カテゴリ:鉄道:建設・工事
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)
公開日:2016年08月21日12:00

東京メトロは2018年度を目標に千代田線北綾瀬支線のホームを現行の3両から10両対応に延長し、千代田線本線との直通運転を開始することを発表しました。発表から2年が経ち、現地ではホームの延長工事が本格化しています。今回は6月上旬に駅前のしょうぶ沼公園の花菖蒲の見頃に合わせて開催されたイベントの模様も交えながら現状をお伝えします。
東京メトロ千代田線北綾瀬支線と北綾瀬駅の概要


左(1):千代田線本線の主力車両16000系。来年度までに本線は全車両がこの車両に置き換えられる予定。
右(2):支線専用車両の05系
東京メトロ千代田線は、東京都渋谷区の代々木上原駅から足立区の綾瀬駅に至る全長21.9kmの「本線」と、綾瀬駅から分岐して北綾瀬駅に至る全長2.1kmの「支線」により構成される地下鉄路線です。「本線」は全列車10両編成で運転され、代々木上原駅から小田急小田原線、綾瀬駅からJR常磐線へ相互直通運転を行っています。小田急線の複々線化工事進捗に伴い、今年3月からは小田急電鉄・JR東日本各々の車両が千代田線の両端駅を超えて3社間での直通運転を開始するなど、郊外と東京都心を直結するルートとしての機能向上が図られています。一方、「支線」は元々北綾瀬駅の先にある車両基地(綾瀬検車区・工場)への入出庫線の一部を営業線に転用したもので、終日3両編成の支線専用編成がピストン運行しています。こちらも昨年5月に東西線から05系が転入し、開業時から使用されてきた旧型車両を淘汰しました。
北綾瀬駅を10両対応に


左(1):環状7号線に面して設けられている北綾瀬駅入口。
右:北綾瀬駅の先にある綾瀬検車区・綾瀬工場。
千代田線の支線は当初綾瀬検車区・工場入出庫線の施設のみ建設され、北綾瀬駅は将来の設置準備をを施した状態で開業を迎えました。その後、周辺住民より駅設置の要望が相次いだことから、1979(昭和54)年にホームなどの設備を追加し旅客営業を開始しました。当時の需要動向から3両編成のみでの運行となった支線ですが、徐々に沿線での宅地開発も進み開業から現在までの間に利用者数はおよそ3倍に増加しています。

綾瀬駅2・3番線に停車中の小田急4000形電車。綾瀬駅で本線から直接折り返し運転に使えるのはこの1線のみである。
また、千代田線と直通している小田急線の代々木上原~登戸間で行われている複々線化工事は現在最終段階を迎えており、2018年春に全区間で完成を迎える予定です。完成時には小田急線と千代田線の直通本数が現在の2.4倍(最大12本/h)へ大幅に増発される予定です。現在の綾瀬駅は本線の列車が折り返しに使える線路が中線1本(2・3番線※1)しかなく、ダイヤが乱れた際に常磐線への直通を打ち切って折り返すことが難しくなっています。このまま小田急線との直通運転が増発された場合、直通範囲のどこか1か所で発生した些細な遅延が、3社全体に及ぶ大規模なダイヤ混乱に発展することも懸念されます。
そこで、2014年2月に東京メトロは北綾瀬駅のホームを10両編成対応に延伸し、本線との直通運転を可能にすることを発表しました。北綾瀬駅が10両編成対応になると、北綾瀬駅から乗り換えなしで都心方向へ向かうことが可能になり、サービス向上が図られます。また、非常時には綾瀬駅で不足している折り返し機能を北綾瀬駅で補うことができるようになるため、常磐線への遅延の波及阻止や早期のダイヤ回復が見込めます。
▼脚注
※1:綾瀬駅の中線(2・3番線)は1本の線路の両側にホームがあるレイアウトになっている。

北綾瀬駅10両化と関連改良工事のイメージ
北綾瀬駅の10両対応化は、現在のホームを綾瀬方面に7両分(135m)延長します。延長されたホームの綾瀬駅寄りには駅前にあるしょうぶ沼公園から出入りできる新しい改札口を設置します。また、現在のホーム・駅舎も改修し、終端側に環状7号線北側から直接出入りできる改札口・エレベータ付き歩道橋を新設します。さらに関連工事として、高架橋の耐震補強、駅東側(ホームが無い側)に建っていた東京メトロ所有の商業ビル建て替え(2F→5F)も計画されています。完成は2018年度末の予定です。
なお、北綾瀬駅には現在駅前広場がありません。足立区では今回の改良工事に合わせて、北綾瀬駅の周辺にバスやタクシーなどの交通結節点を設けることを独自で検討しており、コンサルタント会社を通じた利用状況の調査を行っています。交通結節点は既存の道路の拡幅(駐停車スペースの新設)やロータリーの別途新設など複数の案が考えられています。
ホーム延長工事が本格化
北綾瀬駅のホーム延長工事は昨年夏頃より本格化しています。今回は本格着工前の昨年6月25日(水)と、工事開始後の今年6月4日(土)に調査した内容をお伝えします。
※この先画像が23枚(1.5MB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。
●2015年6月25日の状況


北綾瀬駅のホームから綾瀬駅方向を見る。この先に7両分ホームが延長される。
現在の北綾瀬駅のホームは3両編成より若干長くなっています。(前後に5m分程度余裕がある)10両編成に対応させるため、今後は綾瀬駅方面に向けて約7両分(135m)高架橋を増築してホームを延長します。現在の支線は全列車ATO(自動操縦)を使用したワンマン運転を行っており、北綾瀬駅・綾瀬駅0番線ホームともにホームドア(可動式ホーム柵)が設置されています。ホーム延長後は、ホームドアも10両対応に増設される予定です。(なお、千代田線本線についても今後全駅にホームドアが設置されることが発表されている。)


左(1):高架下からホーム綾瀬駅寄りを見る。高架下には商業施設「メトロセンター」があった。
右(2):「メトロセンター」のテナントは2015年春までにすべて退去済み。
ホームの延長予定地は、高架下にスーパー「ワイズマート」や各種専門店からなる商業施設「メトロセンター」がありました。ホーム延長工事の本格化に先立ち、2014年末頃よりテナントが順次閉店し、昨年2月下旬をもって全てのテナントの退去が完了しました。店舗部分は高架橋の耐震補強が未施工だったことから、その後10月までに支障となる建物自体も全て解体されました。


左(1):綾瀬駅寄りの新しい出入口予定地。階段は中央の低い植込み付近、エレベータは左の公園内に設置される予定。
右(2):公園内の通路には取り壊し範囲などが至る所にペイントされていた。
延長されるホームの綾瀬駅寄りには駅前のしょうぶ沼公園に出入りできる新しい改札口が設置されます。このため、公園のレイアウトが一部変更される予定です。この時点ではまだ公園内の施設に特に変化はありませんでしたが、高架橋近傍の園路は地面の至る所に取り壊し範囲がペンキで描かれるなど準備が進められていました。
左or上(1):環状7号線北側から北綾瀬駅のホーム終端を見る。今後手前に向かって歩道橋が建設される。
右上or左下(2):歩道橋の階段・エレベータ予定地は駐輪場になっていたが、この時点で閉鎖済みだった。
右下(3):ホーム中央の階段脇から終端側を見る。この先に環状7号線北側へ通じる新しい改札口ができる。
右上or左下(2):歩道橋の階段・エレベータ予定地は駐輪場になっていたが、この時点で閉鎖済みだった。
右下(3):ホーム中央の階段脇から終端側を見る。この先に環状7号線北側へ通じる新しい改札口ができる。
北綾瀬駅の終端側は、高架下を環状7号線が通っています。現在環状7号線北側から北綾瀬駅に出入りするには、高架橋真下にある横断歩道を渡る必要があります。今回のホーム延長工事に合わせて、高架橋に並行してホームと同じ高さの歩道橋を建設し、環状7号線北側から出入りできる改札口を新設します。また、環状7号線北側の階段はエレベータも併設されます。
昨年訪問時点では、歩道橋の工事は特に行われていませんでしたが、環状7号線北側の高架下にあった駐輪場は閉鎖されており、高架橋の耐震補強に向けた準備が開始されていました。駐輪場は駅から離れた場所に仮移転しています。


北綾瀬駅高架下の現改札口。ここはホーム延長後もレイアウトの変更はない予定。
北綾瀬駅の高架下にある改札口は、ホーム延長完了後も大幅なレイアウト変更は無い予定です。ただし、改札口真上に新しい改札口の床面ができることになるため、現在の駅舎内にその支柱を立てる必要が生じます。昨年6月の方も時にはこの準備のためかは不明ですが、改札口前にあった売店(メトロス)が閉店していました。
●2016年6月4日の状況


左(1):ホーム端から綾瀬駅方向を見る。ホーム延長のための支柱の建設が進んでいる。
右(2):同じ場所を高架下から見たところ。高架下の商業施設はすべて解体されている。
昨年秋に商業施設の解体が完了後、跡地ではホーム延長部分の高架橋建設が開始されました。高架橋は鉄筋コンクリート製で、今年6月時点では支柱を立てる工事が進められていました。北綾瀬駅の地下には、綾瀬川や中川により運ばれた軟弱な砂などが厚く堆積しており、高架橋の基礎杭は深部の固い地層まで届くよう最大56mの深さまで打ち込まれています。支柱の間隔は、完成後の高架下利用を考慮しているためかは不明ですが、既存の高架橋と合わせられています。なお、高架橋の本体工事に伴い、高架橋と並行する道路は工事車両・資材の搬入路とされたことから、現在通行止めとなっています。




左上(1):しょうぶ沼公園の花菖蒲の見頃に合わせて設置された東京メトロの工事PRコーナー
右上(2):入口を入ったところに掲出されていた工事内容の解説パネル※クリックで拡大(1500×1125px/197KB)
他のパネル→①地質断面図(162KB)/②工事進捗図(195KB)/③施工写真(218KB)/④施工順序(158KB)
左下(3):工事に使用される重機の展示
右下(4):高架橋基礎杭の鉄筋サンプル
北綾瀬駅前にある足立区立しょうぶ沼公園には、その名の通り園内の池に140種、8,100株の花菖蒲が植えられています。今回訪問した6月4日はちょうど菖蒲の花が見頃を迎えており、公園内では屋台が出展するなどイベントが開催されていました。
北綾瀬駅のホーム延長工事ではこのしょうぶ沼公園の一部を利用して新しい改札口の階段やエレベータを設置しますが、現時点ではまだその工事は行われておらず空きスペースになっています。それを逆手に取り6月4・5日の2日間、北綾瀬駅の工事をPRするコーナーが開設されました。PRコーナーは北綾瀬駅の工事内容を解説した大型パネル、工事に使用する重機や基礎杭に使われたかご型鉄筋のサンプル展示に加え、目玉として工事現場と菖蒲田を見下ろすことができる仮設の展望台が作られました。

展望台からホーム延伸予定地を見る。両側では高架橋の支柱が順次建設されている。※クリックで拡大(2000×723px/275KB)
このイベントの時点で高架橋の支柱が立っていなかったのは、展望台に面した部分のみでした。この部分は改札口が設置されるため高架橋の幅が広くなり、支柱は高架橋の手前を通る道路を挟んで2列設置されます。


左(1):PRコーナー出口では東京メトロオリジナルグッズが無料配布されていた。
右(2):東京メトロのキャラクター「メトポン」の子ども「ポン太」の着ぐるみも登場した。
PRコーナーの出口では、景品として東京メトロオリジナルグッズが無料配布されていました。(クリアファイル、ペン、ミニタオルの3種類の中から1点選択)また、午後にはPRコーナー入口に東京メトロのキャラクター「メトポン」の子ども「ポン太」※2の着ぐるみが登場し、「撮影会」となりました。
▼脚注
※2:メトポン・ポン太は2015年まで東京メトロ所有車両のドア窓に掲出されている駆け込み乗車防止ステッカーに描かれていた。現在は東京メトロの駅構内に掲出される各種ポスターに時折登場する。

北綾瀬駅の改札口。奥にあった格子状のすりガラスが撤去され、右側では何かの工事が行われている。
環状7号線側では今回訪問時はまだ歩道橋の建設は始まっていませんでした。高架下の改札口前では風除けに設置されていた格子状のすりガラスが撤去されてその部分が通路に変わりました。これまで通路だった部分は柵で覆われ、内部で何らかの工事が行われています。


しょうぶ沼公園の花菖蒲
冒頭で触れた通り北綾瀬駅のホーム延長工事は、2018年度末の完成が予定されています。現時点ではどの程度本線と直通運転が実施されるかは未発表となっていますが、入出庫線上にあることから一定数直通列車が設定されるものと予想されます。今後の正式発表に注目です。
▼参考
北綾瀬駅の改良工事を実施します。北綾瀬駅の10両編成対応のためのホーム延伸工事及び出入口の新設を行い、輸送改善及び利便性向上を図ります。 - 東京メトロニュースリリース(PDF/447KB)
中期経営計画「東京メトロプラン2018~「安心の提供」と「成長への挑戦」~」|東京メトロ
交通網・都市基盤整備調査特別委員会 | 足立区議会
→平成26年3月17日、平成27年7月6日、11月10日、12月15日、平成28年3月16日の資料に北綾瀬駅に関する言及あり
▼関連記事
東京メトロスマイルフェスタ’09 in AYASE(2009年12月5日)(2009年12月27日作成)
→北綾瀬駅先にある車両基地公開イベント。北綾瀬駅が狭いため混雑防止を目的に参加は事前応募制となっている。
東京メトロ千代田線16000系(2012年3月5日作成)
東京メトロ05系リニューアル車(2016年6月17日作成)
→千代田線支線用05系電車について
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