京急品川駅地平化・泉岳寺駅改良 - 品川駅再開発2022(3)

京急品川駅泉岳寺寄りの引上線(通称「新品川」)。右奥には環状4号線のP10橋脚が立ち始めている。

2020年4月、東京都と京急電鉄は京急品川駅地平化と北品川駅の高架化工事に着手することを発表しました。着工から2年が経過し、現地では仮線の敷設準備など工事が本格化しています。昨年11月に品川駅周辺を再訪して現地の状況を調査できましたので、当初2回で予定していた2022年のレポートを延長しましてこの工事の現状をお伝えします。

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品川駅再開発(3)京急品川駅地平化と北品川駅高架化(2020年3月1日作成)

京急品川駅地平化工事の概要

京急品川駅のホーム中央付近。このさらに右に行き止まりの3番線がある。 列車種別・行先ごとにわかれた1番線の乗車位置。
左:京急品川駅のホーム中央付近。このさらに右に行き止まりの3番線がある。
右:列車種別・行先ごとにわかれた1番線の乗車位置。2020年2月23日撮影
上:京急品川駅のホーム中央付近。このさらに右に行き止まりの3番線がある。
下:列車種別・行先ごとにわかれた1番線の乗車位置。2020年2月23日撮影

 京浜急行電鉄(京急)は、東京都港区の泉岳寺駅から羽田空港および神奈川県南部の三浦半島にかけて路線網を持つ私鉄です。泉岳寺駅からは都営地下鉄浅草線と相互乗り入れを行っており、浅草線を経由し千葉県の成田空港まで運行される列車もあります。
 京急本線の起点は、泉岳寺駅の隣の品川駅です。泉岳寺駅を発着するのは都営浅草線直通列車と快特の一部となっており、品川駅が京急線の東京側の実質的なターミナルとなっています。京急品川駅は下り列車用の片面ホーム(1番線)、泉岳寺方面へ直通可能な上りホーム(2番線)、行き止まりの折り返しホーム(3番線)の3線となっています。3番線を使用するのは朝ラッシュ時の普通列車の一部のみとなっており、当駅止まりの列車は原則駅の泉岳寺寄りに2本ある引上線で折り返しを行います。(この引上線は乗務員の間では「新品川」と通称されている。)
 当駅を発着する下り列車は、横浜方面へ向かうものと京急蒲田から分岐して羽田空港方面へ向かうものの2種類あります。羽田空港では2010年以降、滑走路の増設、ターミナルビルの拡張、都心上空を横断する着陸ルートの新設等により航空機の発着回数が増加しており、品川駅から羽田空港へ向かう列車も増発が続いてきました。上記の通り、下り列車はほとんどが1番線から発車するため、行先や種別ごとに乗車位置を分けるなど、混雑や誤乗防止の案内に苦慮しているところです。

品川駅上部を横断する東西自由通路は京急品川駅の部分で階段になっている。
京急品川駅の地平化前後の横断面比較図 京急品川駅の地平化前後の横断面比較図
上:品川駅上部を横断する東西自由通路は京急品川駅の部分で階段になっている。2020年2月16日撮影
下:京急品川駅の地平化前後の横断面比較図


 この京急品川駅は、品川駅に乗り入れる各鉄道の中で唯一高架化されています。品川駅では1998年に東西自由通路が完成しましたが、京急の駅が高架化されているためにその部分で通路が地上へ迂回するレイアウトとなっています。品川駅では、今後リニア中央新幹線や東京メトロ南北線など新たな鉄道路線が開通する計画となっており、駅周辺の更なる発展が見込まれています。現状のように東西自由通路が地上へ迂回すると、これらの開発エリアへのアクセス性に問題が出ることが予想されました。
 そこでこれらの問題を解決するため、2019年3月に廃止されたJR山手線の留置線(旧品川電車区)跡地を利用し、京急品川駅を地上へ下ろす計画が立てられました。地平化に合わせてホームを現状の2面3線から、待避線を備えた2面4線に拡張し、現在問題となっている行先・種別ごとの発着ホームの分離を可能にします。ホームの上部は東西自由通路と一体となったコンコースとし、高輪口上空に新設されるデッキを経由して駅周辺の商業施設と上下移動なしで移動できるようにする計画です。泉岳寺寄りの引上線は現行通り2本設置され、地上に線路を降ろす区間が必要となるため、駅全体が北側(泉岳寺方面)に移動します。



京急品川駅地平化の手順

 京急品川駅地平化工事は駅本体部分と引上線部分で施工方法が異なっています。
 京急品川駅北側の引上線部分は現在引上線の高架橋の下に泉岳寺駅へ向かう本線が徐々に潜り込むような構造となっています。この構造では現在線の真下に新しい線路を作るのは不可能であることから、下り線(泉岳寺→品川)と引上線2本を一旦東側に仮移設したうえで現在の高架橋を解体し、跡地の地表に新しい線路を敷設します。
 一方、駅本体部分の高架橋は十分な高さがあることから、現在の線路の位置を維持したまま少しずつ高架橋を仮設構造に作り替え、その下に新しいホームを作って一気に地上へ切り替えます。
 具体的な手順は以下の通りです。

A断面:引上線部分
引上線部分の地平化手順
引上線部分の地平化手順
※クリックで拡大

①着工前(現状)
②下り線をJR線跡地に建設した仮設高架橋に移設する。
③引上線を下り線跡地に建設した仮設高架橋に移設する。
④高架橋跡地に新しい線路を敷設し、4線全てを地平化。

B断面:京急品川駅本体部分
京急品川駅本体部分の地平化手順
京急品川駅本体部分の地平化手順
※クリックで拡大

①着工前(現状)
②単純撤去となる3番線以外の高架橋を仮設構造に作り替える。
③仮設高架橋の下に新ホームを建設し、線路を地平化。
④仮設高架橋を撤去し、コンコースを建設する。

北品川駅高架化工事の概要

京急品川~北品川間の高架化前後の比較図
京急品川~北品川間の高架化前後の比較図
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「淡色地図」「空中写真」合成レイヤーに加筆したものである。


 一方、京急品川駅の隣の北品川駅の周辺には3か所の踏切があります。この中でも品川第一踏切(八ツ山通り、通称「八ツ山踏切」)は路線バスが走行するなど交通量が非常に多くなっています。前記した通りこの区間は羽田空港方面と横浜方面の全ての列車が走行するため、終日に渡り長時間遮断機が閉まったままとなる「開かずの踏切」と化しています。
 京急品川駅の地平化に合わせて付近の線路の位置が変わることから、北品川駅については品川駅とは逆に線路を高架化することとされました。高架化後の北品川駅は現在と同じ対向式ホーム2面2線と保守機材用の線路1線となります。地平化される京急品川駅との間の40m近い高低差を接続するため、駅の位置は南側(横浜方面)に数十m移動します。

北品川駅高架化の手順

 北品川駅周辺は線路の横にビルや住宅が密集していることから、現在線の真上に高架橋を建設する「直上高架方式」となる予定です。直上高架方式は2012年に高架化が完了した京急蒲田駅周辺などでも実績があります。新馬場駅との間の線路のかさ上げ区間についても、線路桁をジャッキアップして高架橋に接続する方法が採用されることになっており、沿線での大規模な用地取得が不要となる予定です。具体的な手順は以下の通りです。

▼脚注
京急大師線大師橋駅の地下化などで採用されたSTRUMと同様の工法を使用するものと思われる。


C断面:北品川駅本体部分
北品川駅本体部分の高架化手順
北品川駅本体部分の高架化手順
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①着工前(現状)
②現在線の真上に高架橋を建設する。上り線側は保守基地の跡地に仮の橋脚を立てる。
③線路・ホームを高架化
④地上ホームを撤去し、上り線側の橋脚を本来の位置に付け替える。

D断面:駅間高架橋接続部分
駅間高架橋接続部分の施工手順
駅間高架橋接続部分の施工手順
※クリックで拡大

①着工前(現状)
②現在線を囲むように門型の枠を作り、計画よりも少し高い位置に新しい軌道桁をセットする。
③ジャッキを操作して軌道桁を計画高さへ降下し、線路を高架線へ接続する。
④門型枠を撤去し、高架橋を完成させる。

「新品川」では仮線準備、北品川駅では工事ヤードの確保が進む

京急線泉岳寺→品川の後面展望。右側の鉄板が2列に打ち込まれている区画が仮線の予定地。 さらに品川方面へ走行したところ。右奥に見える巨大な黒い門型の物体はJR線を東西に横断する環状4号線の橋脚。
左:京急線泉岳寺→品川の後面展望。右側の鉄板が2列に打ち込まれている区画が仮線の予定地。
右:さらに品川方面へ走行したところ。右奥に見える巨大な黒い門型の物体はJR線を東西に横断する環状4号線の橋脚。
上:京急線泉岳寺→品川の後面展望。右側の鉄板が2列に打ち込まれている区画が仮線の予定地。
下:さらに品川方面へ走行したところ。右奥に見える巨大な黒い門型の物体はJR線を東西に横断する環状4号線の橋脚。

 今回は2022年11月29日(火)に調査した現地の状況を中心にお伝えします。
 京急品川駅北側の引上線では、泉岳寺駅から地上に出てくる下り線の横で仮線の敷設準備が進められています。その試掘の際に高輪築堤の遺構の存在が判明し、記録保存に向けた調査が継続されていることは前回の記事でお伝えしました。
 仮線への移設の際には奥に見えるトンネルの一部も線形が変わります。そのため新しいトンネルの位置に合わせて2列に鋼矢板が打ち込まれています。今後はこの鋼矢板の間を掘削してトンネルやそれに続くU字型の擁壁を築造します。

京急品川駅高架下の品達品川跡地で進む仮支柱の工事 高架上のホームも仮設化が進んでいる
2022年9月15日で閉店した1番線ホームの「えきめんや」(蕎麦屋) JR山手線留置線跡地で行われたタワークレーンの基礎工事
左上:京急品川駅高架下の品達品川跡地で進む仮支柱の工事
右上:高架上のホームも仮設化が進んでいる
左下:2022年9月15日で閉店した1番線ホームの「えきめんや」(蕎麦屋)
右下:JR山手線留置線跡地で行われたタワークレーンの基礎工事
上から順に…
①京急品川駅高架下の品達品川跡地で進む仮支柱の工事
②高架上のホームも仮設化が進んでいる
③2022年9月15日で閉店した1番線ホームの「えきめんや」(蕎麦屋)
④JR山手線留置線跡地で行われたタワークレーンの基礎工事

 京急品川駅本体部分では、2020年4月の工事着工に先立ち、同年3月末をもって京急品川駅の高架下にあった商業施設(ウイング高輪イースト・品達品川)が閉店しました。閉店後しばらく施設は放置されていましたが、2022年夏以降は品達品川の店舗跡地で工事期間中線路やホームを支える仮設の支柱を作る工事が本格化しています。仮設の支柱は高架下の狭いスペースであること、短期間で撤去する予定であるため、短い鋼管を溶接で繋ぎ合わせたものとなっています。高架橋の上のホームでも蕎麦屋が閉店し、床面の一部が仮設になるなど変化が見られます。
 また、11月の調査時にはJR山手線の留置線跡地でも円筒状に組まれた鉄筋が複数本立ち上がりつつあるのが確認できました。その後この場所にはタワークレーンが設置されており、このクレーンを使って今後京急品川駅の工事で使用する資材を出し入れするものと思われます。

八ツ山踏切横で開始されたJR線を跨ぐ橋梁の工事
八ツ山踏切横で開始されたJR線を跨ぐ橋梁の工事

 京急品川~北品川間でJR線を跨ぐ橋梁は、北側に並行して設置される新しい橋梁に架け替えられます。JR線の東側の八ツ山通りと京王品川ビルに挟まれたわずかな空間では、鋼矢板が設置され新しい橋台を作る工事が開始されています。

北品川駅の駅舎に隣接していた保守基地は高架化工事のヤードに転用された 上り線から保守基地へ通じていたポイントも撤去されている
左:北品川駅の駅舎に隣接していた保守基地は高架化工事のヤードに転用された
右:上り線から保守基地へ通じていたポイントも撤去されている
上:北品川駅の駅舎に隣接していた保守基地は高架化工事のヤードに転用された
下:上り線から保守基地へ通じていたポイントも撤去されている

 北品川駅では上り線の外側にあった保守機材線を高架化工事のヤードに転用するため、機材線が撤去されました。本線との接続部分にあったポイントもレールが抜かれています。また、北品川駅のホームについても一部取り壊され仮設の床板に変わっています。2つあるホームを接続している跨線橋が高架化工事の支障となりますが、その機能をどのように代替するのかについては現在のところ明らかになっていません。

▼参考
会社概要 | 企業情報 | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
→京急グループ会社要覧 2019-2020“KEIKYU HAND BOOK”の12・25ページに品川駅地平化・北品川駅高架化に関する説明
京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間) - 東京都建設局 連続立体交差事業(連立事業)ポータルサイト
国道15号・品川駅西口駅前広場「事業計画」 | 東京国道事務所 | 国土交通省 関東地方整備局

▼関連記事
品川駅再開発(3)京急品川駅地平化と北品川駅高架化(2020年3月1日作成)
品川駅再開発(2)2018年~2019年、そして今後(2019年11月29日作成)
→山手線留置線の板橋駅への機能移転について

泉岳寺駅の工事も徐々に開始

泉岳寺駅断面図(現在) 泉岳寺駅断面図(拡幅後)
泉岳寺駅拡張前後の断面比較図。1番線側のトンネル側壁を壊し、線路を移設して各ホームの幅を2倍に拡幅する。

 京急品川駅を挟んで反対側の都営浅草線泉岳寺駅は、近隣の高輪ゲートウェイシティの開発に伴う利用者増加に対応するため、ホーム幅を現在の約2倍に拡幅する予定となっています。こちらについても2019年以降道路下の埋設物の仮移転や、トンネルの一部解体に向けたトンネル柱の補強などの準備工事が進められています。2021年1月23日からは京急品川寄りのA1出入口が長期閉鎖(2025年3月までの予定)となっています。

2021年以降長期閉鎖となっているA1出入口 泉岳寺駅拡張予定地となる第一京浜沿道の再開発エリア。交差点の看板には「埋蔵文化財の発掘調査を行っています」とあり、高輪築堤に関連した調査が継続している。
左:2021年以降長期閉鎖となっているA1出入口。2021年4月10日撮影
右:泉岳寺駅拡張予定地となる第一京浜沿道の再開発エリア。交差点の看板には「埋蔵文化財の発掘調査を行っています」とあり、高輪築堤に関連した調査が継続している。2022年11月29日撮影
上:2021年以降長期閉鎖となっているA1出入口。2021年4月10日撮影
下:泉岳寺駅拡張予定地となる第一京浜沿道の再開発エリア。交差点の看板には「埋蔵文化財の発掘調査を行っています」とあり、高輪築堤に関連した調査が継続している。2022年11月29日撮影

 拡幅後のホームは第一京浜の道路内からはみ出すため、東側の沿道のビルを再開発して用地を確保する計画となっています。(泉岳寺駅地区 第二種市街地再開発事業)この再開発ビルの予定地は高輪築堤の遺構に接しており、その北端で横仕切堤も発掘されたことから、現在も他に遺構が存在しないか慎重に調査が継続されています。この調査に加えて元からあったビルの退去や解体に時間を要したことから、当初2024年度に予定されていた新ホームの完成が2027年度へ延期されています。
 泉岳寺駅については本格的な掘削着手後に改めて詳細なレポートをすることとします。

▼参考
東京都交通局経営計画2022 | 東京都交通局
→63ページに泉岳寺駅改良工事の概要と完成予定年度に関する記述
浅草線・京急線泉岳寺駅A1出入口閉鎖のお知らせ | 東京都交通局

▼関連記事
品川駅再開発(4) 都営浅草線泉岳寺駅拡張(2020年3月13日作成)
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