カテゴリ:鉄道:建設・工事
千駄ヶ谷駅改良工事(2020年6月28日取材)
公開日:2020年07月19日11:26

2020年3月22日、中央線千駄ヶ谷駅で工事中だった新ホームの使用がついに開始されました。現地ではその後ホームドアの使用も開始しています。6月末に完成した施設の状況を調査してまいりましたので、最終回として記事にします。
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2020東京オリンピックに向けた千駄ヶ谷駅改良工事

昨年11月に完成した新新国立競技場
中央線千駄ヶ谷駅は、1904(明治37)年8月の甲武鉄道飯田町~中野間電化時に開設されました。その後何度か駅舎を改築していましたが、1964(昭和39)年に駅南側にある国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)が東京オリンピックのメイン会場となるのに合わせて高架橋を拡幅し、現在使用している島式ホームに加えて多客時に新宿・中野方面行き列車が使用する臨時ホームが設置されました。この臨時ホームは、駅舎との間が階段2箇所でしか連絡されておらず、屋根も無いことから1964年の東京オリンピック開催時に使用された以外は常時閉鎖となっており、ホーム上は広告スペースなどに活用されてきました。
時代は流れて2013(平成25)年9月7日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)第125次総会において、2020年夏季オリンピックの開催地が東京に決定しました。2020年東京オリンピックでは、国立競技場が再びメイン会場として使用されることになっており、昨年11月末には新しい競技場施設が完成しました。

千駄ヶ谷駅改良工事のポイント
新しい国立競技場は収容人数が旧競技場の5万4千人から6万8千人(オリンピック終了後はトラックにも観客席を増設し8万人)へ大幅に増加することになっています。そのため、競技場最寄り駅となる千駄ヶ谷駅では増加する観客利用に対応する改修工事が必要となりました。そこで、1964年に設置された臨時ホームを活用して東京方面行きと中野方面行きのホームを分離し、混雑緩和を図ることになりました。改良工事では、ホームの分離に加えてコンコースの拡張、臨時ホームへのエスカレータ・エレベータ設置(現ホームは大型化)、さらにさらなる安全性向上のため各ホームへのホームドア設置も計画されています。臨時ホームを活用したホームの方向別分離は山手線の原宿駅でも行われており(近日記事公開予定)、隣の代々木駅・信濃町駅のホームドア設置と合わせた総事業費は約250億円を見込んでいます。
新ホームが完成・ホームドアも稼働
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、2020年の東京オリンピックは1年間開催が延期されることが決定しています。一方、インフラ整備については予定通り進められており、千駄ヶ谷駅でも3月22日(日)に新ホームの使用が開始されました。今回は新ホーム使用開始直後の3月29日とホームドア使用開始後の6月28日に調査した現地の様子をお届けします。

新ホーム使用開始後既存ホームでは直ちに固定柵の設置が行われた。2020年3月29日撮影
3月22日の新ホーム使用開始後、使用しなくなった既存ホームの1番線側にロープが張られ、ステンレス製の固定柵を設置する工事が急ピッチで進められました。ちなみに、固定柵は各々の高さがずれて設置されているように見えますが、これはホーム全体が勾配になっているためです。(固定柵自体は水平)


左(1):地面にタイルが張られた千駄ヶ谷駅入口。2020年3月15日撮影
右(2):柱に木製の化粧材が追加された改札内コンコース。
新ホーム直下の改札口やコンコースについては昨年秋までにほとんどの施設が完成済みとなっています。その後はコンコース内の化粧材の一部追加や駅前広場のタイル敷き詰めなどが行われ、全ての工事が完成しました。

千駄ヶ谷駅新ホームと稼働を開始したホームドア。
新ホーム使用開始から2か月が経過した5月12日(火)には、ホームドア(可動式ホーム柵)が設置されました。ホームドアは調整の後、6月13日(土)より稼働を開始しました。
千駄ヶ谷駅のホームドアは現在京浜東北線で設置が進められているものと同等の構造になっており、山手線に導入済みのものと比べドア部分の窓の天地寸法が少し大きくなっています。戸袋の上部には中央・総武線各駅停車のラインカラーであるイエローのラインが配されています。後述する通りTASCが設置されたため、ドアの開口幅は2m(停止位置精度は±35cm)と狭くなっています。また、現在中央・総武線各駅停車を走行するE231系電車は、先頭車の第1ドア(運転席直後)と第2ドアの間がE233系以降の形式とは異なる6人掛け座席となっておりドアの間隔がやや広くなっています。今回設置された千駄ヶ谷駅のホームドアは、第1ドアの開口幅が広くとられており、将来的にE233系以降と同じ寸法の車両が導入された場合も手直しがいらないよう配慮されています。


左(1):先頭車の第1ドア間はホームドアの開口幅が広くなっている。
右(2):中央・総武線E231系500番台運転台のTASC表示灯。下段のランプは転用時に追加された「インチング制御中」ランプ。
山手線から中央・総武線各駅停車に転用されたE231系500番台は、山手線時代に全編成でTASC(定位置停止装置)を搭載しています。(6M4T化された0番台の残留編成については、編成構成の変更時に追加でTASCを搭載)中央・総武線各駅停車では代々木・千駄ヶ谷・信濃町の3駅に加え、近日中に浅草橋・錦糸町・亀戸・小岩・下総中山・西船橋の各駅でホームドアの使用を開始する計画となっています。ホームドア設置に伴い停止位置精度向上が不可欠となることから、設置対象の各駅ではTASC用の地上子の設置が進められており、代々木・千駄ヶ谷・信濃町の各駅では3月以降停車時のTASC使用を開始しています。
なお、中央・総武線各駅停車のTASCでは遅延防止対策として「インチング制御」と呼ばれる機能が新たに追加されています。これは停止位置がずれてしまった際、運転士がマスコンを1ノッチに入れるだけで自動的に停止位置を修正する機能です。詳細は別の機会で詳しく説明します。
最後の6ドア車が消滅


左(1):中央・総武線各駅停車のE231系に連結されていた6ドア車(サハE230形)。2019年2月20日撮影
右(2):6ドア車の特徴だった平日朝ラッシュ時の座席収納。2019年3月11日撮影
中央・総武線各駅停車では、1999(平成11)年のE231系900番台導入以降5号車に収納式の座席を備えた6ドア車が連結されてきました。6ドア車はラッシュ時の輸送力向上に大きな威力を発揮してきましたが、2000年代以降ホームドアが普及し始めて以降は、その狭いドア間隔のためホームドア設置の支障となる問題が浮上してきました。ホームドア設置計画と並行して山手線では新型車両のE235系導入が進められていたことから、これにより発生するE231系500番台を中央・総武線各駅停車に転用して4ドア車への統一を図ることされ、今年3月14日(土)のダイヤ改正をもって6ドア車の運用は完全に終了しました。
こうしたホームドア導入に伴う多扉車の排除は首都圏の他の路線でも進められており、東京メトロ日比谷線で運行されていた5ドア車(東京メトロ03系・東武20050系)が引退しています。急速に進むホームドア設置とともにこういった車両の変化についても注目してまいりたいと思います。
▼参考
駅改良の工事計画について - JR東日本(2016年6月8日発表)(PDF/595KB)
千駄ケ谷駅 新駅舎及び新ホームの供用開始について - JR東日本(2019年9月17日発表)(PDF/511KB)
より安全な駅ホーム・踏切の実現に向けた取組みについて - JR東日本(PDF/2MB)
中央総武緩行線のホームドア整備工事着手について - JR東日本千葉支社(PDF/338KB)
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