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まもなくリニューアルされる青梅鉄道公園
公開日:2023年07月27日13:15

JR青梅線青梅駅近くに、青梅鉄道公園という展示施設があります。施設の老朽化が進んでいることから、施設を運営するJR東日本は当施設を大規模にリニューアルすることを発表しました。2019年に当施設を訪問していましたが、諸般の事情で記事を作成していませんでした。今回はリニューアル前の記録ということで当施設の様子をレポートします。
青梅鉄道公園の歴史
青梅駅と青梅鉄道公園の地図(Googleマップ)
青梅鉄道公園は、JR青梅線青梅駅北側の永山公園内にあるJR東日本の鉄道車両展示保存施設です。園内には蒸気機関車など10両の鉄道車両の実物や、踏切警報機、鉄道模型のジオラマなどが展示されており、そのほとんどは来館者が自由に乗車したり操作することが可能となっています。近年この類の博物館施設は、展示品の充実等にかかるコストを回収するため、入場料が大幅に値上げされる傾向にありますが、青梅鉄道公園は現在に至るまで100円という破格に安い入園料を維持しています。この手軽さにより、東京都心からのアクセスにやや難がありながら年間数万人という安定した集客を得ています。

万世橋にあった交通博物館。JR東日本創立20周年記念事業として大宮の鉄道博物館へ移転することになり2006年で閉館となった。2006年5月4日撮影
青梅鉄道公園は1962(昭和37)年に日本での鉄道開業90周年記念事業として国鉄東京鉄道管理局により開設されました。当時東京の万世橋には交通博物館がありましたが、元々駅だった場所を博物館に転用したため非常に狭く、館内の混雑や展示品の拡充が困難であるという問題が生じていました。そこで交通博物館に次ぐ第2の展示施設を作る構想が持ち上がり、神奈川県小田原市(小田原城址公園)や横須賀市などいくつかの候補地が選定されました。その中で青梅市から永山公園の一部を提供するという強力なオファーがあり、周辺にあるハイキングコースとの相乗効果も期待できること、ちょうど同時期に青梅線が東青梅駅まで複線化され、交通手段確保が可能になったという事情からこの地が正式に選ばれることになりました。
展示される車両は当時進んでいた国鉄の無煙化により余剰となっていた蒸気機関車を中心に10両が選ばれ、3階建ての本館を取り囲むように配置されました。敷地は将来の展示車両追加も考慮した形で造成しており、実際に新幹線0系電車が追加で搬入(後述)されています。また、開館とほぼ同時期に碓氷峠(信越本線横川~軽井沢間)がアプト式から通常の電気機関車に改良されることから、将来それらを活用して永山公園頂上の展望台までアプト式鉄道やモノレールを敷設することも計画されていました。ただ、国鉄の経営悪化といった事情からこれらの計画は現在に至るまで実現していません。
現在の様子
国鉄分割民営化後はJR東日本の外郭団体である東日本鉄道文化財団が当施設を運営しています。現在までの間に老朽化による一部車両の撤去や2008年の鉄道博物館開館に伴う入れ替え等がありますが、おおむね開館当時のラインナップを維持しています。ここからは2019年8月に現地を訪れた際の様子を写真とともにレポートします。
左:青梅鉄道公園記念館(本館)。建設当時の国鉄の標準的な設計。
右上:1階は鉄道の歴史を解説するパネル
右下:現在は全て運行を終了した寝台列車のヘッドマーク。
右上:1階は鉄道の歴史を解説するパネル
右下:現在は全て運行を終了した寝台列車のヘッドマーク。
上:青梅鉄道公園記念館(本館)。建設当時の国鉄の標準的な設計。
中:1階は鉄道の歴史を解説するパネル
下:現在は全て運行を終了した寝台列車のヘッドマーク。
中:1階は鉄道の歴史を解説するパネル
下:現在は全て運行を終了した寝台列車のヘッドマーク。


左:鉄道模型ジオラマ。1時間に1回程度解説員による実演運転を実施している。
右:運転される車両は四季島やE353系など最新車両も含まれている。
右:運転される車両は四季島やE353系など最新車両も含まれている。
上:鉄道模型ジオラマ。1時間に1回程度解説員による実演運転を実施している。
下:運転される車両は四季島やE353系など最新車両も含まれている。
下:運転される車両は四季島やE353系など最新車両も含まれている。
青梅鉄道公園の入園口となっている記念館(本館)は開館時に建てられたもので、国鉄の操車場や車両基地でも見られたバルコニー付きのコンクリート建築となっています。1階には鉄道模型メーカー「カツミ」が制作したHOゲージのジオラマや、鉄道の歴史解説パネル、過去に国鉄~JRで運行されていた寝台列車のヘッドマークといった資料が展示されています。JR東日本が運営しているということもあって、模型ジオラマは新幹線E5系やTRAIN SUITE 四季島など最新型の車両が惜しみなく投入されています。概ね1時間ごとに解説員による実演運転が開催されており、それ以外の時間帯は来館者が操作可能となっています。


左:2階にある青梅鉄道公園の歴史と展示車両の解説
右:ゲームコーナーには貴重となった初代電車でGO!も(注:右側の電車でGO!3は現在撤去されている)
右:ゲームコーナーには貴重となった初代電車でGO!も(注:右側の電車でGO!3は現在撤去されている)
上:2階にある青梅鉄道公園の歴史と展示車両の解説
下:ゲームコーナーには貴重となった初代電車でGO!も(注:右側の電車でGO!3は現在撤去されている)
下:ゲームコーナーには貴重となった初代電車でGO!も(注:右側の電車でGO!3は現在撤去されている)
2階は青梅鉄道公園展示車両の解説パネルや子供向けの遊具が設置されており、今や貴重となったアーケードゲーム版の電車でGO!(初代EX)※もプレイできます。屋上も開放されており、展示車両を上から見ることもできます。
▼脚注
※写真にある電車でGO!3は2022年に撤去されており、現在は2の筐体に初代EXのデータがインストールされたものがプレイ可能。

屋外に展示されている蒸気機関車D51形452号機。手前の石碑は後に「新幹線の父」と呼ばれるようになる第4代国鉄総裁十河信二による。
実物の車両は記念館を取り囲むように展示されています。展示されている車両は鉄道草創期の輸入蒸気機関車から、旧型国電まで多岐に渡ります。開館当初は完全に露天での展示でしたが、劣化の原因になることから鉄道博物館開館に向けた展示車両入れ替えに合わせて一部を除き屋根が設置されました。文化財指定されている一部車両を除き階段が設置されており、運転台に入ることもできます。
なお、下記写真にある110号蒸気機関車は来訪直後2019年9月に展示終了となりました。青梅鉄道公園からの搬出後は、展示用に切開していたボイラー側面を塞ぐなどの修復を行い、2020年6月より桜木町駅新南口横にオープンしたCIAL桜木町ANNEX1階の「旧横濱鉄道歴史展示ギャラリー」で復元された木造客車や資料とともに展示されています。(現地写真)




左上:110号蒸気機関車など鉄道開業初期の輸入蒸気機関車。
右上:大正から昭和初期にかけて製造された蒸気機関車8620形の初号機。映画「鬼滅の刃 無限列車編」の機関車のモデルになった形式。
左下:昭和初期に製造された国産電気機関車E16形の初号機。青梅線では奥多摩駅先で産出する石灰石の輸送列車に使用された。準鉄道記念物・国の重要文化財指定。
右下:通勤電車クモハ40形。いわゆる旧型国電と呼ばれる形式の一つで、旧型では初めて全ての車両が長さ20mの車体で製造された。鉄道博物館に移設されたC51 5に代わり当施設に収蔵。
右上:大正から昭和初期にかけて製造された蒸気機関車8620形の初号機。映画「鬼滅の刃 無限列車編」の機関車のモデルになった形式。
左下:昭和初期に製造された国産電気機関車E16形の初号機。青梅線では奥多摩駅先で産出する石灰石の輸送列車に使用された。準鉄道記念物・国の重要文化財指定。
右下:通勤電車クモハ40形。いわゆる旧型国電と呼ばれる形式の一つで、旧型では初めて全ての車両が長さ20mの車体で製造された。鉄道博物館に移設されたC51 5に代わり当施設に収蔵。
上から順に
①110号蒸気機関車など鉄道開業初期の輸入蒸気機関車。
②大正から昭和初期にかけて製造された蒸気機関車8620形の初号機。映画「鬼滅の刃 無限列車編」の機関車のモデルになった形式。
③昭和初期に製造された国産電気機関車E16形の初号機。青梅線では奥多摩駅先で産出する石灰石の輸送列車に使用された。準鉄道記念物・国の重要文化財指定。
④通勤電車クモハ40形。いわゆる旧型国電と呼ばれる形式の一つで、旧型では初めて全ての車両が長さ20mの車体で製造された。鉄道博物館に移設されたC51 5に代わり当施設に収蔵。
①110号蒸気機関車など鉄道開業初期の輸入蒸気機関車。
②大正から昭和初期にかけて製造された蒸気機関車8620形の初号機。映画「鬼滅の刃 無限列車編」の機関車のモデルになった形式。
③昭和初期に製造された国産電気機関車E16形の初号機。青梅線では奥多摩駅先で産出する石灰石の輸送列車に使用された。準鉄道記念物・国の重要文化財指定。
④通勤電車クモハ40形。いわゆる旧型国電と呼ばれる形式の一つで、旧型では初めて全ての車両が長さ20mの車体で製造された。鉄道博物館に移設されたC51 5に代わり当施設に収蔵。


左:1段低い場所に展示されている新幹線0系
右:運転台も公開されており、特徴的な横型の速度計などを見ることもできる。
右:運転台も公開されており、特徴的な横型の速度計などを見ることもできる。
上:1段低い場所に展示されている新幹線0系
下:運転台も公開されており、特徴的な横型の速度計などを見ることもできる。
下:運転台も公開されており、特徴的な横型の速度計などを見ることもできる。
記念館がある場所から階段を下りた平場には新幹線0系の先頭車(22-75)が展示されています。この車両は1985(昭和60)年に追加されたもので、客室や運転台にも入ることができます。車体の窓周りや下回りがJR東日本のコーポレートカラーである緑に塗装されていた時期がありましたが、現在は正規の青に戻されています。
リニューアル後は201系が追加?
ここまで現状をレポートしてきた青梅鉄道公園ですが、開園から60年が経過し特に記念館については老朽化が著しくなっています。そのためJR東日本は、今年8月31日(木)をもって当施設を一旦休園し、大規模リニューアルに着手することを発表しました。リニューアル後の施設のコンセプトは「中央線・青梅線の鉄道の歴史を伝える学びの場」となっており、記念館の建て替えに加えて展示車両の見直し・追加も行うことになっています。

2010年に引退した中央線の201系電車。写真のクハ201-1が青梅鉄道公園に収蔵されるのだろうか?2006年12月27日撮影
中央線・青梅線では2010年に車両が全てE233系に変わりましたが、引退した先代の201系のうち、クハ201形の初号車(クハ201-1)のみが解体を免れて現在も豊田車両センターに保管されています。一部報道でこの車両が青梅鉄道公園の新規追加車両の候補になっていることが明らかとなっています。上記のコンセプトにも合致することから、201系が展示に加わる可能性は高いとみられます。
青梅鉄道公園の再開は2026年春の予定です。その頃には中央線・青梅線のグリーン車の営業も始まっているでしょうから、それと合わせて楽しみに待ちたいと思います。
▼参考
青梅鉄道公園(公式サイト)
青梅鉄道公園 - 国有鉄道1962年6月号
青梅鉄道公園の設立 - 汎交通第62巻4号(1962年8月号)
青梅鉄道公園のリニューアルについて - JR東日本ニュースリリース(PDF/296KB)
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