、駅前広場を新設する。
※クリックで拡大(PNG形式/1200×400px)
第2段階は橋上駅舎を旧聖橋口の跡地まで拡張します。仮設となっていた聖橋口側の改札口を聖橋に面した位置に再度移転し、合わせて改札口の前に駅前広場を新設します。また、橋上駅舎の拡張部分にはホームに通じる階段を1箇所ずつ設置します。
この他、橋上駅舎の建設にあたっては足元となる地盤の安定化が不可欠であるため、同時に神田川に面した護岸や南側の崖に杭を打ち込んで固定する補強工事も行われます。工事はいずれも神田川の上に仮設の桟橋や移動式の台を設置し、対岸から橋を架けてそこから資材の搬入や橋上駅舎本体の建設を行う計画となっています。なお、御茶ノ水駅周辺は文京区の風致地区に指定されていることから、新駅舎や補強後の擁壁は景観に十分に配慮したデザインが採用されることになっています。第1段階の橋上駅舎西半分の建設と暫定的なバリアフリー化は2018(平成30)年度、全ての工事完成は東京オリンピックが開催される2020(平成32)年度の予定です。
橋上駅舎の建設が本格化
JR御茶ノ水駅改良工事は、本格的な着工から4年が経過し、いよいよメインとなる橋上駅舎の建設に入りました。今回は8月17日(木)に調査した現地の様子を中心にお伝えします。


左(1):ホーム上空に出現した橋上駅舎の鉄骨
右(2):支柱は各ホーム中央に立っている
JR御茶ノ水駅構内では、2013年の本格着工後ホームや屋根の仮設化が進められてきました。これらの工事が一通り完了したことから、今年に入ってからはいよいよ改良工事のメインとなる橋上駅舎の建設が開始されました。橋上駅舎は鉄骨構造で、線路上空に設置したクレーンを使い新宿寄りから順番に架設しています。鉄骨は神田川上部に設置した仮設桟橋から分割して搬入しており、鉄骨を仮置きするため着工当初より桟橋が拡張されています。鉄骨の架設作業は終電から初電までのわずかな時間で行われており、限られた時間で組み立てを行うため鉄骨同士をつなぐボルトは現時点では本来の本数の1/3程度の仮締めとなっています。橋上駅舎の支柱は各ホームの中央に立てられており、現在は屋根の仮支柱も林立しているためホーム上がかなり狭くなっています。


左(1):お茶ノ水橋から新宿方面を見る。写真下の護岸の上半分に見える白いコンクリートが追加された部分。
右(2):お茶ノ水橋から東京方面を見る。護岸の斜面に格子状のコンクリートが追加された。(同じ場所の2016年1月17日の様子)
2013年の着工当初より続いていた神田川沿いの斜面(護岸)の補強工事も完了しました。この補強工事は、斜面に向かってアースアンカー(杭)を打ち込み大地震の際の崩壊を防止するもので、擁壁が石組だった部分については強度をアップするため格子状のコンクリートも設置されています。アースアンカーは水道橋から昌平橋までの1.1kmの区間で計4,000本使用され、その後山手線や総武線などの盛土区間でも補強対策として採用されています。

1番線の斜面下では地盤改良のため穴が開けられている。
神田川沿いの斜面に加え、1番線(駿河台側)の斜面下でも擁壁を補強するための地盤改良が開始されました。線路脇にはそのための穴が開けられており、中に物が落ちないよう金網で覆われています。

聖橋より東京寄りでも斜面の補強が行われた。
聖橋は昨年の長寿命化工事着工後全体がパネルで覆われており、内部の様子は見えません。工事に伴い、橋の上は車線規制が実施されており、歩道が車道内に移設されています。(このため、欄干に近付くことができなくなっている。)
次回は西口が仮駅舎に移動した飯田橋駅の改良工事についてお伝えします。
▼参考
JR中央線御茶ノ水駅バリアフリー整備について - JR東日本(2010年3月26日発表)
JR中央線御茶ノ水駅バリアフリー整備等の本体工事着手について - JR東日本(2013年9月3日発表)(PDF/354KB)
中央線御茶ノ水駅付近耐震補強工事の着手について - JR東日本(2013年7月2日発表)(PDF/448KB)
2 代目御茶ノ水駅舎設計者選定の要因と背景 - 平成25年度日本大学理工学部学術講演会論文集(PDF/418KB)御茶ノ水駅改良計画について KANDAアーカイブ:神田資料室JR御茶ノ水駅のバリアフリー化検証(特集: 多様化する福祉) - お茶の水地理 (リンク先CiNii)
土木部門 施工 御茶ノ水駅改良工事の概要 - 日本鉄道施設協会誌2013年12月号(リンク先CiNii)
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