カテゴリ:鉄道:建設・工事
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2020年6月17日取材)
公開日:2020年06月27日10:02

東京メトロ千代田線の支線区間である北綾瀬駅では、昨年3月より千代田線本線との相互直通運転(10両編成の乗り入れ)が開始されました。北綾瀬駅ではその後も改札口の移設・増設の工事が続いています。大きく施設が変化しつつある北綾瀬駅の現状をお伝えします。
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東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2019年1月25日取材)(2019年3月14日作成)
東京メトロ千代田線北綾瀬支線と北綾瀬駅の概要

千代田線本線用の16000系(左)と支線用の05系(右)
東京メトロ千代田線は、東京都渋谷区の代々木上原駅から足立区の綾瀬駅に至る全長21.9kmの「本線」と、綾瀬駅から分岐して北綾瀬駅に至る全長2.1kmの「支線」により構成される地下鉄路線です。「本線」は全列車10両編成で運転され、代々木上原駅から小田急小田原線、綾瀬駅からJR常磐線へ相互直通運転を行っています。一方、「支線」は元々北綾瀬駅の先にある車両基地(綾瀬検車区・工場)への入出庫線の一部を営業線に転用したもので、3両編成の専用車両により運行されてきました。
北綾瀬駅が位置する足立区中心部かつてほとんどが農地となっており民家もまばらな未開の地となっていました。北綾瀬駅開業により都心方面への利便性が大きく高まったことから、これらの農地は次々と住宅に転用され、開業から半世紀が経過した現在の北綾瀬駅の乗降客数は、1日当たり約3万1千人と開業当初の4倍に増加しています。

代々木上原駅から小田急線の緩行線に入る16000系
代々木上原駅から相互直通運転を行っている小田急線では、千代田線の計画の一部として約30年に渡り続けられてきた複々線化事業が2018(平成30)年春に完成を迎えました。複々線化完成に伴い実施されたダイヤ改正では千代田線直通列車の本数が2.5倍(最大11本/時)へ増発され、直通運転の範囲も本厚木駅から伊勢原駅まで延長されました。JR常磐線取手駅から小田急線伊勢原駅・唐木田駅までの直通運転の総延長は111kmにも及びます。
このような大規模な直通運転においては、遅延や運休発生時に途中駅で運行を打ち切って折り返し運転を行うことが早期のダイヤ正常化に不可欠となります。しかし、綾瀬駅は都心方向へ直接折り返しが出来る線路が2・3番線1本しかなく、ダイヤが大幅に乱れた際もJR常磐線との直通運転を打ち切って列車を都心方向へ戻すことが難しくなっています。

北綾瀬駅10両化と関連改良工事のイメージ
この問題を解決するため、2014(平成26)年2月に東京メトロは北綾瀬駅のホームを10両編成対応に延伸し、本線との直通運転を可能にすることを発表しました。北綾瀬駅が10両編成に対応することにより、本線との直通運転が可能になり乗換えが不要になることに加え、異常時には綾瀬駅の折り返し機能を補完することが可能となり、ダイヤの早期回復が期待できます。このホーム延長に合わせて、北綾瀬駅ではホーム綾瀬駅側・終端側にも改札口を増設し、駅周辺からのアクセス性向上も図る計画となっています。
10両編成の乗り入れが開始&新改札口が使用開始


左(1):東京メトロ16000系の北綾瀬行き。綾瀬駅では通常折り返しに使用する3番線から発車する北綾瀬行きも存在する。
右(2):JR東日本E233系2000番台の北綾瀬行き
北綾瀬駅のホーム延伸工事は順調に進み、2019(平成31)年3月16日(土)のダイヤ改正より10両編成の乗り入れが開始されました。乗り入れ開始を記念して、初日は関係者による出発式も開催されています。10両化されたのは全列車のうちの約3~4割で、東京メトロの車両だけではなく乗り入れ先の小田急・JR東日本の車両も定期列車で入線します。また、夕方ラッシュ時には小田急線内急行となる伊勢原行きも設定されています。


左(1):しょうぶ沼公園内に新設された入口
右(2):新設された南改札
10両編成乗り入れ開始と同日より、延長部分のホームに併設された南改札の使用も開始されました。この改札口は駅南側にあるしょうぶ沼公園内に建設されたもので、地上との間は細い階段とエレベーターで接続されています。コンパクトな改札口ですが、JRや他の民鉄とは異なり改札口には駅員が常駐する有人通路も用意されています。
なお、支線内完結の3両編成の列車は工事期間中停止位置が一時的に綾瀬駅寄りに移動していましたが、10両編成乗り入れと同時に元の位置(終端側)に戻されています。このため、南改札から3両編成の列車に乗車する場合ホーム上を80mほど移動する必要があり、発車時間が迫っている場合は注意が必要です。
続いて、10両編成乗り入れ開始から約8ヶ月が経過した11月9日(土)からは終端側(環状7号線)の高架下にあった改札口が、東側で建設中だったビル1階に移転しました。移転後の改札口は他の改札と区別するため「中央改札」という名称になっています。ビル内はまだ工事が続いており、現時点では改札口正面と南側のしょうぶ沼公園側にしか出ることができません。高架下改札口の工事は今年9月まで続けられる予定になっており、完成後は環状7号線に再度直接出られるようになるほか、改札内のトイレが旧改札跡地に移転します。

環状7号線上空で建設中の新改札口連絡橋
終端(車両基地)側では、ホーム終端に改札口を設けて環状7号線上空に新設する橋を通じて道路の反対側に直接出られるようにする工事が大詰めを迎えています。橋桁の架設は昨年秋に行われ、現在は各種設備の取り付けが進められています。2014年に発表されたイメージパースでは、この部分は細い歩道橋のように描かれていましたが、実際にできあがった連絡橋はコンクリート桁で屋外とはガラスで完全に遮蔽されるという重厚なつくりとなっています。


左(1):旧来からあるホーム終端側は待合室を閉鎖してリニューアル中。
右(2):環状7号線から見た駅ビルとホーム。ホーム上部では現行のスレート屋根の上に膜屋根を設置中。
ホーム端への新改札設置に合わせ、旧来からあるホームの終端側3両分についても延伸部分と同じデザインにリニューアルする工事が進められています。リニューアル後は現在のスレート屋根を撤去して南改札と同じ膜屋根に変わるため、ホーム全体が明るく開放的な雰囲気となります。
早々に増発の一方・・・

駅構内に掲出されている工事のお知らせポスター
北綾瀬駅で工事中の新改札口や駅ビル内の店舗は、当初計画どおり今年12月までに完成する予定となっています。駅構内に掲出されているポスターによると、その他仕上げを含む全ての工事は来年6月までの完成するとのことです。
北綾瀬駅では2015年の着工時に高架下にあった商業施設が取り壊されており、駅の直近にはコンビニ程度しかない状態が続いています。北綾瀬駅の利用者は、都心直通発表後年に5%を超えるペースで増加し続けています。今後も増えると見込まれる利用者へのサービスとして、どのようなテナントが入居するのか注目されます。

ホームドアに掲出されている折り返し乗車に関する注意
北綾瀬駅の都心直通は利用者から大変好評のようで、今年3月14日(土)に実施されたダイヤ改正では早くも平日朝ラッシュ時の直通列車が1本増発されました。一方、この直通列車を狙って北綾瀬よりの手前の駅から座席を占領し続ける「折り返し乗車」が横行しています。この対策として3月ダイヤ改正より平日朝に北綾瀬駅から発車する都心直通列車3本について、乗客の全員降車後一旦ドアを閉める扱い(いわゆる「整列乗車」)が開始されました。
同様の行為は首都圏各地の終端駅でも問題となっています。折り返す駅まで有効な定期券を持たずにこのような行為をするのは不正乗車であり、みなとみらい線(横浜市)では朝ラッシュ時に係員が巡回し「取締り」を行ったこともあります。座って通勤したい気持ちは十分に理解しますが、こういった「ズル」は乗客どうしの喧嘩などトラブルにもつながりかねない行為であり、厳に慎むべきものであります。正当に運賃を払っている利用者が損することのないようマナーを守って利用しましょう。
▼参考
千代田線北綾瀬駅ホーム延伸・出入口新設工事篇 | 安全。安心。メトロの目
2020年3月14日(土)東西線及び千代田線のダイヤを改正します - 東京メトロニュースリリース
2019年3月16日(土)千代田線北綾瀬駅ホーム10両化 新たな出入口がオープン - 東京メトロニュースリリース
2019年3月16日(土)東西線及び千代田線のダイヤを改正します - 東京メトロニュースリリース
▼関連記事
東京メトロスマイルフェスタ’09 in AYASE(2009年12月5日)(2009年12月27日作成)
→北綾瀬駅先にある車両基地公開イベント。北綾瀬駅が狭いため混雑防止を目的に参加は事前応募制となっている。
東京メトロ千代田線16000系(2012年3月5日作成)
東京メトロ05系リニューアル車(2016年6月17日作成)
→千代田線支線用05系電車について
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016年8月21日作成)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2017年9月20日取材)(2018年2月16日作成)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2019年1月25日取材)(2019年3月14日作成)
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