高輪築堤調査と高輪ゲートウェイシティ着工 - 品川駅再開発2022(2)

建設が本格化した高輪ゲートウェイシティ

年が変わってしまいましたが、昨年6月の品川駅開業150周年記念イベントの記事からの続きです。高輪ゲートウェイ駅周辺では、150年前の鉄道開業時の路盤である高輪築堤が出土しました。現地では発掘調査が続く一方、調査が完了した場所では高輪ゲートウェイシティの高層ビル建設が本格化しています。2回目の今回は高輪ゲートウェイ駅周辺の2021年春以降の変化についてレポートします。

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品川車両基地跡地の再開発計画

品川開発プロジェクト(Ⅰ期)の施設配置
品川開発プロジェクト(Ⅰ期)の施設配置
国土地理院電子国土Web「淡色地図」「全国最新写真」に加筆


 品川駅北側は、車両基地の縮小に着手した2000年代後半より国の国際戦略特区(アジアヘッドクォーター特区)や都市再生緊急整備地域に指定されるなど、官民一体での再開発が進められています。また、2013(平成25)年にはJR東海がリニア中央新幹線の東京側のターミナルを品川とすることを決定しました。これら鉄道ターミナルや羽田空港が近い立地を生かし、品川駅周辺を国内外から東京の玄関口としてふさわしい街へ整備していくこととし、2014(平成26)年にはそのアウトラインとなる「品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014」が策定されました。品川駅から羽田空港へのアクセスは京急線が担うことから、このガイドラインでは京急品川駅の地平化・2面4線化や都営浅草線泉岳寺駅の拡張(次回の記事で解説予定)も新たに盛り込まれました。
 2019(平成31)年に実施された最後の線路切替工事でJR在来線の線路が全て東側にオフセットされ、再開発着工に向けた準備が整いました。これに合わせてJR東日本は2024年度完成を目標に高輪ゲートウェイ駅前の第一京浜沿道を含むエリアで計7棟の高層ビルを建設することを発表しました。これらの高層ビル群は「高輪ゲートウェイシティ」の名称(仮称)で、最大1,200席を有するライブホールやコンベンション(展示場)も設けられ、災害時は帰宅困難者の待機場所としても活用される計画となっています。JR東日本ではこの場所が車両基地跡地であることにちなみ、街づくりに向けた取り組みを「Tokyo Yard PROJECT(東京ヤードプロジェクト)」と命名しています。

高輪築堤出土の経緯に関する新たな情報

高輪ゲートウェイ駅前で出土した高輪築堤。この部分は奥にある信号機土台部分を除き記録保存となっており、現在は解体されている。
高輪ゲートウェイ駅前で出土した高輪築堤。この部分は奥にある信号機土台部分を除き記録保存となっており、現在は解体されている。2021年4月10日撮影

 この再開発が着工して間もない2019年春に、前回の記事で説明した品川駅北側地下の荷捌き施設建設現場で、高輪築堤の遺構が初めて出土しました。JR東日本東京工事事務所が刊行している専門誌「東工技報」の2019年度版で、この築堤出土の経緯が記載されているのを発見しました。
 それによると、地下掘削着手前の段階でJR東日本ではある程度築堤の遺構が出土することを予期しており、事前に港区へ出土した場合の対応を問い合わせた形跡がありました。しかしながらこの時点では、埋蔵文化財が主に江戸時代以前の遺跡を対象としたものであったことや、遺構の規模が不明だったため港区では「重要な遺跡であるため専門の調査会社を入れて記録するように」と助言するように留まりました。
 その後予想通り築堤遺構が出土したことから、港区や文化庁にもその事実が報告され、築堤が残存している可能性がある山手線・京浜東北線の旧線跡全体が埋蔵文化財包蔵地に指定されました。そして、線路を剥がしながら調査を継続した結果、1km以上に渡り築堤がほぼ完全な形で残存していることが見い出され、2020年末にJR東日本から築堤の出土が正式発表されました。
 高輪築堤保存に関しては、遺構の存在範囲が確定した2020(令和2)年9月以降学識経験者等を交えた検討委員会が複数回開催されました。その中で既に遺構が存在しない前提で再開発が進んでしまっているという時間的・財政的な課題が関係者間で共有され、2021(令和3)年4月に以下のような形での保存が決定しました。

①2街区(文化創造棟)の公園隣接部40mを現地保存する
②3街区(複合棟Ⅱ)の第七橋梁を含む80mを現地保存する
③4街区(複合棟Ⅰ)の信号機跡を含む30mを移築保存する(高輪ゲートウェイ駅前中央広場)
④それ以外の区間は詳細な調査(記録保存)を行ったうえで撤去または埋め戻しする


現地保存となった2箇所の遺構は予定されていたビルや構造物と一部重複していました。特に第七橋梁は3街区の高層ビル(複合棟Ⅱ)と完全に重なっていたため、東側(車両基地側)に予定されていた歩行者デッキの設置を取りやめてビル全体を東側にセットバックすることとされました。これに伴い設計や部材製作のやり直しが発生したため、1~3街区のビルは完成が2025年度へ約1年延期されています。

解体開始後も出土が続く遺構

旧高輪橋架道橋は再開発のため2021年5月に西側半分が地上通路に切り替えられた。新しい通路からも高輪築堤を見ることができた。調査のため、石材には1つずつ番号が書かれたステッカーが貼られている。
旧高輪橋架道橋は再開発のため2021年5月に西側半分が地上通路に切り替えられた。新しい通路からも高輪築堤を見ることができた。調査のため、石材には1つずつ番号が書かれたステッカーが貼られている。2021年7月10日撮影

 現地保存が決定した築堤計120mは、2021年9月に国の史跡に指定されました。一方、それ以外の移築・記録保存となった部分は、2019年の最初の発見から3年以上が経過した現在も発掘調査が継続されています。ここから先は前回レポートした2021年4月の一般向け見学会以降の高輪築堤調査について解説します。

港区郷土歴史館で開催された「人物で見る日本の鉄道開業」展で展示された高輪築堤の再現模型(撮影可能展示品)。築堤と陸をつなぐT字型の部分が横仕切堤。手前が新橋方の北横仕切堤で、陸側の付け根に高輪大木戸の土塁がある。
港区郷土歴史館で開催された「人物で見る日本の鉄道開業」展で展示された高輪築堤の再現模型(撮影可能展示品)。築堤と陸をつなぐT字型の部分が横仕切堤。手前が新橋方の北横仕切堤で、陸側の付け根に高輪大木戸の土塁がある。2022年12月11日撮影

 高輪築堤には線路下に船舶を通せるようにする橋梁に加えて、線路に直交して陸地との間を結ぶ横仕切堤と呼ばれる築堤があることが古地図などから判明していました。2021年夏には、高輪ゲートウェイ駅北側の第一京浜泉岳寺交差点(旧京急本社ビル)付近と、第二東西連絡道路予定地(旧高輪橋架道橋跡地)の2箇所で相次いでその横仕切堤とみられる石垣が発見されました。いずれも現地保存について検討されましたが、既に着工している4街区の地下車路や泉岳寺駅拡張に伴い新しく作られるトンネル・下水道に重なるため、現況での保存は断念され将来の移築・復元を念頭に石材を保管しています。
 
品川駅北側の環状4号線・京急地平化工事に伴う仮線の敷設範囲と高輪築堤が埋没している範囲
品川駅北側の環状4号線・京急地平化工事に伴う仮線の敷設範囲と高輪築堤が埋没している範囲
※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「全国最新写真(シームレス)」に加筆

※クリックで拡大

 一方、品川駅に近い5・6街区は現在のところまだ再開発ビルの計画が策定されていませんが、地区内を横断する環状4号線を2032(令和14)年度までに先行整備することになっています。前回の品川駅150周年記念見学会の記事でもお伝えした通り、今年に入ってからは環状4号線の陸橋を支える橋脚の工事が開始されています。また、詳細は次回解説しますが、京急線の地平化工事に必要な仮線が現在線の東側に接して敷設されることになっています。(次回の記事で解説予定)
 着工前に実施した試掘の結果、環状4号線のP10橋脚と京急線の仮線がともに築堤遺構と重なることが判明しました。また、この試掘では京急線の高架下にもう1本横仕切堤※1が埋没していることも突き止められました。特に、築堤の山側(西側)は京急の仮線と完全に重複しています。京急の仮線はまもなく敷設開始予定となっており、既に完成しているJR線の施設との位置関係から移動も難しいため、ここもやはり現地での完全保存は困難であるとみられます。

▼脚注
※1:現在の品川駅東西自由通路の場所に存在した「第八橋梁」に付随する施設と考えられている。


旧高輪橋架道橋通路の横で行われている高輪築堤の発掘調査。北横仕切堤の遺構はここで見つかった。
築保存のため、厳重に梱包の上で物流用パレットの上に仮置きされた高輪築堤の石材。
芝浦工大付属中高敷地に再現された高輪築堤と403号蒸気機関車
左:旧高輪橋架道橋通路の横で行われている高輪築堤の発掘調査。北横仕切堤の遺構はここで見つかった。2022年3月2日撮影
右上:移築保存のため、厳重に梱包の上で物流用パレットの上に仮置きされた高輪築堤の石材。2021年7月10日撮影
右下:芝浦工大付属中高敷地に再現された高輪築堤と403号蒸気機関車。2023年1月7日撮影
上:旧高輪橋架道橋通路の横で行われている高輪築堤の発掘調査。北横仕切堤の遺構はここで見つかった。2022年3月2日撮影
中:移築保存のため、厳重に梱包の上で物流用パレットの上に仮置きされた高輪築堤の石材。2021年7月10日撮影
下:芝浦工大付属中高敷地に再現された高輪築堤と403号蒸気機関車。2023年1月7日撮影

 現地保存の対象外となった築堤は、2021年夏以降調査が完了した部分より解体されました。高輪ゲートウェイ駅前の信号機跡の部分については、将来整備される駅前広場に移築保存するため、取り外した石材は1つずつ緩衝材で厳重に梱包したうえで搬出されています。
 また、鉄道開通に大きな役割を果たした大隈重信の出身地である佐賀県にも石材の一部が譲渡されました。佐賀県立博物館ではこの石材を利用して高輪築堤が約10mの長さ再現され、昨年4月15日より映像資料とともに公開されています。さらに、江東区豊洲にある芝浦工業大学付属中学校・高校では、前身の東京鐵道中学の創立から100周年を迎えることを記念し、高輪築堤の石材と西武鉄道が所有していた400形蒸気機関車を譲り受けました。同校敷地内※2にこれらを使用したモニュメントが作られ、昨年11月12日より公開されています。

▼脚注
※2:隣接する豊洲六丁目第二公園と一体になった公開空地となっており、終日自由に立入可能。


ビル建設は「重機の博覧会」

高輪ゲートウェイ駅から見た高層ビルの建設工事。様々な重機が林立する。 同じ場所から品川駅方向を見る。左端の高輪ゲートウェイ駅駅舎もデッキの接続準備が始まった。
左:高輪ゲートウェイ駅から見た高層ビルの建設工事。様々な重機が林立する。
右:同じ場所から品川駅方向を見る。左端の高輪ゲートウェイ駅駅舎もデッキの接続準備が始まった。2022年11月29日撮影
上:高輪ゲートウェイ駅から見た高層ビルの建設工事。様々な重機が林立する。
下:同じ場所から品川駅方向を見る。左端の高輪ゲートウェイ駅駅舎もデッキの接続準備が始まった。2022年11月29日撮影

 2022年春には1・3・4街区の発掘調査がおおむね終了したことから、高層ビルの工事が開始されています。いずれも地下に駐車場などを設けるため地盤を深く掘削する必要があり、巨大な杭打ち機やクレーンが林立しています。その光景はまさに「重機の博覧会」です。
 高輪ゲートウェイ駅前の4-1棟(複合棟ⅠNorth)は特に工事の進捗が早く、昨年11月末の時点では1階の鉄骨の組み立てや床の配筋作業が完了し、2階の鉄骨が立ち上がろうとしているところでした。着工が遅れた分を取り戻すため、先に地中部分の柱を作った後1階の床面を完成させ、そこから上下に向かってビルを伸ばしていく方法(逆打さかうち工法)をとっているようです。
 高輪ゲートウェイ駅の駅舎西側は、これらの高層ビルとデッキで接続可能な構造で当初から建設されています。開業時は接続用の躯体が露出した状態でしたが、ビルの工事が開始されたことから床面を延長する準備が開始されており、再びネットで覆われています。

計画段階から遺跡の可能性を含む必要も

高輪築堤から出土した枕木と双頭レール。「人物で見る日本の鉄道開業」展にて。(撮影可能展示) 「人物で見る日本の鉄道開業」展の図録と高輪築堤の調査報告書「概説 高輪築堤」
左:高輪築堤から出土した枕木と双頭レール。「人物で見る日本の鉄道開業」展にて。(撮影可能展示)2022年12月11日撮影
右:「人物で見る日本の鉄道開業」展の図録と高輪築堤の調査報告書「概説 高輪築堤」
上:高輪築堤から出土した枕木と双頭レール。「人物で見る日本の鉄道開業」展にて。(撮影可能展示)2022年12月11日撮影
下:「人物で見る日本の鉄道開業」展の図録と高輪築堤の調査報告書「概説 高輪築堤」

 鉄道開業150周年を記念して、昨年10月14日~12月18日に「人物で見る日本の鉄道開業」と題した企画展が港区立郷土歴史館で開催されました。この企画展では鉄道開業に尽力した当時の関係者について資料から振り返るとともに、高輪築堤の再現模型や現地で発掘された石材や枕木の実物が展示されました。同館では昨年春までに発掘調査が完了した高輪築堤(1~4街区)についてまとめた報告書「概説 高輪築堤」も販売されています。(1冊800円)
 高輪築堤が不運だったのは、開業から約150年間、その全てが一時いっときも途切れることなく現役の鉄道線路敷として使われ続けてきたことにあると思います。もしこれがわずかな区間でも廃線や移設となり掘り起こされる機会があれば、築堤の存在が人々に知らされ、保存を前提にした再開発計画を練ることも可能だったはずです。
 今後さらに時代が下れば、大正、昭和期の建築物でも保存を求める声が上がると予想されます。高輪築堤調査・保存等検討委員会の発言にもありますが、今後は公共事業で行われる環境アセスメント等の事前調査の段階で、そういった文化財調査について盛り込む必要もあるでしょう。2021年の記事でも書きましたが、特に民間事業者の場合はその際「見なかったこと」にして済ますことが無いよう、制度や財政面で十分なバックアップがなされることを期待します。

京急品川駅1番線
京急品川駅1番線。2022年11月29日撮影

 さて、先ほども少し触れましたが京急品川駅の地平化と北品川駅の高架化工事が昨年夏以降本格化しています。昨年は3月に加えて11月末にも再び品川を訪れる機会があったため、京急の工事の着工状況について時間をかけて調査することができました。そこで2回で予定していたレポートを延長しまして、次回は京急線の地平化・高架化工事の現状についてお伝えします。

▼参考
●JR東日本公式サイト資料
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)に係る都市計画について(2018年9月25日発表・PDF/4.8MB)
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)が都市計画決定されました ~高輪ゲートウェイ駅周辺のまちづくりが本格始動します~(2019年4月22日発表・PDF/984KB)
高輪築堤の出土について(2020年12月2日発表・PDF/622KB)
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)における高輪築堤の調査・保存について(2021年4月21日発表・PDF/1.2MB)
高輪ゲートウェイシティ(仮称)のまちづくりについて(2022年4月21日発表・PDF/3.72MB)
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)における高輪築堤調査・保存等検討委員会での検討経緯:JR東日本

●品川・田町地区まちづくりガイドライン(東京都都市整備局)
品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014 | 東京都都市整備局
品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2020 | 東京都都市整備局
品川駅北周辺地区まちづくりガイドライン(PDF/22.7MB)

●港区公式サイト資料
港区ホームページ/高輪築堤遺跡

●その他
Global Gateway| 高輪ゲートウェイシティのまちづくり
品川駅周辺地区 | UR都市機構
品川駅地下物流施設支障移転等 - 東工技報第33号
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