東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2021年4・9月取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2022年02月05日18:00
竹ノ塚駅ホーム横で建設中の高架橋と東武70000系電車

東武伊勢崎線竹ノ塚駅の踏切で死亡事故が発生してからまもなく17年が経過します。事故現場となった竹ノ塚駅では、踏切解消のための高架化工事が大詰めを迎えています。昨年3年ぶりにこの竹ノ塚駅の状況を調査してまいりました。今回はサイトにアップできていなかった2018年調査時の状況も一部加えながら、竹ノ塚駅高架化工事の現状をお伝えします。

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東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2016年6月4日取材)(2016年8月14日作成)

もくじ
■契機となった2006年の死亡事故
■竹ノ塚駅高架化工事の手順
■着工~2016年の工事進捗おさらい
  ●2013年~2015年:駅前後仮線化
  ●2016年5月:下り急行線高架化
■2017年以降の動き
  ●2017~2018年:緩行線仮線化・
     仮設ホーム・地下改札使用開始

  ●2019~2020年:上り急行線高架化・
     引上線一時廃止

  ●2019~2020年:2021年~現在:
     緩行線高架橋建設中

■まもなく完全高架化実現

契機となった2006年の死亡事故


竹ノ塚駅周辺の地図(Googleマップ)

 竹ノ塚駅は、東武伊勢崎線(愛称:東武スカイツリーライン)の起点である浅草駅から13駅目(13.4km)にあります。竹ノ塚駅を含む伊勢崎線北千住~北越谷間は複々線となっており、当駅には内側線を走る普通列車のみが停車します。浅草寄りには東京メトロ日比谷線の車両基地(千住検車区竹ノ塚分室)が併設されており、当駅始発・終着の日比谷線直通列車がラッシュ時を中心に設定されています。
 伊勢崎線の複々線区間のうち、当駅と隣の西新井駅は地上に線路が敷設されています。これは当駅に日比谷線の車両基地があること、西新井駅構内に2004年まで工場が併設されていたことによるものです。このため、竹ノ塚駅の前後には現在に至るまで踏切が2か所残り、複々線の列車本数の多さ故にいずれも1時間当たり最大で58分遮断機が閉まったままとなる「開かずの踏切」と化していました。この踏切を巡っては、昭和時代から沿線住民より繰り返し高架化を求める陳情がなされており、一例として1979(昭和54)年に足立区議会に高架化の請願書が提出・採択されたのをはじめ、後述する事故直前の2001(平成13)年にも高架化を求める約5万4千名の署名が足立区に提出されています。しかし、竹ノ塚駅には前記した日比谷線の車両基地があること、1993(平成5)年まで貨物列車が運行され線路に急勾配が作れなかったという運行上の制約に加え、2か所の踏切がいずれも足立区道だったため、国の連続立体交差事業の採択基準に合致せず、自治体や鉄道事業者の事業費負担が高額になってしまうため、長らく棚上げの状態が続いてきました。

2005年の事故現場となった竹ノ塚駅北千住寄りの赤山街道踏切。事故後現在に至るまでガードマンが常駐し、自動車・歩行者の誘導に当たっている。 操作室は踏切の北側にあった。事故を受けた自動化後は跡地に歩道橋が設置されたが、高架化工事の進展に伴い2016年12月で廃止されている。
左(1):2005年の事故現場となった竹ノ塚駅北千住寄りの赤山街道踏切。事故後現在に至るまでガードマンが常駐し、自動車・歩行者の誘導に当たっている。
右(2):操作室は踏切の北側にあった。事故を受けた自動化後は跡地に歩道橋が設置されたが、高架化工事の進展に伴い2016年12月で廃止されている。2012年4月1日撮影


 竹ノ塚駅前後にある踏切は脇に設置された制御室に係員が常駐し、人力で遮断機を開閉する手動式となっていました。これは遮断機を自動化すると複々線を次々と通過していく列車に対応できず、遮断時間が延びてしまうと考えられていたためです。しかし、これが仇となり制御室には通行人から遮断時間の長さに対するクレームが殺到し、次の列車の通過まで十分な時間が無いにもかかわらず遮断機を開閉するという規定違反が常態化してしまいます。
 そして2005(平成17)年3月15日、ついに浅草寄りの踏切において係員が誤って列車接近中に遮断機を上げてしまい、踏切に入った通行人が列車にはねられ4人が死傷する重大事故が発生してしまいました。遮断機を操作していた係員は業務上過失致死傷罪で逮捕・起訴され、翌年禁固1年6カ月の実刑判決を受けました。この事故を受け東武鉄道では、踏切への警備員の配置、遮断機の自動化、エレベータ付き歩道橋の新設などの安全対策を即座に実施しました。
 地元ではこの事故を契機として高架化の機運が一気に高まり、事故直後からわずか5ヶ月間で約21万7千名に上る署名が集まりました。これは足立区の全人口の実に1/3に相当するもので、事故が地域社会に与えた衝撃の大きさを物語っています。これを受けて足立区では、国に連続立体交差事業の採択基準拡大を要請し、事故から2年間で事業主体の人口20万人以上の都市・特別区への拡大、歩行者が多い生活道路の踏切(歩行者ボトルネック踏切)への対象拡大、事業費の無利子貸付制度創設が実現しました。
 前述の通り、竹ノ塚駅を通過する貨物列車の運行は終了していたこともあり、これをもって高架化が運行面、制度面双方から可能となりました。事故から7年後の2012(平成24)年には東武鉄道と足立区の間で高架化工事の施工協定が締結され、実際に工事が開始されました。区が連続立体交差事業の事業主体になるのは、東京23区では初のことです。
 竹ノ塚駅高架化工事は当初は2020(令和2)年度末の完成が予定されていました。しかし、施工途中に地中に大量の鋼矢板が埋没していることが判明し、その撤去に時間を要したことから、2019(平成31)年1月に完成を2023(令和5)年度末へ3年延期することが決定しています。総事業費は約540億円で国・足立区・東武鉄道がそれぞれ1/3ずつを負担します。

竹ノ塚駅高架化工事の手順

竹ノ塚駅の高架化区間の範囲と関連する施設
竹ノ塚駅の高架化区間の範囲と関連する施設
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector」にある「空中写真1987~1990年」レイヤーに加筆したものである。

※クリックで拡大(1200×571px/157KB)

 高架化される区間は、西新井寄りの補助260号線(栗六陸橋)付近から、谷塚寄りの高架橋までの全長1.7kmとなっています。竹ノ塚駅構内は現在と同じく外側が急行線、内側に緩行線と島式ホーム1面2線が設置されます。浅草方は、複々線内側を通る緩行線と日比谷線車両基地を接続するため、下り急行線が先に高架になり入出庫線をオーバークロスするレイアウトになります。下り急行線と入出庫列車の平面交差が解消されるため、高架化前に存在した入出庫列車の待機線は廃止されます。また、春日部方の引上線も同様の理由により高架化前より1本少ない2本となる計画です。
 高架下は駅舎の他、狭隘なバスターミナルの拡張や線路を横断する道路(補助261号線・区画街路14号線)の新設スペースに充てられます。補助261号線は、伊勢崎線が地上を走ることを前提に線路との交差部分は陸橋として都市計画決定されていたため、高架化に合わせて地上式へ計画を変更しています。
 高架化工事は、日比谷線の車両基地機能を維持しながら進める必要があるため、非常に複雑な手順となっています。以下、地点ごとの切替え手順を図示します。

A断面:浅草方(東京メトロ車両基地)
浅草方の切替順序
浅草方の切替順序

①着工前
②日比谷線の入出庫線を西側に移設し、元の場所に下り急行線の高架橋を建設し、高架化する。
③地上の下り急行線跡地に下り緩行線の高架橋を建設する。(この際高架橋の建設下り緩行線と上り緩行線を高架下に一時移設する)
下り緩行線を高架化し、上り緩行線と日比谷線入出庫線を高架橋の東側に戻す。

B断面:竹ノ塚駅部分
竹ノ塚駅本体の切替順序
竹ノ塚駅本体の切替順序

①着工前
②橋上駅舎の西側を一部短縮し、跡地に下り急行線の高架橋を建設して高架化する。
緩行線・上り急行線とホームを下り線側に移設する。同時に地下仮駅舎の使用を開始し、橋上駅舎は撤去する。
④東側の空いたスペースに上り急行線の高架橋を建設し、高架化する。
緩行線のホームを建設し、高架化する。

C断面:春日部方(引上線)
春日部方の切替順序
春日部方の切替順序

①着工前
引上線1本を使用停止とし、その跡地に下り緩行線、急行線を順次移設する。
下り急行線の跡地に新しい高架橋を建設する。また、引上線をさらに1本使用停止とし、跡地に上り線を①と同様に順次移設する。
上り急行線の跡地に新しい高架橋を建設する。また、引上線と上り緩行線を下り線側に移設する。引上線を廃止し、緩行線上下線を内側に詰める。(着工後に手順変更。詳細後述)
緩行線上下線・引上線の高架橋を建設し、高架化する。

着工~2016年の工事進捗おさらい


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着工前の竹ノ塚駅の配線
着工前の竹ノ塚駅の配線

 前回の記事更新が5年も前ということもあり、この間新たに当サイトをご覧いただくようになった方向けに2016年までの竹ノ塚駅の高架化工事の状況を簡単におさらいしたいと思います。
 東武スカイツリーライン北千住~北越谷間の複々線区間は、外側が急行線、内側が緩行線となっています。緩行線しか止まらない駅は、当駅を含め緩行上下線間に島式ホームが挟まるだけのシンプルなレイアウトになっています。竹ノ塚駅は東京メトロ日比谷線の車両基地があることや、浅草発の当駅折り返し区間列車が設定されていた(過去形の理由は後ほど説明)ことから、春日部寄りに引上げ線が3本ありました。日比谷線の車両基地は浅草寄りの下り急行線外側にあり、引上線から入出庫する際は下り急行線と平面交差するため、下り急行線と緩行線の間には交差する列車を待つための待機線が1本ありました。

高架化工事着工前の竹ノ塚駅。左が下り線で急行線と緩行線の間に日比谷線車両基地の入出庫待機用の線路があった。 春日部寄りは上下線間に引上線が3本あり、下り緩行線はポイントの分岐側を走行していた。
左(1):高架化工事着工前の竹ノ塚駅。左が下り線で急行線と緩行線の間に日比谷線車両基地の入出庫待機用の線路があった。
右(2):春日部寄りは上下線間に引上線が3本あり、下り緩行線はポイントの分岐側を走行していた。2012年4月1日撮影


●2013年~2015年:駅前後仮線化
2014年はまず駅前後の区間を仮線化した。
2014年はまず駅前後の区間を仮線化した。

 着工から2015年にかけては、まず下り急行線を高架化する準備として、駅前後の線路を仮線化する工事が実施されました。浅草寄りは、上り線側にあるUR竹ノ塚第二団地の敷地を借用して区道を線路1本分ずらし、4本ある線路を空いたスペースへ順次移設しました。春日部寄りは引上線を1本廃止し、空いたスペースに下り急行線・緩行線を順次移設しました。

栗六陸橋から竹ノ塚駅方向を見る。4本ある線路が1本分ずつ右側に移設された。 引上げ線を1本廃止して下り線を移設中。
左(1):栗六陸橋から竹ノ塚駅方向を見る。4本ある線路が1本分ずつ右側に移設された。
右(2):引上げ線を1本廃止して下り線を移設中。2014年12月28日撮影


●2016年5月:下り急行線高架化
2016年5月に下り線が高架化。車両基地から上りホームに直接車両を据え付けられるよう入出庫線も増設された。
2016年5月に下り線が高架化。車両基地から上りホームに直接車両を据え付けられるよう入出庫線も増設された。

 こうしてできたスペースに下り急行線用の高架橋を建設し、2016年5月29日に下り急行線が高架化されました。また、今後上り線の高架化工事着手に伴い、春日部寄りの引上線の本数がさらに削減されるため、日比谷線の車両基地から上りホームに直接出庫できるよう浅草寄りに入出庫線が増設されました。

高架化された下り線を行く6050系電車と37号踏切 車両基地から上りホームへ直結する入出庫線。
左(1):高架化された下り線を行く6050系電車と37号踏切
右(2):車両基地から上りホームへ直結する入出庫線。2016年6月4日撮影


2017年以降の動き

 ようやくこの記事の本題に入れます。ここからは調査できずに欠けているところもありますが、2017年以降の竹ノ塚駅高架化工事の状況を図と現地調査の写真を併用しながら説明していきます。

●2017~2018年:緩行線仮線化・仮設ホーム・地下改札使用開始
下り緩行線仮線化・仮設ホーム使用開始
上り緩行線仮線化
2017~2018年は緩行線を仮線化するとともに仮設ホームの使用を開始した。

 2017~2018年は、緩行線を下り急行線跡地に設置した仮設ホームへ移設しました。緩行線は、当駅折り返しや日比谷線車両基地の入出庫機能を維持するため上下線で同時に高架線へ切り替える必要があります。このため、緩行線の仮線は上下線幅の高架橋建設の支障とならないよう最大限下り線側にオフセットしています。

2017年8月に使用を開始した仮設ホーム
浅草寄りの37号踏切から仮設ホームを見る。左の下り緩行線は高架の急行線直下に敷設されている。
上り緩行線の仮線化まで使用していたホーム間通路の跡
左:2017年8月に使用を開始した仮設ホーム
右上:浅草寄りの37号踏切から仮設ホームを見る。左の下り緩行線は高架の急行線直下に敷設されている。
右下:上り緩行線の仮線化まで使用していたホーム間通路の跡。2018年10月7日撮影
上:2017年8月に使用を開始した仮設ホーム
中:浅草寄りの37号踏切から仮設ホームを見る。左の下り緩行線は高架の急行線直下に敷設されている。
下:上り緩行線の仮線化まで使用していたホーム間通路の跡。2018年10月7日撮影

37号踏切から日比谷線車両基地入出庫線の分岐部分を見る。シーサスクロッシングとダブルスリップスイッチを組み合わせている。 ホーム端から春日部方面を見る。手前のポイントは分岐側が下り緩行線になっている。
左(1):37号踏切から日比谷線車両基地入出庫線の分岐部分を見る。シーサスクロッシングとダブルスリップスイッチを組み合わせている。(クリックorタップで高解像度画像221KB)
右(2):ホーム端から春日部方面を見る。手前のポイントは分岐側が下り緩行線になっている。2018年10月7日撮影


 緩行線の仮線を最大限下り線側に寄せたため、下り緩行線の一部は急行線の高架下に潜り込んでいます。駅の前後では橋脚を避けるためカーブを繰り返しており、春日部方面の下り緩行線と引上線の分岐部分に至ってはポイントの分岐側(制限速度45km/h)が本線となるなど、いかにも仮設であることを思わせる線形となっています。
 上り線と下り線の仮線化の時期は1年ずれているため、その間仮設ホームと旧ホームが共存することになりました。仮設ホームと旧ホーム間には連絡通路が2箇所設置され、両ホームと改札間のルートを確保しました。

東口駅ビルを半分取り壊した跡地に新設された地下改札入口 仮設地下改札。売店などはなく必要最小限の設備となっている。
東口駅ビルから移転してきた高架化工事の情報コーナー 地下改札は線路東西の横断通路も兼用しており、自転車で利用可能なエレベーターが併設されている。
左上:東口駅ビルを半分取り壊した跡地に新設された地下改札入口
右上:仮設地下改札。売店などはなく必要最小限の設備となっている。
左下:東口駅ビルから移転してきた高架化工事の情報コーナー
右下:地下改札は線路東西の横断通路も兼用しており、自転車で利用可能なエレベーターが併設されている。2018年10月7日撮影
上から順に
1枚目:東口駅ビルを半分取り壊した跡地に新設された地下改札入口
2枚目:仮設地下改札。売店などはなく必要最小限の設備となっている。
3枚目:東口駅ビルから移転してきた高架化工事の情報コーナー
4枚目地下改札は線路東西の横断通路も兼用しており、自転車で利用可能なエレベーターが併設されている。2018年10月7日撮影

 竹ノ塚駅の駅舎は線路上部にありました。このままでは高架橋を建設できないため、2017年8月の下り緩行線仮線化・仮設ホーム使用開始時に地下に建設した仮設改札口へ移転しました。橋上駅舎廃止に伴い、東口の駅ビルも完全に閉鎖されたため、ビル内にあった高架化工事の情報コーナーも地下改札口横に移設されています。なお、この前年末には37号踏切横の歩道橋が高架橋本体工事着手のため撤去されたことから、地下改札口の一部を代替横断通路として先行オープンしています。このルートは自転車での利用も多いことから、通常のエレベーターに加えて、自転車も搭載できる大型のエレベーターが併設されています。

東武スカイツリーライン竹ノ塚駅浅草寄りの踏切 2018ver. - YouTube

 緩行線が下り線側にオフセットされた結果、駅前後の踏切は「中洲」がある特殊なレイアウトになりました。横断距離を少しでも短縮するため、警報機・遮断機は緩行線側と上り急行線側両方に設置され、各々が独立して動作するようになりました。1つの踏切だと誤認した歩行者や自動車が線路部分に取り残される危険性もあったため、踏切には終日警備員が複数人常駐し、線路上で止まっている場合はスピーカーで注意していました。

●2019~2020年:上り急行線高架化・引上線一時廃止
2019年6月以降は上り急行線の高架橋建設のため、対象区間が仮線化された。
2019年6月以降は上り急行線の高架橋建設のため、対象区間が仮線化された。

 2019年以降は上り急行線の高架橋建設が進められました。上り急行線の高架橋は地上の線路とほぼ同じ場所に建設するため、一旦上り緩行線の跡地へ仮線化しています。この期間はちょうど新型コロナウイルスの感染拡大期にあたり、現地調査ができなかったため残念ながら写真がありません

2020年6月のダイヤ改正では浅草発当駅折り返しの普通が廃止となり、引上線が撤去された。
2020年6月のダイヤ改正では浅草発当駅折り返しの普通が廃止となり、引上線が撤去された。

 竹ノ塚駅の春日部寄りにある引上線は、当初工事期間中も本数を減らしつつ維持される計画でした。しかし、着工後に見つかった鋼矢板撤去に伴う工事の遅延を受けて工事手順やスケジュールを再検討した結果、引上線を一旦廃止して跡地に緩行線を移設し、工事のスピードアップを図ることになりました。
 なお、引上線のうち1本は2016年に草加駅に移転しており、竹ノ塚駅での折り返し列車自体本数も少ないため引き続き設定可能です。ただ、草加駅までわざわざ回送をするコストをかけるほどの利用者はいなかったためか、2020年6月6日に実施されたダイヤ改正では浅草発竹ノ塚行き普通列車が北千住までの運行に短縮され、引上線を使う列車が全廃されました。引上線は高架化後再設置される計画ですが、元通り竹ノ塚折り返しの区間列車が設定されるかについては不明です。

工期短縮のため2020年6月のダイヤ改正で春日部寄りの引上線は廃止された。跡地は下り緩行線となった。 2016年に草加駅で新設された代替の引上線。竹ノ塚駅折り返しの廃止により現在異常時を除きこの引上線を使う列車は無い。
左(1):工期短縮のため2020年6月のダイヤ改正で春日部寄りの引上線は廃止された。跡地は下り緩行線となった。2021年4月21日撮影
右(2):2016年に草加駅で新設された代替の引上線。竹ノ塚駅折り返しの廃止により現在異常時を除きこの引上線を使う列車は無い。2016年6月6日撮影


●2021年~現在:緩行線高架橋建設中
2020年9月に上り急行線は高架化された。
2020年9月に上り急行線は高架化された。

 2020年9月に上り急行線が高架化されました。旧ホーム・仮線跡地では緩行線の高架橋・ホームの建設が急ピッチで進められています。

栗六陸橋から見た高架化区間起点。東急2020系の右に見える白い床が下り緩行線。
栗六陸橋から見た高架化区間起点。東急2020系の右に見える白い床が下り緩行線。2021年4月24日撮影

 日比谷線車両基地の入出庫線を跨ぐため、下り急行線と緩行線は栗六陸橋を過ぎてすぐのところから高架橋になります。この付近は駅付近の仮線化とは関係なしに工事を進めることが可能だったため、2019年頃には2線分高架橋が完成していました。上の写真で東急2020系電車が駆け上がって行く線路が下り急行線で、その右側に見える白い床が下り緩行線用の高架橋です。

緩行線の仮線化区間の始点。東京メトロ13000系が上り緩行線を走行中。 同じ場所で振り返ったところ。将来入出庫線を下に通すため高架橋の幅が広くなっている。
左(1):緩行線の仮線化区間の始点。東京メトロ13000系が上り緩行線を走行中。
右(2):同じ場所で振り返ったところ。将来入出庫線を下に通すため高架橋の幅が広くなっている。2021年4月21日撮影


 下り線が高架橋に上がりきったところで高架橋の幅が少し広くなっています。高架化完成後はこの下に入出庫線を通すことになっており、現在はそのスペースを利用して緩行線の仮線が敷設されています。高架橋の形状が複雑に変化するため、この付近はコンクリートの高架橋と鋼製桁を組み合わせています。

竹ノ塚駅を通過して35‰の急勾配を下ってきた東京メトロ08系。 上り急行の前面展望。右側で緩行線の高架橋建設が進む。
左(1):竹ノ塚駅を通過して35‰の急勾配を下ってきた東京メトロ08系。
右(2):上り急行の前面展望。右側で緩行線の高架橋建設が進む。(敷設予定の線路位置と種別を加筆した写真)2021年4月24日撮影


2005年に事故が遭った37号踏切。手前の高架橋が上り急行線で、桁の高さが低いため衝突防止ガードが設置されている。 踏切内からホームを見る。左の下り急行線は他の線路と高架橋が独立している。
左(1):2005年に事故が遭った37号踏切。手前の高架橋が上り急行線で、桁の高さが低いため衝突防止ガードが設置されている。
右(2):踏切内からホームを見る。左の下り急行線は他の線路と高架橋が独立している。2021年4月21日撮影


 ここを過ぎると上り急行線・緩行線・入出庫線の3本が横並びとなって高架橋の竹ノ塚駅へ向けて登り始めます。37号踏切までは250mほどしかないため、その勾配は通常の在来線では上限となる35パーミルに設定されています。高性能の電車列車に統一された今だからこそ採用できる数値でもあります。
 竹ノ塚駅の直前で勾配がやや緩やかになります。入出庫線は竹ノ塚駅の上下緩行線へ向けてY字に分岐する予定になっており、ポイントを設置する緩勾配区間※1が必要になるためです。これにより、、37号踏切上空の橋桁高さは最も低いところで路面から3.8mと道路構造令の建築限界ギリギリになってしまっており、高さをオーバーした自動車が衝突しないよう橋桁の両側に門型のガードが設置されています。

▼脚注
※1:ポイントは可動部分があることや走行安定性の観点から急勾配上には設置できない。鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準(第18条)では分岐器の勾配を25‰以下と規定している。


東口バスターミナルから閉鎖済みの東口駅ビルと建設中の高架ホームを見る。上り急行線を東武50050系が通過中。
上り急行の前面展望。右手前のポイントは引上線からの合流部分。
ホーム上にはエレベーターと思われる枠が見える。
左:東口バスターミナルから閉鎖済みの東口駅ビルと建設中の高架ホームを見る。上り急行線を東武50050系が通過中。2021年4月24日撮影
右上:上り急行の前面展望。右手前のポイントは引上線からの合流部分。(クリックorタップで高解像度画像172KB)
右下:ホーム上にはエレベーターと思われる枠が見える。(クリックorタップで高解像度画像164KB)2021年9月22日撮影
上:東口バスターミナルから閉鎖済みの東口駅ビルと建設中の高架ホームを見る。上り急行線を東武50050系が通過中。2021年4月24日撮影
中:上り急行の前面展望。右手前のポイントは引上線からの合流部分。(クリックorタップで高解像度画像172KB)
下:ホーム上にはエレベーターと思われる枠が見える。(クリックorタップで高解像度画像164KB)2021年9月22日撮影

 竹ノ塚駅の高架ホームは旧地上ホームと同位置に設置されます。昨年9月調査時にはホーム土台のコンクリート板と屋根はほぼ完成しており、ホーム上ではエレベーターの塔屋や乗務員用の詰所と思われる部屋の組み立てが進められていました。
 なお、先に説明した浅草発普通列車の短縮により現在竹ノ塚駅を発着するのは日比谷線と直通運転する普通列車のみとなっています。日比谷線内では現在ホームドアの設置が進められており、2020年までに対応する新型車両(東京メトロ13000系・東武70000系)の導入が完了しています。これに相乗りする形で東武伊勢崎線小菅~北越谷間の緩行線ホームでもホームドアの設置が進められており、新越谷駅など既に稼働している駅もあります。竹ノ塚駅についても当初高架化と同時にホームドアの設置が計画されていました。しかし、新型コロナウイルスの世界的流行による工場の操業停止や物流の混乱により必要となる半導体部品の調達が困難※2になり、ホームドアの設置が延期されることになりました。

▼脚注
※2:足立区議会令和3年10月14日交通網・都市基盤整備調査特別委員会での答弁より。当該議事録に直接リンクができないため、以下のページから検索してご覧ください。
足立区議会会議録検索システム 詳細検索


ホーム春日部寄りの38号踏切から建設中の高架橋を見上げる。
上り急行の前面展望。右側の引上線の高架橋は地上の線路撤去後に作るため高架橋が途切れている。
春日部寄りの新旧接続地点。縦曲線と緩和曲線の重複箇所には脱線防止ガードが設置されている。
左:ホーム春日部寄りの38号踏切から建設中の高架橋を見上げる。ここは引上線になる部分。2021年4月24日撮影
右上:上り急行の前面展望。右側の引上線の高架橋は地上の線路撤去後に作るため高架橋が途切れている。(クリックorタップで高解像度画像183KB)
右下:春日部寄りの新旧接続地点。縦曲線と緩和曲線の重複箇所には脱線防止ガードが設置されている。(クリックorタップで高解像度画像249KB)2021年9月22日撮影
上:ホーム春日部寄りの38号踏切から建設中の高架橋を見上げる。ここは引上線になる部分。2021年4月24日撮影
中:上り急行の前面展望。引上線の高架橋は地上の線路撤去後に作るため高架橋が途切れている。(クリックorタップで高解像度画像183KB)
下:春日部寄りの新旧接続地点。縦曲線と緩和曲線の重複箇所には脱線防止ガードが設置されている。(クリックorタップで高解像度画像249KB)2021年9月22日撮影

 ホームが終わるとすぐに高架橋は下り勾配となり、春日部方面の既存の高架橋へ合流します。ホームが終わってすぐのところに引上線が2本設置される計画になっており、既にポイントのレールも敷設されています。引上線の終端部の高架橋は地上の線路の撤去が終わり次第建設されることになっており、2024年3月末の事業完了までに完成する予定です。
 なお、上り線も先に高架化済みの下り急行線と同様限られた用地の中で高架橋を建設したため、線形が自由に選択できず縦曲線※3と緩和曲線※4が重複している箇所が多数存在します。当該箇所では走行安定性が通常と比べ劣るため、カーブの内軌側に脱線防止ガードが設置されています。

▼脚注
※3:勾配の変化点で車両の浮き上がりなどを防止するために設ける移行区間
※4:カーブの出入り口で急激な遠心力の作用防止やカントの増減を行うために設ける移行区間


まもなく完全高架化実現

2022年3月20日高架化時の竹ノ塚駅配線
2022年3月20日高架化時の竹ノ塚駅配線

 若干の工事の遅れはあったものの、このように竹ノ塚駅高架化工事は現在最終段階を迎えています。昨年12月22日(水)に東武鉄道より2022(令和4)年3月20日(日)始発から高架ホームの使用を開始することが発表されました。

竹ノ塚駅高架化工事に伴う代行輸送ルート図
竹ノ塚駅高架化工事に伴う代行輸送ルート図

 これまでの竹ノ塚駅高架化工事では、通常の終電~始発の間で線路の切替えを行っていました。一方今回の緩行線高架化では上下線に加え日比谷線車両基地の入出庫線の3本(計5個所)を同時に切り替えるため作業量が非常に多くなっています。そのため、高架化前日の3月19日(土)は22時40分頃より伊勢崎線北千住~草加間の緩行線を運休し、バスによる代行輸送を行うことになりました。急行線は通常運転が予定されており、運休区間となる五反野・梅島・竹ノ塚・谷塚の4駅へは北千住・西新井・草加の各駅からバスへの乗り換えが必要となります。
 なお、小菅駅については代行バスが主に経由する国道4号線から大きく離れてしまっていることや、住宅地の中にあり駅周辺の道路が非常に狭いため、代行輸送で使う大型バスの乗り入れが困難となっています。そのため代行輸送は行わず、最寄りの五反野駅・東京メトロ千代田線綾瀬駅からの徒歩移動が案内されています。(いずれも1.2kmほどの距離があり20分程度を要する。)

竹ノ塚駅高架化最終完成時の配線
竹ノ塚駅高架化最終完成時の配線

 今回の緩行線高架化では引上線が未完成となっています。竹ノ塚駅高架化工事の事業期間は2023(令和5)年度末(2024年3月31日)までとなっており、今後約2年間かけて地上の線路の撤去と駅施設整備、引上線の高架橋建設、仮線となっていた浅草寄りの線路と並行する区道の復旧といった残工事が進められることになります。

2005年の踏切事故から17年、まもなく長年の悲願であった踏切の解消が実現します。
最後に竹ノ塚駅高架化工事17年間のあゆみを年表で振り返りながら記事を締めくくりたいと思います。完全高架化まで残り1ヵ月、事故が起きずに工事が終了することを期待します。

竹ノ塚駅高架化工事17年のあゆみ ※うまく表示できない場合→こちら(PNG)
年/月/日できごと
2005/03/1537号踏切で遮断機の誤開放により4人が死傷する事故が発生
2006/04~連続立体交差事業採択基準の拡大・事業費の無利子貸付制度創設
2011/03/31竹ノ塚駅高架化都市計画決定
2012/03/30足立区と東武鉄道の間で施工協定締結(着工)
2014/06~2015/01駅前後の仮線切替
2016/05/29下り急行線高架化
2016/08/21草加駅引上線(当駅の折り返し機能の代替)使用開始
2016/11/30仮設地下駅舎が横断通路として先行使用開始
2016/12/1337号踏切横の歩道橋廃止
2016/12/1438号踏切を春日部方面に移設
2017/03/25区立伊興大境保育園前の歩道橋廃止
2017/08/27下り緩行線を仮線に切替・仮設ホーム・仮設地下改札使用開始
2018/09/23上り緩行線を仮線に切替
2019/06/29上り急行線を仮線に切替
2020/06/06引上線一時廃止(浅草発竹ノ塚折り返し列車廃止)
2020/09/26上り急行線高架化
2022/03/20上下緩行線高架化・踏切廃止(予定)
~2024/03/31引上線・高架下駅施設完成・地下駅舎撤去・浅草方仮線・側道復元(予定)


▼参考
足立区/鉄道立体と関連まちづくり
高架化工事他の現状|東武鉄道公式サイト
東武スカイツリーライン 竹ノ塚駅付近(西新井~谷塚間)上り急行線高架区間の使用を開始します - 東武鉄道ニュースリリース(PDF/599KB)
2022年3月20日(日)から東武スカイツリーライン竹ノ塚駅付近(西新井~谷塚間)上下緩行線高架区間の使用を開始します - 東武鉄道ニュースリリース(PDF/525KB)
【3/19(土)】竹ノ塚駅高架切替工事に伴う 北千住駅~草加駅間(普通列車・日比谷線直通列車)運休のお知らせ|東武鉄道公式サイト
東武竹ノ塚駅付近高架化工事 August 2020:THE SITE | KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社

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東武伊勢崎線とうきょうスカイツリー駅付近高架化工事(2018・2019年取材)(2020年5月28日作成)
東武伊勢崎線とうきょうスカイツリー駅付近高架化工事(2021年4月24日取材)(2021年7月4日作成)
→竹ノ塚駅の事故を受け連続立体交差事業の事業主体が特別区に拡大されたことから、墨田区が事業主体となっている。2024年度末完成予定。 このエントリーをはてなブックマークに追加
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