都営大江戸線勝どき駅改良工事(2018年2月18日取材)

ついに新ホームへの壁が破られた勝どき駅

都営地下鉄大江戸線勝どき駅では、周辺の開発進展により混雑が激しくなっています。この問題を解決するため、現在大門方面行き専用ホームの増設をメインとする改良工事が進められています。昨年秋にこの工事について調査をしていましたが、その後新しい出入り口が使用開始となるなど変化がありましたので2月に再調査を行いました。完成が見えてきた勝どき駅改良工事の現状をお伝えします。

▼関連記事
都営大江戸線勝どき駅改良工事(2015~2017年取材まとめ)(2017年11月11日作成)

もくじ
■都営大江戸線勝どき駅の混雑の現状
■ホーム増設・コンコース一体化へ
(1)晴海通りアンダーパス・
首都高速10号晴海線との交差

(2)新交通ゆりかもめの橋脚支持
■新ホームへの壁がついに破られる

都営大江戸線勝どき駅の混雑の現状

都営大江戸線12-000形電車
都営大江戸線12-000形電車

 都営大江戸線は東京都庁がある新宿区の都庁前駅を起点に、東京都心の外側を6の字に周回し、再度都庁前駅を経由して練馬区の光が丘駅に至る全長40.7Km地下鉄路線です。大江戸線は1991(平成3)年12月に練馬~光が丘間が開業したのを皮切りに、順次都心方向へ延伸を続け、2000(平成12)年12月12日に全線開業を迎えました。1日あたりの利用者数は2015(平成27)年度の数字で約91万4千人となっており、都営地下鉄4路線の中でトップを誇っています。
 現在改良工事が行われている勝どき駅は、大江戸線の東側、築地と晴海に挟まれた隅田川下流の埋め立て地内にあります。勝どき駅の地上は、勝どきから押上方面を南北に貫く清澄通りと、晴海から日比谷方面を東西に貫く晴海通りの交差点となっています。地下の駅は2層構造で、地下1階の南北に改札口が1箇所ずつ、地下2階に島式ホーム1面2線があります。地上への出入口は開業時に4箇所設けられました。また、これとは別に南側の駅上部には、中央区が管理する地下駐輪場が併設されています。

勝どき駅東側にある晴海トリトンスクエア
勝どき駅東側にある晴海トリトンスクエア

 勝どき駅の特徴として、地下1階のコンコースが南北で完全に分断されていることがあげられます。これは、晴海通り地下に交差点をアンダーパス化するためのトンネル建設が計画されており、その空間を避けたことによります。このため、勝どき駅のホームとコンコースを結ぶ階段は、南側の改札口へ通じるものが2箇所、北側の改札口へ通じるものが1箇所という偏ったレイアウトになっています。
 開業当初の勝どき駅は、駅周辺の工場や倉庫跡地の再開発がまだ始まったばかりであり、1日の利用者数も3万人程度と少なかったため、このレイアウトでも問題はありませんでした。しかし、開業からおよそ半年後の2001(平成13)年4月に近隣に晴海アイランドトリトンスクエアがオープンすると、この施設へ向かう通勤客が勝どき駅へ押し寄せるようになり、1日利用者数は一気に6万2千人へ急増しました。その後も、駅周辺では高層マンションが次々と建設されており、最新のデータである2016(平成28)年度の1日利用者数は約10万人に達しています。この数字は乗り換え路線が無い大江戸線の駅の中では最多であるのはもちろんのこと、乗換え口の混雑があまりにも激しかったため東西線側でホーム拡幅が行われた門前仲町駅の数字をも上回っており、その多さは際立っています。

開業時からあるA2a出入口(手前)と2003年に増設されたA2b出入口(奥) 路面が2色に色分けされた勝どき駅~晴海トリトン間の歩道
左(1):開業時からあるA2a出入口(手前)と2003年に増設されたA2b出入口(奥)
右(2):路面が2色に色分けされた勝どき駅~晴海トリトン間の歩道。2012年4月21日撮影


 このような利用者の増加に伴い、勝どき駅では朝ラッシュ時を中心に非常に激しい混雑が発生しています。特に問題になったのが、晴海トリトンへの最短ルートとなる北側の改札口とA2出口です。この解決策として、開業からわずか3年後の2003(平成15)年には、既存のA1出口から分岐してA2出口の近傍に出る新しい地上出入口(A2b)が増設されました。このA2b出入口は、A1出口の通路との間に不自然な段差があり、通路内の内装も塗装を中心とした簡易的なものであるなど、詳細な設計を詰めている間もなく通路の増設に迫られていたことが伺える構造となっています。このA2b出入口完成以降、朝ラッシュ時は従来からあるA2a出入口(A2から改称)が入場専用、A2b出入口が出場専用に区分され、両者の動線が交差することは無くなりました。また、2010(平成22)年12月には駅の西側に完成した勝どきビュータワーに併設したA4a出入口が新設されました。
 なお、勝どき駅の混雑は駅から晴海トリトンへ続く晴海通り上にも及んでいます。このため、晴海通りの歩道は路面のタイルが2色に分かれており、混雑が激しい朝ラッシュ時は晴海トリトン方向と勝どき駅方向で通行エリアが区分されるという特異な光景を見ることができます。

ホーム増設・コンコース一体化へ

勝どき駅のホーム増設・南北コンコース一体化後の立体図
勝どき駅のホーム増設・南北コンコース一体化後の立体図

 前述の通り、勝どき駅では晴海トリトンオープン後も利用者の増加が続いています。地上出入口は増設されたものの、ホームの狭さやコンコースの分断による混雑という根本的な問題は解決されないままであるため、東京都では勝どき駅の混雑緩和対策について2008(平成20)年より有識者を交えた検討を行いました。その結果、大門・六本木方面行きホームの分離・増設と南北で別れているコンコースを一体化する方針が決定しました。

改良工事完了後の勝どき駅の断面 改良工事着工前の勝どき駅のホーム。右(大門・六本木方面行き)線路側の壁を撤去してホームを新設する。
左(1):改良工事完了後の勝どき駅の断面
右(2):改良工事着工前の勝どき駅のホーム。右(大門・六本木方面行き)線路側の壁を撤去してホームを新設する。


 増設される大門・六本木方面行きのホームは、現在のトンネルを全長220mにわたり7.5m東に拡幅して設置されます。工事はまず駅の東側を掘削して拡幅部分のトンネルを構築した後、現在の駅の側壁を取り壊してホームを新設するという手順が取られます。このホームの完成後、現在の島式ホームは両国方面行き専用となる予定です。(東京メトロ銀座線新橋駅・日本橋駅などと同様の構造。)
 なお、勝どき駅の周辺は現在も再開発が進行中であり、計画段階の地下構造物も多く存在します。このため、改良工事にあたってはそれらの構造物への配慮もなされています。

(1)晴海通りアンダーパス・首都高速10号晴海線との交差
晴海通り交差部付近の断面
晴海通り交差部付近の断面

 勝どき駅の中央で交差する晴海通りの地下には、前述した通りアンダーパス用のトンネル建設が計画されており、当初の計画では駅のトンネルとは接点が無い独立構造とする計画でした。しかし、今回駅の南北コンコース一体化を図るにあたり、このアンダーパス用の空間の一部を使うこととなり、深度の関係で当初計画されていた独立構造とすることが難しくなりました。このため、同様の構造である環状2号線と大江戸線・浅草線連絡線の構造を参考にし、コンコース天井でアンダーパスの床を兼用するよう計画を変更しました。
 また、これとは別に晴海通りの下には首都高速10号晴海線(豊洲~新富町)の建設が計画されています。首都高速は勝どき駅から晴海通り地下を東へ進み、晴海大橋の直前で地上に出て今年度中に開業予定の晴海出入口に接続する計画となっています。このため、首都高速の天井は勝どき駅の床で兼用してトンネルの深度をできるだけ浅くする計画となっており、勝どき駅の地下2階床は将来床下が掘削されて宙吊りになっても耐えられるようコンクリートが厚くなっていました。今回増設されるホーム部分についても同様の構造とする計画ですが、首都高速のトンネルは晴海大橋に向かって上り勾配となっており、現在のトンネルと同じ深さにしてしまうと首都高速の断面に侵入してしまいます。このため、増設部分はトンネルの床を30cm浅くする代わりにホーム下の空洞を縮小し、当初計画通り首都高速用の空間を確保する予定です。

▼関連記事:環状2号線と大江戸線・浅草線連絡線について
大江戸線汐留駅の謎のトンネル(2006年10月5日作成)
汐留地区で続く道路建設(2006年10月6日作成)

(2)新交通ゆりかもめの橋脚支持
新交通ゆりかもめ豊洲駅のエンドレール。勝どき方面に曲がって設置されている。 新交通ゆりかもめ勝どき駅の橋脚設置イメージ
左(1):新交通ゆりかもめ豊洲駅のエンドレール。勝どき方面に曲がって設置されている。2010年3月31日撮影
右(2):新交通ゆりかもめ勝どき駅の橋脚設置イメージ


 現在、豊洲駅が終点となっている新交通ゆりかもめは時期は未定ながら勝どき駅まで延伸する計画となっています。ゆりかもめの勝どき駅は、現時点では大江戸線の勝どき駅の真上に設置することが検討されており、大江戸線のトンネルはゆりかもめの橋脚が40m間隔でどの位置に設置されても支えられるという条件で設計されていました。(汐留駅と同様の構造。)しかし、今回の改良工事ではトンネルを拡幅するため橋脚がトンネル中心からずれることや、既設部分と新設部分では強度の関係上コンクリート内部の鉄筋量が大幅に異なることから、全体的な強度のバランスが変わるため、元の計画のままではゆりかもめの駅の重量を支え切れないことが懸念されました。このため、各断面ごとに上載可能な重量をシミュレーションした結果、ゆりかもめの橋脚の間隔を調整することにより引き続き橋脚が設置可能となっています。

▼脚注
※ただし、中央区は勝どき駅の混雑を理由にゆりかもめの延伸について強硬に反対しており、代替の交通機関として環状2号線を通るBRT(バス高速輸送システム)や東京駅から銀座を経由して臨海部に至る地下鉄の新規建設を主張している。(平成26年2月24日中央区議会東京オリンピック・パラリンピック対策特別委員会)このため、2016年4月に発表された交通政策審議会第198号答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」ではゆりかもめの勝どき延伸は削除され、地下鉄新線の計画が盛り込まれている。




新ホームへの壁がついに破られる

ついに新ホームとの間の壁が撤去された勝どき駅
ついに新ホームとの間の壁が撤去された勝どき駅

 勝どき駅改良工事は当初2016年3月の完成が予定されていました。しかし、工事途上で地中に予想外の障害物が見つかったことや、地質調査や実際の掘削の結果地盤改良の追加などが必要になったことから工事が遅れており、完成予定が2018年度に約2年延期されました。
 新しいホームのトンネルの掘削は2015年から2016年にかけて行われました。トンネルが完成した2017年以降は既存のトンネル側壁を撤去する工事が行われました。側壁撤去時は現在使用中のホームに粉塵が飛び散らないよう側壁に防護板を設置していましたが、側壁の撤去作業も完了したことから昨年12月に防護板が取り外され、新しいホームが見えるようになりました。新しいホーム上では現在も床板の設置や内装工事などが続いており、線路との間に新しい防護板を置いて工事中のエリアと明確に区分しています。

既存の側壁を撤去した部分の天井。半円形に窪んでいる部分は側壁撤去時にワイヤーソーを通した部分。 新ホームの端は既存の側壁の切断面に新しくコンクリートを増し打ちしている。
左(1):既存の側壁を撤去した部分の天井。半円形に窪んでいる部分は側壁撤去時にワイヤーソーを通した部分。
右(2):新ホームの端は既存の側壁の切断面に新しくコンクリートを増し打ちしている。


 既存の側壁は最初に壁に穴を開けてダイヤモンドが埋め込まれたワイヤーを通し、滑車を使って糸鋸の原理でコンクリートを切断するワイヤーソーイング工法により撤去されました。側壁を撤去した部分の天井を見るとワイヤーを通すために穴を開けた部分が丸く窪んでいるのがわかります。新ホームの端の壁は側壁を撤去した切断面の上に新しくコンクリートを増し打ちして平滑化しています。いずれも今後は内装パネルで覆われるため見ることはできなくなります。

防護板の向こうにはエスカレータと思われる構造物が確認できる
防護板の向こうにはエスカレータと思われる構造物が確認できる

 新ホームには4箇所の階段が設置される予定になっています。防護板の奥を見ると階段もしくはエスカレータと思われる傾斜のついた構造物があるのが確認できます。なお、現ホームは階段が3箇所しかありませんが今後新ホームに合わせて1箇所階段が増設される予定です。(設置場所は南北のコンコースをつなぐ部分になる。)

昨年12月より使用を開始したA3b出入口 A3b出入口のエスカレータには水平になる区間がある
左(1):昨年12月より使用を開始したA3b出入口
右(2):A3b出入口のエスカレータには水平になる区間がある


 今回の改良工事に合わせて勝どき駅前交差点南側に新しい地上出入口A3bが作られ、昨年12月16日(土)より使用を開始しました。A3b出入口は1人幅の下りエスカレータと2人幅の上りエスカレータで構成されています。このエスカレータは途中水平になる区間があります。これはA3b出入口が既存のA3出入口(A3a出入口に改称予定)の真上に重なるように作られており、A3出入口の階段の踊り場に合わせて水平にせざるを得なかったためです。

A3b出口を降りるとUターンして南側の改札口へ通じる。
A3b出口を降りるとUターンして南側の改札口へ通じる。

 A3b出入口から入って地下1階に下りるとすぐに通路はUターンしており、既存のA3出入口と合流して南側の改札口へ通じるレイアウトになっています。通路が拡張されたA3出入口との合流部分は、現在も壁のほとんどが工事中になっています。今後はこの工事中の壁が打ち抜かれて北側の改札口とコンコースが一体化されることになります。

A3出入口手前の工事前の様子。コンコースは行き止まりになっており右へ曲がってA3出入口の階段に通じていた。 同じ場所の2018年2月18日の様子。コンコースがじゃ間奥に拡張され、A3b出入口へ通じる通路が接続された。今後はさらに奥へコンコースを拡張し、北側の改札口と接続される。
左(1):A3出入口手前の工事前の様子。コンコースは行き止まりになっており右へ曲がってA3出入口の階段に通じていた。2014年5月2日撮影
右(2):同じ場所の2018年2月18日の様子。コンコースがじゃ間奥に拡張され、A3b出入口へ通じる通路が接続された。今後はさらに奥へコンコースを拡張し、北側の改札口と接続される。


既存のA3出入口は復旧工事のため一時閉鎖中
既存のA3出入口は復旧工事のため一時閉鎖中

 A3b出入口の使用開始と入れ替わる形で既存のA3出入口は使用中止になっています。今後は11月にかけて新ホーム建設のために取り壊した踊り場~地下1階の階段を復旧する工事が行われます。

北側の改札口では3/31に左の囲いの中に新しいトイレがオープンした
北側の改札口では3/31に左の囲いの中に新しいトイレがオープンした

 晴海トリトンに近い北側の改札口では新ホームへ通じるコンコースを作るため、改札外側から見て左側にあった券売機が右側に移設されています。2月18日(日)の取材時点では以前の券売機の跡地は工事用の防護板で覆われたままとなっていましたが、その後3月31日(土)に防護板が一部撤去されて新しいトイレの使用が開始されました。このトイレは新ホームのトンネル内(地下1階)の中にあるもので、新規に拡張された施設の中で最初に使用を開始した部分になります。既存のトイレは入れ替わりに閉鎖されており、今後は跡地でコンコースが拡張されます。

 勝どき駅改良工事は2018年度中の完成が予定されています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは運河を隔てた晴海地区に選手村が設けられ、大会終了後は跡地にタワーマンションをはじめとする約5,500戸の住宅が建設されることになっています。勝どき駅はそれらの施設への玄関口としてさらに重要性を増していくことでしょう。

▼参考
地下鉄の改良工事 | 東京都交通局
大江戸線勝どき駅改良事業の再評価を実施しました。 | 東京都交通局
→完成予定の延期理由について
大江戸線勝どき駅A3b出入口供用開始のお知らせ | 東京都交通局
大江戸線勝どき駅新トイレ供用開始のお知らせ | 東京都交通局
大江戸線勝どき駅の増設ホーム等を平成30年度に供用開始します | 東京都交通局
審議会・委員会等:東京圏における今後の都市鉄道のあり方について - 国土交通省
→2016年4月20日に発表された交通政策審議会第198号答申の詳細
ホーム増設とコンコース一体化により地下駅を大規模改良-都営大江戸線勝どき駅- - トンネルと地下2011年12月号

▼関連記事
都営大江戸線勝どき駅改良工事(2012年4月21日取材)(2012年4月28日作成)
都営大江戸線勝どき駅改良工事(2015~2017年取材まとめ)(2017年11月11日作成)
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