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都営新宿線大島車両検修場の新車搬入とおこぼれ話
公開日:2022年01月03日18:05

昨年9月に都営新宿線の新車搬入を見る機会がありました。今回はその模様と撮影時のおこぼれ話を紹介したいと思います。
都営新宿線オール10両化計画


左(1):都営新宿線10-300形1・2次車。JR東日本の通勤電車E231系をベースとしている。10-320編成は、都営新宿線のATC更新のため先頭車のみを新造車に付け替えたもので10-300R形と称された。(2016年までに全車廃車解体済み)
右(2):10-300形の3次車以降はベース車をJR東日本のE233系2000番台に変更した。
都営地下鉄新宿線は、新宿駅から東京都心、城東地区のの住宅街を経由して千葉県市川市の本八幡駅に至る全長約23.5kmの地下鉄路線です。途中の東大島駅と船堀駅は荒川・中川を渡るため地上区間となっています。新宿駅からは京王線の高尾山口・橋本の各駅まで相互直通運転を実施しています。
開業時6両編成でスタートした都営新宿線は、順調に利用者数を伸ばしており編成両数も8両、10両と順次増結されてきました。当初10両編成は京王電鉄所属の車両のみでしたが、2010年に直通先の京王線笹塚駅の引上線が10両対応に延長されたことから、以後東京都交通局所属の車両も10両化が進められています。2018年までに開業時から使用されてきた10-000形は全て廃車となり、以後JR東日本のE231系・E233系をベースとした10-300形が8両と10両の混在した状態で運行されています。
2019年1月に発表された東京都交通局の経営計画において、2022年度までに都営新宿線の全列車を10両化することが盛り込まれました。昨年夏よりこれに必要となる新しい車両の製造が開始されています。なお、これまで10-300形の10両化は既存の8両編成に増結する形で行われてきましたが、技術進歩の反映なども考慮し今後は編成ごと新車に置き換える手法が取られることになりました。「古い10-300形を新しい10-300形で置き換える」という、かつて新幹線0系で起きたような同一形式間での置き換えが行われる珍しいケースとなっています。
新車搬入は大島車両検修場から

大島車両検修場車両搬入口付近の航空写真。赤枠で囲んだ部分が搬入口で、使用しない時は半透明の屋根が被せられている。車両基地本体(留置線など)は東大島駅や新大橋通りのさらに北側にある。
※航空写真は「国土地理院地図(電子国土Web)」より。
都営新宿線内の車両基地は路線のほぼ中央にある大島駅・東大島駅周辺にあります。車両基地本体は東大島駅の地下にあり、地上は盛土を行ったうえで大島小松川公園として開放されています。大島駅から分岐した入出庫線は南側(上記航空写真の「わんさか広場」の地下)を大きく迂回しながら車両基地につながっています。
この車両基地入口付近に地上と通じる車両搬入用の竪穴があり、都営新宿線の新車は全てここから搬入されています。なお、以前は廃車車両もここから搬出していましたが、現在は京王相模原線の若葉台駅に併設されている車両基地まで回送の後、車体を2つに切断してトラックで解体業者に引き渡すのが通例となっています。
昨年9月に搬入された新しい10-300形(10-650編成)は、神奈川県横浜市にある総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所で製造されました。製造後は一晩に2両ずつのペースで大島車両検修場までトレーラーで輸送され、翌朝にクレーンで地下の線路まで取り降ろされるという工程となっています。トレーラー輸送と車両基地への搬入を担当したのは物流総合企業のSBSロジコムです。SBSロジコムは読者の皆様には通販の宅配で馴染みが深い会社かと思いますが、実際は物流センターの運営や特殊貨物の輸送など企業間取引(B2B)をメインに手掛けています。鉄道車両の輸送では今回の10-300形の他に、同じJ-TREC横浜で製造された北陸新幹線E7系の輸送(工場~船積み港)を担当しているほか、変わったところでは2011年に江戸東京博物館で開催された企画展「東京の交通100年博」で展示する都電6086号車の輸送も行っています。
今回は新宿寄り先頭車(1号車)の10-659号車の搬入を見ることができました。
①台車の搬入

台車の積み降ろし作業
メーカーで製造された車両は車体と台車を分離し、台車はトラックに積載、車体は足回りを道路走行用のゴムタイヤ台車に履き替えて大島車両検修場まで運ばれてきます。そのため到着後はまず台車をクレーンで地下の線路に降ろします。
10-300形は増備途中でベース車両がJR東日本のE231系からE233系2000番台に変更されていますが、部品の共通化のため台車については双方で同一品を使用しています。この台車はE231系のDT61形(動力台車)・TR246形(付随台車)をベースに、都営新宿線の1,372mm軌間へ拡幅したものとなっています。
②車体の陸送用台車から仮置台への付け替え


左(1):車体を乗せたトレーラーがバックで搬入口横まで移動中。
右(2):車体を少しだけ持ち上げてゴムタイヤ台車から仮置台に入れ替える。こちらはエンジンが無いため人力で移動だ。
続いてゴムタイヤ台車に載った車体を搬入口の横まで移動させます。周囲のレイアウトの都合でトレーラーはバックで移動しますが、ドライバーは何度も切り返すようなことはせず慣れた手つきで一発で所定の位置に据え付けが完了しました。
搬入口横に到着後はクレーンで一旦車体を少しだけ持ち上げ、ゴムタイヤ台車を仮置台に入れ替えます。トレーラーヘッド(運転席)と逆側のゴムタイヤ台車はエンジンなどの動力源が無いため、外す際は4人がかりで押して移動させます。
③車体の搬入


左(1):仮置台に置かれている状態。
右(2):まずは車体を垂直に持ち上げる。
いよいよ車体の搬入です。最初現地に着いた際、搬入口横にスタンバイしている2台のクレーン車の間隔がどう見ても20m車両の長さより狭いため、どのように吊り上げるのか疑問に思いました。


左(1):回転し始めた車体
右(2):車体先頭部分と街灯が最接近した瞬間
吊り上がった車体はすぐに回転を始めました。何のことはありません。車体を縦にすることで車体長より狭いクレーンの間をすり抜けさせればよいのです。搬入口のすぐ横には道路が通っており、歩道に突き出す形で街灯が立っています。回転し始めた車体の先頭部分は街灯は一時2~3mまで接近しました。




左上:車体が縦に近い向きになりながら2台のクレーンのブームの間を通過。
右上:通過後は向きを徐々に横向きに戻す。
左下:搬入口の真上に到達。
右下:ゆっくりと地下の線路へ向けて吸い込まれていった。
右上:通過後は向きを徐々に横向きに戻す。
左下:搬入口の真上に到達。
右下:ゆっくりと地下の線路へ向けて吸い込まれていった。
1枚目:車体が縦に近い向きになりながら2台のクレーンのブームの間を通過。
2枚目:通過後は向きを徐々に横向きに戻す。
3枚目:搬入口の真上に到達。
4枚目:ゆっくりと地下の線路へ向けて吸い込まれていった。
2枚目:通過後は向きを徐々に横向きに戻す。
3枚目:搬入口の真上に到達。
4枚目:ゆっくりと地下の線路へ向けて吸い込まれていった。
2台のクレーン車に乗っているオペレーターは阿吽の呼吸で27トンある車体を操り、車体は大きく揺れることもなくクレーンのブームの間を無事通過しました。その後向きを搬入口に合わせて横向きに戻した後、地下の線路へ向けて静かに車体が吸い込まれていきました。ちなみに、搬入口の穴も車体ギリギリのサイズしかなく、クレーンのオペレーターは最後まで気が抜けません。
こうして無事に最後の1両の搬入が完了しました。搬入後の10-650編成は車両基地構内での調整・試運転の後、2021年11月28日(日)より営業運転に投入されています。今後は来年度にかけて本編成を含む全8編成の新造車両を投入し、都営新宿線の全列車が10両化される予定です。
▼参考
東京都交通局経営計画2019 | 東京都交通局
都営新宿線は全ての車両が10両編成になります | 東京都交通局
▼関連記事
都営三田線・都営新宿線(2006年6月16日作成)
京王線笹塚駅で撮った車両(2007年3月4日作成)
おこぼれ話:カメラが壊れたので買い替えたのですが…
今回のようにイベント以外で鉄道車両の吊り上げ作業を見られるのは珍しく、周りの方々と興奮しながら現地の光景を楽しんでいました。しかし、その時手に持っていたカメラには大変な事態が起きていたのです…

ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!!!!!!😱😱😱
背面液晶に走る無数の黒い線…完全に死んでいます…
この時使っていたカメラは2016年5月に購入したCanon PowerShotSX710HSで、早いもので6年目に突入していました。バッテリーは2個を交互に使用していたこともあり、多少持ちが悪くなったと感じる程度で機能上も特に問題はありませんでした。しかしながら年数が年数ですのでそろそろ買い替えようかと考え始めていた矢先のご臨終です…なお、2代前に使用していたSX130ISで液晶にヒビが入ってしまった反省から、液晶表面に強い力がかかるような持ち運び・保管方法は避けていたため、経年劣化による自然故障と考えられます。
物理的な故障ですので現地ではどうすることもできません。幸いこのカメラにはWi-Fi経由でデータを吸い出せる機能がありましたので、ひとまずその場で撮った画像をiPhoneに1枚転送し、データ自体に欠損が無いことを確認して搬入作業終了まではそのまま撮影を続行しました。終了後は夜勤明けですぐにでも帰って寝たい気持ちを押して千葉のヨドバシカメラへ直行し、代替機種を探すことにしました。
ところがですね、地下のカメラコーナーに着いたところ様子がおかしいんです。

ヨドバシカメラ千葉店のコンデジコーナーは今やこれだけ…
無いんです。5年前はズラリと並んでいたコンパクトデジカメのコーナーが棚わずか1列分まで縮小されてしまっていたのです。
確かにニュース等では、ここ数年スマートフォンのカメラの高性能化と入れ替わるように、カメラメーカーの撤退や赤字決算の話ばかりが聞こえてきていました。自分自身のここ数年のカメラ事情を振り返っても、iPhoneの内蔵カメラの飛躍的な性能向上もあってコンデジと半々で使うことが多くなっており、コンデジの地位は確実に低下しています。ただ、実際に量販店の売り場を覗いたのは久しぶりだったこともあって、目の前に広がる事態の深刻さに愕然としてしまいました。
この際ミラーレスやフルサイズ一眼への乗り換えもどうかと思い売り場も見てみました。しかしながら、筆者の場合以下のように撮影のシチュエーションが多岐に渡り、中級以上のコンデジ以外では全ての命題をクリアするのが難しい現実があります。
①鉄道の撮影はホーム上での近景から沿線での遠景まで距離が様々で高倍率のズームが必須(SX710の場合30倍、35mmフィルム換算で最大750mm)。
②確実にブレないことや、最近主流のLED式の案内板を鮮明に写す必要性からシャッター速度や感度の調整機能が不可欠である。
③工事現場の調査ではフェンスの隙間や上にカメラをさし出して撮影することもあるが、レンズ交換式のカメラではレンズ自体が大きく重いためこれが難しい。
④鉄道工事の調査では工事区間全長に渡り沿線を歩いて調査することもあるが、レンズを付け替えるためにいちいち何分も立ち止まっているとそれだけで時間を浪費してしまう。1日の取材効率は作成できる記事の数量やクオリティに直結する。また、通行量の多い道路では長時間立ち止まること自体が迷惑となる。つまり「すぐに取り出せ、すぐに撮れ、すぐ収納できる」機動性が必要である。(これが最も重要)

購入したCanon PowerShotSX720HS
この日はひとまずカタログを集めて持ち帰りましたが、結局数日後に店舗に在庫があったCanon PowerShotSX720HSを代替機として調達しました。新型コロナウイルス流行に伴う半導体不足も言われており、今在庫が払底してしまった場合次いつ入荷するのかわからないため、予算の都合がつく範囲内で調達を急ぐことにしました。近日中に記事公開予定の京王線高架化工事や渋谷駅山手線ホーム拡幅工事以降は、このカメラにて取材を行っています。
このモデル自体先代のSX710HSよりも発売が1年新しいだけで、めぼしい機能上の変化はズーム倍率が40倍(換算960mm)に向上した、USBケーブルで直接充電が可能になった程度です。さらに上位モデル選択肢を広げると一応2019年に発売されたものもありますが、それでも2年以上が経過しています。即ち、それだけ長期間Canonからはコンデジの新機種が登場していないことになり、今後の売れ行き次第では次回コンデジが故障しても代替となるコンデジが存在しない場合や、最悪のケースとしてメーカーの撤退も覚悟しなければなりません。将来的には使い勝手が比較的近いと思われる小型のミラーレス一眼への乗り換えか、特別に必要な場合以外はスマートフォンのカメラに一本化するといった思い切った方針転換も必要になりそうです。
「その時」がいつ来てもいいよう、購入資金は温存しておこうと心に誓ったのでした…
▼参考
キヤノン:コンパクトデジタルカメラ|PowerShot/IXY
▼関連記事
GWに向けて、デジカメ購入!(2006年4月29日作成)
→最初のコンデジであるPowerShotA700について
デジタル一眼購入しました(2008年2月24日作成)
→デジタル一眼のPENTAX K10Dについて(現在は使用してない)
カメラを買い換えました(2016年5月17日作成)
→先代・先々代のSX710HS・SX130ISについて
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