相鉄新横浜線(羽沢横浜国大~新横浜) - 相鉄都心直通プロジェクト2019・2020(2)

新横浜駅前に掲出されている相鉄・東急新横浜駅完成予想図

相鉄線の都心プロジェクトの続きです。2回目の今回は羽沢横浜国大駅から新横浜駅の間で建設が進められている相鉄新横浜線の工事の状況についてです。

▼関連記事
相鉄・JR直通線開業 - 相鉄都心直通プロジェクト2019・2020(1)(2020年8月26日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016年9月7日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016年9月10日作成)

相鉄・東急新横浜線の概要

(再掲)神奈川東部方面線の位置。羽沢横浜国大~日吉間は「新横浜線」と命名され、新横浜駅を境に南側が相鉄、北側が東急の運営範囲とされた。。
(再掲)神奈川東部方面線の位置。羽沢横浜国大~日吉間は「新横浜線」と命名され、新横浜駅を境に南側が相鉄、北側が東急の運営範囲とされた。
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「淡色地図」に加筆したものである。


 昨年11月に開通した相鉄・JR直通線に続く神奈川東部方面線の第二段階として現在建設が進められているのが「相鉄・東急直通線」です。この路線は羽沢横浜国大駅から東急東横線・目黒線日吉駅に至る全長10.0kmの新線で、途中経由する新横浜駅と東急東横線綱島駅東側(仮称:新綱島)の2箇所に駅が設けられることになっています。開業後の営業主体は検討の結果新横浜駅を境に分割することになり、南側が「相鉄新横浜線」、北側が「東急新横浜線」となる予定です。(整備は鉄道・運輸機構が一括で担当)日吉駅からは東急東横線・目黒線と相互直通運転を行う計画となっており、さらに先東京メトロ副都心線・南北線・都営地下鉄三田線により形成されるネットワークにより相鉄線から東京都心への利便性が大幅に向上します。また、新横浜駅を経由することから相鉄線・東急線双方から東海道新幹線への乗り継ぎの利便性も向上します。
 
羽沢横浜国大~新横浜間のトンネルは完成

相鉄・東急直通線全体の横断面図
羽沢~新横浜・新横浜~新綱島のシールドトンネル 新横浜駅 新綱島駅
新綱島~日吉の単線シールド 2層高架 日吉駅構内のアプローチ部分
相鉄・東急新横浜線の断面図
上段(1):相鉄・東急直通線全体の横断面図
中段(2~4):左から羽沢横浜国大~新横浜・新横浜~新綱島(仮称)のシールドトンネル、新横浜駅、新綱島駅
下段(5~7):左から新綱島~日吉の単線シールド、同2層高架、日吉駅構内のアプローチ部分


 相鉄新横浜線は羽沢横浜国大~新横浜間のほぼ全線が環状2号線の地下を通ります。この区間には陸橋の基礎やライフラインなどの地下構造物が多数存在することから、地下30~40m付近の非常に深いところにトンネルが建設されています。新横浜駅は相鉄線・東急線からの折り返し運転に対応させるため島式ホーム2面3線になります。
 相鉄・東急直通線の工事は2013(平成25)年10月から開始され、当初は2019(平成31)年4月の完成が予定されていました。しかし、次回の記事で説明する「東急新横浜線」のルートの大半が非常に地盤が軟弱な地域となっており、沈下・陥没対策に大変多くの時間を要したことから工事が遅れており、2022(令和4)年度下期へ3年以上開業が延期されています。
 ここからは2017年以降毎年に渡り調査をしてきた羽沢横浜国大~新横浜間の工事についての状況をお届けします。



●羽沢横浜国大~新横浜間(羽沢トンネル)
(再掲)羽沢横浜国大駅から相鉄新横浜線とJR直通線の分岐部分を見る。直進する新横浜線はトンネルに入って数十mのところで線路が途切れておりそこから先は工事が続いている。
(再掲)羽沢横浜国大駅から相鉄新横浜線とJR直通線の分岐部分を見る。直進する新横浜線はトンネルに入って数十mのところで線路が途切れておりそこから先は工事が続いている。2020年7月15日撮影

 相鉄新横浜線のうち、羽沢横浜国大駅構内のJR直通線分岐部付近は前回の記事で説明した通りトンネルが完成し一部は軌道敷設まで完了しています。工事中の区間はJR貨物横浜羽沢駅の北端付近から先になります。ここから新横浜駅までは「羽沢トンネル」という名称で、下水幹線や環状2号線のオーバーパス橋脚基礎など多数の地下構造物があるため、それらを避けるよう地下30~40m付近にトンネルが建設されます。そのため、西谷~羽沢横浜国大間のトンネル(西谷トンネル)と同様にSENS工法が採用されています。西谷トンネルは距離が短く、機材の損耗が少なかったことから同区間で使用したシールドマシンを分解・整備の上でが羽沢トンネルの工事に流用しており、約20億円のコストダウンを実現しています。

羽沢トンネル工事期間中に設けられていた設備建屋。 SENS工法ではトンネル壁をその場で作るためコンクリートの製造プラントも置かれた。
建屋脇に掲出されていた羽沢トンネル工事状況。 工事終了に伴い建屋は解体された。
左上(1):羽沢トンネル工事期間中に設けられていた設備建屋。
右上(2):SENS工法ではトンネル壁をその場で作るためコンクリートの製造プラントも置かれた。2017年5月5日撮影
左下(3):建屋脇に掲出されていた羽沢トンネル工事状況。2018年5月13日撮影
右下(4):工事終了に伴い建屋は解体された。2020年7月15日撮影


 羽沢トンネルの発進立坑は横浜羽沢駅北端付近に設けられ、2016年春より掘進が開始されました。全長3.3kmという長いトンネルを連続して掘削するという難易度の高い工事でしたが、事故などはなく今年2月に新横浜駅までの全線が貫通済みとなっています。掘削期間中は立坑上部に土砂搬出やコンクリート製造のためのプラントが置かれていましたが、トンネル貫通に伴いこれらの設備は現在撤去され、埋め戻しが進められています。 

新横浜駅から遠く離れた環状2号線分離帯上に設けられた相鉄新横浜線の工事エリア。
新横浜駅から遠く離れた環状2号線分離帯上に設けられた相鉄新横浜線の工事エリア。2019年11月10日撮影

 羽沢トンネルは途中立坑を置かずに掘進が行われたと書きましたが、トンネルの工事期間中新横浜駅から南西に500mほど進んだ環状2号線の中央分離帯にはこのように鉄道・運輸機構発注であることを示す看板とともに作業エリアが設けられていました。羽沢トンネルは中央部分が谷底になったV字型の縦断線形となっています。一方、起点(羽沢側)・終点(新横浜側)ではトンネル上部に環状2号線の陸橋が重なっており、それらの橋脚基礎がトンネルに接近します。
 SENS工法はその場で型枠を組んでトンネル壁面を作るという原理上、工場既製品のセグメントを使用する通常のシールド工法と比べると安定性に一歩及ばない点があります。そこでここ羽沢トンネルでは陸橋の基礎に接近する起終点の一部のみ通常のシールド工法で建設するという「合わせ技」が駆使されることになりました。新横浜駅から遠く離れた作業エリアはこの工法の切り替え地点となっており、事前に地盤の安定化のため薬液注入などの処理が行われた場所となっています。このように地盤の状況に柔軟に対応できるのもSENS工法のメリットとなっています。

●新横浜駅
新横浜駅北口を通る環状2号線。相鉄・東急新横浜線の駅はこの下に設けられる。
新横浜駅北口を通る環状2号線。相鉄・東急新横浜線の駅はこの下に設けられる。2018年5月13日撮影

 相鉄・東急新横浜線の新横浜駅は、新横浜駅北口の環状2号線地下に4層構造で建設されます。東急線からの折り返し運転に対応するため、ホームは真ん中の線路両側にホームがある2面3線のレイアウトになります。新駅の中央では横浜市営地下鉄ブルーラインと交差し、同駅と地下で直結されます。
 新横浜駅付近は鶴見川により形成された粘土などの非常に軟弱な地盤となっており、過去に市営地下鉄の工事が行われた際には駅南側の篠原地区を中心に25cmもの地盤沈下が発生したことがあります。そのため、相鉄・東急新横浜駅の工事に際しては、有識者を交えた検討を行い掘削エリアへの土砂や地下水の流入防止対策を念入りに行うこととされました。また、駅中央で交差する市営地下鉄のトンネルは新横浜線との交差を想定した構造にはなっておらず強度に余裕がないため、地盤改良を十分行うとともに柱1本ごとに合わせた位置に杭を打ち、その下を小分けにして掘削するなど慎重な施工が進められました。(詳細は2016年の記事も参照)

環状2号線とバスターミナルの間に出現した第1出入口のコンクリート枠。 日吉寄り駅端の環状2号線中央分離帯内で進む換気口の構築
新横浜駅入口交差点北側で構築中の市営地下鉄第5出入口(仮設の屋根を設けて搬入口として使用中) 同じく交差点北側でコンクリートの型枠を設置中の第3出入口。
左上(1):環状2号線とバスターミナルの間に出現した第1出入口のコンクリート枠。
右上(2):日吉寄り駅端の環状2号線中央分離帯内で進む換気口の構築
左下(3):新横浜駅入口交差点北側で構築中の市営地下鉄第5出入口(仮設の屋根を設けて搬入口として使用中)
右下(4):同じく交差点北側でコンクリートの型枠を設置中の第3出入口。いずれも2020年7月15日撮影


 上記の通り難工事が予想されたことから、新横浜駅の工事は相鉄・東急新横浜線の中では最も早い2013年秋から開始されています。工事は最大9車線ある環状2号線の一部を交通規制しながら進められており、進捗に応じて通行帯が左右に移動しています。2020年に入り地下のトンネル本体は続々と完成を迎えており、地上部分では出入口や換気塔となるコンクリート製の枠が随所に出現しています。これまで市営地下鉄交差部分の資材口として使用されていた新横浜駅入口交差点北側についても、地下での工事が完了したため出入口となるコンクリート製の床や枠の構築が進められています。

市営地下鉄線路階の壁に設置された沈下観測機器(トンネル壁と天井の境目にあるパイプ状の物体)
新横浜線の駅との接続工事が始まって間もないころの市営地下鉄コンコース。
同じ場所の2020年7月15日の様子。防護板の向こうは壁が撤去されており音が反響していた。
左上:市営地下鉄線路階の壁に設置された沈下観測機器(トンネル壁と天井の境目にあるパイプ状の物体)
右上:新横浜線の駅との接続工事が始まって間もないころの市営地下鉄コンコース。2017年3月11日撮影
右下:同じ場所の2020年7月15日の様子。防護板の向こうは壁が撤去されており音が反響していた。
上:市営地下鉄線路階の壁に設置された沈下観測機器(トンネル壁と天井の境目にあるパイプ状の物体)
中:新横浜線の駅との接続工事が始まって間もないころの市営地下鉄コンコース。2017年3月11日撮影
下:同じ場所の2020年7月15日の様子。防護板の向こうは壁が撤去されており音が反響していた。

 地下の市営地下鉄新横浜駅でも、トンネル側壁を壊して新横浜線の駅と接続する工事が進められています。JR駅側と日産スタジアム側の改札口の間にある通路は天井のパネルが取り外され、両側の壁も全面が防護板になっています。防護板の中では音が反響しており、壁が取り壊されて新横浜線の駅との接続が完了していることがわかります。

次回は新横浜駅から新綱島駅(仮称)にかけての工事の状況をお伝えします。

▼関連記事(相鉄・東急新横浜線に関する記事のみ)
路線の概要 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(1)(2011年10月3日作成)
現在の工事状況 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(2)(2011年10月14日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2013年9月・2014年4月取材)(2014年5月13日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016年9月7日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016年9月10日作成)

▼参考
都心とつながる(都心直通プロジェクト)|未来への取り組み|相鉄グループ
→関連ニュースリリースもここから参照
都市鉄道利便増進事業 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線
November 2019:THE SITE 相鉄・東急直通線 新横浜駅地下鉄交差部土木工事 | KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
相鉄東急直通線 新横浜駅 地下鉄交差部土木工事 - DOBOKU技士会東京Vol.70(PDF/4.34MB)
相鉄・JR直通線事業および相鉄・東急直通線事業の概要~相模鉄道における都心直通プロジェクト~ - 土木技術2010年10月号18~23ページ(リンク先CiNii)
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