銀座線渋谷駅移設と駅周辺の状況 - 渋谷駅再開発2021(2)
公開日:2021年11月10日18:14

前回はJR山手線・埼京線の渋谷駅ホーム並列化工事について解説しました。当該記事は10月23・24日に実施された線路切替工事を挟んだ2週間でおよそ1万回ものアクセスを頂きました。ご覧いただきました皆様誠にありがとうございます。工事当日現地を調査した内容については動画や新たな作図があり公開まで少々時間を要する見込みですので、今回は東京メトロ銀座線渋谷駅の移設工事の仕上げなどJRのホーム並列化以外の状況についてこの1年半の動きをお届けいたします。
▼関連記事
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東京メトロ銀座線渋谷駅移設と東急百貨店東横店の再開発


左(1):東急百貨店3階にあった銀座線渋谷駅旧ホーム。乗降ホームが分かれており、到着した電車は奥の車庫で折り返していた。
右(2):銀座線降車ホームとJR中央改札の間にあった改札口は最後まで段差解消機が設置されなかった。
東京メトロ銀座線渋谷駅は、1938(昭和13)年に開業しました。渋谷の町は文字通り渋谷川が形成した谷底に形成されており、渋谷駅の両側は鉄道にとって非常に急な坂で囲まれています。銀座線開業当時の電車の登坂性能では、これらの急勾配を安全に登り降りすることが困難だったことに加え、当時銀座線を経営していた東京高速鉄道が東急グループの創始者である五島慶太の影響力下にあったこともあり、銀座線渋谷駅のホームは東急百貨店東横店の3階に作られました。
以後、渋谷駅は新たな路線の乗り入れや利用者の増加に合わせて増築が繰り返されていきます。この結果、乗り換え動線の一部が東急百貨店の売り場の脇をすり抜ける複雑なレイアウトになっていたほか、各施設の階高が統一されておらず階段数段分、スロープ数m分といった微妙な段差が無数に生じています。いずれも土台となる構造物が古く脆弱であることから、今日に至るまでエレベーターなどの段差解消機器が一切設置できず、車椅子やベビーカーでは事実上当駅での乗降が困難と言われるほど“バリアフル”な構造となってしまっていました。


1枚目(左)が現在の渋谷駅の階層図、2枚目(右)が再開発後の階層図。再開発後は銀座線ホームを東口バスターミナル上へ130m移設し、ホーム両端に設けるアーバンコアや乗換コンコースを通じて他の路線との連携を強化する。
2013年3月、東急百貨店東横店の一角をなしていた東急東横線地上ホームが東京メトロ副都心線との直通運転開始により廃止され、再開発がスタートしました。このまたとない絶好のチャンスを生かし、銀座線渋谷駅についてもゼロから再構築することとしました。
東横線地下化により、渋谷駅の重心は東側へ移動しました。銀座線渋谷駅は東急百貨店内部にある立地自体が改修の妨げになっていたこともあり、ここでは思い切って駅全体を上空が開けている東口バスターミナル上へ移転することとしました。移転後のホームはこれまでの乗車ホーム・降車ホームの分離をやめ、1番線が行き止まりとなった巨大な島式ホームに統合し、渋谷車庫入出庫を除きホーム上で直接折返しを行います。合わせてホームの各所に分散していた改札口は島式ホーム両端に集約し、両端の渋谷ヒカリエ・渋谷スクランブルスクエア内にあるアーバンコア(=エスカレーター・エレベーターを備えた地上と地下の交通機関を結ぶ上下方向の乗り換え動線)と直結します。これにより、乗り換え動線の簡略化やバリアフリー化といった長年の懸案事項を一気に解決します。
また、銀座線の高架橋は建設当時の技術的な限界によりスパンを長くとることができず、バスターミナル内に橋脚が林立していました。このままでは再開発後の地上空間の利用に制約が生じるため、高架橋は全面的に架け替えて橋脚をバスターミナル東西と中央の3本に集約することとしました。
銀座線渋谷駅ホームが完成


左(1):銀座線渋谷駅旧ホーム最終日となった2019年12月27日。新ホーム予定地には資材が山積みになっている。
右(2):新ホームの切替え工事は外からは見えないため、渋谷スクランブルスクエア内に設置したモニターで生中継された。
2019年12月28日(土)~2020年1月2日(木)に銀座線渋谷~表参道間・青山一丁目~溜池山王間を運休し、新ホーム使用開始に向けた線路切替工事が実施されました。(運休区間が2分割された理由は2018年の記事■線路切替工事中の銀座線区間運転 を参照)
工事期間は6日間用意されましたが、銀座線渋谷駅は真下に多数の交通インフラが交差していることから、作業に使用できる実質的な時間や空間は大変限られたもの※1となりました。そこで設計段階より最新の3DCG技術を駆使し、工事中の各作業を緻密にシミュレーションすることで安全かつ最短で工事を完遂できるプランを確立しました。当日は総勢5,000名の作業員が動員され、工事の遅延や事故などもなく予定通り1月3日(金)始発から新ホームの使用を開始しました。
今回は新ホームと改札口の使用開始後の変化についてを中心に解説します。
▼脚注
※1:特にJR山手線との交差部分は線路への機材落下等による事故を防止するため、列車が運行していない深夜の3時間ほどに作業が限定された。初日の第三軌条の解体作業に至ってはわずか1時間しか確保できず、事前に第三軌条のレールを細分化しておくなどの工夫を行った。

使用開始直後の新ホーム。床は仮仕上げだが、その下ではコンクリート床版が敷き詰め終わっていた。2020年1月10日撮影
新ホーム使用開始時点ではホームの床面は滑り止めを施した木材が敷き詰められていました。実はこの時点で木材の下にはホームの土台となるコンクリート板の敷き詰めが全て完了していました。そのため、使用開始後はホームドアやタイルなどをそのまま取り付けていくだけとなっており、以後その仕上げが急ピッチで進められていきました。


左(1):2020年4月にオープンした渋谷ヒカリエ方面改札口。左の階段を上ると渋谷ヒカリエ2階の通路に通じる。
右(2):改札内側から見た渋谷ヒカリエ方面改札口。2020年9月19日撮影
新ホーム使用開始から3か月後の2020年4月18日(月)には、まず表参道側の改札コンコース2階(階段踊り場)から分岐して渋谷ヒカリエに直結する「渋谷ヒカリエ方面改札」がオープンしました。新しい改札口は自動改札機3台、改札外に自動券売機2台、改札内に自動精算機1台とコンパクトですが、東京メトロの他の駅と同様駅員が常駐しています。改札を出た先は渋谷ヒカリエの2階から宮益坂の中腹に抜ける通路に接続しており、駅周辺への新たなショートカットルートが誕生しました。


左(1):表参道寄りのホーム端に完成したエレベーター。2021年10月24日撮影
右(2):渋谷スクランブルスクエア側のホーム上に完成したトイレ。2020年9月19日撮影
2020年6月に入るとさらに相次いで施設が完成します。
6月6日(土)には、表参道寄りのホーム端で1階明治通り方面改札・2階渋谷ヒカリエ方面改札へ通じるエレベーターの使用を開始しました。このエレベーターは新ホーム使用開始前にA線の線路だった場所に位置しており、6日間の工事ではシャフトや巻き上げ機の据え付けを行うのは困難だったことから、完成がこの時期までずれ込みました。表参道側のエレベーターの新設により、銀座線渋谷駅はバリアフリールートの2方向化が実現しました。
続いて2020年6月27日(土)には、渋谷スクランブルスクエア側の改札口脇で新しいトイレの使用を開始しました。新ホーム使用開始時点での銀座線改札内のトイレは、表参道側の改札内2階の男女・多機能トイレにある洋式便器各1個ずつしかなく混雑時の利用に難がありましたが、ホーム上のトイレの使用開始によりその状態も解消されました。なお、ホーム上のトイレには多機能トイレは併設されていないため、車椅子等の場合は引き続き表参道側のトイレを使用することになります。
左:ホームドアや各種設備が完成した銀座線渋谷駅。ベンチにはエアコンが内蔵されている。
右上:表参道寄りは天井の構造が異なり、白いパネルが張られている。2021年10月24日撮影
右下:ホーム中央に出現したエアコン付きの業務用室。2020年9月19日撮影
右上:表参道寄りは天井の構造が異なり、白いパネルが張られている。2021年10月24日撮影
右下:ホーム中央に出現したエアコン付きの業務用室。2020年9月19日撮影
上:ホームドアや各種設備が完成した銀座線渋谷駅。ベンチにはエアコンが内蔵されている。
中:表参道寄りは天井の構造が異なり、白いパネルが張られている。2021年10月24日撮影
下:ホーム中央に出現したエアコン付きの業務用室。2020年9月19日撮影
中:表参道寄りは天井の構造が異なり、白いパネルが張られている。2021年10月24日撮影
下:ホーム中央に出現したエアコン付きの業務用室。2020年9月19日撮影
ホーム上のトイレ使用開始直後の2020年6月29日(月)には、ホームドアの使用が開始されました。ホームドアは銀座線でこれまで設置が進められてきたものと同じ京三製作所のKPG-2形で、ドアや戸袋部分がガラス張りとなっています。渋谷駅のホームドア稼働開始により、銀座線全19駅のホームドア設置が完了しました。
また、この頃になるとホームの床タイルの貼り付けや表参道寄りの天井で行われていた化粧板の取り付けもほとんど完了しました。ホーム中央には、ドアが付いたガラス張りの小部屋が出現しました。小部屋の上部には空調の吸い込み・吹き出し口と思われるグリルやノズルが埋め込まれています。また、ホーム中央に2か所設置されているベンチは支持している壁体の上部がスリットになっています。新ホームの側壁は換気のため隙間を開けて板材が取り付けられていますが、夏場の暑さ対策として一応エアコンも設置しているようです。(この程度のサイズと台数では十分な効果があるとは到底思えないが…)


左(1):今年7月に設置された横長型の発車案内表示器。2021年10月24日撮影
右(2):撤去された縦型の表示器。2020年1月10日撮影
この後1年ほど目立った動きはありませんでしたが、今年7月に入り突如としてホーム上に東京メトロの他の駅で採用されているものと同じ横長型の発車案内表示器が登場しました。新ホーム使用開始時に設置していた縦型の表示器はこれと代わりわずか1年半で撤去されてしまいました。
この件について情報が無いか資料を調査したところ、新ホーム使用開始と同時期に刊行された建築関係の雑誌において横長型の表示器が描き込まれている図面が掲載されていたことが判明しました。また、新ホーム使用開始直後に自ら撮影した写真を見返したところ、ホーム上に立ち並んでいる設備取り付け用の柱の一部に梁が長いものがあることを確認しました。ホーム完成までの間はホーム上で大型の機材も使っていたことから、作業の邪魔にならないようコンパクトな縦型表示機を仮設していた可能性が考えられます。
▼参考
鉄骨建築雑誌 スチールデザイン No.36「東京メトロ銀座線渋谷駅」- 一般社団法人日本鉄鋼連盟(PDF/4.0MB)
→横型表示器が描かれている図面が掲載
左:銀座線上部空間を利用して整備された渋谷ヒカリエデッキ
右上:ヒカリエデッキの途中には段差があるためエスカレーターが設置されている。
右下:反対側は将来渋谷マークシティまでシームレスに移動できるようになる。
右上:ヒカリエデッキの途中には段差があるためエスカレーターが設置されている。
右下:反対側は将来渋谷マークシティまでシームレスに移動できるようになる。
上:銀座線上部空間を利用して整備された渋谷ヒカリエデッキ
中:ヒカリエデッキの途中には段差があるためエスカレーターが設置されている。
下:反対側は将来渋谷マークシティまでシームレスに移動できるようになる。2021年7月16日撮影
中:ヒカリエデッキの途中には段差があるためエスカレーターが設置されている。
下:反対側は将来渋谷マークシティまでシームレスに移動できるようになる。2021年7月16日撮影
銀座線渋谷駅の工事が完了したことから、今年7月15日(木)にその上部空間を利用した遊歩道「渋谷ヒカリエデッキ」がオープンしました。渋谷ヒカリエデッキは銀座線渋谷駅に隣接する渋谷ヒカリエのアーバンコア4階に接続し、銀座線の上部を通って宮益坂の頂上(渋谷郵便局付近)に抜けることができます。並行している渋谷ヒカリエ内の通路と同様途中に段差があるため、エスカレーターも設置されています。
反対側は現在金網が設置され行き止まりとなっていますが、銀座線上部には将来通路を整備するための床が準備されています。2027年の再開発完成時はここにスカイデッキが整備され、渋谷マークシティや京王井の頭線渋谷駅へ地上に降りることなく移動できるようになりなります。
▼参考
銀座線渋谷駅 2020年1月3日(金)からホームの位置が変わります
銀座線 渋谷~表参道駅間、青山一丁目~溜池山王駅間を運休します - 東京メトロニュースリリース(2019年6月12日)
銀座線渋谷駅が生まれ変わります! - 東京メトロニュースリリース(2019年10月28日)
2019年12月28日(土)~2020年1月2日(木)銀座線渋谷駅線路切替工事に伴う一部区間終日運休のお知らせ - 東京メトロ
東京メトロ銀座線渋谷駅線路切替工事プロジェクト | 実績紹介 | 東急建設株式会社
2021年7月、渋谷駅東口エリアに歩行者デッキ「渋谷ヒカリエ ヒカリエデッキ」がオープン! - 東急ニュースリリース(2021年5月25日)
特集「全面的にリフレッシュする東京メトロ銀座線-開業88年米寿の若返り計画-」 - 土木施工2015年5月号
銀座線渋谷駅改良工事に伴う第一回線路切替え工事 - 日本鉄道施設協会誌2017年1月号58~61ページ
東京メトロ銀座線渋谷駅ホーム移設・第3回線路切替工事 - JREA2020年7月号12~15ページ
銀座線渋谷駅移設工事について - 鉄道と電気技術2020年8月号27~32ページ
東急百貨店東横店西・南館の解体が本格化
左:東急百貨店東横店最後の週末になるはずだった2020年3月29日は閉店を惜しむかのように季節外れの雪となった。
右上・右下:閉店までの3ヵ月間開催された「東横デパートの思ひ出展」。西館7階の会場は月ごとに一部展示品が入れ替えられた。
右上・右下:閉店までの3ヵ月間開催された「東横デパートの思ひ出展」。西館7階の会場は月ごとに一部展示品が入れ替えられた。
上:東急百貨店東横店最後の週末になるはずだった2020年3月29日は閉店を惜しむかのように季節外れの雪となった。
中・下:閉店までの3ヵ月間開催された「東横デパートの思ひ出展」。西館7階の会場は月ごとに一部展示品が入れ替えられた。
中・下:閉店までの3ヵ月間開催された「東横デパートの思ひ出展」。西館7階の会場は月ごとに一部展示品が入れ替えられた。
渋谷駅西口にあった東急百貨店東横店西館と東館は、再開発のため2020年3月31日(火)で閉店することが決定していました。閉店直前の2020年1月からは各階で在庫処分セールが開催されたほか、地下1階しぶちか側入口壁面と西館7階特設会場では「東横デパートの思ひ出展」と題し、東急百貨店東横店開業から現在までの歴史にまつわる資料が毎月内容を変えつつ展示されました。
最後の週末となった3月28日(土)・29日(日)は新型コロナウイルスによる東京都からの外出自粛要請を受け、地下食品売り場を除き臨時休業となりました。レストランや屋上など一部エリアについては、3月31日の閉店後も解体着手までの間イベントスペース「渋谷エキスポ」として営業する予定となっていましたが、感染拡大防止のため延期となり4月7日(火)にそのまま正式に閉店の扱いとなりました。


左(1):JR中央改札から先の銀座線旧ホームは完全閉鎖となった。
右(2):廃止されたJR渋谷駅玉川改札。「玉川」の名称はこの改札口の先に路面電車である東急玉川線の乗り場があったことに由来する。(再掲)2020年9月19日撮影
3月の閉店以降も西館・南館内では、地下食品売り場や2階のしぶそば本店など一部店舗が営業を継続していました。これらの店舗についても建物の解体工事着手のため、2020年9月13日(日)をもって完全閉店となりました。地下食品売り場は、一部店舗を渋谷マークシティ地上1階・地下1階(東急フードショー)と渋谷ヒカリエ地下2・3階(東横のれん街)に分散移転したほか、解体範囲に重ならないハチ公広場直下の部分については隣接するしぶちかとともに全面リニューアルされ、今年7月10日(土)に復活オープンしています。
西館・南館の完全閉店に伴い9月14日(月)からは、JR渋谷駅中央改札から先の銀座線旧降車ホームとそこから地上へ降りるルートとして使用されていたエスカレーター・エレベーターが閉鎖されました。これにより銀座線ホームからのバリアフリー移動ルートは、渋谷スクランブルスクエア内のアーバンコアに移行しています。
続いて9月26日(土)には、JR山手線外回りホームに直結していた玉川改札を含む西館2階フロア全域が閉鎖となり、大階段前から西口バスターミナル上空を経由して渋谷マークシティに至る仮設デッキの使用を開始しました。この仮設デッキは、西館内を経由していた銀座線・JR線と京王井の頭線の乗り換え通路を、解体期間中建物外に迂回させるためのものです。デッキの途中からは2019年12月にオープン済みの渋谷フクラス(東急プラザ渋谷)へ通じるデッキが分岐しています。フクラスに通じる部分は完成形で作られており、将来南館跡地に建設される渋谷スクランブルスクエアⅡ期棟(中央棟・西棟)へ接続できるよう準備されている部分が存在します。西館解体完了後、現在大階段がある場所には渋谷ヒカリエ、ストリーム、スクランブルスクエア、フクラスに続く第5のアーバンコアが整備されます。
左:西館大階段前に新設された渋谷マークシティに通じる仮設デッキ。西館解体中に井の頭線渋谷駅へ向かう迂回ルートとなる。
右上:仮設デッキの内部。
右下:仮設デッキの途中からは渋谷フクラスへ通じる本設デッキが分岐する。2020年10月7日撮影
右上:仮設デッキの内部。
右下:仮設デッキの途中からは渋谷フクラスへ通じる本設デッキが分岐する。2020年10月7日撮影
上:西館大階段前に新設された渋谷マークシティに通じる仮設デッキ。西館解体中に井の頭線渋谷駅へ向かう迂回ルートとなる。
中:仮設デッキの内部。
下:仮設デッキの途中からは渋谷フクラスへ通じる本設デッキが分岐する。2020年10月7日撮影
中:仮設デッキの内部。
下:仮設デッキの途中からは渋谷フクラスへ通じる本設デッキが分岐する。2020年10月7日撮影
▼参考
渋谷駅西口の新たな歩行者デッキを供用開始します。 - 東急ニュースリリース
さらなる難工事への挑戦

渋谷マークシティ内にある車両基地への入出庫線となっている銀座線旧ホーム。真上に建つ東急百貨店西館は解体が進む。2021年10月23日撮影
東急百貨店東横店西館内には銀座線の旧ホームがありました。旧ホームの先、渋谷マークシティ3階には銀座線の車両基地(上野検車区渋谷分室)があり、現在も旧ホームの一部が入出庫線として使用されています。旧ホームはJR山手線のホーム上空にも伸びており、いずれも建設から80年以上が経過し老朽化が進んでいます。また、西館建物と一体化している関係上柱が多く、そのまま残すと新しいビルの建設やJR山手線ホームの島式化の支障となることから、東口に移転した新ホームと同様に高架橋を全面的に改築します。


JR山手線交差部分~東急百貨店西館にかけての銀座線高架橋改築前後のイメージ。ビルと一体になっていた路盤を解体し、3スパンの桁橋に架け替える。
現在公表されている資料によれば、新しい銀座線の高架橋は橋脚を3本(P1・P1'・P2)に集約した桁橋となり、JR山手線と交差する部分は2面4線のホームを一跨ぎするトラス橋に架け替えられます。(古い資料に基づく情報であるため、今後変更される可能性もあります。)2020年5月にJR埼京線の線路移設が完了し、埼京線下りと山手線内回りの間に作業スペースが確保できたことから、橋桁を架け替えるため既存の橋脚を仮設の構台に取り換える作業が進められています。


埼京線下り線と山手線内回りの線路間では開業時から使用されてきた橋脚(左:2018年5月23日撮影)が架け替え用の仮設構台(右:2021年7月10日撮影)に取り換えられた。
今後はこの構台の上で開業時から使用してきた橋桁を撤去し、新しいトラス橋を架ける工事が行われることになります。東口での新ホーム建設の際は、真下にあるのが道路(明治通り・バスターミナル)だったため、工事の進捗に合わせて通行帯を大規模に移動させることが可能でした。一方、今回は真下にあるのが山手線の線路やホームであるため、迂回や長時間運休させることが不可能であり、新ホーム建設時を上回る極めて難易度の高い工事となることが予想されます。どのような方法で工事が進められるのか、資料・現地の様子共々今後注目してまいりたいと思います。
▼参考
銀座線渋谷駅改良工事に伴う線路切替え工事計画について - 土木学会第71回年次学術講演会(PDF/667KB)
渋谷ストリーム~桜丘町横断デッキと新改札計画


左(1):桜丘地区再開発区域の位置
右(2):区画全域が閉鎖となり、まだ新しいビルも含め急ピッチで解体が進む桜丘町。2019年3月25日撮影
※航空写真は国土地理院地図/GSI Maps Webサイトより。
渋谷駅南側には、桜丘町と呼ばれる雑居ビルなどが立ち並ぶ区画がありました。渋谷駅の再開発に合わせて、この区画についても高層ビル3棟に集約することになり(渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業)、2019年1月7日に区画全体が閉鎖されました。以後建設が新しいビルを含めて全ての建物が取り壊され、現在は跡地で新しい高層ビルの建設が進められています。
左:渋谷フクラス17階展望台“SHIBU NIWA”から見た桜丘町の再開発地区。山手線上空では渋谷ストリームに通じるデッキの建設が始まった。2021年7月10日撮影
右上:渋谷ストリーム3階には開業時から桜丘町へのデッキの接続スペースが確保されており、現在はベンチを置いて休憩スペースとして使用中。2020年10月7日撮影
右下:先月23日に撮影した建設中のデッキの様子。真下では山手線内回りの線路を人力で移動させる作業が行われており、マスコミの撮影用スペースとして利用された。
右上:渋谷ストリーム3階には開業時から桜丘町へのデッキの接続スペースが確保されており、現在はベンチを置いて休憩スペースとして使用中。2020年10月7日撮影
右下:先月23日に撮影した建設中のデッキの様子。真下では山手線内回りの線路を人力で移動させる作業が行われており、マスコミの撮影用スペースとして利用された。
上:渋谷フクラス17階展望台“SHIBU NIWA”から見た桜丘町の再開発地区。山手線上空では渋谷ストリームに通じるデッキの建設が始まった。2021年7月10日撮影
中:渋谷ストリーム3階には開業時から桜丘町へのデッキの接続スペースが確保されており、現在はベンチを置いて休憩スペースとして使用中。2020年10月7日撮影
下:先月23日に撮影した建設中のデッキの様子。真下では山手線内回りの線路を人力で移動させる作業が行われており、マスコミの撮影用スペースとして利用された。
中:渋谷ストリーム3階には開業時から桜丘町へのデッキの接続スペースが確保されており、現在はベンチを置いて休憩スペースとして使用中。2020年10月7日撮影
下:先月23日に撮影した建設中のデッキの様子。真下では山手線内回りの線路を人力で移動させる作業が行われており、マスコミの撮影用スペースとして利用された。
この桜丘町とJR山手線を挟んで反対側にある渋谷ストリームの間には、横断デッキとJR山手線・埼京線ホームの南端に通じる新改札口を設置する構想がありました。渋谷ストリームには建設当初からこのデッキに接続するための準備が施されており、具体的にはビルの中ほどにある2階から3階へ上がる異様に立派な階段やエスカレーターがそれにあたります。また、その先の3階外壁には橋桁を架けられるよう突起が設けられていました。
桜丘町でのビル建設が本格化した昨年夏以降は、その予定地で実際にデッキを建設する工事が開始されています。また、橋桁に隣接した埼京線新ホーム上空には新改札口となる複数階構造のビルが建設されつつあります。なお、旧埼京線ホームの南端には新南改札がありますが、桜丘町の新改札設置に伴う新南口の存廃については現在のところ明らかになっていません。東急やJR東日本が発表している渋谷駅再開発の完成予想イラストでは、現在の新南口に相当する位置に山手線を横断するデッキがある一方、埼京線上下線間には連絡通路(旧ホーム)が描かれておらず、空白となっています。従って、今後新南口を桜丘町への移転扱いとし、現在の位置からは廃止することも考えられます。こちらも正式な発表が待たれるところです。
次回は先月23・24日に実施された山手線内回りのホーム拡幅工事についてお伝えします。
▼参考
渋谷文化プロジェクト
SHIBUYA FUTURE|渋谷駅街区土地区画整理事業
桜丘地区まちづくり | 渋谷区公式サイト
「渋谷再開発・渋谷駅桜丘口地区」篇 渋谷の街に「住む・働く・遊ぶ」がすべて揃うエリアをつくる|プロジェクト・ノート|Challenge the frontier 東急不動産
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