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品川駅再開発(3)京急品川駅地平化と北品川駅高架化
公開日:2020年03月01日17:49

しばらく間が開きましたが、品川駅再開発の続きです。品川駅の再開発はJR線の車両基地跡地のみならず、その周辺でも始まっています。今回はその中から京急電鉄の品川駅地平化ならびに北品川駅の高架化について解説します。
京急線品川駅地平化

京急の看板車両2100形電車。優等列車「快特」や有料座席指定列車「Wing」で使用される。
京浜急行電鉄は、東京都港区の泉岳寺駅から羽田空港および神奈川県南部の三浦半島にかけて路線網を持つ私鉄です。泉岳寺駅からは都営地下鉄浅草線と相互乗り入れを行っており、浅草線を経由し千葉県の成田空港まで運行される列車もあります。京急線はほぼ全線に渡りJR線と並行しており、特に品川~横浜間はJR東海道線との激しい競争状態になっています。このため、古くから高い加速・減速力を持つ高性能電車が投入されており、1995年以降は最上位種別の快特(快速特急)が最高速度120km/hで運行されています。


左(1):京急品川駅の泉岳寺寄り。当駅止まりの列車用の引上線が2本設置されており、通称「新品川」と呼ばれている。
右(2):京急品川駅1番線は様々な種別・行先の列車が発着するため、乗車位置が細かく分かれている。
京急本線の起点は泉岳寺駅の隣の品川駅となっています。横浜方面から泉岳寺駅まで乗り入れる列車は浅草線直通列車と快特の一部となっており、現在も品川駅が東京都心側の実質的なターミナル駅となっています。品川駅の泉岳寺寄りには折返し用の引上線が2本ありますが、ホームはスルー運転可能な2本と行き止まりの1本の2面3線という狭小な設備で全ての列車を捌いており、終日駅構内は混雑しています。特にJR線から横浜・羽田空港方面への乗り換え客が集まる1番線ホームは、種別の異なる列車の乗客が多数並ぶため、床面には列車種別ごとに並ぶ位置がペイントされるなど、案内が大変複雑になっています。
京急線が乗り入れる目的地のひとつである羽田空港は、2010年に4本目の滑走路と国際線ターミナルビルが完成し、年間の航空機発着回数は約30万回から約45万回へ1.5倍増加しました。今年3月からは新たに東京都心上空を横断する新着陸ルートの本格運用を開始し、年間発着回数はさらに約4万回増加する計画です。これら羽田空港の再拡張に合わせて、品川駅から羽田空港へ向かう京急線の本数も増加し続けていますが、品川駅では横浜方面と羽田空港方面の列車のほとんどが同じ1番線から発車しており、混雑や誤乗のリスクが高まっています。

品川駅上部を横断する東西自由通路は京急品川駅の部分で階段になっている。
一方、京急品川駅が高架橋であることにより別の問題も発生しています。品川駅では、1990年代末~2000年代初めにかけてJR線全体を跨ぐ東西自由通路が整備されました。京急品川駅はこの自由通路の西端にあるため、通路を地上に迂回させる必要が生じ、駅西側の高輪地区にあるホテルや商業施設と同一高さで接続することが不可能となっています。品川駅では2027年にリニア中央新幹線が乗り入れ、駅内外ともさらなる発展が期待されていますが、このような構造が高輪地区の開発に支障をきたすことが予想されました。


京急品川駅の地平化前後の横断面比較図
この問題を解決するため、JR品川駅再開発の一環で廃止となった山手線留置線(旧品川電車区)跡地を利用し、京急品川駅を地上に降ろす計画が立てられました。地平化後の京急品川駅は現在よりも広い島式ホーム2面4線となり、行き先別でのホームの分離や優等列車の追い抜きといった柔軟性の高い運行が可能となります。またホーム上空はコンコースとなり、東西自由通路や高輪地区の商業施設とフラットに接続することが可能となります。これに合わせて、品川駅西口駅前広場の大幅な拡張も計画されており、2016年に完成したバスタ新宿に次ぐ2番目の高速バスターミナルビルの建設構想もあります。
なお、線路を地上に降ろすまでの坂が必要になるため、地平化後の京急品川駅は現在よりも全体的に北側(泉岳寺駅寄り)に移動します。品川駅の泉岳寺寄りには、前述の通り折返し用の引上線がありますがこれについては地平化後も維持される予定です。
品川~新馬場間高架化
左(1):京急線の撮影地としても知られる品川第一踏切(通称八ツ山踏切)。踏切の前後は半径100mの急なS字カーブになっている。
右上(2):S字カーブのすぐ先にある北品川駅。映画「シン・ゴジラ」の舞台にもなった。
右下(3):北品川駅のホーム。駅舎は上り2番線側のみにあり、下り1番線は跨線橋で連絡。
右上(2):S字カーブのすぐ先にある北品川駅。映画「シン・ゴジラ」の舞台にもなった。
右下(3):北品川駅のホーム。駅舎は上り2番線側のみにあり、下り1番線は跨線橋で連絡。
京急品川駅を出た京急本線は、半径100mの急なS字カーブを描きながらJR線を上越しし、台地上にある北品川駅に向かいます。この北品川駅前後には八ツ山通り・旧東海道など3箇所の踏切があります。2012年に京急蒲田駅付近の高架化が完了し、京急本線の東京都内区間に残る踏切はこの3箇所のみとなっています。この区間は前述の通り羽田空港方面・横浜方面の全列車が集中するため、終日に渡り開かずの踏切と化しています。

京急品川~北品川間の高架化前後の比較図
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「淡色地図」「空中写真」合成レイヤーに加筆したものである。
京急品川駅の地平化に合わせて、北品川駅については逆に高架化し、これらの踏切を解消することが計画されました。高架化後の北品川駅は現在と同じ対向式ホーム2面2線(+保守機材線1線)のレイアウトとなり、高架橋は現在線の隣に建設するため若干東側に移動します。また、地平となる品川駅との間の40m近くに及ぶ高低差を接続するため、駅自体を南(新馬場方面)に数十m移動させます。

2017年1月に品川区立台場小学校で開催された京急品川駅地平化・北品川駅高架化の都市計画素案説明会
京急品川駅地平化と北品川駅高架化については2017年に都市計画素案説明会、2019年2月に用地買収に必要な用地測量説明会がそれぞれ開催されました。現時点での完成目標は2029(令和11)年度とされています。
なお、上記写真の看板にある「京浜急行電鉄湘南線」は東京都の都市計画における京急本線の呼称です。都市計画上の京急本線の範囲はこれまで品川駅(正確には品川駅構内にある京急の0kmポスト)以南とされており、都営浅草線の建設に合わせて延伸された品川~泉岳寺間については、実態として京急への直通列車しか走行しないにもかかわらず、都営浅草線(1号線)の分岐線として扱われてきました。品川駅地平化に伴う改造区間はこの分岐線の範囲にも及んでいることから、着工に先立ち分岐線全体を京急本線に編入する都市計画変更の手続きが実施されています。これにより品川~泉岳寺間は名実ともに京急の線路になります。
はじまりはガード下のラーメン屋から


左(1):品達品川のエントランス。昨年5月にはコミック「ゆるゆり」とコラボしたスタンプラリーが開催された。
右(2):品達にあるラーメン店のひとつである「せたが屋」の看板メニュー「せたが屋ラーメン」。魚介ベースの醤油ラーメン。
場所は変わりまして、今日は京急品川駅高架下の飲食店街「品達品川」にやってまいりました。品達品川は2004年にオープンした施設で、東京都心にあるラーメンの名店を中心に12の店舗が軒を連ねています。また、2016年には羽田空港国際線ターミナルビルの一角にフードコートとして「品達羽田」がオープンしています。昨年5月には筆者が大ファンであるコミック作品「ゆるゆり」とコラボしたスタンプラリーを突如開催し、まんまとリピーターに育てられてしまいました。
いきなり何を血迷った話をし始めたのかとお思いになるでしょうが、実はこの施設、来る3月31日(火)で全店閉店となることが決定しているのです。また、隣接するショッピングモール「ウイング高輪イースト」についても同日で閉館となることが決定しています。ここまでお読みいただければその理由は言うまでもなく京急品川駅地平化の工事が始まるからであることはおわかりでしょう。閉店を記念して、品達品川では昨年と同様のスタンプラリーを開催中です。再開発着工目前の京急品川駅に降り立った後は、ぜひ高架下で今だけ限定の様々なグルメをご賞味ください。(?)
品川駅再開発の話はまだまだ続きます。次回は都営浅草線泉岳寺駅の拡張についてレポートします。
▼参考
会社概要 | 企業情報 | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
→京急グループ会社要覧 2019-2020“KEIKYU HAND BOOK”の12・25ページに品川駅地平化・北品川駅高架化に関する説明
京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間) - 東京都建設局 連続立体交差事業(連立事業)ポータルサイト
日刊建設工業新聞 » 東京都、京急電鉄ら/京急本線泉岳駅~新馬場駅間連立化/都市計画手続き開始(2017年1月31日)
日刊建設工業新聞 » 東京都、京浜急行電鉄/京急本線泉岳寺駅~新馬場駅間連立/アセス調査計画書縦覧開始(2017年2月16日)
国道15号・品川駅西口駅前広場「事業計画」 | 東京国道事務所 | 国土交通省 関東地方整備局
▼関連記事
品川駅再開発(2)2018年~2019年、そして今後(2019年11月29日作成)
→山手線留置線の板橋駅への機能移転について
(2020,03,02 11:00一部項目加筆)
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