京葉線幕張豊砂駅建設工事(2022年1月16日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2022年01月24日18:28
2023年春京葉線幕張豊砂駅開業!!

2023年春、京葉線新習志野~海浜幕張間に新駅「幕張豊砂駅」が開業します。2020年春より予定地では新駅の建設工事が本格化しています。前回のレポートから半年経ちましたので、今月中旬に再度現地の調査をしてまいりました。今回は駅名決定の経緯なども加えながら、新駅の現状についてお伝えします。

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京葉線貨物駅計画から新駅設置決定まで

京葉線の現在の主力車両E233系5000番台電車 空き地だった頃の鷺沼貨物駅予定地
左(1):京葉線の現在の主力車両E233系5000番台電車
右(2):空き地だった頃の鷺沼貨物駅予定地。2009年11月3日、アパホテル&リゾート東京ベイ幕張より撮影


 京葉線は東京駅を起点に東京湾北部を経由して千葉県の蘇我駅に至る全長43kmの在来線です。この路線は元々貨物線として計画されたもので、千葉県内では3か所に貨物の積み下ろしをするためのターミナル用地が確保されていました。今回新駅設置が決定した新習志野~海浜幕張間の南側もその用地の一つです。この区間では上下線の線路に高低差が付けられていますが、これは計画されていた貨物駅へ出入りする列車が本線と平面交差しないようにとの配慮によるものです。
 その後到来したオイルショックによる産業構造の変化、それに伴う東京湾岸の土地利用計画の変更により、京葉線は旅客線として利用されるようになりました。これにより新習志野~海浜幕張間で計画されていた貨物駅建設は実現せず、用意されていた土地は京葉線の複々線化用地とともに千葉県が保有することになりました。新習志野~海浜幕張間は京葉線の中でも駅間隔が開いていることから、東京駅まで全線開業した1990年代初めより新駅の設置が模索されるようになります。しかし、同時期に到来したバブル経済崩壊等の影響により、貨物駅予定地は買い手がなかなか見つからず、利用客が見込めないことから棚上げの状態が続いてきました。

京葉線新習志野~海浜幕張間と幕張新駅の位置
京葉線新習志野~海浜幕張間と幕張新駅の位置
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「淡色地図」「空中写真」合成レイヤーに加筆したものである。

 その後、幕張新都心に本社があるスーパーマーケット大手のイオングループが20年間の定期借地にてこの貨物駅予定地を利用することになり、2013(平成25)年12月にイオンモールの旗艦店として「イオンモール幕張新都心」がオープンしました。イオンモール建設に際しては、京葉線に面した場所にバスターミナルが設けられ、将来駅が建設された際駅前広場として機能できるよう配慮されました。このように、幕張新駅建設に向けた準備は少しずつですが着実に進められていき、2016(平成28)年には新駅建設に向けた調査団体にイオンモールが加わり「幕張新都心拡大地区新駅設置協議会」として20年ぶりに活動が再開されました。協議会ではJR東日本と共同で新駅建設に向けた課題の洗い出しや駅のイメージの具体化を進め、2020年5月に幕張新駅の設置を正式に発表しました。

京葉線幕張新駅ホーム構造
京葉線幕張新駅ホーム構造

 幕張新駅は、現在の線路はそのままに上下線間へ10両編成対応の長さ210mのホームを2面追加します。コスト削減および埋立地における耐震性の観点から、新設する上りホームの高架橋は現在の上りホームと完全に一体化され、ホーム下の空間を建設中の重機の走行空間や開業後のコンコースとして利用します。駅舎は上り線の南側に設けられ、バスターミナルとの一体的な空間演出のため改札口は駅の中心からやや蘇我寄りの位置に新設されます。

京葉線幕張新駅施設レイアウト
京葉線幕張新駅施設レイアウト
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「空中写真」をグレースケールに変換し加筆したものである。


 総事業費はホームが2面に分かれることから、130億円と一般的な駅よりもやや高額となっています。幕張新駅は沿線自治体・企業が設置を求める「請願駅」であるため、事業費は原則として沿線側で負担することになります。幕張新駅では主たる受益者がイオンモールとなるため、事業費の半分はイオンが負担し、残りを千葉県・千葉市・JR東日本が折半することになっています。
 建設にあたっては、できるだけ工期を短縮することを目標に「設計が完了した部分から直ちに工事に入る」(設計・工事施工一括協定)という手法が採用されました。これにより当初2024年秋以降とされていた開業時期を2023(令和5)年春へ1年半以上前倒しできる見込みとなっています。
 なお、幕張新駅建設に合わせて北側にある京葉車両センターを横断する自由通路(エレベーター付き歩道橋)の新設も検討されました。しかし、自由通路の新設には50億円という多額の費用が掛かること、京葉車両センター北側は現在わずかな住宅と小規模なオフィスが立地しておらず、利用が見込めないことから新駅との同時整備は見送られることになりました。

新駅の名称は「幕張豊砂」に決定

幕張新駅駅名募集ポスター
幕張新駅駅名募集ポスター(再掲)

 昨年6月に千葉市内に在住、在勤、在学中の方を対象とした新駅駅名の一般公募が実施されました。1ヶ月間で寄せられた総数は14,715件、種類は4,371種類で、関係者による選考の後10月29日(金)に幕張豊砂まくはりとよすなに決定したことが発表されました。「豊砂」は新駅が立地する地名で、幕張の沖合に位置し、将来豊かになって欲しいという意味を込めて命名されたもです。これに一般的に定着している地域名である幕張を冠することで、わかりやすく地域住民に愛着を持ってもらいたいという想いが両立された名称となっています。
 この駅名公募を巡っては、高輪ゲートウェイ駅の駅名決定プロセスによる信用失墜もあり、募集開始直後から「幕張ゲートウェイになるのでは?」※1といった嘲笑の声が絶えず、熊谷俊人知事が否定する場面も見られました。地元千葉市民としては言うのが恥ずかしくない無難な名前に決まってホッとしたというのが正直な感想です。

▼脚注
※1:実際の応募数では「幕張ゲートウェイ」は第3位(303件)、「幕張豊砂」は第13位(104件)だった。


ホームがまもなく完成

 京葉線幕張新駅の工事は2020年7月より本格的に開始されています。今回は今月16日(日)に調査した現地の様子を見てまいります。


上り列車の前面展望。地上の下りホームと一体になった屋根の形状が見える。
ホームは床版の敷き詰めが間もなく終わるところ。
ホーム端は屋根が少し低くなっている。
左:上り列車の前面展望。地上の下りホームと一体になった屋根の形状が見える。
右上:ホームは床版の敷き詰めが間もなく終わるところ。
右下:ホーム端は屋根が少し低くなっている。
上:上り列車の前面展望。地上の下りホームと一体になった屋根の形状が見える。
中:ホームは床版の敷き詰めが間もなく終わるところ。
下:ホーム端は屋根が少し低くなっている。

 2020年冬に開始されたホーム高架橋の構築は昨年秋までに完了し、完成した高架橋上でホーム本体を建設する工事が開始されました。ホームは上下線とも将来のホームドア設置などを見越して鋼製桁の上にコンクリート板を敷き詰める構造となっています。昨年5月の下り線に続き、秋以降は上り線についても新ホームの床面が急ピッチで形成されつつあります。上り線ホームの高架橋は現在ホーム増設工事が進められている武蔵小杉駅横須賀線ホームと同様に床面が無く、梁の上に直接鋼製桁を載せてその上にコンクリート板を敷き詰めた構造になっています。
 ホーム床面が完成した部分から、その上に屋根を取り付ける工事も進められています。幕張豊砂駅のホームは上下線で段差があるレイアウトになりますが、ホームの屋根については各ホーム両端2両分ずつを除き上下線で一体の構造となる予定です。屋根は最近主流の白い布を使用した膜となり、上下線のホームの境目で屋根を地上に向かって傾斜させることで双方のホーム間が吹き抜けとなった開放的な空間となる模様です。各ホーム両端の2両分程度は一般的な金属板を曲げ加工したものとなり、中央部よりも高さがやや低くなっています。現在屋根は骨組みの構築が進められています。上りホームの東京寄りには資材を高架橋上に引き上げるためのクレーンが設置されています。

地上から見た建設中の上りホームと駅舎。ホーム屋根には新しい電化柱のビームも付いた。
地上から見た建設中の上りホームと駅舎。ホーム屋根には新しい電化柱のビームも付いた。

 ホームの建設に先立ち、上り線の電化柱はホーム反対側の地上に立てた片持ちビームに変更されていました。この電化柱は仮設の物だったようで、現在建設中のホーム屋根の上から線路上に張り出す新しい鋼管ビームが取り付けられたのを確認しました。なお、幕張豊砂駅付近を含め京葉線では現在インテグレート架線化※2の工事は行われていないため、新しいビームの上には走行電力用以外の電線を吊り下げるための枠も取り付けられています。

▼脚注
※2:JR東日本が進めている電力設備の簡素化工事の名称。電車走行用架線の本数を集約するとともに信号や駅への電力供給用の高圧線を電化柱から線路脇のケーブルトラフに移設することでメンテナンスが容易になる。東京都区内では概ね更新が完了し、現在は郊外路線での整備が進められている。


下り列車の前面展望。右側に見える櫓は上りホームに資材を搬入するための仮設クレーン。
上りホームと一体になった屋根の構造が見える。
足場の裏では階段などの取り付けも進んでいる。
左:下り列車の前面展望。右側に見える櫓は上りホームに資材を搬入するための仮設クレーン。
右上:上りホームと一体になった屋根の構造が見える。
右下:足場の裏では階段などの取り付けも進んでいる。
上:下り列車の前面展望。右側に見える櫓は上りホームに資材を搬入するための仮設クレーン。
中:上りホームと一体になった屋根の構造が見える。
下:足場の裏では階段などの取り付けも進んでいる。

 一方下り線ホームは床板の敷き詰めはほぼ終わっており、屋根の取り付けが進められています。また、この写真では見えませんがホーム中央の足場の裏側では上りホームへ上がる階段やエスカレーターを載せる枠の設置も進んでいます。

ファミリーモール3階スカイパークから見た京葉線幕張新駅予定地全景。バスターミナルの再整備が行われている。
ファミリーモール前で行われている基礎工事。
線路横のバス専用道の再整備
左:ファミリーモール3階スカイパークから見た京葉線幕張新駅予定地全景。バスターミナルの再整備が行われている。
右上:ファミリーモール前で行われている基礎工事。
右下:線路横のバス専用道の再整備
上:ファミリーモール3階スカイパークから見た京葉線幕張新駅予定地全景。バスターミナルの再整備が行われている。
中:ファミリーモール前で行われている基礎工事。
下:線路横のバス専用道の再整備

 イオンモール幕張新都心開業時から新駅予定地には将来の駅設置に備えてバスターミナルが設けられていました。このバスターミナルはイオンモール内の巡回や周辺駅への極少数のバス発着に対応する程度の施設しかなかったため、昨年7月1日より一旦バスターミナル全体を閉鎖したうえで本格的な規模に作り替える工事が進められています。幕張豊砂駅開業後はバスの本数を増やすことを考えているようで、バスターミナルから海浜幕張駅方面に抜ける専用道についても拡幅が行われています。

イオンモール連絡橋で行われているエスカレーターの新設工事 イオンモール連絡橋で行われているエスカレーターの新設工事
イオンモール連絡橋で行われているエスカレーターの新設工事

 イオンモール幕張新都心のペットモールとファミリーモールをつなぐ2階連絡橋では、地上のバスターミナルから直接2階店内に入ることができるエスカレーターを追加する工事が行われています。バスターミナル内ではこのエスカレーターに連続する形で基礎を埋め込む工事が行われており、幕張豊砂駅の改札口から屋根の下を歩いてイオンモールに入店できるようになることも考えられます。

イオンモール連絡橋に掲出されている駅名決定の横断幕
イオンモール連絡橋に掲出されている駅名決定の横断幕

 駅名決定を受け、イオンモール幕張新都心の壁面には幕張豊砂駅の駅名と開業時期をPRする横断幕が掲出されました。新駅の工事は順調に進んでおり、トラブルが無ければ来年春の開業は予定通り迎えられるものとみられます。半年後に再度進捗をレポートする予定ですのでしばらくお待ちください。

▼参考
幕張新都心拡大地区新駅の工事に着手します - JR東日本(PDF/671KB)
幕張新都心拡大地区新駅の事業進捗について - JR東日本(PDF/827KB)※開業時期正式決定について
幕張新駅(仮称)の駅名を募集します - JR東日本(PDF/680KB)
京葉線 新習志野駅~海浜幕張駅間の新駅の駅名決定について - JR東日本(PDF/660KB)
千葉市:幕張新都心拡大地区新駅設置協議会
JR京葉線 新駅は「幕張豊砂駅」に決定 ランキング13位から採用 | NHK
【速報】幕張新駅は「幕張豊砂」に決まる JR京葉線の新習志野-海浜幕張間、公募で選出 | 千葉日報オンライン
京葉線新習志野・海浜幕張間新駅設置 - 東工技報Vol.32(2018年度)76~83ページ

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