新横浜駅③ホームドアシステム - 相鉄・東急新横浜線開業(4)

新横浜駅に停車中の東急5080系海老名行き

作成開始から延長に延長を重ねまして、相鉄・東急新横浜線新横浜駅の記事3回目の今回は相鉄・東急両社に対応した新横浜駅のホームドアシステムの特徴について解説します。

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線路によって異なるホームドア仕様

ホーム端から西谷方面を見る。相鉄の地上信号機が並ぶ。奥にある折り返し用のポイントは4番線出発のみの片渡り。 日吉方面を見る。こちらは東急のATC用設備が並ぶ。奥には折り返し用のシーサスがある。
相鉄・東急新横浜駅配線図。1番線は東急線側からしか入線できない。
左上:ホーム端から西谷方面を見る。相鉄の地上信号機が並ぶ。奥にある折り返し用のポイントは4番線出発のみの片渡り。
右上:日吉方面を見る。こちらは東急のATC用設備が並ぶ。奥には折り返し用のシーサスがある。
下:相鉄・東急新横浜駅配線図。1番線は相鉄線から入線できない。
上:ホーム端から西谷方面を見る。相鉄の地上信号機が設置されている。奥にある折り返し用のポイントは4番線出発のみの片渡り。
中:日吉方面を見る。こちらは東急のATC用設備が並ぶ。奥には折り返し用のシーサスがある。
下:相鉄・東急新横浜駅配線図。1番線は相鉄線から入線できない。

 新横浜駅は両方向とも真ん中の線路が上下線から枝分かれするのに加えて、複線部分にも折り返し用の渡り線が設置されています。そのポイントは東急側がシーサスクロッシングなのに対し、相鉄側は4番線から西谷方面へ出発する方向のみの片渡りとなっており、1番線は東急線からしか進入することができません

1番線のホームドア取り付け位置 4番線のホームドア取り付け位置
1番線(左)と4番線(右)のホームドアの設置位置比較。床のタイルとの位置関係に注目。1番線は狭幅車両しか入線しないためホームドアが縁端に近い。
1番線(上)と4番線(下)のホームドアの設置位置比較。床のタイルとの位置関係に注目。1番線は狭幅車両しか入線しないためホームドアが縁端に近い。

 前回もご説明した通り、新横浜線の各駅では国土交通省の移動円滑化基準に基づき、開業時よりホームドア(可動式ホーム柵)が設置されています。
 相鉄線の車体幅(車両限界)はJR東日本と同じ約3.0mなのに対し、東急線は地下鉄各線との直通があることから約2.8mと狭くなっています。羽沢横浜国大駅で分岐する相鉄・JR直通線が運休となった際に新横浜駅で折り返し運転を実施することを考慮し、1番線を除く各ホームは相鉄線の車体幅に合わせて作られています。ホームドアをよく見ると1番線とそれ以外のホームで取り付け位置が異なり、1番線の方が数cm線路側に近くなっているのがわかります。(写真の黄色い丸の部分が狭く、水色の丸の部分が広くなっている。)

2・3番線の6両編成先頭車停止位置のホームドアは片開きになっている
2・3番線の6両編成先頭車停止位置のホームドアは片開きになっている

 なお、2・3番線のうち、西谷寄りの6両編成先頭車(6号車)の停止位置のみ片開きの特殊なホームドアが採用されています。通常先頭車乗務員室部分のホームドアは、ホームドアの取り付け位置をホーム内側に膨らませた上で乗務員の通行スペースを確保し、戸袋間に乗務員の出入口を設けています。しかし新横浜駅では、6両停止位置の真横にエスカレーターがあり、ホームドアを内側に膨らませると乗客の通行スペースがなくなってしまいます。そのためやむを得ずホームドアを片開きにし、車両とホームドアの乗務員出入口の位置を一致させることにしました。



相鉄・東急双方に対応する車両・ホームドア連携システム

2・3番線の線路上には相鉄・東急双方に対応するため大量の地上子が置かれている
2・3番線の線路上には相鉄・東急双方に対応するため大量の地上子が置かれている

 一方列車走行の安全を守る信号保安装置も相鉄が地上信号機+ATS-Pなのに対し、東急はCS-ATCというように大きく異なっています。新横浜駅はこの異なるシステムの接続点となるため、双方に対応した重厚な信号設備となっています。中でも目を引くのが線路上に設置された大量の地上子です。

横浜高速鉄道Y500系の1号車先頭側台車直後に設置されているATO車上子と地上子の結合状況
横浜高速鉄道Y500系の1号車先頭側台車直後に設置されているATO車上子と地上子の結合状況

 東急目黒線・東横線および直通する地下鉄各線は、ワンマン運転のため全駅でホームドアを完備しています。ワンマン運転における運転士への負担軽減や、ホームドアの車両ドアの正確な位置合わせのため、これらの路線では運転操作を自動化するATO(自動列車運転装置)を設置しています。東急線内では駅間の運転操作を運転士が行なっており、駅停車時のみATOの機能の一つであるTASC(定位置停止装置)を使用してブレーキを自動化しています。
 TASCは駅手前から停止位置までの間に複数※1設置された地上子から停止位置までの距離情報を受信し、自動的にブレーキを調整しながら所定位置に列車を停止させるものです。車上子は目黒線・東横線ともに東京都心側先頭車(1号車)の運転台側台車の直後に取り付けられており、線路上の地上子もそれに合わせた位置に設置されています。駅停車中のホームドア開閉指令の送受信もこの車上子を通じて行っており、先頭車の車上子停止位置には細長い地上子(P4)が設置されています。

▼脚注
※1:P1・P1’(故障時の予備)が410m・400m手前、P2が20m手前、P3が1m手前(目黒線)または2m手前(東横線)に設置。

目黒線6・8両用P3・P4地上子。P3地上子は停止位置の1m手前に設置。 東横線10両用P3・P4地上子。P3地上子は2m手前に設置されており、目黒線と比べて停止位置精度が粗いことからP4地上子が長くなっている。
左:目黒線6・8両用P3(距離情報)・P4(ホームドア連携)地上子。P3地上子は停止位置の1m手前に設置。
右:東横線10両用P3・P4地上子。P3地上子は2m手前に設置されており、目黒線と比べて停止位置精度が粗いことからP4地上子が長くなっている。
上:目黒線6・8両用P3(距離情報)・P4(ホームドア連携)地上子。P3地上子は停止位置の1m手前に設置。
下:東横線10両用P3・P4地上子。P3地上子は2m手前に設置されており、目黒線と比べて停止位置精度が粗いことからP4地上子が長くなっている。

 目黒線系統の路線は、ホームドアやATO導入に際して完全な新車を用意しました。これらの新車はブレーキが15~31段階に細分化されており、±35cmという高い停止位置精度を実現しています。一方東横線系統では新車投入に加え既存車両を一部改造することによりATOに対応させました。これら既存車両の中にはブレーキが手動と同じ7段階のままになっているもの※2もあり、目黒線系統と同等の停止位置精度を確保するのが困難でした。そのため東横線系統では停止位置の許容範囲が±55cmに緩和されています。この仕様の違いは地上側にも表れており、東横線の10両停止位置にあるP4地上子は目黒線用に比べて若干長くなっています。
 なお、上記の既存車両改造の経緯により目黒線と東横線では車上子の取り付け位置がわずかにずれています。東横線用の8両編成は、目黒線に合わせて設置された新横浜線内の地上子と結合ができないため、現時点で新横浜線での営業運転は行われていません。

▼脚注
※2:東武9000系などが該当

新横浜駅の相鉄S-TASC-P0地上子 東急5080系先頭車運転席直下に設置されているATS-P車上子
左:新横浜駅の相鉄S-TASC-P0地上子
右:東急5080系先頭車運転席直下に設置されているATS-P車上子
上:新横浜駅の相鉄S-TASC-P0地上子
下:東急5080系先頭車運転席直下に設置されているATS-P車上子

 一方相鉄線側も現在各駅にホームドアの設置を進めており、縦長のTASC(S-TASC)地上子が順次設置されています。S-TASCも動作原理は東急のTASCとほぼ同じですが、車上子は専用のものではなく先頭車の運転席直下にあるATS-P車上子で兼用しています。
 新横浜駅ではS-TASCの距離情報地上子に加えて、1号車の停止位置に日の字型のコイル状をした細長い地上子が設置されています。設置されている場所は停車目標標識の直前で、上記のATS-P車上子とちょうど重なります。地上子には「S10-P0」(10両用)または「S8-P0」(8両用)と書かれており、距離情報用のS-TASC地上子と続番になっています。

相鉄横浜駅のホームドア 天井から吊り下げられている開閉検知センサー
左:相鉄横浜駅のホームドア
右:天井から吊り下げられている開閉検知センサー
上:相鉄横浜駅のホームドア
下:天井から吊り下げられている開閉検知センサー

 これまでホームドアが設置されてきた相鉄線の各駅では、ホーム天井に設置した光センサーを使って定位置検出やドアの開閉連動を行っていました。新横浜駅ではこれらのセンサー類は見当たらず、代わりにこのP0地上子が設置されています。この地上子について資料を探したところ、鉄道の信号機器メーカーである京三製作所の製品情報誌「京三サーキュラー」に該当する記事があるのを発見しました。資料を元にシステムの動作イメージを描き起こすと以下のようになります。

新横浜駅の車両とホームドアの連携イメージ(相鉄線から到着時) 新横浜駅の車両とホームドアの連携イメージ(東急線への出発時)
新横浜駅の車両とホームドアの連携イメージ。相鉄線からの到着時はATS-PとS-TASC-P0地上子を使ってドアを開ける。東急線への発車時はATO車上子とP4地上子を使ってドアを閉める。

 相鉄線から新横浜駅に到着した際は、ATS-P車上子とS-TASC-P0地上子からホームドアの開扉指令を送信します。乗務員が交代して運転台のマスコンキーが相鉄から東急に差し替えられると、ATS-P・S-TASCの機能を停止し代わりに東急のCS-ATC・ATOが起動します。東急線への出発時は、ATO車上子とP4地上子からホームドアの閉扉指令を送信して発車します。
 相鉄のS-TASCは車上子をATS-Pと共有するなど、そのハードウェアの多くをATS-Pに依存したシステムとなっており、東急のATO/TASCとは互換性がありません。また、前記した通り新横浜駅には緊急時に相鉄・JR直通線の列車が乗り入れることが想定されていますが、20000系・21000系以外の相鉄車両やJR東日本の車両は東急のATO/TASCを搭載しておらず、東急とは別のシステムでホームドアと連携する必要があります。そこで開発されたのがこのS-TASCを利用したホームドア連携システムです。
 なお、11000系以前の相鉄車両は新横浜駅への乗り入れが不可能であることが、最近開催された相鉄のイベントの中で公表されました。具体的な理由は不明ですが、もしかするとこの地上子を使用したホームドア連携システムに対応していないのかもしれません。
 予定を変更して3回に分割した新横浜駅の解説は今回で終了です。次回は新綱島駅の現地の様子についてレポートします。

▼参考
2023.3.18相鉄・東急直通線開業|相鉄グループ
相鉄・東急 新横浜線 2023年3月開業予定| 東急電鉄株式会社
相鉄・東急新横浜線ご利用ハンドブック(PDF/27.23MB
特集 相鉄新横浜線、東急新横浜線の機械設備 - R&M : Rolling stock & machinery 2023年4月号
信号通信設備新設・改修 : 制御システム間の協調、多種・多編成などの問題を解決し、相互乗り入れネットワークを拡大 : 相鉄・東急新横浜線開通 - 京三サーキュラー2023年号
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