東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2019年1月25日取材)

新ホームの一部が使用開始となった北綾瀬駅

東京メトロ千代田線北綾瀬支線では、来る2019年3月16日に実施されるダイヤ改正より千代田線本線との直通運転が開始されます。2015年より北綾瀬駅ではこの直通運転に対応するため、ホームの10両編成対応化を中心とする大規模改良工事が続けられてきました。3月の直通開始を目前に控えた北綾瀬駅の現在の様子をお届けします。

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東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2017年9月20日取材)(2018年2月16日作成)

東京メトロ千代田線北綾瀬支線と北綾瀬駅の概要

千代田線本線を走る16000系(左)と支線を走る05系(右)。 10両化工事着工前の北綾瀬駅
左(1):千代田線本線を走る16000系(左)と支線を走る05系(右)。
右(2):10両化工事着工前の北綾瀬駅


 東京メトロ千代田線は、東京都渋谷区の代々木上原駅から足立区の綾瀬駅に至る全長21.9kmの「本線」と、綾瀬駅から分岐して北綾瀬駅に至る全長2.1kmの「支線」により構成される地下鉄路線です。「本線」は全列車10両編成で運転され、代々木上原駅から小田急小田原線、綾瀬駅からJR常磐線へ相互直通運転を行っています。一方、「支線」は元々北綾瀬駅の先にある車両基地(綾瀬検車区・工場)への入出庫線の一部を営業線に転用したもので、開業以来終日3両編成の支線専用編成で運行しています。
 北綾瀬駅が位置する足立区中心部かつてほとんどが農地となっており民家もまばらな未開の地となっていました。北綾瀬駅開業により都心方面への利便性が大きく高まったことから、これらの農地は次々と住宅に転用され、開業から半世紀が経過した現在の北綾瀬駅の乗降客数は、1日当たり約3万1千人と開業当初の4倍に増加しています。

千代田線に乗り入れる小田急4000形電車 代々木上原駅から小田急線に直通する千代田線16000系電車
左(1):千代田線に乗り入れる小田急4000形電車
右(2):代々木上原駅から小田急線に直通する千代田線16000系電車


 代々木上原駅から相互直通運転を行っている小田急線では、千代田線の計画の一部として続けられてきた登戸駅までの複々線化事業が昨年春ついに完成を迎えました。複々線化完成に伴い実施された昨年3月のダイヤ改正では千代田線直通列車の本数が2.5倍(最大11本/時)へ増発され、直通運転の範囲も本厚木駅から伊勢原駅まで延長されました。JR常磐線取手駅から小田急線伊勢原駅・唐木田駅までの直通運転の総延長は111kmにも及びます。
 このような大規模な直通運転においては、遅延や運休発生時に途中駅で運行を打ち切って折り返し運転を行うことが早期のダイヤ正常化に不可欠となります。しかし、現在の綾瀬駅は都心方向へ直接折り返しが出来る線路が2・3番線1本しかなく、ダイヤが大幅に乱れた際もJR常磐線との直通運転を打ち切って列車を都心方向へ戻すことが難しくなっています。

北綾瀬駅10両化と関連改良工事のイメージ
北綾瀬駅10両化と関連改良工事のイメージ

 この問題を解決するため、2014年2月に東京メトロは北綾瀬駅のホームを10両編成対応に延伸し、本線との直通運転を可能にすることを発表しました。北綾瀬駅が10両編成に対応することにより、本線との直通運転が可能になり乗換えが不要になることに加え、異常時には綾瀬駅の折り返し機能を補完することが可能となり、ダイヤの早期回復が期待できます。このホーム延長に合わせて、北綾瀬駅ではホーム綾瀬駅側・終端側にも改札口を増設し、駅周辺からのアクセス性向上も図る計画となっています。



工事は最終段階に

 北綾瀬駅のホーム延長工事は2015年夏頃より本格的に着工しています。今回は今年1月25日に調査した工事の状況をお届けします。

昨年12月に使用を開始した新ホーム
新ホームの案内板は「北千住・代々木上原」の文字をマスクした状態
既存ホームはホームドアの交換などが進められている。
左(1):昨年12月に使用を開始した新ホーム。(同じ場所の2017年9月20日の様子/2018年6月10日の様子
右上(2):新ホームの案内板は「北千住・代々木上原」の文字をマスクした状態
右上(3):既存ホームはホームドアの交換などが進められている。


 北綾瀬駅の10両化は、現在のホームを綾瀬駅方向へ7両分(135m)延長することにより行われています。新ホームの予定地の高架下にはショッピングセンター(メトロセンター)がありましたが、着工前の2015年春までに全てのテナントが退去し、建物自体も解体されています。跡地では新ホームの高架橋建設が進められ2017年9月には高架橋床面までおおむね完成しました。その後は屋根や照明・ホームドア等の各種設備の設置が進められ、昨年秋には3両分程度の設備が完成したことから、12月23日(日)より停止位置が新ホーム側へ80m移動しました。新ホーム内の案内板類の一部は、都心直通に対応したものとなっており、現在は「北千住・代々木上原」の文字をテープで隠した状態になっています。停止位置の移動後は既存ホームのホームドアを10両編成に対応したものに交換する等の改修が進められています。

北綾瀬駅新ホームに設置されたホームドア。銀座線などと同様窓が大型化されている。
北綾瀬駅新ホームに設置されたホームドア。銀座線などと同様窓が大型化されている。

 新ホームに設置されたホームドアは、銀座線など東京メトロ各線で設置が進められている窓が大型化された新型のホームドアになっています。(2013年頃有楽町線豊洲駅4番線で試験的に設置された京三製作所のKGP-2形の改良版と思われる。)閉扉時には通常のチャイムに加えて「駆け込み乗車はおやめください」というボイスが流れるようになっています。
 北綾瀬駅を含め、千代田線では現在全線でホームドアの設置が本格化しており、大手町、代々木公園など既に稼動を開始している駅もあります。ホームドアについてはここ数年国土交通省の働きかけもあり、大都市の鉄道事業者を中心に急速に整備が進んでいます。これらについては今後別記事でまとめる予定です。

しょうぶ沼公園内に設けられた新改札口
しょうぶ沼公園内改札口の別角度。階段とエレベータが設けられている。
階段の下は高架橋に並行して道路があり、そのまま南側へ抜けられる。
左(1):しょうぶ沼公園内に設けられた新改札口(同じ場所の2016年6月4日の様子/2017年9月20日の様子
右上(2):しょうぶ沼公園内改札口の別角度。階段とエレベータが設けられている。
右下(3):階段の下は高架橋に並行して道路があり、そのまま南側へ抜けられる。(同じ場所の2015年6月25日の様子

 新ホーム途中には、直下にある足立区立しょうぶ沼公園に出ることができる新しい改札口が設けられます。改札口部分については昨年はまだ完全な未着工状態でしたが、その後エレベータと階段も設置されました。1月の訪問時は最終段階として券売機や自動改札機の準備が行われていました。この改札口は3月16日(土)のダイヤ改正より使用可能になります。

ホーム終端側は駅舎の一部を取り壊して新改札口と歩道橋の支柱が設けられた。 環状7号線の反対側にも同様の支柱が立った。
左(1):ホーム終端側は駅舎の一部を取り壊して新改札口と歩道橋の支柱が設けられた。
右(2):環状7号線の反対側にも同様の支柱が立った。


 一方、終端側のホーム端にも改札口が増設され、線路に並行して架設される歩道橋を経由して環状7号線の北側にも出られるようになります。こちらは着工が大幅に遅れたことから完成は来年6月までずれ込む予定です。昨年までは歩道橋の支柱を設置するため、既存の駅舎の一部を取り壊す工事が続いていました。今回はその跡地にコンクリート製の新しい支柱が建てられており、まもなく環状7号線上空に歩道橋の桁が架設されるという段階でした。

綾瀬駅寄りの高架下にあった北綾瀬南自転車駐車場は拡張工事中 しょうぶ沼公園内で進められている園路整地工事
左(1):綾瀬駅寄りの高架下にあった北綾瀬南自転車駐車場は拡張工事中
右(2):しょうぶ沼公園内で進められている園路整地工事


 この他、北綾瀬駅周辺では都心直通開始により利用者の増加が見込まれるため、高架下にある自転車駐輪場の拡張が進められています。また、しょうぶ沼公園内では、改札口増設により公園の中を通り抜けて駅へ向かう利用者が増えることから、園路の水溜りを解消するための舗装改良が進められています。

3~4割の列車が都心直通に

 このように、北綾瀬駅の10両化工事は順調に進んでいることから、来る2019年3月16日(土)のダイヤ改正よりいよいよ千代田線本線との直通運転が開始されることとなりました。都心直通となる10両編成の列車は全体の3~4割で、平日朝ラッシュ時(7~8時)は現行の綾瀬駅始発列車13本中5本が北綾瀬始発になります。また、日中は毎時6本ある綾瀬駅折り返し列車のうち半数が北綾瀬駅まで延長されます。既存の3両編成の列車も一部残ることから、下表の通り1日の総本数自体は6~10本程度純増となり、都心方面への利便性は大幅に高まります。

●綾瀬・代々木上原方面
平日
編成両数現在改正後
3両118本73本
10両-51本
合計本数118本124本

土休日
編成両数現在改正後
3両103本74本
10両-37本
合計本数103本111本

●北綾瀬行き
平日
編成両数現在改正後
3両118本73本
10両-51本
合計本数118本124本

土休日
編成両数現在改正後
3両103本74本
10両-40本
合計本数103本114本


 北綾瀬駅の都心直通化を受け、駅周辺では新しいマンションが次々と建設されるといった光景も目にしました。足立区内では近年つくばエクスプレスや日暮里舎人ライナーか開業するなど交通機関が急速に充実してきており、宅地開発の面でも期待される地域となっています。引き続き工事中の施設の動向とあわせて注目してまいりたいと思います。

▼参考
千代田線北綾瀬駅ホーム延伸・出入口新設工事篇 | 安全。安心。メトロの目
北綾瀬駅の改良工事を実施します。北綾瀬駅の10両編成対応のためのホーム延伸工事及び出入口の新設を行い、輸送改善及び利便性向上を図ります。 - 東京メトロニュースリリース(PDF/447KB)
2019年3月16日(土)東西線及び千代田線のダイヤを改正します - 東京メトロニュースリリース
2019年3月16日(土)千代田線北綾瀬駅ホーム10両化 新たな出入口がオープン - 東京メトロニュースリリース
中期経営計画「東京メトロプラン2018~「安心の提供」と「成長への挑戦」~」|東京メトロ
交通網・都市基盤整備調査特別委員会 | 足立区議会
→平成29年10月13日会議次第に北綾瀬駅の工事に関する資料

▼関連記事
東京メトロスマイルフェスタ’09 in AYASE(2009年12月5日)(2009年12月27日作成)
→北綾瀬駅先にある車両基地公開イベント。北綾瀬駅が狭いため混雑防止を目的に参加は事前応募制となっている。
東京メトロ千代田線16000系(2012年3月5日作成)
東京メトロ05系リニューアル車(2016年6月17日作成)
→千代田線支線用05系電車について
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016年8月21日作成)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2017年9月20日取材)(2018年2月16日作成)
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