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東京メトロ千代田線16000系
公開日:2012年03月05日12:22

東京メトロ千代田線では現在新型車両16000系の導入が進められています。2010年11月のデビュー後から機会があるごとに少しずつ取材をしていましたが、今回ある程度情報を集め終わりましたので記事としてまとめたいと思います。
■東京メトロ千代田線の車両


左:これまでの千代田線の主力車両である営団6000系。2007年6月3日、常磐線新松戸駅で撮影
右:営団6000系の車内の例。製造期間が長いため内装は様々な形態がある。2010年9月5日撮影
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東京メトロ千代田線は1971(昭和46)年の大手町~霞ヶ関間の開業時から導入された営団6000系と1993(平成5)年に増発用として1編成のみ導入された06系、それに相互乗り入れを行っているJR東日本・小田急電鉄の車両により運行されています。営団6000系は量産車両としては世界で初めてアルミ合金製車体と回生ブレーキ付きのサイリスタチョッパ制御を採用し、現代の「省エネ車両」の先駆けとなった車両です。また、車体は三角形状に尖った左右非対称の前面に非常脱出用の階段が一体となった貫通扉が付くというもので、機能優先の切妻一辺倒だった導入当時の通勤電車としては大変斬新なデザインとなっています。また、車両間は扉の無い幅広の間通路により接続されており、隣接車両まで見通せる開放的な車内空間を実現しました。この先進的な設計を評価され、営団6000系は1972(昭和47)年の鉄道友の会「ローレル賞」を受賞しています。
その後営団6000系は千代田線の延伸開業、直通運転拡大、利用者の増加に応じて15年以上に渡り増備が続けられました。この間に冷房の搭載、客室窓の拡大、幅広貫通路の廃止(一般的な貫通路への変更)などの種々の改良がなされています。また、営団地下鉄・東京メトロでは6000系以降の車両については長期の使用を考慮した車体の設計がなされていることから、原則として「20年で大規模更新、40年で廃車」という方針を採っており、1990年代後半からは初期に製造された車両について0x系シリーズに準じた仕様へのリニューアルを実施しています。具体的な更新内容は制御方式のVVVFインバータ制御化、車内内装の更新、自動放送・案内表示器の新設といったバリアフリー化が中心となっています。このように、営団6000系は製造期間、更新期間ともに非常に長期にわたっているため、車両によって仕様にかなり違いがあり、極端な場合編成内でも仕様が統一されていないという場合もあります。


左:JR東日本のE233系2000番台。2010年9月5日、常磐線取手駅で撮影
右:小田急電鉄の4000形。2008年3月16日、小田急線千歳船橋駅で撮影
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このように、東京メトロでは営団時代に製造された6000系を丁寧にメンテナンスしながら使い続けているのに対し、相互乗り入れを行っているJR・小田急では既存車両のリニューアルは行わず、新車による置き換えを行っています。JRでは国鉄時代に千代田線直通開始当初から使用してきた103系1000番台をチョッパ制御を使用した203系に置き換え、去る2011(平成23)年にはE233系2000番台による2度目の置き換えを完了させました。また、小田急では1990(平成2)年に直通開始当初から使用してきた9000形をステンレス車体の1000形に置き換え、2007(平成19)年からはJR東日本のE233系をベースとした4000形を順次導入し、置き換えを完了しています。
▼関連記事
千代田線6000系・常磐線203系・415系 (2006年5月24日作成)
203系・・・201系の地下鉄乗り入れ版(2006年9月15日作成)
203系を撮影(2007年6月19日作成)
小田急4000形(2008年1月9日作成)
常磐線各駅停車・千代田線E233系2000番台(2010年9月5日取材)(2011年1月18日作成)
■東京メトロ16000系の概要
2010年代になると1990年代にリニューアルされた初期製造の6000系もいよいよ耐用年数に達しました。このため、東京メトロでは2009(平成21)年12月にこの代替となる車両「16000系」の導入を発表しました。第1編成は2010(平成22)年7月に完成し、11月より営業運転が開始されました。以下、実際の車両の写真と合わせて16000系の特徴を紹介していきます。
(1)車体

東京メトロ16000系(第1編成)。2011年9月18日、常磐線我孫子駅で撮影。
車体は最近の東京メトロの車両では標準となっているアルミニウム合金のダブルスキン構造です。部材同士の接合にはFSW(摩擦撹拌溶接)※1を使用しており、滑らかで美しい表面仕上がりを実現しています。また、2000(平成12)年3月に発生した日比谷線の脱線衝突事故の教訓から、各車両の車端部は台枠(床面)から屋根まで強固な三角柱状の骨組みを貫通させており、オフセット衝突時の破壊を防止しています。先頭部はガラスの下部を大きく湾曲させ、左右にHID(高輝度放電灯)のヘッドライトとLEDのテールライトをL字形に配置しています。この構成は有楽町線・副都心線の10000系や東西線の15000系に近いものです。なお、貫通扉の位置は写真の第1編成から第5編成までは10000系と同じ中央にありましたが、第6編成以降は運転台の機器配置にあわせて左側に移動しています。
▼脚注
※1 摩擦撹拌溶接:突起の付いた工具を接合部分に回転させながら押し当て、摩擦熱により溶融・撹拌することにより接合を行う。
(2)走行機器


左:16000系の台車(住友金属工業製FS779形)。
右:16000系のフィルタリアクトルとVVVFインバータ装置。2枚とも2012年1月28日、代々木上原駅で撮影
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台車は10000系・15000系と同じくボルスタ(揺れ枕)付き台車(動力車がFS779形M、付随車がFS779T形。ともに住友金属工業製。)を採用しています。ボルスタ付き台車の採用により、0x系シリーズで一時期使われていたボルスタレス台車と比べ輪重管理がしやすくなり、カーブ区間での走行安定性が向上しています。そして、16000系の最大の特徴と言えるのが駆動用のモーターに永久磁石動機電動機(PMSM)を採用したことです。このPMSMの採用により6000系の直流モーター車と比べ実に40%、有楽町線・副都心線10000系と比べても10%の消費電力削減を実現しました。これについては別の記事にてさらに詳しく解説します。
(3)車内

16000系の車内。空調の吹き出し口と横流ファンのカバーが一体となった天井パネルが特徴的。2011年9月18日撮影
車内はこれまでの千代田線の車両とは異なり、グレーや青など寒色系の色遣いとなっています。座席は10000系と同じく全て壁からの片持ち式となっており、7人がけの座席部分には2-3-2の区割りで手すりが付いています。10000系とは異なり、座席端の袖仕切りや座席上部の荷物棚には強化ガラスを多用しており、開放的な空間を演出しています。また、天井部分は線路方向に向かって並ぶ空調の吹き出し口とラインデリア(送風機)の吹き出し口が1枚のパネルとなっており、10000系とも15000系とも異なるフルフラットな高い天井となっています。
(4)案内・サービス機器


左:乗降ドア上部にある液晶ディスプレイ。右側もアニメーション表示が可能となった。
右:車体側面の行先表示器。2枚とも2011年9月18日撮影
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車内の各乗降ドア上部には10000系、15000系と同じく液晶ディスプレイが2つ設置されており、左側は広告動画、右側は次駅、乗り換え、運行情報などを表示します。ディスプレイは東西線の15000系と同じく17インチ(16:9)のワイドサイズとなっているほか、この16000系では右側のディスプレイでも滑らかなアニメーション表示が取り入れられるなど映像のクオリティが大幅に向上しています。(なお、この表示内容は東京メトロでは丸ノ内線02系更新車に採用されているほか、東武50070系の第6編成以降など他社でも採用が進んでいます。)
車体外側には15000系と同じくフルカラーLEDを使用した行先表示器が設置されており、路線名、行先、列車種別などを交互に表示します。
(5)運転台

16000系の運転台。正面のパネルが液晶化された。2011年9月18日撮影
運転台は10000系・15000系とは大きく異なり、JR東日本のE233系と同じ液晶ディスプレイ2枚に計器の内容を表示する形となっています。向かって左側は速度、ブレーキ圧力、主回路電流など、右側はTIS(車両制御情報管理装置)を通じて各車両の機器の動作状態を表示しています。この2つのディスプレイは故障時には相互に表示内容を入れ替えることも可能となっています。また、通常の運転では操作することは少ない列車無線関連の機器は運転席右側のパネルに乗り入れ3社分をまとめて配置しています。(写真では見えませんが、この右側にはJR東日本の列車無線用モニタがあります。)
▼関連記事
【速報】東京メトロ10000系撮影会(2006年9月30日作成)
東京メトロ10000系の車内(2007年5月22日作成)
東京メトロスマイルフェスタ’09inAYASE(2009年12月5日)(2009年12月27日作成)
東京メトロ東西線15000系(2011年8月13日作成)
■ローレル賞受賞


ローレル賞受賞を記念して16000系の先頭と側面に掲げられたエンブレム。2枚とも2012年1月28日、代々木上原駅で撮影
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東京メトロ16000系は日本で初めてPMSMを本格的に採用した新造車であり、その先進性が高く評価されたことから2011年の鉄道友の会「ローレル賞」を受賞しました。ローレル賞は性能、デザイン、製造企画、運用など各項目について卓越した秀逸性がある新造車両に贈られるもので、東京メトロでは前身の営団地下鉄時代の千代田線6000系(1972年)、銀座線01系(1985年)に続く3度目の受賞となります。このローレル賞受賞を記念して、現在16000系の各編成の前面、先頭車側面、車内液晶ディスプレイ脇に記念のエンブレムが掲出されています。
この16000系は今年度中に14編成までが出そろい、来年度はさらに2編成が増備され、6000系の直流モーター車を淘汰する予定です。廃車となった6000系の一部は東西線5000系などと同じくインドネシアに譲渡されています。
最後に16000系の動画を撮影しましたのでご覧ください。
東京メトロ千代田線16000系(関連動画詰め合わせ) - YouTube 音量注意!
動画の内容と撮影時期は以下の通りです。
0:05~ 常磐線新松戸駅の発車シーン(2011年9月18日撮影)
0:31~ 千代田線二重橋前→大手町の車内ディスプレイと走行音(2012年2月18日撮影)
1:48~ 常磐線柏駅到着時の車内ディスプレイ(2011年9月18日撮影)
1:58~ 千代田線大手町駅の発車シーン(2011年9月18日撮影)
起動時はモーターから独特な低い周波数のうなり音が聞こえるのが特徴です。停止時は停止寸前まで回生ブレーキが作用しており、起動時と同じようなうなり音が聞こえます。車内のディスプレイは前記した通り次駅などの案内でアニメーション表示が取り入れられており、駅設備の案内画面ではホームに電車が入線してくる様子、ドアの開閉方向の案内画面では両開きドアが開く様子が表示されます。
▼参考
●東京メトロ公式Webの車両紹介・ニュースリリース
千代田線6000系
千代田線16000系
環境配慮型の新型車両16000系(2009年12月21日発表)
東京メトロ千代田線新型車両16000 系が「ローレル賞」を受賞(PDF・2011年5月24日発表)
●その他
東京地下鉄16000系 - 交友社「鉄道ファン」2010年11月号60~66ページ
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カテゴリ:東京メトロの記事

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