小竹向原~千川間連絡線新設工事(2012年2月18日取材)

千川駅端の昨年末の状況

東京メトロ有楽町線・副都心線の小竹向原~千川間では、現在線路の立体交差化工事が進められています。この事業は2012年度完成予定ということもあり、昨年10月の取材から半年経たずして既設トンネル撤去に向けた準備が開始されるなど大きな進展が見られましたので、2月18日に再度取材を行いました。千川駅端と地上の様子を中心に事業の状況をお伝えします。

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小竹向原~千川間連絡線新設工事(2011年1月9日取材)(2011年3月3日作成)
小竹向原~千川間連絡線新設工事(2011年10月9日取材)(2011年12月19日作成)

立体交差化工事の概要

小竹向原駅は東京メトロ有楽町線・副都心線と両路線と直通運転を行っている西武有楽町線が乗り入れる島式ホーム2面4線の地下駅です。小竹向原駅が開業したのは1983(昭和58)年の有楽町線池袋~営団成増(現・地下鉄成増)間と西武有楽町線小竹向原~新桜台間が開業した時のことです。以後、各方面とも延伸開業を続け、有楽町線は和光市駅で東武東上線に、西武有楽町線は練馬駅で西武池袋線と直通運転を行うようになりました。さらに、1994(平成6)年には有楽町線と同時に建設されていた13号線(副都心線)の小竹向原~池袋間を先行供用する形で有楽町新線が開業し、現在の線路の形態が完成しました。

小竹向原駅と新設される連絡線の配線図
小竹向原駅と新設される連絡線の配線図 ※クリックで拡大

小竹向原駅の東側は有楽町線と副都心線が平面交差で分岐・合流しています。有楽町新線の開業時は列車本数も少なく、この平面交差が問題になることはありませんでしたが、2008(平成20)年に副都心線が渋谷まで全線開業すると、激増した列車本数に平面交差部分の容量が追い付かず、信号待ちによる遅延が多発して長時間にわたり直通運転を行っている他社線まで影響を及ぼす事態となりました。(副都心線開業後初めての平日となった2008年6月16日の終日にわたるダイヤの大規模混乱はその最たる例。)副都心線は来る2012年度末に東急東横線との直通運転開始が予定されていますが、小竹向原駅の平面交差により現状以上に列車本数を増加させることはもはや不可能な状態となっています。このため、東京メトロでは小竹向原駅について以下の3つの改良案を策定し検討を行いました。

1、交差する運行(有楽町線和光市方→有楽町線新木場方・西武有楽町線→副都心線)の削減
2、小竹向原駅の西側に有楽町線専用の連絡線を新設
3、小竹向原駅の東側(小竹向原~千川間)に有楽町線専用の連絡線を新設


この結果、「1」は行き先・本数に偏りが発生し、サービス低下・混雑悪化が懸念されること、「2」は線形の関係から既設の小竹向原駅の大規模な改築(ホームの移設など)や新たな用地買収が必要であること、「3」はトンネルの改造が必要なものの、工事の範囲を既存の道路幅員に収めることが可能であるということから、「3」の小竹向原~千川間に連絡線を新設することに決定しました。
新しい連絡線は小竹向原駅東側の6線区間の外側から千川駅地下2階の有楽町線ホームの間に建設されます。これにより、6線区間の一番外側の線路は有楽町線専用に変更し、副都心線は上下各3線ずつある線路の中央の線路から単純にY字型に分岐するだけの構造とし、全体を立体交差化します。(このため、千川駅寄りにある線路の一部は撤去する。)また、今回の工事では6線区間の千川寄りの上下線間に両渡りのポイントが新設されます。このポイントの新設により現在は輸送混乱時に池袋駅で運転を打ち切っている副都心線を上下にホームが重なる千川駅まで延長運転することが可能となり、利用者の乗り換えに要する負担を軽減することが可能となります。

連絡線の建設位置とトンネルの構造
連絡線の建設位置とトンネルの構造 ※クリックで拡大

連絡船が新設される東京メトロ有楽町線・副都心線の小竹向原~千川間は要町通り(東京都道441号池袋谷原線)の地下を通っています。この区間は有楽町線の建設時に拡幅が行われており、片側2車線の本線がアンダーパス(トンネル)を通り、その上部に公園・学校・生活道路などが載る構造となっています。連絡線の設置位置はこのアンダーパスの改築を避けるため、千川駅寄りの約410mの区間とされました。また、地上掘削の範囲をさらに削減するため、連絡線のトンネルは既設トンネルを拡幅する両端を開削工法で建設し、その間の部分は単線断面のシールド工法で建設することとしています。シールドトンネルは必要な面積が大きくなる発進・到達立坑を道路内に収めるため、縦長の複合円形(楕円形~長方形に近い)断面とする予定です。工区名称は小竹向原寄りの開削部分が「向原工区」、中間のシールド部分が「シールド工区」、千川寄りの開削部分が「千川工区」で、施工業者は向原工区・シールド工区が佐藤工業・熊谷組・大日本土木の共同企業体(JV)、千川工区が清水建設・前田建設の共同企業体となっています。
なお、有楽町線は都市計画の一環で建設されているため線路の構造を変更する場合は都市計画変更の手続きが必要となります。計画策定時点で既に東急東横線の直通開始まで3年となっており、これらの手続きは異例とも言える速さで進められることとなりました。

2009年8月 都市計画変更素案の作成

2009年10月 都市計画変更素案の説明会(周辺住民対象)

都市計画変更案の作成

2009年12月 都市計画変更案の公告・縦覧

意見書提出

2010年2月 都市計画審議会

2010年3月 都市計画変更

2010年5月 着工

工事は地上の作業スペースの問題などからA線(新木場方面)・B線(和光市方面)同時に行うのは難しいため、朝ラッシュ時の輸送力が問題となるA線側を先に建設することとなりました。A線側の完成は東急東横線と直通を開始する2012(平成24)年度となっており、B線側は2年後の2014(平成26)年度の完成、地上の原状回復を含めたすべての工事が終わるのは2016(平成28)年度の予定となっています。



2012年2月18日の状況

千川駅ホーム端から小竹向原駅方面を見る。保守用側線が撤去されトンネル取り壊しの準備が始まった。 千川駅構内の床には線路の移設準備らしき穴が見られた。
左:千川駅ホーム端から小竹向原駅方面を見る。保守用側線が撤去されトンネル取り壊しの準備が始まった。(2011年10月訪問時の同じ場所
右:千川駅構内の床には線路の移設準備らしき穴が見られた。

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新設される連絡線は千川駅ホームの直前で現在の有楽町線の線路と合流します。この部分は以前保守用機材の側線がありましたが、今回訪問時はその軌道がすべて撤去されていました。さらに、壁や天井には雨樋(あまどい)が新設されており、特に天井の樋は新設される連絡線トンネルの形状とほぼ一致しています。千川駅改札口前に掲示されている工事予定表では来る2012年2月27日より「既設躯体撤去工事」が開始されることになっており、今後はトンネルの壁面・天井を切断して撤去する工事が開始されるものと思われます。
また、今回千川駅のA線(新木場方面)の線路脇の床に謎の穴が多数開けられているのが確認できました。連絡線の設置後は急カーブができるのを避けるため千川駅のホームを拡幅して線路を移設する計画もある模様で、この穴は線路の移設に向けた準備であると考えられます。(このため、千川駅ではホームドアの設置が保留されている。)

ホーム上階のコンコースも天井が外され、機械室では壁の一部が取り壊された。 地上でもクレーンを使い、資材の搬出入が行われていた。
左:ホーム上階のコンコースも天井が外され、機械室では壁の一部が取り壊された。
右:地上でもクレーンを使い、資材の搬出入が行われていた。

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ホーム上階のコンコースの小竹向原寄りも天井のパネルが取り外され、コンコース内にある機械室では壁の一部が取り壊されるなど連絡線接続に向けたものと思われる作業が行われているのを確認できました。また、今回は土曜日ということで地上でもクレーンを使って地下に資材を出し入れしているのを確認できました。

小竹向原寄りの開削部分。前回と比べ、積まれている資材の量が格段に増えた。 ここから先は要町通りがアンダーパスとなるため工事は終了。足場の床板や送風機が見られる。
左:小竹向原寄りの開削部分。前回と比べ、積まれている資材の量が格段に増えた。
右:ここから先は要町通りがアンダーパスとなるため工事は終了。足場の床板や送風機が見られる。

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小竹向原寄りの開削部分は前回と同様覆工板の下で作業が行われていましたが、前回と比べると積まれている資材の量や使用されている重機の数が格段に増えており、地下のトンネルの建設が本格化していることをうかがわせました。開削部分は要町通りがアンダーパスに入る直前で終了しており、この部分には足場の床板や地下の坑内が酸欠にならないよう空気を送り込む送風機が置かれていました。

工事現場地上の「連絡線展示室」にあるシールドマシンの模型。 工事現場地上の「連絡線展示室」にあるシールドマシンの模型。 工事現場地上の「連絡線展示室」にあるシールドマシンの模型。
工事現場地上の「連絡線展示室」にあるシールドマシンの模型。
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連絡線の中央部は前述の通りシールド工法で建設されます。シールドマシンは昨年末から今年初めにかけて大きく6つに分割されて大阪にある日立造船から運ばれ、地下に搬入されました。今回使用されるシールドマシンの形式は泥土圧式シールドで、全長8.9m、幅5.7m、高さ6.8mという長方形に近い複合円形となっています。このような縦長のシールドトンネルとなったのは現在の道路用地内に収めるためです。マシン前方のカッタースポーク部分は単純に回転するだけだと上下の部分が掘削できずに残ってしまうため、先端に伸縮式のカッター(コピーカッター)を備えており、トンネルの形状に合わせて伸縮させながら掘削を行います。
千川駅掲示の予定表によるとシールドトンネルの掘進は来る2月27日より開始される予定となっています。A線側の掘進は5月ころには終わる予定で、終了後はマシン内部の部品を取り外してB線側のシールドマシンに流用する計画となっています。

来年度中に迫った副都心線と東急東横線の直通運転開始に向け、副都心線両端では施設の改良があわただしくなってまいりました。東横線渋谷~代官山間の工事については今年に入ってからまだ取材はできておりませんが、昨年末に渋谷駅を利用した際はホーム間の仮設通路の撤去工事が開始されており、いよいよ本来の形に近づきつつあることを実感しました。

今後も当ブログでは副都心線・東横線直通運転開始に向けて進められている準備や関係者の皆様の努力の姿をお伝えしていく所存です。

▼参考
東京メトロ有楽町線・副都心線の安定運行を目的とした線路交差解消の連絡線を計画 - 日本鉄道施設協会誌2010年12月号
東京メトロ有楽町線(小竹向原駅~千川駅)連絡線設置工事について(現地配布のパンフレット)
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