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小竹向原~千川間連絡線新設工事(2011年1月9日取材)
公開日:2011年03月03日01:56

東京メトロ有楽町線・副都心線が分岐・合流する小竹向原~千川間では、現在平面交差となっている線路を立体交差化するための連絡線の新設工事が行われています。去る2011年1月9日に現地の状況を調査してまいりましたので、今回は鉄道関連の専門雑誌の内容も合わせてこの工事について解説いたします。
小竹向原駅の構造と問題点
小竹向原駅は東京メトロ有楽町線・副都心線と両路線と直通運転を行っている西武有楽町線が乗り入れる島式ホーム2面4線の地下駅です。小竹向原駅が開業したのは1983(昭和58)年の有楽町線池袋~営団成増(現・地下鉄成増)間と西武有楽町線小竹向原~新桜台間が開業した時のことです。以後、各方面とも延伸開業を続け、有楽町線は和光市駅で東武東上線に、西武有楽町線は練馬駅で西武池袋線と直通運転を行うようになりました。さらに、1994(平成6)年には有楽町線と同時に建設されていた13号線(副都心線)の小竹向原~池袋間を先行供用する形で有楽町新線が開業し、現在の線路の形態が完成しました。

小竹向原駅の配線 ※クリックで拡大
小竹向原駅は西側で有楽町線と西武池袋線が、東側で有楽町線と副都心線がそれぞれ分岐・合流していますが、西側については外側2線が有楽町線和光市方、内側2線が西武有楽町線練馬方へ立体交差で分岐するのに対し、東側は一旦4線から6線になったのち、平面交差で有楽町線と副都心線が分岐する構造となっています。有楽町新線の開業時は列車本数・利用者はともに少なかったため、この平面交差が問題になることはありませんでした。しかし、2008(平成20)年に副都心線が当初の計画通り池袋~渋谷間で全線開業を迎えると、これら4方向を行き来する大量の列車をこの平面交差のみで処理せざるを得なくなり、交差する列車同士の信号待ちによる列車の遅延が多発し、長時間にわたり直通運転を行っている他社線まで影響を及ぼすこととなりました。(副都心線開業後初めての平日となった2008年6月16日の終日にわたるダイヤ混乱はその際たる例。)
来る2012(平成24)年には、東急東横線の代官山~渋谷間が地下化され副都心線と直通運転を開始する予定となっています。これに伴い、副都心線の列車本数はさらに増加することが見込まれ、平面交差による列車の遅延が深刻化することが懸念されています。これを受けて、東京メトロでは小竹向原駅について以下の3つの改良案を策定し検討を行いました。
1、交差する運行(有楽町線和光市方→有楽町線新木場方・西武有楽町線→副都心線)の削減
2、小竹向原駅の西側に有楽町線専用の連絡線を新設
3、小竹向原駅の東側(小竹向原~千川間)に有楽町線専用の連絡線を新設
この結果、「1」は行き先・本数に偏りが発生し、サービス低下・混雑悪化が懸念されること、「2」は線形の関係から既設の小竹向原駅の大規模な改築(ホームの移設など)や新たな用地買収が必要であること、「3」はトンネルの改造が必要なものの、工事の範囲を既存の道路幅員に収めることが可能であるということから、「3」の小竹向原~千川間に連絡線を新設することに決定しました。
連絡線新設の概要

新設される連絡線と折り返し設備の関係図 ※クリックで拡大
新たに設置される連絡線は小竹向原駅東側の6本ある線路の一番外側の線路の途中から分岐し、千川駅の手前で有楽町線に合流する形態となります。これにより、副都心線と平面交差することなく外側の線路から有楽町線へ渡ることが可能となります。この連絡線新設後、6線区間の一番外側の線路は有楽町線専用として使用することが考えられており、千川駅側の終端にある副都心線との合流ポイントは撤去される計画となっています。
また、今回の工事では6線区間の千川寄りに輸送混乱時の折り返しに使用する両渡りのポイントが新設されます。現在、副都心線はダイヤ乱れが発生すると有楽町線への影響を避けるため、池袋駅で運転を打ち切って折り返すことが通例となっています。しかし、副都心線の池袋駅と有楽町線の池袋駅は離れた場所にあるため、乗り換えには一旦改札口を出る必要があり利用者に不便を強いることになっています。小竹向原駅の折り返し設備が新設されると副都心線の列車を両路線のホームが上下に重なる千川駅まで延長運転することが可能となり、利用者の乗り換えに要する負担が軽減されることが期待されています。

トンネルの位置と構造 ※クリックで拡大
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(平成元年)より抜粋
この連絡線が建設される小竹向原~千川間は要町通り(東京都道441号池袋谷原線)の地下を通っています。この区間は有楽町線の建設に合わせて拡幅が行われており、片側2車線の本線がアンダーパス(トンネル)を通り、その上部に公園・学校・生活道路などが載る構造となっています。連絡線の設置位置はこのアンダーパスの改築を避けるため、千川駅寄りの約410mの区間とされました。また、地上掘削の範囲をさらに削減するため、連絡線のトンネルは既設トンネルを拡幅する両端を開削工法で建設し、その間の部分は単線断面のシールド工法で建設することとしています。シールドトンネルは必要な面積が大きくなる発進・到達立坑を道路内に収めるため、縦長の複合円形(楕円形に近い)断面とする予定です。
なお、有楽町線は都市計画の一環で建設されているため線路の構造を変更する場合は都市計画変更の手続きが必要となります。計画策定時点で既に東急東横線の直通開始まで3年となっており、これらの手続きは異例とも言える速さで進められることとなりました。
2009年8月 都市計画変更素案の作成
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2009年10月 都市計画変更素案の説明会(周辺住民対象)
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都市計画変更案の作成
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2009年12月 都市計画変更案の公告・縦覧
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意見書提出
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2010年2月 都市計画審議会
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2010年3月 都市計画変更
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2010年5月 着工
工事は地上の作業スペースの問題からA線(新木場方面)・B線(和光市方面)同時に行うのは難しいため、朝ラッシュ時の輸送力が問題となるA線側を先に建設することとなりました。A線側の完成は東急東横線と直通を開始する2012(平成24)年度の予定となっています。
▼参考
東京メトロ有楽町線・副都心線の安定運行を目的とした線路交差解消の連絡線を計画 - 日本鉄道施設協会誌2010年12月号
わいおかブログ 小竹向原~千川の改良工事説明会を聞いてきました
→2009年に行われた都市計画変更についての説明会のレポート。
▼関連記事
小竹向原駅 - 地下鉄副都心線全線全駅レポート(2)(2008年6月15日作成)
副都心線の特徴・その他 - 地下鉄副都心線全線全駅レポート(14・終)(2008年7月2日作成)
2011年1月9日の状況


左:千川駅ホーム端から小竹向原方を見る(A線側)
右:千川駅ホーム端から小竹向原方を見る(B線側)
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連絡線は千川駅ホームの小竹向原方の端を過ぎてすぐの地点から始まる予定となっています。この部分は上階の有楽町線と下階の副都心線が同じトンネルの幅となっており、有楽町線の線路と側壁の間にはかなりの距離があります。この空間を利用してA線・B線ともに保守用車両の留置線が設置されています。(ホームからはかなり確認しづらい。)
連絡線の新設にあたってはこの側壁を取り壊して新しいトンネルを接続することになります。しかし、今回のように地下鉄のトンネルを改造する場合、着工してすぐは現在のトンネルはそのままにその外側に新しいトンネルを建設するという手法がとられるのが一般的です。ここでもその手法がとられており、今回訪問時点ではホーム上からも車窓からも工事の気配を感じることは一切できませんでした。


左:2番出入口前から小竹向原駅方面を見る。奥の歩道上に工事用の囲いができている。
右:2番出入口付近の囲いの内部。
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一方、地上ではすでに新トンネル建設に向けた土留壁の構築(杭打ち)作業が開始されています。
小竹向原駅寄りにある2番出入口前の歩道上には工事用の仮囲いが設置されており、内部では地面の掘削作業が行われていました。この部分はちょうど先ほど触れた千川駅のホームA線側の小竹向原寄りの端の真上にあたる地点で、掘削部分の形状は地下のトンネルからさらに道路の外側へ向かうような形状となっており、今後地下のトンネルが拡幅されることを窺い知ることができます。


左:要町三丁目交差点付近で作業中の杭打ち機
右:仮囲いがある側とは反対(B線側)の歩道上にあった工事の案内板
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さらにその先、都道420号線と交差する要町三丁目交差点付近では杭打ち作業の真っ最中(ただし、この日は日曜日だったため休み)で、巨大な杭打ち機が道路上に鎮座している状況でした。なお、車道を挟んで反対側(B線側)は特に目立った作業は行われていませんでしたが、工事についての案内板が数か所設置されているのを確認できました。案内板に書かれている工期は「平成26年11月28日まで」となっていますが、「参考」で示したブログによると都市計画変更についての説明会で話があった工期は「地上の原状回復を含めて7年」とされているようで、実際はこれ以上の年月がかかることが予想されます。


左:要町通りのアンダーパス手前にある小竹向原寄りの開削部分。
右:囲いの中にある換気口。今後取り壊される予定。
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要町三丁目交差点を過ぎると連絡線はシールドトンネルとなるため、しばらくの間地上での工事はなくなります。次に作業帯が現れるのは要町通りがアンダーパスに向かって下り始める手前付近です。今回訪問時、こちらでは車道と歩道を仕切る植え込みがすべて撤去されており、浅い部分に埋設されているライフラインの移設作業が行われていました。撤去された植え込みの中には地下のトンネルへ通じる自然換気口がいくつかあいていますが、千川駅に掲示された工事予定表によると、これらの設備は連絡線の新設に支障となるため一旦すべて取り壊されることになっており、新トンネル完成後に復旧されるものと思われます。
おまけ:まもなく完成する大谷口給水所

要町三丁目交差点から北に600mほど進むと見えてくるのがこの大谷口給水所です。かつて、この場所には荒玉水道を経由してきた水道水を貯水する大谷口配水塔が存在していました。配水塔の設計者は近代衛生工学の父と言われた東京帝国大学(現在の東京大学)の名誉教授中島鋭治(荒玉水道の途中にある野方配水塔も設計)で、美しい半球状の屋根を持つ配水塔は遠方からもよく目立ち、「大谷口水道タンク」として地域住民に親しまれていました。しかし、配水塔としての使命は1972(昭和47)年に終えていたことや老朽化が進んでいたことから2005(平成17)年に取り壊されました。その後、跡地は東京都が給水所として整備を行っており、1日の最大配水量は8万4千立方メートル、板橋・文京・豊島の3区の計12万4千人分の上水道をカバーする見込みです。また、施設の1つである給水所のポンプ棟はかつての配水塔の意匠を継承したデザインとなっており、引き続き地域のシンボルとなるよう配慮されています。工事は大詰めを迎えており、いよいよこの3月に使用が開始される予定となっています。
▼参考
大谷口給水所が完成|東京都
荒玉水道と給水塔 - 建設コンサルタンツ協会誌227号(2005年4月号)(PDF)
大谷口・水道タンク - 越後屋たぬき(FC2版)
→大谷口給水所の工事レポ―ト。
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