東京メトロ銀座線渋谷駅移設 - 渋谷駅再開発2018(2)

ゴールデンウィーク中に敷設された新しい線路を走行する銀座線1000系

渋谷駅再開発事業の続きです。2回目の今回は、ゴールデンウィーク中に3日間列車の運転を中止して実施された東京メトロ銀座線渋谷駅のホーム移設事業についてお伝えします。

(1)渋谷駅再開発事業の概要はこちら

もくじ
■渋谷駅の乗り換え動線の現状
■銀座線ホームを東口へ移設
■線路の切替工事が進む
①第1回線路切替工事(2016,11,05~06・19~20)
②第2回線路切替工事(2018,05,03~05)
■線路切替工事中の銀座線区間運転
■今後の計画

渋谷駅の乗り換え動線の現状

ハチ公前交差点から見た渋谷駅(東急百貨店東横店東館取り壊し前) 東急百貨店東横店西館2階の駅コンコース。左の階段を上ると銀座線ホーム、右奥に行くとJR山手線玉川改札。
1枚目(左):ハチ公前交差点から見た渋谷駅(東急百貨店東横店東館取り壊し前)。2008年6月14日撮影
2枚目(右):東急百貨店東横店西館2階の駅コンコース。左の階段を上ると銀座線ホーム、右奥に行くとJR山手線玉川改札。


 現在の渋谷駅は、ハチ公口を基準として東京メトロ銀座線のホームが地上3階、JR山手線・埼京線・湘南新宿ラインと京王井の頭線ホームが地上2階、東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線のホームが地下3階、東急東横線・東京メトロ副都心線のホームが地下5階にそれぞれ位置しています。これらの各施設は東急百貨店東横店の建物の間や道路下など数々の制約を受けながら増改築を繰り返してきたため、乗り換え動線が極めて複雑化しており、ゲームに例えて「迷宮」「ダンジョン」と揶揄されるなど多くの利用者から不評を買っています。

▼脚注
これを元ネタにしたスマホゲームも存在する。


JR中央改札正面にある銀座線降車専用改札口。山手線の線路真上にあるため、エレベータなどが設置されていない。 車椅子やベビーカーで銀座線渋谷駅に降車する場合、東急百貨店店内のエレベータで地上へ降りることになる。
1枚目(左):JR中央改札正面にある銀座線降車専用改札口。山手線の線路真上にあるため、エレベータなどが設置されていない。
2枚目(右):車椅子やベビーカーで銀座線渋谷駅に降車する場合、東急百貨店店内のエレベータで地上へ降りることになる。


 また、地上の各施設は増築を繰り返してきたことにより階高が統一されておらず、スロープ数m分、あるいは階段数段分といった微妙な段差が各所に生じています。特に、東京メトロ銀座線ホームとJR中央改札の間には階段が数段ありますが、山手線の真上に階段があるという立地条件により今日までリフトやエレベータなどの段差解消機器が一切設置されない状態が続いています。このため、車椅子やベビーカーで銀座線から山手線に乗り換える場合、東急百貨店店内のエレベータ(デパート営業時間内のみ利用可)を使って一旦地上に降りた後、JR南改札から入って再度2階のホームへ上がるなど異常なまでの迂回を強いられています。

銀座線ホームを東口へ移設

現在の渋谷駅の階層図 再開発後の階層図
1枚目(左)が現在の渋谷駅の階層図、2枚目(右)が再開発後の階層図。再開発後は銀座線ホームを東口バスターミナル上へ130m移設し、ホーム両端に設けるアーバンコアや乗換コンコースを通じて他の路線との連携を強化する。

 東京メトロ副都心線開業ならびに東急東横線地下化により、渋谷駅の重心はJR山手線から東口バスターミナルへ移動しました。山手線の真上にホームがあるという現在の立地では拡張に限度があることから、再開発にあわせて思い切って銀座線の駅全体を東口バスターミナル上空へ移動させることにしました。移動に合わせてホームの形状を対向式2面2線から、1番線を行き止まり式とした幅12mの島式ホーム1面2線に変更します。このため、現在の乗降ホーム分離は取りやめ、渋谷車庫への入出庫列車を除きホームで直接折り返す一般的な終端駅のスタイルに変わります。
 島式化後の銀座線改札口はホーム両端(再開発ビル中央棟・渋谷ヒカリエ)に集約されます。終端側改札口先の中央棟3階は同一高さにJR線の改札口が設けられた乗り換えコンコースとなります。表参道側の改札口は渋谷ヒカリエに直結し、同ビル内にあるアーバンコアを通じて地下にある副都心線・東横線渋谷駅への乗り換え口となります。これにより乗り換え動線の簡略化やバリアフリー化など長年の懸案事項を一気に解決します。
 また、現在の銀座線の高架橋は建設が古く、バスターミナル内に橋脚が林立していました。このままでは再開発後の地上空間の利用に制約が生じるため、高架橋は全面的に架け替えて橋脚をバスターミナル東西と中央の3本に集約することとしました。



線路の切替工事が進む

※この先画像が41枚(2.1MB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。
2013年以降は銀座線の線路を工事桁に作り変えるとともに、南側で将来1番線となる橋桁を構築する工事が行われた。
2013年以降は銀座線の線路を工事桁に作り変えるとともに、南側で将来1番線となる橋桁を構築する工事が行われた。

東口バスターミナル内に建てられた銀座線の新しい橋脚(P4)。 銀座線渋谷駅ホーム端から表参道方面を見る。線路が一部工事桁に作り変えられている。
1枚目(左):東口バスターミナル内に建てられた銀座線の新しい橋脚(P4)。2013年5月6日撮影(同じ場所の様子:2013年1月2日/2013年2月9日
2枚目(右):銀座線渋谷駅ホーム端から表参道方面を見る。線路が一部工事桁に作り変えられている。2015年2月21日撮影(同じ場所の様子:2008年7月6日


 銀座線の新しい渋谷駅の工事は東横線地下化より前の2012年頃より本格化しています。まず東口バスターミナル内で銀座線両脇に将来新しい高架橋を支えることになるコンクリート製の橋脚を建てる工事が行われました。東横線地下化後は東急百貨店東横店東館の取り壊しと並行して現行の銀座線ホームや線路を鉄骨などでできた工事桁に作り変える作業が行われ、将来の撤去に向けた準備が進められました。

①第1回線路切替工事(2016,11,05~06・19~20)
2016年11月の第1回切替。A・B線を2回に分けて南側へ移設し、北側の桁架設を可能にする。
2016年11月の第1回切替。A・B線を2回に分けて南側へ移設し、北側の桁架設を可能にする。

 2016年に入ると、完成した南側の橋脚の上に将来A線(1番線・行き止まり)が載る鋼製桁が架けられました。北側の桁は予定地にB線(浅草方面)の線路がカーブしながら重なっており、そのままでは架設することができません。そこで2016年11月の週末2回に渡り、銀座線を区間運休した上で線路を移設する工事が実施されました。

渋谷ヒカリエ9階から線路移設前の様子を見る。ホームを出るとすぐに右に若干カーブしていた。 第1回切替工事中。これは1回目の週末で、左のA線のみ移設されている。 工事終了後。2線とも左側に移設され、直線的な線形に変わった。
1枚目(左):渋谷ヒカリエ9階から線路移設前の様子を見る。ホームを出るとすぐに右に若干カーブしていた。2014年10月12日撮影
2枚目(中):第1回切替工事中。これは1回目の週末で、左のA線のみ移設されている。2016年11月6日撮影
3枚目(右):工事終了後。2線とも左側に移設され、直線的な線形に変わった。2016年11月20日撮影


渋谷ヒカリエ3階から第1回切替工事を見る。工事桁の設置が終わったため、レールをクレーンで吊り上げて設置場所まで移動している。
渋谷ヒカリエ3階から第1回切替工事を見る。工事桁の設置が終わったため、レールをクレーンで吊り上げて設置場所まで移動している。

 この工事は東口バスターミナル上の銀座線の線路を全長176mに渡り最大3.7m南側移設するものです。移設にあたっては元々ある軌道をそのまま横移動させる案と新品に取り替える案の2つが検討されました。横移動案ではレールなどの寸法が現物合わせとなり、調整に手間取って工事が予定時間内に終了しない恐れがあることから、工事桁をいくつかに分割してクレーンで吊り上げ、丸ごと取り替える案が採用されました。

2017年は北側でB線用の桁の仮設が行われた。また、将来の縦断線形変更に備え工事区間全線が工事桁化された。
2017年は北側でB線用の桁の仮設が行われた。また、将来の縦断線形変更に備え工事区間全線が工事桁化された。

 第1回切替工事以降は空いた北側の橋脚に将来B線(2番線)が載る鋼製桁が架けられました。北側の桁が完成したことにより、これまで銀座線を支えてきた古い橋脚は不要になったことから、準備ができた部分より解体が進められています。再開発ビル東棟の工事進展にともない、渋谷駅東口バスターミナルは縮小が続いてきましたが、銀座線の橋脚が集約されたことによりそのスペースへバスターミナルの拡張が可能となりました。

先程と同じホーム表参道寄りの端に立ったところ。以前と異なり線路が直線的になり、トンネル入口手前でS字にカーブしている。左ではB線用の桁の工事が進む。 架設が完了した桁の下では、古い高架橋が解体されバスターミナルが拡張された。
1枚目(左):先程と同じホーム表参道寄りの端に立ったところ。以前と異なり線路が直線的になり、トンネル入口手前でS字にカーブしている。左ではB線用の桁の工事が進む。2017年8月19日撮影
2枚目(右):架設が完了した桁の下では、古い高架橋が解体されバスターミナルが拡張された。2018年3月29日撮影


東急百貨店解体前の銀座線渋谷駅 東急百貨店解体後の銀座線渋谷駅
銀座線ホーム表参道寄りの様子。1枚目(左)が東急百貨店解体前(2015年2月21日)、2枚目(右)が解体後(2016年7月29日)でホームが完全に屋外になったことがわかる。

 この頃になると東急百貨店東横店東館の取り壊しもほぼ完了しました。銀座線の駅は東館にすっぽりと覆われており、地上駅ながら暗い地下駅のような雰囲気がありました。建物が解体されたことにより、開業からおよそ80年にして初めて「銀座線で唯一日の光が入るホーム」が実現したことになります。2番線の表参道寄りにある改札口も周囲の建物が解体され、プレハブ構造の階段室のみ設置されたシンプルな形に変化しています。この階段は地上から3階のホームまで77段あるため、重い荷物等がある場合は迂回をお勧めします。

山手線ホームから見た銀座線2番線端の宮益坂方面改札口の階段室。 宮益坂方面改札口の階段入口。77段の階段しかないため、注意書きが随所に貼られている。
1枚目(左):山手線ホームから見た銀座線2番線端の宮益坂方面改札口の階段室。
2枚目(右):宮益坂方面改札口の階段入口。77段の階段しかないため、注意書きが随所に貼られている。



②第2回線路切替工事(2018,05,03~05)
2018年5月のゴールデンウィークに行われた第2回切替。A・B線を外側に移設し、新ホームの築造スペースを確保するとともに勾配を緩和する。
2018年5月のゴールデンウィークに行われた第2回切替。A・B線を外側に移設し、新ホームの築造スペースを確保するとともに勾配を緩和する。

 新しい駅の高架橋本体が完成したことから今月上旬のゴールデンウィーク3日間を利用して再度銀座線を運休した線路移設工事が実施されました。今回の工事では、銀座線のA・B線を新しい橋桁に移設して線路間隔を広げ、新しいホームの築造スペースを確保します。また、これまで銀座線は渋谷ヒカリエ脇を頂点とした山型の縦断線形となっていました。島式化後は1番線が行き止まりとなるため、表参道寄りに折り返し用のポイントを設ける必要がありますが、予定地は33パーミルの急な下り勾配となっており、そのままではポイントを設置することができませんでした。そこで今回の線路移設に合わせて山型になっていた縦断線形を表参道方面へ10‰で下るなだらかな縦断線形に変更します。線路の降下量は最大で2mにも及びます。

5月2日(工事前) 5月3日(工事中) 工事後(5月11日)
渋谷ヒカリエ11階から第2回切替工事を見る。1枚目(左)が5月2日(工事前)、2枚目(中)が5月3日(工事中)、3枚目(右)が工事後(5月11日)。

東急百貨店東横店西館から第2回切替工事前日の銀座線を見る。今回の工事では線路の高さを下げるため、左右に準備されている新しい線路との間にかなりの高低差がついている。 クレーンで軌筐を並べていく様子。今回は工事の日数が1日少ないため、鉄道模型のようにモジュール化された線路を繋ぎ合わせていく方法が採用された。
1枚目(左):東急百貨店東横店西館から第2回切替工事前日の銀座線を見る。今回の工事では線路の高さを下げるため、左右に準備されている新しい線路との間にかなりの高低差がついている。
2枚目(右):クレーンで軌筐を並べていく様子。今回は工事の日数が1日少ないため、鉄道模型のようにモジュール化された線路を繋ぎ合わせていく方法が採用された。


 今回の工事では2016年よりも1日少ない3日間でA・B線両方を移動させることになります。そのため前回よりもさらに軌道部品のモジュール化が進められ、走行用レールとまくらぎが一体の状態となった「軌筐ききょう」をクレーンで吊り上げて予定場所に降ろす方法が採用されました。軌筐を降ろす様子はまるで鉄道模型のレールを手で置いていくかのようです。今回敷設された線路の一部は新ホーム完成後も継続使用されることから、バラストも散布された本格的なものとなっています。
 工事のスケジュールは1日目の5月5日未明に従来の工事桁を全て撤去した後、1日かけて新しい軌筐の据付けが行われました。2・3日目は電力供給用の第三軌条の敷設ならびに信号機器の整備が行われました。悪天候なども考え、予備日を含め工事はかなり余裕を持ったスケジュールになっていたようで、3日目の夕方には作業は完了しました。

線路切替工事中の銀座線区間運転

表参道~青山一丁目間の区間運転では1000系が使用された。 2016年の切替工事時は引退間近の01系による溜池山王行きも運転された。
1枚目(左):表参道~青山一丁目間の区間運転では1000系が使用された。
2枚目(右):2016年の切替工事時は引退間近の01系による溜池山王行きも運転された。


 2016年11月に2回と今月初めの計3回実施された渋谷駅の線路切替工事では、銀座線を表参道~青山一丁目間と溜池山王~浅草間の2区間に分けて運転が継続されました。このような運転方法がとられた理由について説明します。
 現在銀座線で折り返し運転が可能な駅は渋谷・溜池山王・銀座・三越前・上野・浅草の6駅となっています。溜池山王駅は渋谷寄りに片渡り線が設けられており、A線を折り返し線として使うことにより浅草方面に折り返すことが可能になっています。

表参道~溜池山王間を単線、溜池山王以東を複線で運転する場合のイメージ
表参道~溜池山王間を単線、溜池山王以東を複線で運転する場合のイメージ

 もし表参道~浅草間全線通しで運転を継続する場合、表参道~溜池山王間が完全に単線となるため、1本の列車が往復するだけとなり運転間隔が大きく開いてしまいます。また、銀座線の信号システム(ATC)は逆走することを想定していないため、表参道駅から溜池山王駅まで3.4kmに渡りATC無しで営業運転することになります。この区間には33‰の急勾配区間もあり、乗務員の注意力のみに頼って運転することは安全上問題があります。

溜池山王以西を運休にする場合のイメージ
溜池山王以西を運休にする場合のイメージ

 次に表参道~溜池山王間を全て運休する場合を考えると、表参道・青山一丁目・赤坂見附の3駅では併走する半蔵門線などの駅があるためこれらを代替利用できますが、外苑前駅については他の路線の接続がないため完全に営業休止扱いとなってしまいます。外苑前駅の近隣には神宮球場があり、試合開催時は駅の利用者が急増します。このため、営業休止やバスなによる代行輸送は難しいと判断されました。

実際に行われた区間運転。表参道~青山一丁目間は単線並列、溜池山王以東は複線での折り返し運転を行った。
実際に行われた区間運転。表参道~青山一丁目間は単線並列、溜池山王以東は複線での折り返し運転を行った。

 このため苦肉の策として運転区間を表参道~青山一丁目間と溜池山王~浅草間の2区間に分けることとしました。表参道~青山一丁目間では、A線・B線に1編成ずつ列車を用意し、それぞれがピストン運行する単線並列運転により、通常と比べ本数は減るものの外苑前駅を通る列車を確保しました。この際、前述したシステムの都合により逆走する場合はATCが使えないため、A線の表参道→青山一丁目とB線の青山一丁目→表参道の運行については乗客を乗せない回送としました。制限速度の指示がされないため、運転台には制限速度・勾配などを記載した運転マニュアルが用意されました。
 溜池山王以東については前述した片渡り線を使うことによりおおむね通常通りの運行を確保しました。赤坂見附駅は区間運休中銀座線の発着が全くないことになりますが、同駅は半蔵門線の永田町駅と改札内で繋がっており、他にも迂回路線が多数存在することからそれらの利用を呼びかけて対処することとしました。

表参道駅3・4番線ホーム入口の案内板。銀座線は渋谷行きの文字が「降車専用」のシールで隠された。 コンコース天井の案内サインも銀座線関連は全てシールで書き換え。 コンコース天井の案内サインも銀座線関連は全てシールで書き換え。
2番線の壁にある駅名板は隣の赤坂見附駅が消去された。 2番線のホーム入口には「降車専用」と掲出した柵を置き誤進入を防止した。 コンコース天井の案内サインは銀座線の文字を残して無地のシールで覆われた。
半蔵門線ホーム天井の案内サインは銀座線の文字を無地のシールで覆った。 2番線のホーム入口には「降車専用」と掲出した柵を置き誤進入を防止した。 半蔵門線の路線図や駅構内図からも銀座線の文字を消去した。
1段目は表参道駅。左から順に
①表参道駅3・4番線ホーム入口の案内板。銀座線は渋谷行きの文字が「降車専用」のシールで隠された。
②・③コンコース天井の案内サインも銀座線関連は全てシールで書き換え。
2段目は青山一丁目駅。左から順に
④2番線の壁にある駅名板は隣の赤坂見附駅が消去された。
⑤2番線のホーム入口には「降車専用」と掲出した柵を置き誤進入を防止した。
⑥コンコース天井の案内サインは銀座線の文字を残して無地のシールで覆われた。
3段目は永田町駅。左から順に
⑦半蔵門線ホーム天井の案内サインは銀座線の文字を無地のシールで覆った。
⑧・⑨半蔵門線の路線図や駅構内図からも銀座線の文字を消去した。


 2016年の線路切替工事の際は、1回の運休が2日間と短かったことから、案内板の脇に運休に関する説明を書いた紙を貼り付ける程度の簡易的な対応とされました。一方今月の工事の際は、運休が3日間連続となったことやゴールデンウィークで普段銀座線を利用しない利用客も訪れることから、運休区間に関連する表記を徹底的に隠すまたは区間運転に対応する内容のシールを上から貼るという入念な準備が行われました。一例として表参道駅の場合、銀座線ホーム入口にある路線図は表参道~青山一丁目間のみが表示され、それ以外の区間は無地のシールで完全に隠されました。赤坂見附駅と改札内で通じている永田町駅では、乗り換え案内板にある「銀座線」の表記を無地のシールを貼って全て隠しました。シールを貼ったのは天井から吊り下げられている案内板にとどまらず、半蔵門線ホームに掲出されている路線図にも及んでおり、あたかも銀座線の渋谷駅・赤坂見附駅が廃止になってしまったかのような表記になっていました。

前面・側面の行き先表示器は表参道行き・青山一丁目行きに対応 青山一丁目行きでは車内のLCD・自動放送が非対応のため機能を停止していた。
1枚目(左):前面・側面の行き先表示器は表参道行き・青山一丁目行きに対応
2枚目(右):青山一丁目行きでは車内のLCD・自動放送が非対応のため機能を停止していた。


 表参道~青山一丁目間を走る列車には2016年、今月ともに1000系が充当されたため、フロント・サイドの行先表示器に「表参道」「青山一丁目」のコマが用意されました。車内の液晶モニタや自動放送は青山一丁目駅が終点になるデータがインストールされていないため青山一丁目行き列車では終日使用停止となっており、代わりに乗務員の肉声または青山一丁目行きの音声が入ったiPadを持ち込み、乗務員がそれをマイクに近づけることで放送を行っていました。(かつてJR総武快速線の成田空港発着列車で実施していた英語放送と同じ手法。)
 このような入念な準備により、この日銀座線を初めて利用するような観光客の間では特に混乱はなく、むしろ毎日利用しているであろうビジネスマンが突如路線図から消失した銀座線について係員にしきりに尋ねるといった光景が見られました。

今後の計画

2018年以降は表参道寄りに折り返し用分岐器を挿入するとともにA・B線間のスペースで新ホームの構築を行う。
2018年以降は表参道寄りに折り返し用分岐器を挿入するとともにA・B線間のスペースで新ホームの構築を行う。

今後の銀座線渋谷駅ですが、今回実施された線路切替工事で勾配が緩和されたことから表参道寄りのトンネル坑口手前に折り返し運転用のシーサスクロッシングを挿入する工事が行われます。資料によるとこの工事は「第3回切替」とされていますが、ポイント挿入の際列車を運休するかどうかについては不明です。ポイント挿入と並行して今回広げられたA・B線の間とA線外側で新ホームの構築が進められます。

2019年度下期に予定されている新ホーム使用開始時のレイアウト。まず現行の線形のまま新ホームの使用を開始し、現ホームの一部を撤去した後入出庫線を移設してホームを直線化する。
2019年度下期に予定されている新ホーム使用開始時のレイアウト。まず現行の線形のまま新ホームの使用を開始し、現ホームの一部を撤去した後入出庫線を移設してホームを直線化する。
2019年度下期に予定されている新ホーム使用開始時のレイアウト。まず現行の線形のまま新ホームの使用を開始し(上)、現ホームの一部を撤去した後入出庫線を移設してホームを直線化する(下)。

 新ホームの完成は2019年度下期の予定となっており、新ホーム使用開始後1番線は行き止まりに変更されます。新ホーム使用開始後は、現在の対向式ホーム撤去と並行して2番線と渋谷車庫を結ぶ入出庫線の移設が行われ、2番線側のホームを拡幅して直線的な線形に変更します。その後、渋谷車庫へ続く高架橋の架け替えなどを行い、最終的にホーム直前まで入出庫線は複線化されます。入出庫線複線化の時期は明言されてませんが、再開発ビル中央棟・西棟の完成が2027年度とされていることからそれまでには完成するものとみられます。

最終的な完成形のレイアウト。入出庫線はホーム直前まで複線となる。
最終的な完成形のレイアウト。入出庫線はホーム直前まで複線となる。

 なお余談ですが、銀座線では電車線電圧の昇圧を含む路線の施設全体の大規模なリニューアルが進められています。これに合わせて反対側の終点である浅草駅でも留置線の増設が予定されています。留置線増設後の浅草駅では、現在の渋谷駅のような乗車・降車ホームの分離を計画していることが専門誌の記事により明らかになりました。これについても近日中に調査を行い記事にしたいと思います。

次回はの今月下旬に線路切替工事が予定されているJR山手線・湘南新宿ラインのホーム並列化・島式化についてお伝えします。

▼参考
未来をつくる「銀座線運休」。2018年5月3日~5月5日、銀座線は渋谷~表参道駅間、青山一丁目~溜池山王駅間を運休します | 銀座線リニューアル情報サイト
銀座線 渋谷~表参道駅間、青山一丁目~溜池山王駅間を運休します - 東京メトロニュースリリース(2018年2月22日)
銀座線渋谷駅 線路切替工事のため 銀座線 渋谷~表参道間、青山一丁目~溜池山王間を運休します - 東京メトロニュースリリース(2016年9月13日)
特集「全面的にリフレッシュする東京メトロ銀座線-開業88年米寿の若返り計画-」 - 土木施工2015年5月号
銀座線渋谷駅改良工事に伴う第一回線路切替え工事 - 日本鉄道施設協会誌2017年1月号58~61ページ

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※数が膨大なため、2013年4月以降の記事のみを表示しています。これ以外の記事は以下のカテゴリページよりお探しください。
カテゴリ:東京メトロ副都心線開通 の記事一覧
カテゴリ:東横線・副都心線直通 の記事一覧

※いくつかミスがあったため修正しました。(2018,05,12 12:08)
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