新綱島駅 - 相鉄・東急新横浜線開業(5)

東急新横浜線新綱島駅

少し間が空きましたが、相鉄・東急新横浜線の新規開業区間のレポートの続きです。5回目の今回は東急新横浜線新綱島駅の特徴についてレポートします。

第4回(新横浜駅のホームドアシステムについて):新横浜駅③ホームドアシステム - 相鉄・東急新横浜線開業(4)
第3回(新横浜駅改札内について):新横浜駅②地下の様子 - 相鉄・東急新横浜線開業(3)
第2回(新横浜駅地上から市営地下鉄コンコースについて)新横浜駅①地上の様子 - 相鉄・東急新横浜線開業(2)
第1回(相鉄線の特徴的な列車運行について):相鉄線内の様子 - 相鉄・東急新横浜線開業(1)

相鉄・東急新横浜線建設工事、最終章。(2022年3月~2023年2月)(2023年3月1日作成)
相鉄・東急新横浜線開業に向けた車両の動き(2023年3月8日作成)
相鉄・東急新横浜線の運行計画と開業記念イベント(2023年3月12日作成)

東急新綱島駅の概要

新綱島駅の位置
新綱島駅の縦断面図。日吉寄りの35mは推進工法により非開削でホーム階を形成する。
上:新綱島駅の位置(国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「年代別写真:2007年」に加筆)
下:新綱島駅の縦断面図。日吉寄りの35mは非開削によりホームを形成した。


 東急新横浜線新綱島駅は東横線綱島駅から綱島街道を挟んだ南東150mの住宅地の地下に設けられました。トンネルは新横浜駅と同じく開削工法で作られており、深さは約35m、階数は4層で、地下1階が改札口、地下2・3階が機械室とコンコース(階段踊り場・エスカレーター乗り継ぎフロア)、地下4階がホームとなっています。初期の計画では地下4階のホームは対向式ホームとなっていましたが、当駅から日吉方面が単線シールドトンネル2本となったことから、上下線間隔を確保するため島式ホームに変更されました。
 当駅周辺は鶴見川により形成された地下水を大量に含む軟弱な地層が40mの厚さで分布しています。そのため、掘削に先立ちトンネル外側に60mの深さまで鋼製の地中連続壁を形成し、地盤改良を多用して地盤の崩壊や地下水の流入を阻止しつつ慎重に掘削を進めました。これらの軟弱地盤対策には2年の歳月を費やし、新横浜線の開業が遅延する大きな原因にもなりました。
 また、当駅の日吉寄りはホームがアパートなどの下に食い込んでいる部分があります。この部分は、地下駅本体側から防水機能を備えた特殊ジョイント付きのエレメント(鋼管)を打ち込んでトンネルの外枠を形成し、内部を掘り広げることにより地表に手を加えることなくトンネルを作りました。同様の工法はつくばエクスプレス六町駅などでも採用例があり、開発を担当した戸田建設では「さくさくJAWS工法」(JAWS:Joint All Water Shutting)と命名しています。

▼参考
さくさくJAWS工法の開発 - 戸田建設技術研究報告第47号(PDF/4.7MB)

東急新綱島駅の様子

 ここからは新綱島駅の地上から地下のホームまでの完成状況についてレポートします。なお、調査したのは8月上旬であるため、現状と一部異なっている部分があります。(詳細後述)

●地上
工事が大詰めを迎えているドレッセタワー新綱島・新綱島スクエアと東急新横浜線新綱島駅南口
工事が大詰めを迎えているドレッセタワー新綱島・新綱島スクエアと東急新横浜線新綱島駅南口

 新綱島駅周辺の地上は新駅建設に合わせて区画整理が進められており、再開発ビルの1つである「新綱島スクエア」「ドレッセタワー新綱島」が間もなく完成します。新綱島スクエアは5階建ての複合施設で、1階から3階はスーパー「東急ストア」などの各種商業施設と医療モール、4・5階は港北区民文化センターとなっています。港北区民文化センターには401席の多目的ホールや展示ホールがあり、施設名は区民からの公募により「ミズキーホール」に決定しました。新綱島スクエアは今年冬以降、港北区民文化センターは来年3月24日(日)にオープン予定です。ドレッセタワー新綱島は地上29階建て、総戸数252戸のタワーマンションで、来年1月以降入居開始予定です。
 区画整理に合わせて新綱島駅の直上には駅前広場を兼ねた道路が整備予定となっていますが、現状では再開発ビルの工事が続いているため未完成となっています。新綱島駅の出入口はこの整備中の道路に沿う形で駅の両端・中央の3箇所に新設されました。

南口途中の踊り場から地上方向を見たところ。シャッターの向こうは新綱島スクエア地下階に通じており、10月22日に先行オープンした。 同じ場所から改札口方向を見る。鶴見川氾濫時の浸水防止のため重厚な防水扉が設置されている。
左:南口途中の踊り場から地上方向を見たところ。シャッターの向こうは新綱島スクエア地下階に通じており、10月22日に先行オープンした。
右:同じ場所から改札口方向を見る。鶴見川氾濫時の浸水防止のため重厚な防水扉が設置されている。
上:南口途中の踊り場から地上方向を見たところ。シャッターの向こうは新綱島スクエア地下階に通じており、10月22日に先行オープンした。
下:同じ場所から改札口方向を見る。鶴見川氾濫時の浸水防止のため重厚な防水扉が設置されている。

 鶴見川に近い南口は途中の踊り場までが2人幅の上りエスカレーターと階段、そこから地下1階までは1人幅の上下エスカレーターと階段になっています。踊り場からは建設中の新綱島スクエア地下階に接続しており、区民文化センター口として今月22日(日)に先行して使用が開始されました。地上の出入口建物には換気塔とトンネル内での火災発生時に使用する消防隊進入口が併設されており、地下4階のホーム端へ直結しています(後述)。

駅中央にあるエレベーター専用口は道路が未完成のため仮補装の通路で接続
日吉側にある南口。こちらも換気塔併設。
南口の通路途中にも地下駐輪場への接続口が準備されている。
左:駅中央にあるエレベーター専用口は道路が未完成のため仮補装の通路で接続
右上:日吉側にある南口。こちらも換気塔併設。
右下:南口の通路途中にも地下駐輪場への接続口が準備されている。
上:駅中央にあるエレベーター専用口は道路が未完成のため仮補装の通路で接続
中:日吉側にある南口。こちらも換気塔併設。
下:南口の通路途中にも地下駐輪場への接続口が準備されている。

 駅中央の出入口はエレベーター単独で、現状はアクセス道路が未完成のため工事中の新綱島スクエア敷地内にアスファルトで仮補装をしてルートを確保しています。日吉側の北口は地上から地下1階まで2人幅の上下エスカレーターと階段の構成になっています。こちらも途中の踊り場から将来整備予定の地下駐輪場への通路が接続可能になっています。なお、鶴見川に近いことから北口・南口ともに踊り場には地下への浸水を防止するための巨大な防水扉が設置されています。



●地下1~3階
地下1階中央の改札口。券売機の運賃表は東急のみ記載。
地下1階中央の改札口。券売機の運賃表は東急のみ記載。

 規模が小さい駅であることから改札口は駅中央の1箇所のみとなっています。自動券売機は磁気きっぷ用が2台とICカードチャージ専用が1台、自動改札機はきっぷ対応とICカード専用が3通路ずつの設置です。
 次の新横浜駅から相鉄線に入りますが、新横浜線開業にあたっては交通系ICカード(Suica・PASMO等)の普及状況に鑑み、東急・相鉄ともに直通先への連絡運輸(精算不要な連絡きっぷの発売)を設定しませんでした。そのため、自動券売機では東急線のみのきっぷが購入可能となっており、頭上の運賃表にも東急線の運賃のみが記載されています。鉄道事業者の連絡運輸の縮小はここ数年急速に進んでおり、残っていても接続駅から数駅程度に留まることが多くなってきています。

改札口正面のウォールアート。かつて当地で栽培されていた桃の木々をイメージしている。
改札口正面のウォールアート。かつて当地で栽培されていた桃の木々をイメージしている。

 改札口周辺は天井がホワイトのパネル、壁がグレー、柱はブラウン、床はホワイトに近い石材のようなタイルとなっています。ブラウンの柱は、かつて綱島駅周辺に多く存在した温泉の黒湯をイメージしたものです。自動改札機の真上は天井がやや高くなっており、その部分のみ間接照明となり天井のカラーも異なっています。
 改札を入ると正面にピンク色に照らされた木々が描かれたウォールアートがあります。綱島は明治から戦前にかけてモモが多く栽培されていたことからそれをイメージしたものとなっています。

地下3階へ降りる階段とエスカレーター 地下3階の踊り場(エスカレーター乗り継ぎ階)
左:地下3階へ降りる階段とエスカレーター
右:地下3階の踊り場(エスカレーター乗り継ぎ階)
上:地下3階へ降りる階段とエスカレーター
下:地下3階の踊り場(エスカレーター乗り継ぎ階)

 そのウォールアートを見つつ左右に進むと下層のコンコースへ降りる階段やエスカレーターがあります。新横浜側は2人幅の上下エスカレーター、日吉側は2人幅の上りエスカレーターの設置となっています。いずれも地下3階が踊り場になっており、位置がずれたり方向が枝分かれしています。

●地下4階
地下4階ホームの中央部分。幅は新横浜駅とほぼ同等。
地下4階ホームの中央部分。幅は新横浜駅とほぼ同等。

 地下4階のホームは島式で、幅は新横浜駅とほぼ同じく8mほどとなっています。内装は柱の色のみが変わりブルーまたはスカイブルーになっています。東急のみの使用駅であることから、案内板類は全て東急のフォーマットで作られています。

新横浜よりは複線シールドトンネルになるためホーム幅が徐々に狭まる ホーム端には南口の地上に直結する消防隊進入口
左:新横浜よりは複線シールドトンネルになるためホーム幅が徐々に狭まる
右:ホーム端には南口の地上に直結する消防隊進入口
上:新横浜よりは複線シールドトンネルになるためホーム幅が徐々に狭まる
下:ホーム端には南口の地上に直結する消防隊進入口

 新横浜寄りのホーム端はこの先が複線シールドトンネルになることから上下線間隔が徐々に狭まっていきます。ホーム端は新横浜駅と同じく幅が2mほどしかありません。ホーム端には消防隊進入口と書かれたドアがあり、先ほど説明した南口横に直結しています。

日吉寄りのホーム端は非開削でトンネルを構築したが壁の形状は通常の箱型トンネルと変わらない ホームの先は単線シールドトンネル。この付近のみホーム上の柱の形状や材質が違う。
左:日吉寄りのホーム端は非開削でトンネルを構築したが壁の形状は通常の箱型トンネルと変わらない
右:ホームの先は単線シールドトンネル。この付近のみホーム上の柱の形状や材質が違う。
上:日吉寄りのホーム端は非開削でトンネルを構築したが壁の形状は通常の箱型トンネルと変わらない
下:ホームの先は単線シールドトンネル。この付近のみホーム上の柱の形状や材質が違う。

 一方日吉寄りはホームの先が単線シールドトンネル2本に直結しています。このホーム端は冒頭で説明したように非開削でトンネルを形成した部分にあたりますが、上部に換気装置を設置するため中間に床板を設置してトンネルを上下に分割しています。また、側壁部分も鋼管表面が剥き出しにならないよう塞いでおり、開削部分との見た目の違いはホーム上に立っている柱の形状(他の部分は円柱なのに対し、ここは鉄製の細い角柱)程度になっています。
 なお、新横浜線の駅間トンネルは新綱島駅から日吉方面・新横浜方面双方への送気と新横浜駅での排気、新横浜駅から羽沢横浜国大方面への送気という方向で換気が行われています。ホーム端の線路天井には換気用のノズルが開いているのが確認できます。列車走行により発生する風圧を抜くため、ホーム端のノズルとは別に地上の換気塔に直結するバイパスダクトも設置されていますが、トンネル断面が小さいため列車接近・退出時にかなりの突風が発生します。この付近で列車を待つ際は手荷物が飛ばされないよう十分ご注意ください。

東急新横浜線新綱島駅到着シーン - YouTube ※風切音注意

日吉駅構内の復旧も進む

日吉駅の目黒線ホームは途中にあった折り返し運転用のシーサスが撤去され、停止位置を戻すための復旧工事中。
日吉駅の目黒線ホームは途中にあった折り返し運転用のシーサスが撤去され、停止位置を戻すための復旧工事中。(同じ場所の2017年10月9日の様子

 日吉駅構内は、新横浜線の工事期間中目黒線の折り返し機能を維持するため、ホームの途中にシーサスクロッシングを置き、留置線をホーム側に詰めていました。新横浜線が開業し、日吉駅での折り返し本数も減少したことから、4月以降はシーサスを撤去して削られていたホーム縁端を復旧する工事が進められています。2016年の記事でもお伝えした通り、目黒線の停止位置変更時に目黒寄りに新設されたホームの一部は仮設構造になっており、復旧工事完了後は停止位置を元に戻すものと思われます。

開業初日に新綱島駅改札前に並べられたスタンドフラワー。有名歌手のコンサート会場さながらである。
開業初日に新綱島駅改札前に並べられたスタンドフラワー。有名歌手のコンサート会場さながらである。

 開業初日の3月18日、新綱島駅の改札口前には駅周辺の商店会などから送られたスタンドフラワー(祝花)がずらりと並べられ、沿線住民の新横浜線に対する期待の高さを伺わせました。工事の難航による延期を経てようやく新横浜線は開業を迎えましたが、向こう1年ほどは一部箇所で工事が続きます。引き続き全ての完成まで調査を継続してまいります。

▼参考
2023.3.18相鉄・東急直通線開業|相鉄グループ
相鉄・東急 新横浜線 2023年3月開業予定| 東急電鉄株式会社
相鉄・東急新横浜線ご利用ハンドブック(PDF/27.23MB
営業線機能を確保した中での新路線建設工事-相鉄・東急直通線、日吉駅付近工事- 土木施工2019年11月号 89~92ページ
特集 相鉄新横浜線、東急新横浜線の機械設備 - R&M : Rolling stock & machinery 2023年4月号
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