カテゴリ:鉄道:建設・工事
千駄ヶ谷駅改良工事(2019年取材)
公開日:2019年04月12日07:24

2020年東京オリンピックまで500日を切りました。会場近隣となる中央線の千駄ヶ谷駅では、現在ホーム増設を中心とする改良工事が進められています。着工まもない2017年にこの工事について調査を行いました。それから2年が経過し、現地では新ホームの本体工事が進んでいます。2月に現地の様子を再調査してまいりましたので、その様子をお届けします。
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千駄ヶ谷駅改良工事(2016・2017年取材)(2017年10月11日作成)
千駄ヶ谷駅改良工事の概要

完成間近の新国立競技場
中央線千駄ヶ谷駅は、1904(明治37)年8月の甲武鉄道飯田町~中野間電化時に開設されました。その後何度か駅舎を改築していましたが、1964(昭和39)年に駅南側にある国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)が東京オリンピックのメイン会場となるのに合わせて高架橋を拡幅し、現在使用している島式ホームに加えて多客時に新宿・中野方面行き列車が使用する臨時ホームが設置されました。この臨時ホームは、駅舎との間が階段2箇所でしか連絡されておらず、屋根も無いことから1964年の東京オリンピック開催時に使用された以外は常時閉鎖となっており、ホーム上は広告スペースなどに活用されてきました。
時代は流れて2013(平成25)年9月7日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)第125次総会において、2020年夏季オリンピックの開催地が東京に決定しました。2020年東京オリンピックでは、国立競技場が再びメイン会場として使用されることになっており、旧競技場は2014年に解体され、現在跡地で新競技場の建設が進められています。

千駄ヶ谷駅改良工事のポイント
新しい国立競技場は収容人数が旧競技場の5万4千人から6万8千人(オリンピック終了後はトラックにも観客席を増設し8万人)へ大幅に増加することになっています。そのため、競技場最寄り駅となる千駄ヶ谷駅では増加する観客利用に対応する改修工事が必要となりました。そこで、1964年に設置された臨時ホームを活用して東京方面行きと中野方面行きのホームを分離し、混雑緩和を図ることになりました。改良工事では、ホームの分離に加えてコンコースの拡張、臨時ホームへのエスカレータ・エレベータ設置(現ホームは大型化)、さらにさらなる安全性向上のため各ホームへのホームドア設置も計画されています。臨時ホームを活用したホームの方向別分離は山手線の原宿駅でも計画されており、隣の代々木駅・信濃町駅のホームドア設置と合わせた総事業費は約250億円を見込んでいます。
新ホームが形に
千駄ヶ谷駅改良工事は2016年夏より開始されています。2016年9月には旧臨時ホーム直下にあった改札口の使用を終了し、若干新宿寄りに設けられた仮駅舎の使用を開始しています。旧臨時ホームの構造物は長年の放置により老朽化が進んでおり、そのままでは屋根やホームドアの追加が不可能だったため一部を残して取り壊され、跡地での新ホームの建設が進められています。今回は昨年8月と今年2月に調査した現地の様子を合わせてお届けします。
●2018年7月18日


左(1):完成した新ホームの東京寄り。7月上旬にはこの部分の報道公開が実施された。
右(2):残りの部分は支柱の一部が立ち上がったのみで全くの未完成。
昨年7月調査時点では、新ホームの東京寄り1/3程度の床と屋根の骨組みが完成した状態でした。同月上旬にはこの部分の報道公開が行われており、それに間に合わせるため大急ぎで完成させた模様です。その他の部分については支柱が一部立ち上がっただけの全くの未完成状態でした。
●2019年2月16日


左(1):新宿方面に新ホームの工事が進んだ。
右(2):新宿寄りの数十mは旧臨時ホームの支柱を流用している。(同じ場所の2017年10月7日の様子)
前回の調査から半年が経過し、残りの部分についても床や屋根の構築が進んでいます。床は工場既製品のコンクリート板を敷き詰めていくことにより構築されています。道路の上に重なる新宿寄りの数十メートルは旧臨時ホームの床を支えていた鉄骨が残されていましたが、この鉄骨はそのまま流用されコンクリート板を敷いた上で屋根を支えるための支柱が接合されています。ホーム中央付近の屋根は直下にある改札口の屋根を兼用しており、ホームよりも奥行きのある構造になっています。


左(1):ホームドア設置に対応するため、ホーム中央付近の屋根が建て替えられた。(同じ場所の2018年7月18日の様子)
右(2):新宿寄りのホーム端にあるエレベータは大型化された。
現ホームの形状自体に変更はありませんが、屋根については支柱がホーム縁端近くに設置されており、そのままホームドアを追加すると乗降の妨げになることから、従来よりも内側に支柱を設けた新しい屋根への建て替えが実施されました。支柱の本数が従来よりも少なくなった他、屋根自体の高さも従来より高くなり、開放感のあるホームとなりました。
また、現ホームの新宿寄りの端に設けられていたエレベータは定員の多い大型機に取り替えるため、2017年9月より使用停止となっていました。大型エレベータへの取替え工事は3月下旬に完成し、使用が再開されました。新しいエレベータは将来乗降に使用しなくなる1番線(中野方面行き)側に寄せて設置されています。

2月下旬に使用を開始した新しいトイレ。右奥は心ホームへ通じる階段。
新ホーム下では新しい駅舎の建設も開始されており、2月下旬にはその一部であるトイレの使用が開始されました。新しいトイレは国立競技場でのイベント開催時の利用客の増加に対応するため便器や洗面台の数量が増やされた他、単一路線の駅としては珍しく多機能トイレが2室、ベビー休憩室(おむつ交換・授乳スペース)も設けられるなど充実した設備となっています。
都内ではこの他に原宿駅や新木場駅などオリンピック会場近隣の駅で駅舎の改築や階段の増設などの改良工事が進められています。これらについても順次調査を進めていますので、まとまり次第お伝えします。
▼参考
駅改良の工事計画について - JR東日本(2016年6月8日発表)(PDF/595KB)
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