小竹向原~千川間連絡線新設工事(2012年11月25日取材)

東横線直通に向けて副都心線内で先行して営業運転を行っている東急5050系

東京メトロ有楽町線・副都心線の小竹向原駅では現在平面交差となっている両路線の分岐部分を立体交差化する工事が進められています。11月4日に新設の連絡線と既存の線路を接続する工事が行われました。今回はこの接続工事による変化を中心にお伝えいたします。

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小竹向原駅立体交差化工事の概要

 小竹向原駅は東京メトロ有楽町線・副都心線と両路線と直通運転を行っている西武有楽町線が乗り入れる島式ホーム2面4線の地下駅です。小竹向原駅が開業したのは1983(昭和58)年の有楽町線池袋~営団成増(現・地下鉄成増)間と西武有楽町線小竹向原~新桜台間が開業した時のことです。以後、各方面とも延伸開業を続け、有楽町線は和光市駅で東武東上線に、西武有楽町線は練馬駅で西武池袋線と直通運転を行うようになりました。さらに、1994(平成6)年には有楽町線と同時に建設されていた13号線(副都心線)の小竹向原~池袋間を先行供用する形で有楽町新線が開業し、現在の線路の形態が完成しました。

小竹向原駅と新設される連絡線の配線図
小竹向原駅と新設される連絡線の配線図 ※クリックで拡大

 小竹向原駅の東側は上下線がそれぞれ3線になった後、有楽町線(地下2階)・副都心線(地下3階)に分岐する配線となっており、平面交差となっています。有楽町新線の開業時は新線側の列車本数が極端に少なかったため、この平面交差が問題になることはありませんでした。しかし、2008(平成20)年の副都心線開業後は交差するルートを行き来する列車が1日に数百本へ激増したため、交差する列車同士での信号待ちによる停車・遅延が多発しています。
 副都心線は来る2013(平成25)年3月16日より東急東横線・みなとみらい線と相互直通運転を開始します。直通開始後はさらに列車本数が増加するため、現状のままでは平面交差による遅延がさらに深刻化する恐れがありました。このため東京メトロでは小竹向原駅について以下のような検討を行いました。

1、交差する運行(有楽町線和光市方→有楽町線新木場方・西武有楽町線→副都心線)の削減
2、小竹向原駅の西側に有楽町線専用の連絡線を新設
3、小竹向原駅の東側(小竹向原~千川間)に有楽町線専用の連絡線を新設


この結果、「1」は行き先・本数に偏りが発生し、サービス低下・混雑悪化が懸念されること、「2」は線形の関係から既設の小竹向原駅の大規模な改築(ホームの移設など)や新たな用地買収が必要であること、「3」はトンネルの改造が必要なものの、工事の範囲を既存の道路幅員に収めることが可能であるということから、「3」の小竹向原~千川間に連絡線を新設し、平面交差を解消することが決定しました。

連絡線の建設位置とトンネルの構造
連絡線の建設位置とトンネルの構造 ※クリックで拡大

 小竹向原~千川間の有楽町線・副都心線は要町通り(都道441号池袋谷原線)の地下を通っています。小竹向原駅寄り(6線区間の真上)の千川通りは片側2車線の本線がアンダーパスのトンネル(向原トンネル)を通り、その上に公園・学校・生活道路などが載る構造となっています。新設される連絡線はこれらの施設を避け、かつ既存の道路用地内に収まることを条件に千川駅寄りの410mの区間に建設されることとなりました。また、連絡線のトンネルは既設トンネルを拡幅する両端部分が開削工法、中央がシールド工法を用いて建設されることになっており、シールドトンネルは発進・到達立坑の面積を小さくするため、縦長の複合円形(楕円形に近い)断面とされました。
 工事は地上のスペースの問題などからA線(新木場方面)・B線(和光市方面)同時に行うのは難しいため、朝ラッシュ時の輸送力が問題となるA線側を先に建設することとなりました。A線側の完成は来年3月の東横線直通に間に合わせる必要があるため、2010(平成22)年春の着工以来昼夜兼行の突貫工事が続いており、今年11月4日(日)には千川駅構内で完成した連絡線と既存の線路を接続する大規模な切替工事が実施されました。(詳しくは後述)。また、B線側についても今年秋より工事が本格化しています。B線側の3年後の2015(平成27)年度末の完成が予定されており、地上の原状回復を含めたすべての工事が終わるのは2016(平成28)年度の予定となっています。



2012年11月4日の切替工事と11月25日の現地の状況

連絡線の建設位置と2012年11月4日の切替工事個所
連絡線の建設位置と2012年11月4日の切替工事個所

 この連絡線建設工事では途中解体中のコンクリートが落下する事故が1件あったものの、工事自体は順調に進んでおり、今年夏にはトンネル本体がほぼ完成し、以後トンネル内で軌道敷設や電気設備の工事が進められています。去る11月4日(日)には有楽町線を終日全面運休したうえで、千川駅構内にて完成した軌道と既存の有楽町線を接続する切替工事が実施されました。

●地下(千川駅構内)の様子
連絡線との合流用分岐器が挿入された千川駅のA線和光市方。
連絡線との合流用分岐器が挿入された千川駅のA線和光市方。
(同じ場所の2011年10月9日/2012年2月18日/2012年6月23日の様子)

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 切替工事が行われた千川駅A線和光市方には、小竹向原駅東側の6線区間の外側からのびてきた連絡線と既存の有楽町線を合流させる分岐器(ポイント)が挿入されました。分岐器は本数の多い連絡線側が直線になっており、現状では有楽町線の全列車が分岐側から進入するため速度制限がかかります。今回の切替工事は分岐器が挿入のみとなっており、11月25日の取材時点では分岐器駆動用のモーターは未設置となっています。また、切替区間は軌道の位置が大幅に変更になったため、剛体架線が全て新品に交換されましたが、連絡線のトンネル内では引き続き使用開始に向けた工事が続いているため、連絡線側はまだ架線が設置されていません。

トンネル外側に軌道が移設され、ホームの一部が拡幅されたた千川駅。
ホーム中央から拡幅された和光市方を見る。 の剛体架線の新旧擦り付け部分。古い方はトロリー線を強引に曲げて切断してある。
上段:トンネル外側に軌道が移設され、ホームの一部が拡幅されたた千川駅。
下段左:ホーム中央から拡幅された和光市方を見る。(同じ場所の2011年10月6日の様子
下段右:剛体架線の新旧擦り付け部分。古い方はトロリー線を強引に曲げて切断してある。

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 分岐器挿入に伴い、軌道がトンネルの外側に移設されたため、千川駅ホーム1番線の和光市方は先端に仮設の床面が設置され、ホームが拡幅されました。ホーム中央から和光市方面を見ると以前は左に向かってカーブしていた線路が直線になり、それに合わせてホームが拡幅されたことがわかります。拡幅部分の床面は現状ではゴムマットとなっていますが、今後床面や天井の仕上げが実施されるものと思われます。また、軌道の移設に伴い剛体架線が交換された区間はホーム中央付近までとなっており、その先は通常のエアセクションと同じ形で既設の剛体架線と接続しています。新旧剛体架線の擦り付け部分は、古い剛体架線のトロリー線を強引に上に折り曲げた状態であるなど粗雑な造りとなっており、このままでは長期間の使用は困難であるため、今後交換等の処置がなされるものと思われます。
 なお、有楽町線では現在ホームドアの設置が進められていますが、千川駅についてはこの拡幅工事があるため設置が先送りされてきました。A線側については床面の仕上げと合わせ、ホームドア設置に向けた準備も行われるものと思われます。

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床面がゴムマットに置き換えられ、若干拡幅されたB線側(2番線) 軌道の移設に伴い新設された停止位置目標。赤は東京メトロ車用、青は西武・東武車用。
左:床面がゴムマットに置き換えられ、若干拡幅されたB線側(2番線)。
右:軌道の移設に伴い新設された停止位置目標。赤は東京メトロ車用、青は西武・東武車用。

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 一方、2番線(B線側)についてはまだ連絡線本体が完成していませんが、今回のA線側の切替工事に合わせて和光市方の軌道が数メートルトンネル外側に移設され、ホームもこれに合わせて若干拡幅されました。この移設によりホームを出た先の線路は急カーブになったため、軌道には脱線防止ガードが追加されています。また、有楽町線ではATO化に合わせて壁側に停止位置の範囲を示したライン(東京メトロ車用は赤、西武・東武車は青)が設置されていますが、軌道の移設に伴いこれがずれてしまうため、新たに金属製の枠が設置されそこに停止位置の範囲が示されるようになりました。B線側の軌道移設の詳しい理由は不明ですが、将来の連絡線分岐挿入に向けた準備の一環であるのは間違いないでしょう。

●地上(千川駅・駅間)の様子
千川駅地上の作業帯は規模が縮小された。 小竹向原駅側の作業帯はいよいよB線側の掘削が開始された。
左:千川駅地上の作業帯は規模が縮小された。
右:小竹向原駅側の作業帯はいよいよB線側の掘削が開始された。

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 千川駅の地上はA線側に引き続き作業帯が設置されていますが、トンネル本体が完成したため以前よりも規模が縮小されています。交差点が近接しており、使用できるスペースが限定されていることから、まもなくこの作業帯は廃止され、B線側に移動するものと思われます。
 一方、小竹向原駅側の6線区間の地上ではいよいよB線側の掘削工事が開始されました。現在は新設トンネルの支障となる下水道や電話線などの移設が行われています。B線側の工事もA線側とほぼ同じ期間で設定されていることから、これらの移設完了後はそのままトンネル本体の掘削に入るものと思われます。


副都心線と東横線の直通開始まで正味3カ月を切りました。小竹向原駅の立体交差化は直通開始時の安定運行に必須の設備であることから、まもなく使用が開始されるものと思われます。

▼参考
東京メトロ有楽町線・副都心線の安定運行を目的とした線路交差解消の連絡線を計画 - 日本鉄道施設協会誌2010年12月号
東京メトロ有楽町線(小竹向原駅~千川駅)連絡線設置工事について(現地配布のパンフレット)
平成24年11月4日(日)有楽町線千川駅線路工事のため有楽町線和光市駅~池袋駅間を終日運休します - 東京メトロ ニュースリリース(PDF/590KB)
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