東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2022年8月24日取材)

新ホームへ通じる軌道敷設が開始された南砂町駅

東京メトロ東西線は、沿線での宅地開発の進行により混雑が著しくなっています。この問題を解決するため、現在線路の増設や拡幅などの大規模改良工事が各所で進められています。その1つである南砂町駅の2面3線化工事について8月に再調査を行ってまいりました。新ホーム用トンネルの構築が進む現地の様子をお伝えします。

▼関連記事
東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2021年4月23日取材)(2021年6月25日作成)

■東京メトロ東西線の混雑緩和対策
2010年から2017年にかけて導入されたワイドドア車両15000系 拡幅された門前仲町駅2番線
左(1):2010年から2017年にかけて導入されたワイドドア車両15000系
右(2):拡幅された門前仲町駅2番線


 東京メトロ東西線は東京都のJR中央線中野駅から都心部を貫通し、千葉県のJR総武線西船橋駅まで至る全長 30.8kmの地下鉄路線です。中野駅からはJR中央線の三鷹駅まで、西船橋駅からはJR総武線の津田沼駅(平日朝夕のみ)と東葉高速鉄道の東葉勝田台駅までそれぞれ相互直通運転を行っています。
 東西線は、元々中央線・総武線の混雑緩和のためのバイパス路線として計画されました。千葉県側の浦安市・市川市内のルート周辺は当時人家もまばらな湿地帯だったことから、全線が高架橋で建設されました。東西線開通によりこれらの地域では都心への利便性が飛躍的に向上したことから、急速に宅地開発が進むことになります。結果、1990年代以降東西線では総武線を上回る激しい混雑が常態化するようになります。そのため、民営化前の営団地下鉄時代より

●全列車の10両編成化による定員増加
浦安以西各駅停車の「通勤快速」の新設による混雑平準化
ワイドドア車の導入による乗降時間短縮
●CS-ATC化による運転間隔の短縮(最短2分)

を行ってきました。しかし、これらの対策が完了した2010年代に入ってからも混雑状況は好転せず、混雑率は国内最高となる199%(木場→門前仲町7:50~8:50)を記録し続けました。そこで新たなメニューとして

(1)ワイドドア車(15000系)の増導入(2017年完了)
(2)門前仲町駅のホーム拡幅(2013年完了)
(3)南砂町駅の2面3線化:線路容量の増大(2027年度完成予定)
(4)木場駅のホーム拡幅:ホーム上の混雑解消(2025年度完成予定)工事無期限休止。詳細は別途記事で解説予定
(5)茅場町駅のホーム拡張:東西線ホームを延長・階段増設・停車位置変更・日比谷線ホーム拡幅(2022年度完成予定)
(6)九段下駅折り返し機能向上:引上線の平面交差解消(2025年度完成予定)


が立案され、各計画とも鋭意工事が進められています。この東西線混雑緩和対策にかかる総投資額は1,200億円にのぼり、会社を挙げた一大プロジェクトとなっています。

■南砂町駅改良工事の計画とコロナ禍による変更
1989年の南砂町駅付近の航空写真
1989年の南砂町駅付近の航空写真
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「年代別写真:1988~1990年」に加筆したものである。>


 南砂町駅は1969年の営団地下鉄東西線東陽町~西船橋間延伸時に開業しました。当時駅の真上には、洲崎川という運河があったことに加え、洲崎川自体が北側にある砂町ポンプ所(1990年3月廃止)の排水路も兼ねていたことから、川を埋め立てることもできませんでした。そこで、南砂町駅については陸上で分割して作ったトンネル筐体を埋める「ケーソン工法」により建設されました。運河が真上にあることから出入口の設置場所も制限を受け、改札口はホーム両端のみのコンパクトなレイアウトとなりました。
 開業時は周辺が工場ばかりだった南砂町駅ですが、都内のその他の地域と同様1990年代以降再開発により高層マンションが多く建設されました。このため、南砂町駅の乗降客数は約6万1千人(2019年度)と10年間で約1.5倍増加しており、駅構内の混雑が激しくなっています。東京メトロでは、東西線全体の混雑緩和も兼ねて南砂町駅の南側にもう1面ホームを増設し、2面3線化する大規模改良を行うことを2011年に決定しました。

南砂町駅の改良前の構内図 南砂町駅の改良後の構内図 ※2022年計画見直し後
南砂町駅の改良前(左)と改良後(右 ※2022年計画見直し後)の構内図

 南砂町駅の2面3線化は、駅前後の区間を含む440mについてトンネルを外側に拡大し、南側にもう1面島式ホームを増設します。これにより、現在の2番線(中野方面行き)は線路の両側にホームが付く上下線兼用ホームになります。これにより、ラッシュ時は先行列車が駅を出ないうちに次の列車をホームに進入させる「交互発着」が可能となり、遅延が抑制されます。また、東西線は荒川などの長大橋梁があるため、強風による速度規制・運転見合わせがしばしば発生します。現状では地上区間が運転見合わせになった場合、東陽町駅で折り返す必要がありますが、南砂町駅が2面3線化されると当駅で折り返しが可能となるため、運転区間を1駅延長できるようになり利用者への影響が低減されます。
 なお、トンネルの改築は列車を運行しながら行うため、古いトンネルを包むように新しいトンネルのを構築します。東西線は当駅のすぐ東で線路が地上に出るためホームが浅い位置にあり、トンネルの天井がさらに浅くなると地下1階の階高を十分確保することができません。そこで、現在ホーム両端にある改札口はどちらも廃止し、新たに駅中央の線路上部に改札口を集約します。この際階段やエスカレータもホーム全体に分散するよう再配置し、懸案となっていた構内の混雑の緩和も合わせて実現されます。

2019年2月に改修が完了した南砂町駅3番出入口の階段下。左のスロープがある部分の先に新改札口への通路が新設される計画だが、コロナによる利用減のため動く歩道の設置は撤回された。
2019年2月に改修が完了した南砂町駅3番出入口の階段下。左のスロープがある部分の先に新改札口への通路が新設される計画だが、コロナによる利用減のため動く歩道の設置は撤回された。

 なお、2020年春以降の新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛、テレワークやオフピーク通勤の普及に伴い、南砂町駅や東西線全体の利用者数は大きく減少しています。そのため、今年夏に南砂町駅と同じく施設の拡張工事が進められていた木場駅の工事計画を大幅に見直すことが明らかとなりました。
 南砂町駅では当初駅中央に集約される改札口と、工事完成後も西船橋寄りに残る2a・2b・3番出入口をつなぐ通路に動く歩道を設置し、その通路途中から地上の駅前広場に出られる階段も設置する計画でした。しかし、利用者が減少傾向にあることからこのうち動く歩道と地上出入口の新設が取りやめられることになりました。また、2a・2b通路の途中には階段があり、バリアフリー化のためこれをスロープで埋める計画となっていました。しかし、新設される通路の途中にもエレベータが新設され、新改札口との間のバリアフリールートが確保できる見通しが立っていることから、スロープ化についても中止されることになりました。

新ホームへ通じる線路が出現

 南砂町駅改良工事は2013年夏から開始され、当初は2020年度までの完成が予定されていました。しかし、運河跡地の立地ゆえに着工後地中に予想外に大量の廃材が埋まっていることが判明し、その撤去に2年もの期間を要することになりました。さらに、地盤が極度に軟弱だったことから周辺の地盤改良や掘削に伴いトンネル全体が沈下・浮き上がる現象が発生し、安全対策が必要となったため工期が2027年度へ大幅に延長されることになりました。詳細は2020年に作成した記事「■トンネルの沈下・浮き上がりによる工事の中断の項目をご覧ください。
 このように工事は遅れに遅れていますが、掘削が完了した2021年以降は設備取り付けなど新ホーム使用開始に向けた準備が本格化しています。今回は8月24日に調査した現地の様子をレポートします。

地上の丸八通りから中野方面を見る。引き続き階段やエレベーターの開口部の仕上げが行われている。 階段用の開口部。内部には新改札口となる地下1階の床が見える。
左:地上の丸八通りから中野方面を見る。引き続き階段やエレベーターの開口部の仕上げが行われている。
右:階段用の開口部。内部には新改札口となる地下1階の床が見える。
上:地上の丸八通りから中野方面を見る。引き続き階段やエレベーターの開口部の仕上げが行われている。
下:階段用の開口部。内部には新改札口となる地下1階の床が見える。

 駅中央の地上を横断する丸八通りの西側は昨年に引き続きトンネル天井部分の仕上げが行われています。現在は階段やエレベーターなどを取り付けるための開口部が作られています。開口部の先には地下1階の改札口となる新しい床面が見えています。なお、昨年見られた傾斜のついた大きな開口部はエスカレーター用ではなかったようで、現在は埋められています。

西船橋寄りでは地下のトンネルの埋め戻しが完了し、地面がアスファルトで舗装された。 西船橋寄りでは地下のトンネルの埋め戻しが完了し、地面がアスファルトで舗装された。
西船橋寄りでは地下のトンネルの埋め戻しが完了し、地面がアスファルトで舗装された。
(同じ場所の様子:2012年2月18日2015年5月31日2020年9月19日


 西船橋寄りの新砂あゆみ公園跡地は、地下の古いトンネルの解体や新しいトンネルの構築が完了しました。こちら側は地下の通路や地上出入口の増設予定もないことから、覆工板が撤去されアスファルトで埋め戻されています。現時点では工事による新砂あゆみ公園の一部閉鎖期間は2026年3月までとなっており、今後もしばらくの間遊具の復旧などは行われないものと思われます。

既存のトンネル側壁撤去が続く地下のホーム。壁がなくなった部分では奥に軌道敷設が進む様子が見えた。 既存のトンネル側壁撤去が続く地下のホーム。壁がなくなった部分では奥に軌道敷設が進む様子が見えた。
既存のトンネル側壁撤去が続く地下のホーム。壁がなくなった部分では奥に軌道敷設が進む様子が見えた。

 地下のホームでは昨年に引き続き新ホームが建設されるB線側のトンネル側壁を取り壊す作業が続いています。新ホーム側では新しい中野方面行きとなる軌道の敷設作業も開始され、防護板の向こうへ続いていく新しい線路がフェンス越しに見えるようになりました。

西船橋寄りのホームの先はトンネルの側壁や天井の解体が完了しており変化はない。
西船橋寄りのホームの先はトンネルの側壁や天井の解体が完了しており変化はない。

 西船橋寄りのホームの先は、昨年の時点でトンネルの改築が完了しており変化はありません。右側へ続く新しいトンネルは現行の線路よりも床が高くなっていること、現在のトンネルは天井が一部撤去されていることから、今後は縦断線形(勾配)を一部変更した上で新ホームへ通じる線路のポイントを追加するものとみられます。

 南砂町駅の工事は「亀の歩み」ながら着実に進んでいる一方、木場駅については今年夏に工事を中断するという衝撃的な発表がされました。次回は木場駅の工事の現状や工事中断に至った経緯に関する考察をしてみようと思います。

▼参考
●Webサイト・資料
事業計画|東京メトロ
輸送サービスの改善篇 | 安全。安心。メトロの目
東西線建設史 | メトロアーカイブアルバム
資料6 東京メトロ東西線木場駅・南砂町駅の改良工事について - 江東区議会 令和4年第3回定例会 地下鉄8号線延伸・交通対策推進特別委員会(令和4年10月14日開催分)(PDF/454KB)
→南砂町駅改良工事の計画縮小・木場駅の工事休止についての詳細

●専門誌資料
列車遅延解消のための地下鉄駅2面3線化計画-東京メトロ東西線南砂町駅- - トンネルと地下2012年8月号27~32ページ
東西線南砂町駅2面3線化改良計画について - 土木学会地下空間シンポジウム論文・報告集第18巻119~122ページ
東西線南砂町駅改良工事における地中障害物の撤去 - 基礎工2017年2月号32~36ページ
南砂町駅における線路・ホーム増設の大規模改良 -東京地下鉄東西線南砂町駅改良土木工事- - 土木施工2019年11月号113~116ページ
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