カテゴリ:鉄道:駅・施設・風景
芝浦工大附属中高403号蒸気機関車
公開日:2023年01月21日08:34

先日、品川駅再開発の記事で軽く紹介した芝浦工大付属中学・高校の403号蒸気機関車ですが、せっかくですのでもう少し詳しい説明をしようと思います。
403号蒸気機関車の出自
今回芝浦工大附属中高で展示が開始された403号蒸気機関車は、1886(明治19)年にイギリスのナスミス・ウィルソン社で製造された400形蒸気機関車のうちの1両(製造番号302番)です。この蒸気機関車は当時日本向けにも大量に製造されており、旧国鉄・私鉄へ多数配備されていました。
この403号機はまず日本鉄道※1で使用された後、房総鉄道※2に移動します。続いて川越鉄道(現在の西武新宿線・国分寺線)に移動し、晩年は上武鉄道※3で使用された後、西武鉄道に戻り同社が運営していた遊園地ユネスコ村で保存されていました。1990年にユネスコ村が閉園して以降は、西武秩父線横瀬駅構内の車両基地で他の保存車両とともに保管されていました。
▼脚注
※1:現在の東北本線や常磐線を建設した鉄道会社。
※2:現在の外房線を建設した鉄道会社。上記の日本鉄道とともに鉄道国有法により1906年に国有化された。
※3:八高線丹荘駅から日本ニッケル若泉製鋼所(現在の朝日工業埼玉事業所)を結んでいた専用鉄道。一時的に旅客営業も行っていた。1986年廃線。


左:西武鉄道保谷駅で保管されている5号蒸気機関車。通常はカバーが被せられており見ることができない。
右:同車のナンバープレート。2012年11月25日の復元完成披露イベントにて。
右:同車のナンバープレート。2012年11月25日の復元完成披露イベントにて。
上:西武鉄道保谷駅で保管されている5号蒸気機関車。通常はカバーが被せられており見ることができない。
下:同車のナンバープレート。2012年11月25日の復元完成披露イベントにて。
下:同車のナンバープレート。2012年11月25日の復元完成披露イベントにて。
ちなみに当サイトでは以前、この403号蒸気機関車と同型の蒸気機関車を紹介したことがあります。西武池袋線保谷駅構内で保存されている5号蒸気機関車です。この蒸気機関車は上記の403号機の10年後に同じメーカーで製造された機体(製造番号493番)で、400形をベースに出力向上のためシリンダー径拡大や蒸気圧をアップした兄弟車種となっています。この5号機は最初に川越鉄道に配備された後、1959(昭和34)年からは上武鉄道で上記の403号機と併用されていました。廃車後は西武鉄道に戻り、保谷駅の留置線の片隅でE11形電気機関車とともに保管されていました。
2012年に西武鉄道が創業100周年を迎えたのを記念して、再塗装などの整備が行われ、同年11月のイベントで一般公開されました。その後は劣化防止のカバーを被せた状態で同じ場所で保管されています。
芝浦工大附属中高の100周年を機に豊洲へ

芝浦工大附属中高校門と403号蒸気機関車
芝浦工大附属中学・高等学校は、1922(大正11)年に鉄道開業50周年記念事業の1つとして東京市麹町区に「東京鐡道中学」の名称で開校されました。以後何度が移転や組織の改組があり、現在は私立大学の芝浦工大の附属学校となっています。2017(平成29)年には校舎が豊洲に移転するのに合わせて中高一貫校となり、校舎内には一般見学も可能な鉄道資料のギャラリーも開設されました。
2022年に前身の東京鐡道中学創立から100周年を迎えることを記念し、西武鉄道の協力の下、上記の403号機を譲り受け、豊洲にある校地で保存・展示することになりました。長年の保管により機体の劣化が進んでいたことから、腐食した鋼板を張り直すなど徹底的な修繕を実施しています。また、製造時に存在したナンバープレートなどは失われていたため、過去の記録や同型機を参考に再製作しています。この復元作業を記録した動画が学校の公式サイト・YouTubeチャンネルで公開されています。
左:403号機を横から見たところ。土台には高輪築堤の石材が使用されている。
右上:機関車の後ろにある高輪築堤に関する解説板
右下:復元されたナンバープレート
右上:機関車の後ろにある高輪築堤に関する解説板
右下:復元されたナンバープレート
上:403号機を横から見たところ。土台には高輪築堤の石材が使用されている。
中:機関車の後ろにある高輪築堤に関する解説板
下:復元されたナンバープレート
中:機関車の後ろにある高輪築堤に関する解説板
下:復元されたナンバープレート
展示場所は校舎北側の豊洲六丁目第二公園と一体化している公開空地です。展示にあたっては、2019年に高輪ゲートウェイ駅付近で出土した高輪築堤の解体により発生した石材をJR東日本から譲り受け、線路の土台の一部として使用しています。403号機自体は高輪築堤の上を直接走行していたわけではありませんが、築堤が存在したのと同時期に日本に輸入された車両であり、当時の風景を想起させることができるものとなっています。


左:403号機を裏から見たところ。イタズラ対策として照明と防犯カメラが設置されている。
右:昼間は運転台を見学することもできる。
右:昼間は運転台を見学することもできる。
上:403号機を裏から見たところ。イタズラ対策として照明と防犯カメラが設置されている。
下:昼間は運転台を見学することもできる。
下:昼間は運転台を見学することもできる。
403号機の一般公開は11月12日(土)から開始されました。運転台へ登る階段も用意されており、学校が休みの日(日曜祝日・年末年始等)以外は9~17時の間内部を見学することも可能です。また、機体内部にはスピーカーが内蔵されており、愛知県犬山市の博物館明治村で動態保存されている9号蒸気機関車で収録した汽笛音が、毎日12時と17時に鳴るようになっています。
なお、終日開放された屋外での展示であることから、いたずら防止のため機体の周囲には照明や防犯カメラが設置されています。
▼参考
豊洲にSLがやってきた | 芝浦工業大学附属中学高等学校
403号蒸気機関車が芝浦工業大学附属中学高等学校にて一般公開を開始 | 芝浦工業大学
しばうら鉄道工学ギャラリー
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