高輪ゲートウェイシティ工事の現状 - 品川駅再開発2023(2)

高輪ゲートウェイ駅前で進むビルの建設工事

品川駅北側から高輪ゲートウェイ駅周辺では、現在旧田町車両センター跡地の再開発が進められています。2020年秋に出土した高輪築堤の調査もおおむね終了したことから、高層ビルの建設が本格化しています。今回はそれら再開発事業の現状に加えて、記録調査終了により取り外された高輪築堤石材の利用状況についてもレポートします。

▼関連記事
高輪築堤調査と高輪ゲートウェイシティ着工 - 品川駅再開発2022(2)(2023年1月8日作成)

上野東京ライン開業と品川車両基地の再開発

秋葉原駅総武線ホームから見た上野東京ラインの新規建設区間を走る列車 規模縮小に伴い使用を停止した品川車両基地の留置線(手前)
左:秋葉原駅総武線ホームから見た上野東京ラインの新規建設区間を走る列車
右:規模縮小に伴い使用を停止した品川車両基地の留置線(手前)
上:秋葉原駅総武線ホームから見た上野東京ラインの新規建設区間を走る列車
下:規模縮小に伴い使用を停止した品川車両基地の留置線(手前)

 2015(平成27)年3月14日、東海道線東京駅と東北本線(宇都宮・高崎線)・常磐線上野駅を結ぶ新しい路線「上野東京ライン」(建設中の名称は「東北縦貫線」)が開業しました。上野東京ラインの開業により、湘南新宿ラインに続く2本目の東京都心縦断ルートが完成し、東海道線と宇都宮・高崎・常磐線の直通運転が可能になりました。
 この新線開業により、乗換回数の減少という我々乗客の目に見える変化に加えて、車両運用効率化という効果も得られています。これまで東海道線は品川駅、東北線は上野駅(尾久駅)にそれぞれ別々の大規模車両基地を有していました。この両車両基地が上野東京ラインにより直接結ばれることから、品川駅側の基地の機能の一部を上野駅側に統合することになりました。
 上野東京ライン開業に向けては、品川駅から北方面への折り返し機能を新設する必要があたっため、実際の工事は上野東京ライン開業より前の2009年より開始されています。2020年にはこの再開発エリアの玄関口として山手線・京浜東北線に高輪ゲートウェイ駅が開業しました。なお、これらの再開発エリアは、2027年に開業予定のリニア中央新幹線の品川駅や羽田空港にも近接していることから、国際戦略特区(アジアヘッドクォーター特区)や都市再生緊急整備地域に指定され、官民一体での開発が進められています。

高層ビル建設が進行中

高輪ゲートウェイ駅前で出土した明治時代の築堤遺構。この部分は現在解体されており、石材の一部を使って駅前広場に築堤が再現される予定。
高輪ゲートウェイ駅前で出土した明治時代の築堤遺構。この部分は現在解体されており、石材の一部を使って駅前広場に築堤が再現される予定。2021年4月10日撮影

 高輪ゲートウェイ駅が開業直後の2020年秋、再開発エリアの西側から明治時代の鉄道開業時の遺構である高輪築堤が出土しました。築堤は再開発エリアの南北を縦断する形で長さ1km以上に渡りほぼ完全な形で残存していることが突き止められ、全貌を明らかにすべく現在もその調査は継続されています。
 この遺跡を巡っては、その価値の高さゆえに現況での保存の可能性を探るべく、有識者を交えた検討会がこれまで30回以上に渡り開かれいます。しかし、先行して整備されている再開発区画の道路や下水道といった各種インフラとの兼ね合いや、調査・保存によるコストの問題などから全てを残すことは不可能と判断されました。そのため、ビルの一部を移動させることで計120mを現地保存することとし、残りの部分は詳細な記録を残したうえで解体もしくは埋め戻されました。解体により発生した石材の一部を利用して今後高輪ゲートウェイ駅前に築堤が30m再現されるほか、残った石材は各地にある博物館などに寄贈され、様々な形で活用されています。(後述)

▼脚注
※2021年9月に国の史跡に指定


高輪ゲートウェイシティの施設配置と高輪築堤の保存位置
国土地理院電子国土Web「淡色地図」「全国最新写真」に加筆


 高輪ゲートウェイ駅前の旧車両基地エリアでは、高輪築堤の調査がおおむね完了したことから2022年春以降高層ビルの建設が本格化しています。
 旧車両基地エリアのビルは北側から順に「住宅棟」(1街区)、「文化創造棟」(2街区)、「複合棟Ⅱ」(3街区)、「複合棟Ⅰ(North)」(4-1街区北棟)、「複合棟Ⅰ(South)」(4-1街区南棟)となっており、これらを総称して「高輪ゲートウェイシティ」と命名されています。文化創造棟には最大1,200席を有するライブホール、複合棟Ⅰの地下にはコンベンション(展示場)も設けられ、都内で近年問題となっているイベント会場の不足を補完するほか、大規模災害時は帰宅困難者の待機場所としても活用される予定です。
 なお、複合棟Ⅱは高輪築堤の中で最大規模の遺構である第七橋梁を現地保存するため、東(線路)側に予定されていた歩行者用デッキの設置を取りやめたうえでビル全体をセットバックさせています。これらの設計変更のため、ビルは完成は2025年度へ約1年延期されています。

第二東西連絡道路予定地(旧高輪橋架道橋通路)から見た文化創造棟の工事。この時点では地下階の構築中。
第二東西連絡道路予定地(旧高輪橋架道橋通路)から見た文化創造棟の工事。この時点では地下階の構築中。

 今回現地を調査した昨年9月時点では、1街区住宅棟と2街区文化創造棟が建物地下部分の工事、3街区複合棟Ⅱと4街区複合棟ⅠNorth・Southが地上部分の工事までそれぞれ進行中でした。複合棟Ⅰの2棟の工事は進行が早く、この時点で地上20階ほどまで鉄骨の組み立てが進み、10階ほどまではカーテンウォールの取り付けも終わっている状況でした。複合棟Ⅱの横にあった高輪築堤第七橋梁の遺構は、ビルの工事による破損などを防ぐため一旦埋め戻されており、ビル完工後に再度掘り出したうえで一般公開に向けた修復が行われる予定になっています。

泉岳寺交差点から見た複合棟Ⅱ 第二東西連絡道路予定地から見た複合棟Ⅱ。高輪築堤第七橋梁を避けるため他のビルより左側に寄っている。築堤遺構は一旦埋め戻されている。
泉岳寺交差点から見た複合棟ⅠNorth。手前の第一京浜沿いのビルも一部建て替えられる予定。 高輪二丁目交差点から見た複合棟ⅠSouth
左上:泉岳寺交差点から見た複合棟Ⅱ
右上:第二東西連絡道路予定地から見た複合棟Ⅱ。高輪築堤第七橋梁を避けるため他のビルより左側に寄っている。築堤遺構は一旦埋め戻されている。
左下:泉岳寺交差点から見た複合棟ⅠNorth。手前の第一京浜沿いのビルも一部建て替えられる予定。
右下:高輪二丁目交差点から見た複合棟ⅠSouth
上から順に
①泉岳寺交差点から見た複合棟Ⅱ
②第二東西連絡道路予定地から見た複合棟Ⅱ。高輪築堤第七橋梁を避けるため他のビルより左側に寄っている。築堤遺構は旦埋め戻されている。
③泉岳寺交差点から見た複合棟ⅠNorth。手前の第一京浜沿いのビルも一部建て替えられる予定。
④高輪二丁目交差点から見た複合棟ⅠSouth

▼参考
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)に係る都市計画について(2018年9月25日発表・PDF/4.8MB)
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)が都市計画決定されました ~高輪ゲートウェイ駅周辺のまちづくりが本格始動します~(2019年4月22日発表・PDF/984KB)
高輪築堤の出土について(2020年12月2日発表・PDF/622KB)
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)における高輪築堤の調査・保存について(2021年4月21日発表・PDF/1.2MB)
高輪ゲートウェイシティ(仮称)のまちづくりについて(2022年4月21日発表・PDF/3.72MB)



道路建設も本格化

 一方、高輪ゲートウェイシティの工事とは別で品川駅北側では東京都が整備を行う環状4号線の工事が本格化しています。
 環状4号線は品川駅東側の旧海岸通り(新港南橋交差点)を起点に東京都心のやや外側を周回して東京メトロ東西線南砂町駅南側の永代通り(南砂町駅入口交差点)に至る全長約30kmの幹線道路です。「環状」とはいうものの、実態は短い道路を繋ぎ合わせたものとなっており、品川駅周辺のJR線を横断する部分に至っては現道自体が存在しない状態が長年に渡り続いてきました。
 上記の品川車両基地跡地の再開発やリニアなど新たな交通機関の整備も決まったことから、そのアクセスルートとして注目されるようになり、品川駅周辺から白金台までの区間について2020年から工事が開始されることになりました。この道路は2030年代に開業予定の東京メトロ南北線白金高輪~品川延伸区間の敷設空間にもなる予定です。
 また、この道路の整備に合わせて品川駅北側では線路上空で人工地盤の整備が進んでいます。人工地盤の上には環状4号線に接続する品川駅北口駅前広場が新設されることになっており、拡張の余地が少ない高輪口に代わる交通結節点となる予定です。

品川駅到着直前の横須賀線車内から見た環状4号線の工事
品川駅到着直前の横須賀線車内から見た環状4号線の工事。2024年1月14日撮影

 JR線と交差する部分の環状4号線は片側2車線の陸橋として整備される予定になっています。この区間は列車が運行していない夜間にしか作業ができない難工事となるため先行して着工しており、2022年夏の段階で橋脚の一部が出来上がりつつある状況でした。(2022年6月の品川駅工事見学会のレポートを参照)2023年以降は出来上がった橋脚の上で床面となる橋桁を作る工事が進んでおり、列車内からでもその様子をはっきりと確認できるようになってきています。

▼参考
都市再生特別地区(品川駅街区地区) 都市計画(素案)の概要 - 国家戦略特別区域会議東京圏東京都都市再生分科会(PDF/17.8MB
環状第4号線(高輪地区)/事業別に見る/東京都第一市街地整備事務所 | 東京都都市整備局

有効利用される高輪築堤の石材

新橋駅SL広場に完成し高輪築堤モニュメント
新橋駅SL広場に完成し高輪築堤モニュメント。2023年10月2日撮影

 前記の通り一部を除き現地保存が叶わなかった高輪築堤ですが、取り外された石材は様々な形で活用されています。東京都内では、以前紹介した芝浦工大附属中高(江東区豊洲)に加えて新橋駅西口のSL広場でもこの石材を利用したモニュメントが昨年3月に完成しました。石材が設置されたのはSL広場で展示されている蒸気機関車C11形292号機の土台部分で、横には高輪築堤や近隣の関連する史跡に関する解説パネルも設置されています。
 引き続き品川駅周辺の再開発に加えて高輪築堤の関連物の利用状況についても調査を行ってまいります。

▼参考
港区ホームページ/新橋駅西口広場に高輪築堤モニュメントを設置しました。

▼関連記事
芝浦工大附属中高403号蒸気機関車(2023年1月21日作成)
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