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小竹向原~千川間連絡線新設工事(2012年8・10月取材)
公開日:2012年10月14日13:30

東京メトロ有楽町線・副都心線の小竹向原駅では、現在平面交差となっている両路線の分岐部分を立体交差化する工事が進められています。先日、東京メトロよりこの立体交差化に伴う線路切り替え工事に関する発表がありました。今回は先週(10月6日)に調査した現地の様子と合わせて、この工事についてお伝えいたします。
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小竹向原駅立体交差化工事の概要
小竹向原駅は東京メトロ有楽町線・副都心線と両路線と直通運転を行っている西武有楽町線が乗り入れる島式ホーム2面4線の地下駅です。小竹向原駅が開業したのは1983(昭和58)年の有楽町線池袋~営団成増(現・地下鉄成増)間と西武有楽町線小竹向原~新桜台間が開業した時のことです。以後、各方面とも延伸開業を続け、有楽町線は和光市駅で東武東上線に、西武有楽町線は練馬駅で西武池袋線と直通運転を行うようになりました。さらに、1994(平成6)年には有楽町線と同時に建設されていた13号線(副都心線)の小竹向原~池袋間を先行供用する形で有楽町新線が開業し、現在の線路の形態が完成しました。

小竹向原駅と新設される連絡線の配線図 ※クリックで拡大
小竹向原駅の東側は上下線がそれぞれ3線になった後、有楽町線(地下2階)・副都心線(地下3階)に分岐する配線となっており、平面交差となっています。2008(平成20)年の副都心線開業後はこの平面交差を行き来する列車が激増したため、交差するルート同士での信号待ちによる停車・遅延が多発しており、2012年度中に予定されている副都心線・東急東横線の直通運転開始後はその状態がさらに深刻化することが懸念されています。このため東京メトロでは小竹向原駅東側の6線区間のさらに外側から千川駅地下2階の有楽町線ホームの間に新しく連絡線を建設し、両路線の分岐部分を立体交差化することを決めました。

連絡線の建設位置とトンネルの構造 ※クリックで拡大
小竹向原~千川間の有楽町線・副都心線は要町通り(都道441号池袋谷原線)の地下を通っています。小竹向原駅寄り(6線区間の真上)の千川通りは片側2車線の本線がアンダーパスのトンネル(向原トンネル)を通り、その上に公園・学校・生活道路などが載る構造となっています。新設される連絡線はこれらの施設を避け、かつ既存の道路用地内に収まることを条件に千川駅寄りの410mの区間に建設されることとなりました。また、連絡線のトンネルは既設トンネルを拡幅する両端部分が開削工法、中央がシールド工法を用いて建設されることになっており、シールドトンネルは発進・到達立坑の面積を小さくするため、縦長の複合円形(楕円形に近い)断面とされました。
工事は地上の作業スペースの問題などからA線(新木場方面)・B線(和光市方面)同時に行うのは難しいため、朝ラッシュ時の輸送力が問題となるA線側を先に建設することとなりました。A線側の完成は東急東横線と直通に間に合わせる必要がるため、今年度中の完成が予定されており、来る11月4日(日)に有楽町線の一部を運休したうえで線路の切り替え工事が行われることになっています。(詳しくは後述)。B線側はA線側の完成後に着工し、3年後の2015(平成27)年度末の完成が予定されており、地上の原状回復を含めたすべての工事が終わるのは2016(平成28)年度の予定となっています。
2012年8月19日の状況


左:8月19日に撮影した千川駅側の連絡線取り付け部分。奥にシールドトンネルが見えている。
右:連絡線取り付け部分のアップ。手前の足場は切り目を入れた天井を支えるために仮設されたもの。
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先週取材分の内容に入る前に、8月19日の京王線地下化の取材の帰りがけに千川駅ホーム端から見た工事の模様を掲載しておきます。この時は千川駅側の連絡線取り付け部分で、以前あった保守用側線・有楽町線本線の間にある中間壁と保守用側線の天井を切断・撤去する作業が進められていました。中間壁は厚さ数十cm程度のコンクリート壁で、天井側から順にクレーンで吊り上げ可能なサイズに分割されて搬出されていました。また、右写真では側線の跡地に無数に組まれた足場が確認できますが、これは撤去途中(切り目を入れただけの状態)の天井を支えるために仮設されたものであると思われます。そして、中間壁が撤去されたことにより、連絡線の中間部分を構成するシールドトンネルが千川駅のホームからも見えるようになりました。奥にある白く光っている部分がそれで、シールドトンネル特有の湾曲した壁面があるのが確認できます。
2012年10月6日の状況
●地下の様子(千川駅構内)

10月6日に撮影した千川駅側の連絡線取り付け部分。壁・天井の撤去が完了し、連絡線用の分岐器が搬入された。
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そしてこちらが今回(10月6日)の取材時に撮影した同じ場所の様子です。壁・天井の撤去が完了したため、足場はすべて撤去されており、代わりに11月4日に挿入される現在線と連絡線を合流させるポイント(分岐器)が搬入されました。ポイントは東京メトロで標準となっている黄色い合成まくらぎを使用したもので、今回取材時は組み立て途中であったことからレールはバラバラの状態でまくらぎの上に置かれただけとなっていました。このため、分岐の線形は正確にはわかりませんが、ぱっと見では連絡線側が直線、もしくはそれに近い曲線となっているように感じられました。このような線形となったのは小竹向原駅で外側の線路を使う和光市方面から来る列車の方が本数が多い(日中を例にとると、和光市方面は6本であるのに対し、西武線直通は4本となっている)ためであると思われます。
一方、天井はポイントの挿入に伴い剛体架線を移設する必要があるため、以前のトンネル幅一杯に渡されていたブラケットが撤去され、新しい天井に小型のブラケットを取り付け、そこから吊るす形に変更されています。ブラケットは碍子(がいし)の取り付け位置を左右に移動できるようになっており、11月4日の線路切り替え時に位置を移動させるものと思われます。
このほか、写真左側の壁には線形が変わるため、新しい標識(軌道回路境界もしくは手動操縦時のノッチを指示する標識と思われる)が設置されています。


左:千川駅構内に掲出されている和光市寄りのホーム拡幅に関するお知らせ
右:千川駅和光市寄りのホームは先端がゴムマットに置き換えられている
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このポイント挿入に伴い、千川駅ホームの和光市寄りは線路が外側に移動するため、ホームが拡幅される予定となっています。(千川駅改札口前の工事予定表による。下図も参照。)このため、9月末よりこの部分のホーム先端の床面がタイルからゴムマットに交換されています。ゴムマットへの交換は現段階では11月に線路切り替えが行われるA線(1番線:新木場方面)側のみ実施されていますが、駅構内の張り紙にはB線(2番線:和光市方面)の工事範囲も描かれていることから、こちらについても順次交換されるものと思われます。

連絡線の位置と11月4日の千川駅の線路切り替えのイメージ


左:B線側の和光市方。保守用側線のレールが撤去された。
右:B線のホーム部分もバラスト軌道に改造された。
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これまでトンネル内の変化はなかったB線側ですが、今回和光市方にあった保守用側線のレールが取り外されているのを確認しました。また、千川駅ホーム部分の軌道もA線側と同じバラスト軌道に改修されました。B線側の掘削工事は年内に着工する予定となっており、こちら側も今後トンネルや軌道の構造が変化していくことが予想されます。
●地上(千川駅・駅間)


左:千川駅地上の状況。引き続き作業帯が設置されているが、住宅街側にあった防音壁の一部は撤去された。
右:B線側では埋設物の移設工事が進められている。
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連絡線両端の開削部分は引き続き地上の要町通りに作業帯が設置されていますが、A線側は新トンネルの建設や既設トンネルの取り壊しなど大きな騒音の出る工事は一旦終了したため、防音壁が簡易的なものに戻っています。一方、間もなく掘削が始まるB線側では地下に埋設されている下水管や電線管類を移設する作業が進められており、千川駅付近の路面は「パッチワーク」のような状態となってしまっています。


左:小竹向原駅側の作業帯。地下の掘削は完了しており、6月と比べて大きな変化はない。
右:シールドトンネルの発進立坑があった付近。資材が撤去され、アスファルトで整地された。
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小竹向原駅側の作業帯は6月取材時点でシールドトンネルの掘進設備が撤去されており、大きな変化はありません。地下はトンネル本体の建設が終了し軌道敷設に移っていることから、作業帯内に置かれている資材の量は少なく全体的に見て「工事は終了」と見なせる状況でした。
11月4日に有楽町線を運休して切り替え工事を実施
前記した通り、連絡線使用開始に向けて来る11月4日(日)(予備日11月10日(土))に有楽町線池袋~和光市間を終日運休としたうえで、線路の切り替え工事が実施されます。当日は他社線による振替輸送が実施されるほか、副都心線が全列車各駅停車となり増発運転される予定です。詳しい運行計画は以下の通りです。
●有楽町線
和光市~池袋間は終日全列車運休。
新木場~池袋間で折り返し運転を行う。運行間隔は通常の土休日ダイヤ並み(日中約6分間隔)とする。
●副都心線
全列車各駅停車での運転。
日中時間帯は通常5~7分間隔のところを3~7分間隔とすることで急行通過駅でも通常と同等の発着本数を確保する。
●振替輸送
東京メトロ・都営地下鉄・りんかい線・新交通ゆりかもめ全線
JR東日本:山手線全線・中央線東京~高尾間・京葉線東京~西船橋間・総武線各駅停車御茶ノ水~西船橋間・総武線快速東京~錦糸町間
東武:東上線池袋~和光市間
西武:池袋線池袋~大泉学園・豊島線全線・有楽町線全線
今回の工事は千川駅付近のポイント挿入とホーム拡幅のみで、実際に連絡線が使用を開始するのはもう少し先のことになる模様です。昨年10月には撤去中の換気口でコンクリート片が落下し、信号ケーブルを切断して有楽町線・副都心線が8時間余りにわたり運転を見合わせる事故が発生し、一時は先行きが危ぶまれました。新トンネル内の軌道敷設は順調に進んでいることから、今回の切り替え工事をもってA線側の連絡線はほぼ完成となります。来年3月16日の東横線・副都心線直通まで半年を切っており、まさに「ギリギリセーフ」のところで間に合った格好となります。
▼参考
東京メトロ有楽町線・副都心線の安定運行を目的とした線路交差解消の連絡線を計画 - 日本鉄道施設協会誌2010年12月号
東京メトロ有楽町線(小竹向原駅~千川駅)連絡線設置工事について(現地配布のパンフレット)
平成24年11月4日(日)有楽町線千川駅線路工事のため有楽町線和光市駅~池袋駅間を終日運休します - 東京メトロ ニュースリリース(PDF/590KB)
[現場ルポ]東京メトロ有楽町線小竹向原駅~千川駅間連絡線設置工事 - DOBOKU技士会東京第52号(PDF/3.7MB)
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