カテゴリ:鉄道:建設・工事
都営大江戸線勝どき駅工事完成(2022年12月10日取材)
公開日:2023年01月11日12:19

都営大江戸線勝どき駅は、周辺開発の進展により開業時と比べ利用者が大幅に増加しました。これに伴う混雑に対応するため、2019年2月に大門方面行きホームが増設され、両方向のホームが分離されました。その後は引き続き改札口増設などの改良工事が行われていましたが、コロナ禍により調査ができておりませんでした。昨年12月に勝どき駅改良工事の最終状況を調査してまいりましたので、完成した各施設の様子をレポートします。
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都営大江戸線勝どき駅ホーム増設工事(2019年2月11日取材)(2019年4月20日作成)
勝どき駅ホーム増設工事の概要

勝どき駅東側にある晴海トリトンスクエア
都営大江戸線は東京都庁がある新宿区の都庁前駅を起点に、東京都心の外側を6の字に周回し、再度都庁前駅を経由して練馬区の光が丘駅に至る全長40.7Km地下鉄路線です。開業当時はその莫大な建設費による赤字額の多さが問題視されることもありましたが、着実に利用者を増やし続け、現在では都営地下鉄4路線の中でトップの利用者数となっています。
勝どき駅は乗り換え路線が無い大江戸線の駅の中で最多となる1日7万4千人の乗降客数となっています。これは駅周辺で建設が続くマンション群の住民に加えて、駅の東にある晴海アイランドトリトンスクエアへの通勤者が当駅を利用するためです。

勝どき駅のホーム増設・南北コンコース一体化後の立体図
改良工事着工前の勝どき駅は、地上の晴海通りを境にコンコースが分断されていました。これは晴海通りの地下に将来予定されている交差点立体化用のトンネル空間を避けたことによります。この結果、晴海トリトンへの最短ルートとなる両国寄りの改札口は、ホームへ通じる階段が1か所しか設置できず、朝ラッシュ時に激しい混雑が発生していました。東京都交通局では急遽地上へ通じる階段を増設するなどの対応を実施しましたが、根本的な解決が困難な状況でした。
そこで、既存の島式ホームの東側に大門方面行きホームを増設するとともに、南北でわかれているコンコースを一体化することが決断されました。ホーム増設・コンコースの一体化にあたっては、上記の晴海通りアンダーパスや駅のさらに下に予定されている首都高速10号晴海線延伸部分のトンネルを合築可能な設計としており、将来の道路ネットワーク増強を妨げないよう配慮されています。
既存ホームにエスカレータ増設、タワマン接続口も


左:地上の清澄通り上に置かれた掘削用の重機。2015年5月31日撮影
右:南北コンコースの連結が完了した。2019年2月11日撮影
右:南北コンコースの連結が完了した。2019年2月11日撮影
上:地上の清澄通り上に置かれた掘削用の重機。2015年5月31日撮影
下:南北コンコースの連結が完了した。2019年2月11日撮影
下:南北コンコースの連結が完了した。2019年2月11日撮影
勝どき駅改良工事は2010(平成22)年6月に都市計画決定され、2012(平成24)年から本格的な工事が始まりました。当初は2016年度の新ホーム使用開始が予定されていましたが、埋め立て地特有の軟弱地盤や地中に残存していた予想外の障害物に悩まされ、完成が2年延期されました。
大門方面行きの新ホームは2019年2月11日に使用が開始され、既存ホームは両国方面行き専用ホームとなりました。同日より南北コンコースが一体化されるとともに、混雑が問題となっていた晴海トリトン側の改札口がその接続部分に移設されました。これにより南北どちらの改札口から出ても地下のコンコースを通って晴海トリトン側の出口に行くことが可能となり、混雑が平準化されました。


左:既存ホームの2番線側は固定柵で覆われた。
右:既存ホーム両国寄りに増設された下りエスカレーター。この先の階段の改修期間中は仮設階段として使用された。
右:既存ホーム両国寄りに増設された下りエスカレーター。この先の階段の改修期間中は仮設階段として使用された。
上:既存ホームの2番線側は固定柵で覆われた。
下:既存ホーム両国寄りに増設された下りエスカレーター。この先の階段の改修期間中は仮設階段として使用された。
下:既存ホーム両国寄りに増設された下りエスカレーター。この先の階段の改修期間中は仮設階段として使用された。
大門方面行きホームの使用開始後は、既存ホーム(両国方面行き)の改修が行われました。まず既存ホームでは乗降に使用しなくなった2番線側にステンレス製の固定柵が設置されました。
また、既存ホーム両国寄りの端にあった階段とエスカレーターは、上階のコンコースの床面がかさ上げされるのに合わせて段数(長さ)を延長する必要がありました。そこで、階段手前に仮設階段を新設して迂回路を確保し、階段を閉鎖して半年間かけて床面をかさ上げする工事が行われました。
続いて、仮設階段を撤去してエスカレーターに置き換える工事が行われました。この仮設階段~エスカレーターの開口部は、既存のトンネル躯体を大掛かりに改造するのを避けるため、ホーム上に並んでいる柱の間に収まるよう2人乗りエスカレーター1機分のちょうど幅となっています。そのため増設されたエスカレーターは下り専用となりました。既存のホーム端には上り専用のエスカレーターが1機設置されていたため、これで上下両方向のエスカレーターが完備されたことになります。


左:晴海トリトン側の旧改札口跡地。券売機跡は他の部分と同色の壁になった。
右:大門側の新島橋方面改札内。天井が少し低くなっているのが拡張された部分。
右:大門側の新島橋方面改札内。天井が少し低くなっているのが拡張された部分。
上:晴海トリトン側の旧改札口跡地。券売機跡は他の部分と同色の壁になった。
下:大門側の新島橋方面改札内。天井が少し低くなっているのが拡張された部分。
下:大門側の新島橋方面改札内。天井が少し低くなっているのが拡張された部分。
内装が未完成だった上階のコンコースについても改修が完了しています。晴海トリトン側の改札口は、旧改札口の券売機跡が他の部分の壁と同色のタイルで覆われました。また、床と天井は既存部分を含め拡張された部分と同色のものに全て貼り換えられました。照明も蛍光灯から白色のLEDダウンライトに取り換えられています。
左:大門寄りの端に完成したパークタワー勝どき連絡改札。
右上:タワマンはまだ入居開始前のため改札の先は行き止まり。
右下:券売機はスペースのみ確保されており、現在は出口専用改札となっている。
右上:タワマンはまだ入居開始前のため改札の先は行き止まり。
右下:券売機はスペースのみ確保されており、現在は出口専用改札となっている。
上:大門寄りの端に完成したパークタワー勝どき連絡改札。
中:タワマンはまだ入居開始前のため改札の先は行き止まり。
下:券売機はスペースのみ確保されており、現在は出口専用改札となっている。
中:タワマンはまだ入居開始前のため改札の先は行き止まり。
下:券売機はスペースのみ確保されており、現在は出口専用改札となっている。
一方、大門寄りの駅端には当初計画には無かった新改札口が2020年6月27日にオープンしました。これは当駅の南で建設中のパークタワー勝どきへのアクセスルートとして新設されたものです。パークタワー勝どきは地上58階建の「サウス」棟と地上45階建の「ミッド」棟から成るタワーマンションで、総戸数は2,786戸という大規模住宅になる予定です。これによる勝どき駅の利用者増加に対応するため、マンション敷地と勝どき駅を直結する地下通路と改札口が追加されることになりました。
パークタワー勝どきの入居開始は2024年春としばらく先になるため、現在新改札口の先は行き止まりとなっており、Uターンして既存のコンコースに行くことしかできません。そのため、改札周辺は券売機などが未設置となっており、無人の出場専用口として使用しています。
勝どき駅改良工事のあゆみ ※うまく表示できない場合→PNG版
年月日 | できごと |
2010/01 | 勝どき駅改良工事都市計画素案説明会実施 |
2010/06 | 都市計画変更決定 |
2011/08/01 | 着工 |
2015/02/15 | A3出口(現A3a)の階段を一部閉鎖(地下駐輪場に迂回) |
2017/12/16 | A3b出口(エスカレーター)使用開始・A3出口階段復旧のため閉鎖 |
2018/03/31 | 晴海トリトン方面改札内で新トイレ使用開始(増設ホーム側トンネル内で最初に完成した施設) |
2018/04/28 | 新島橋方面改札内で新トイレ使用開始 |
2019/01/08~ | 2番線(大門方面行き)のホームドアを新ホームへ順次移設 |
2019/02/11 | 新2番線ホーム使用開始・A3出口をA3a出口として使用再開 |
2019/09/07 | 1番線(両国方面行き)ホーム仮設階段使用開始 |
2019/09/11 | 1番線両国寄り端階段・エスカレーター閉鎖 |
2020/03/21 | 1番線両国寄り端階段・エスカレーター使用再開・仮設階段閉鎖 |
2020/06/13 | 1番線仮設階段跡地で下りエスカレーター使用開始 |
2020/06/27 | 大門寄り駅端で新改札口(当面は出場専用)使用開始 |
2024/春 | パークタワー勝どき連絡通路使用開始(予定) |
勝どき駅改良工事の出来事を年表にまとめてみました。着工から完成までおよそ9年を要したことになります。地下空間での工事は、掘り始めてから初めてわかる問題も多く、事前に正確な完成時期を見通すことが難しい工事でもあります。
勝どき駅周辺では、新たな地下鉄新線の建設計画も明らかとなりました。その導入空間の一部として、昨年12月に全線開通した環状2号線について現在調査を進めています。近日中にレポートしますのでしばらくお待ちください。
▼参考
地下鉄の改良工事 | 東京都交通局
大江戸線勝どき駅改良事業の再評価を実施しました。 | 東京都交通局
→完成予定の延期理由について
2月11日から大江戸線勝どき駅の新設ホームを供用開始|東京都
ホーム増設とコンコース一体化により地下駅を大規模改良-都営大江戸線勝どき駅- - トンネルと地下2011年12月号
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