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相鉄・東急新横浜線開業に向けた車両の動き
公開日:2023年03月08日19:00

相鉄新横浜線・東急新横浜線の開業まで残り2週間を切りました。現地では最終段階となる乗務員習熟運転が毎日実施されています。今回は相鉄線・東急線双方での直通に向けた車両改造や試運転の模様についてレポートします。
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相鉄・東急新横浜線建設工事、最終章。(2022年3月~2023年2月)(2023年3月1日作成)
直通開始に向けた車両新造・改造


左:相鉄直通に向け8両化された東急3000系。フロントガラスに“8CARS”のステッカーが貼られた。
右:東急3000系増結車の車内。5000系列の車体構造に2020系のカラースキームという折衷仕様。
右:東急3000系増結車の車内。5000系列の車体構造に2020系のカラースキームという折衷仕様。
上:相鉄直通に向け8両化された東急3000系。フロントガラスに“8CARS”のステッカーが貼られた。
下:東急3000系増結車の車内。5000系列の車体構造に2020系のカラースキームという折衷仕様。
下:東急3000系増結車の車内。5000系列の車体構造に2020系のカラースキームという折衷仕様。
相鉄線は現在8両編成と10両編成で運行されています。相鉄線と東急線の相互直通運転には相鉄と東急の所有車両が使用される予定になっており、東急では東横線の10両編成(5050系4000番台)と6両編成だった目黒線の車両(3000・5080・3020系)を8両編成に増結して充当することになりました。
目黒線の車両のうち、最新の3020系については8両編成で製造しており、駅の対応が完了するまでの間は中間車を2両抜いた状態で運用していました。一方、3000系・5080系については増結用の中間車を新規に製造しています。
新造された増結車両は、既存編成に組み込んだ際の美観等を考慮して雨樋が外付けとなっている5000系列の車体構造が採用されています。内装は、先に田園都市線5000系で実施された6ドア車の4ドア車への差し替えの際製造された中間車と同じく、2020系列ベースのカラーデザインとなっています。また、5080系に増結された車両のうち2両は大井町線での有料座席指定サービス“Q-SEAT”の拡大に伴い抜き取られた6000系の中間車を転用しています。そのためこれらの車両を組み込んだ編成では、3種類の内装が存在するという奇妙な現象が起きています。
車両増備と並行して8両化に必要となる駅ホームの延伸工事も実施され、工事が完了した2022年4月1日より順次8両編成の運転が開始されています。地上設備の工事については2021年にレポートしましたので以下の記事をご覧ください。
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左:東急5080系運転席床下に追加されたATS-P車上子(矢印の先)
右:相鉄対応改造後の東急5050系4000番台運転台。コンソール右側は無線機の増設に伴い筐体が拡大されている。
右:相鉄対応改造後の東急5050系4000番台運転台。コンソール右側は無線機の増設に伴い筐体が拡大されている。
左:東急5080系運転席床下に追加されたATS-P車上子(矢印の先)
右:相鉄対応改造後の東急5050系4000番台運転台。コンソール右側は無線機の増設に伴い筐体が拡大されている。
右:相鉄対応改造後の東急5050系4000番台運転台。コンソール右側は無線機の増設に伴い筐体が拡大されている。
相鉄線の入線に必要となる他の装備としてATS-Pと列車無線があります。相鉄線では、2019年のJR直通線開業に先立ち、ATSと列車無線をJR東日本と同じものへ変更していました。相鉄線に乗り入れ予定の東急電鉄の車両は、最新の3020系を除き製造時に相鉄直通の計画が無かったことからこれらの機器を搭載しておらず、2021年以降追加改造が進められました。目立つ追加機器としては運転席床下のATS-P車上子(白色の板状のアンテナ)、運転台コンソール右側へのデジタル列車無線受話器と壁面へのATS-P復帰スイッチ(いずれも白色)があります。
現在鉄道各社では総務省の周波数再編アクションプランに従い、列車無線のデジタル化を進めています。上記の通り相鉄については既にデジタル化を済ませているほか、東急電鉄や直通先の東京メトロ・東武鉄道・西武鉄道でも同様に切り替えを進めています。今回追加された無線機はこれら乗り入れ事業者全ての列車無線を1つの操作盤で共用できる高機能なものとなっています。相鉄線ではこれに加えて防護無線※1が必要となるため、既存の運転台コンソールに機器が収まり切らず、助手席側のコンソール筐体を手前に拡大して取り付けています。
この他、助手席側にも機器が増設されており、それに伴い客室との仕切りにあった窓が1箇所埋められています。
▼脚注
※1 防護無線:事故発生時に周囲から別の列車が進入しないよう緊急停止を知らせる信号を発射する装置。駅や踏切でもないところで突然急停車し、車掌から「異常を知らせる信号を受信しました。安全の確認を行っています。」と放送がされるのは大抵この信号が発射されたことによる。
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東急東横線5050系副都心線対応車(2012年5月20日作成)
→東急5050系の相鉄対応改造前の運転台写真

相鉄の東急直通用車両20000系
一方相鉄は、直通先の東急の車両サイズ(車両限界)が自社よりも小さくなっています。そのため、既存車両の改造で直通運転に対応させることは不可能であり、専用車両を新規に製造しています。
2017年にはまず東横線直通用10両編成の20000系の製造が開始されました。続いて2021年以降は目黒線直通用8両編成の21000系の製造が開始されました。いずれも初期製造の車両は東急線乗り入れに必要となるワンマン運転機器が一部未取り付けだったため、2021年秋以降その取り付けが実施され現在は全ての編成で終了しています。
相鉄線内のホームドア非設置駅での安全対策

2016年に相鉄横浜駅で設置されたホームドア
相鉄線では2016年の横浜駅を皮切りに、各駅でホームドア設置を進めています。当初ホームドアは東急線との直通を開始する2022年度末までの全駅設置を予定していました。
しかし、コロナ禍やそれに伴う世界的な半導体の深刻な不足により鉄道業界でもホームドアを含め車両や機械類の製造が停滞しています。さらに、海老名駅ではホーム上空の新駅舎建設の過程で杭に施工ミスがあり、組み立て中の鉄骨が本来の高さより沈下していることが発覚したため、一度解体するなどの混乱が生じました。これらの事情により、相鉄線全駅のホームドア設置完了は2023年度(海老名駅は2027年度)へ大きく遅れる見込みです。
▼参考
2022年度(平成34年度)末までに相鉄線全駅にホームドアを設置 - 相鉄ニュースレター(PDF/439kB)
「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用し、ホームドアの全駅整備などを確実に推進します【相模鉄道】 | 相鉄グループ
左:星川駅の8両連結面停止位置に設置された仮設転落防止柵。床面に点々と貼られているテープはホームドアの準備。
右上:仮設柵と停車中の連結面の位置関係
右下:東急目黒線の車両の例(東急3000系)。ホームドア完備のため連結面に転落防止幌が無い。
右上:仮設柵と停車中の連結面の位置関係
右下:東急目黒線の車両の例(東急3000系)。ホームドア完備のため連結面に転落防止幌が無い。
上:星川駅の8両連結面停止位置に設置された仮設転落防止柵。床面に点々と貼られているテープはホームドアの準備。
中:仮設柵と停車中の連結面の位置関係
下:東急目黒線の車両の例(東急3000系)。ホームドア完備のため連結面に転落防止幌が無い。
中:仮設柵と停車中の連結面の位置関係
下:東急目黒線の車両の例(東急3000系)。ホームドア完備のため連結面に転落防止幌が無い。
相鉄線に乗り入れる東急車のうち、目黒線用の車両(3000系・5080系・3020系)は、走行路線の全駅でホームドアが完備されているため、車両間の連結面に転落防止幌が装備されていません。この状態で相鉄線に入線した場合、駅停車中に利用客が連結面から誤って線路に転落する危険性がありました。そこで、相鉄線内での試運転開始に先立つ昨年10月より、ホームドア未設置駅で転落防止柵が設置されました。
転落防止柵は、近い将来に予定されているホームドア設置までのあくまで仮設のものであるため、工事現場で使用されるプラスチック製のフェンスと鉄パイプを組み合わせた簡素なものとなっています。また、停車中の転落防止が目的であるため、設置位置も8両編成(上記3形式)の連結面部分7箇所のみとなっています。
試運転の様子

日吉駅1番線の出発標識に追加された進路表示器。右側は新横浜線への進入を示す。
新横浜線開業まで残り1年半となった2021年9月、機器調整や社員研修のため相鉄20000系・21000系が東急電鉄に貸し出されました。この時点では新横浜線の線路がまだ完成していなかったため、JR線経由での甲種鉄道車両輸送(貨物扱い)でした。試運転では、直通先となる東京メトロ・都営地下鉄などの路線だけでなく、みなとみらい線元町・中華街駅にも入線しています。
続いて、昨年10月以降は完成検査を兼ねて新横浜線の線路を走行しての両社間での車両の貸し出しも開始されました。当初は深夜のみの運転でしたが、11月2日に完成検査が完了したことから鉄道運輸機構・相鉄・東急の連名で乗務員習熟運転の開始が正式に告知されました。習熟運転が実施される範囲は東急側が東横線・目黒線・新横浜線の全線、相鉄側は新横浜線全線と本線の西谷~かしわ台間で、1日当たりの最大運行本数は東急が40往復、相鉄が15往復という本番さながらの大量運行となっています。




左上:相鉄線には存在しない複々線区間を走行する21000系
右上:武蔵小杉駅に停車中の相鉄21000系
左下:日吉駅から新横浜線へ入線する東急5050系
右下:有楽町線永田町駅に停車中の相鉄20000系
右上:武蔵小杉駅に停車中の相鉄21000系
左下:日吉駅から新横浜線へ入線する東急5050系
右下:有楽町線永田町駅に停車中の相鉄20000系
上から順に
①相鉄線には存在しない複々線区間を走行する21000系
②武蔵小杉駅に停車中の相鉄21000系
③日吉駅から新横浜線へ入線する東急5050系
④有楽町線永田町駅に停車中の相鉄20000系
①相鉄線には存在しない複々線区間を走行する21000系
②武蔵小杉駅に停車中の相鉄21000系
③日吉駅から新横浜線へ入線する東急5050系
④有楽町線永田町駅に停車中の相鉄20000系
東急側の習熟運転は東横線・目黒線ともに昼間に概ね30分に1回のペースで行われています。車両は運用に比較的余裕がある東急5050系4000番台・東武車(9000系列・50070系)・相鉄21000系が使われることが多いですが、これに限らず入線予定の車両は全て対象となっています。
また、ごく稀ですが東急線の直通先である東京メトロや都営三田線にも入線することがあります。東京メトロでは乗り入れ区間に含まれていない有楽町線新木場車両基地まで入線したこともあります。
左:新横浜駅から羽沢トンネルを抜けて羽沢横浜国大駅に到着する相鉄21000系
右上:西谷駅1番線に停車中の東急3000系
右下:西谷駅の駅名標と東急電鉄のロゴマークが並ぶ
右上:西谷駅1番線に停車中の東急3000系
右下:西谷駅の駅名標と東急電鉄のロゴマークが並ぶ
上:新横浜駅から羽沢トンネルを抜けて羽沢横浜国大駅に到着する相鉄21000系
中:西谷駅1番線に停車中の東急3000系
下:西谷駅の駅名標と東急電鉄のロゴマークが並ぶ
中:西谷駅1番線に停車中の東急3000系
下:西谷駅の駅名標と東急電鉄のロゴマークが並ぶ
一方相鉄側の習熟運転は東急車の防護無線設置が大幅に遅れていたことから、当初は相鉄車(20000系・21000系)が西谷~新横浜間を往復するのに留まっていました。年明け後もその状況は好転せず、東急車の使用は運用に余裕がある土日祝日中心となっていました。2月以降はようやく改造が進んだことから平日も東急車が入ることが増えてきており、事前に告知されていた運行範囲を超えた横浜駅までの入線も頻繁に目撃されています。また、相鉄側の羽沢横浜国大~新横浜間は相鉄の車両サイズで施設が建設されており、この区間に限り相鉄12000系やJR東日本E233系など幅広車体の車両も入線しています。
なお、相鉄線のホームドアはホーム天井に光センサーを置く方式となっており、所定位置に停車すると自動でホームドアが開扉してしまいます。そのため、試運転開始直後はTASCを無効にしたうえで意図的に所定位置から外れた場所に停車させ、ホームドアの開扉を阻止していました。年明け以降はホームドアの取り扱いを含めた訓練のため、TASCを有効にしてホームドアのみを開扉させています。
2月に入ってからは関係する各鉄道事業者より新横浜線の運行計画が発表されました。次回はそれらの情報を元に新横浜線の運行計画の概要をまとめるとともに、開業に向けて実施されているPRイベントについてレポートします。
▼参考
相鉄デザインブランドアッププロジェクト|相鉄グループ
2023年3月(予定)の相鉄・東急直通線開業に向けた鉄道施設の検査完了と習熟運転開始のお知らせ - 鉄道運輸機構(PDF/175kB)
2022年4月上旬 から目黒線において8両編成列車の営業を順次開始 - 東急電鉄ニュースリリース(PDF/332kB)
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