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東急目黒線奥沢駅改良工事(2018年~2021年取材)
公開日:2021年03月19日16:43

2022年度に神奈川県を走る相模鉄道(相鉄)と東急電鉄の相互直通運転が開始されます。東急目黒線の奥沢駅では、2018年よりこの直通運転開始に向けて駅構内にあるホーム・留置線の8両対応への延長と上り列車の通過線新設工事が進められています。今回は着工時から今年2月までの変化についてまとめてお伝えします。
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奥沢駅改良工事の概要

奥沢駅付近の2017年の航空写真
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「空中写真」レイヤーから抜粋した。
奥沢駅は東急目黒線の起点である目黒駅から6駅目にあります。当駅は1923(大正12)年に目黒蒲田電鉄目黒~丸子(現在の多摩川線沼部)間の開業と同時に開設されたもので、戦後駅北側では車両基地が新設され、池上線雪が谷大塚駅に併設された車両基地とともに目蒲線・池上線の運行を司る重要拠点として機能してきました。
2000(平成12)年の目黒線への再編後は車両の大型化により池上線との車両融通が不可能になったため、車両基地は規模を縮小の上で東横線元住吉検車区の下部組織に移行しました。2006(平成18)年に目黒線で新設された急行は当駅を通過するようになり、目黒線が日吉まで延伸された2008(平成20)年以降は最終の1本を除き当駅終着列車の設定がなくなるなど、単なる途中駅としての性格が強くなりつつあります。
左:改良工事着工前の奥沢駅は2面3線のホームになっており、北側の3番線は行き止まりとなっていた。
右上:目黒寄りの大岡山4号踏切から奥沢駅を見る。右側には目蒲線時代の車両基地を縮小した留置線が7本あった。
右下:下りホームには隣接して改札口や業務施設が入る駅ビルや社宅が立ち並ぶ。2018年12月29日撮影
右上:目黒寄りの大岡山4号踏切から奥沢駅を見る。右側には目蒲線時代の車両基地を縮小した留置線が7本あった。
右下:下りホームには隣接して改札口や業務施設が入る駅ビルや社宅が立ち並ぶ。2018年12月29日撮影
上:改良工事着工前の奥沢駅は2面3線のホームになっており、北側の3番線は行き止まりとなっていた。
中:目黒寄りの大岡山4号踏切から奥沢駅を見る。右側には目蒲線時代の車両基地を縮小した留置線が7本あった。
下:下りホームには隣接して改札口や業務施設が入る駅ビルや社宅が立ち並ぶ。2018年12月29日撮影
中:目黒寄りの大岡山4号踏切から奥沢駅を見る。右側には目蒲線時代の車両基地を縮小した留置線が7本あった。
下:下りホームには隣接して改札口や業務施設が入る駅ビルや社宅が立ち並ぶ。2018年12月29日撮影
奥沢駅は下り線が片面ホーム、上り線が島式ホームになっており、各ホームの日吉寄りの端に改札口があります。一番北側の3番線は行き止まりになっており、当駅終着列車および車両留置に使用していました。ホームの北側にある車両基地は目黒線への移行時に検修庫や長さが短い留置線を撤去し、6両編成7本分の留置線に再編しました。


奥沢駅改良工事前後の比較図。ホームを8両に延長するとともに3番線とホームの位置を入れ替え、現在の2番線を通過線化する。北側の留置線は本数を削減し、ポイントを移設して8両対応に延長する。
前回の記事でも説明した通り、新横浜線開業後は相鉄線に合わせて目黒線の列車も8両編成に増結されます。これに伴い、奥沢駅の各施設についても2両分の延伸が必要となっています。当駅構内は土地に余裕がないため、目黒線への移行時にはひとまず6両がギリギリ入線できる形でホームが作られており、8両への延長にあたっては線路間隔を広げてホームの延長スペースを作り出すなど大規模な工事が必要となっています。また、駅北側の留置線は車止めのすぐ先に道路があるためそちら側への延長は不可能となっており、本線側についてもスペースに余裕がなく7本全ての線路を8両分に延長することは困難となっています。このため、やむを得ず留置線の本数を5本に削減し、本線との接続部分の形状を変更して現状の用地内で8両化することになりました。
一方、これらとは別に優等列車のスピードアップという課題がありました。現在目黒線内で急行の追い抜きができるのは、上下線とも武蔵小山駅1箇所しかありません。新横浜線開業後は8両化に加えて車両増備も行われることになっており、列車本数自体も純増となる予定です。現状の施設のままで増発を行った場合、各駅停車に後続の急行が追い付いてしまうことが予想されることから、奥沢駅構内の改良に合わせて上り専用の通過線を新設することにしました。同様の通過線は東横線祐天寺駅、大井町線上野毛駅などに先例があり、朝ラッシュ時の優等列車のスピードアップに効果を発揮しています。
通過線は2番線を転用することになっており、現在行き止まりとなっている3番線は線路とホームの位置を入れ替えて待避線になります。当駅での通過待ちに伴い、日吉駅寄りにある踏切の遮断時間の悪化が予想されることから、南側の駅ビルにエレベーター付きの横断デッキ(改札外跨線橋)を新設し、踏切遮断中のバイパスルートを確保します。工事の手順は以下の通りです。

奥沢駅改良工事の手順 ※クリックで拡大(PNG/147KB)
①着工前
片面ホーム(下り1番線)+島式ホーム(上り2番線+当駅止まり3番線)と留置線7本の構成。
②留置線6~10番線8両化
留置線(6~10番線)を順次使用停止にして本線との接続部分の形状を変更し、8両対応に延長する。
③3番線・留置線4・5番線廃止
3番線と留置線(4・5番線)を廃止し、新上りホームの建設スペースを確保する。
④新上りホーム・横断デッキ建設
3番線・留置線跡地に待避線と新上りホームを建設する。また、日吉寄りのホーム端に横断デッキを建設する。
⑤新上りホーム使用開始(完成)
現上りホームを廃止し、新3番線(上り待避線)ホーム・横断デッキの使用を開始する。
着工から現在までの状況
2018年5月31日に地元住民を対象とした奥沢駅改良工事の説明会が開催されました。工事説明会の模様はTwitterのフォロワーの桜庭きょー(@kyo_113)様がレポートされています。
▼参考
奥沢駅改修工事説明会 説明まとめ / Twitterモーメント
工事はこの年の秋から本格的に開始されています。今回は2018年12月から今年2月にかけて調査した現地の状況をまとめてお届けします。

自由通りの踏切前から見た上りホームの改札口。左ではバーミヤン奥沢店だった建物を解体中。2018年12月29日撮影
奥沢駅改良工事では、行き止まりだった3番線と上りホームの位置を入れ替えます。このため、上りホーム端にある駅舎もそれに合わせて移設する必要があります。駅舎の移設予定地には店舗(バーミヤン奥沢店)があったため、着工に先立つ2018年9月24日(月)に閉店となり建物が取り壊されました。




左上:目黒寄りにある歩道橋から見た工事前の留置線。2018年12月29日撮影
右上:同じ場所の2020年6月27日の様子。右側の駐車スペースが若干削られ、留置線が大回りするよう敷き直されている。
左下:自由通りからフェンス越しに見た留置線の終端。左の5本は元々7両分の長さがあった。2018年12月29日撮影。
右下:同じ場所の2021年2月19日の様子。車止めが制走堤に改築され停止位置を終端に近づけられるようになった。
右上:同じ場所の2020年6月27日の様子。右側の駐車スペースが若干削られ、留置線が大回りするよう敷き直されている。
左下:自由通りからフェンス越しに見た留置線の終端。左の5本は元々7両分の長さがあった。2018年12月29日撮影。
右下:同じ場所の2021年2月19日の様子。車止めが制走堤に改築され停止位置を終端に近づけられるようになった。
上から
1枚目:目黒寄りにある歩道橋から見た工事前の留置線。2018年12月29日撮影
2枚目:同じ場所の2020年6月27日の様子。右側の駐車スペースが若干削られ、留置線が大回りするよう敷き直されている。
3枚目:自由通りからフェンス越しに見た留置線の終端。左の5本は元々7両分の長さがあった。2018年12月29日撮影。
4枚目:同じ場所の2021年2月19日の様子。車止めが制走堤に改築され停止位置を終端に近づけられるようになった。
1枚目:目黒寄りにある歩道橋から見た工事前の留置線。2018年12月29日撮影
2枚目:同じ場所の2020年6月27日の様子。右側の駐車スペースが若干削られ、留置線が大回りするよう敷き直されている。
3枚目:自由通りからフェンス越しに見た留置線の終端。左の5本は元々7両分の長さがあった。2018年12月29日撮影。
4枚目:同じ場所の2021年2月19日の様子。車止めが制走堤に改築され停止位置を終端に近づけられるようになった。
その後は留置線6~10番線の一部を使用停止にしながら順次線形を変更し、有効長を8両対応に延長する工事が進められました。6~10番線は工事前の状態でも7両分(140m)ほどの長さがあったため、目黒寄りの信号機器室わきにあった業務用の駐車スペースを若干削り、その跡地に大回りするよう線路を敷き直しています。これだけでは延長量が不足するため、終端側の車止めをレールを曲げ加工したもの(第二種車止め)からコンクリートの制走堤(第四種車止め)に変更し、停止位置を車止めに限界まで近づけることで全体として8両分の有効長を確保した格好となっています。制走堤自体も通常の台形状ではなく、架線を引き留めている柱をコの字型に包むような特殊な形状となっており、設計に苦労した様子が伺えました。


左(1):3番線が廃止となり上りホームは半分を取り壊し中。
右(2):上りホーム端の改札口は隣の仮設改札口に移転した。2020年6月27日撮影
続いて2020年2月2日(日)には、行き止まりだった3番線と本線に近接し8両への延長が不可能だった留置線4・5番線が廃止されました。留置線4・5番線廃止に伴い、残された留置線が4~8番線に改番されています。廃止後の旧3番線と上りホームの半分は直ちに取り壊しが開始されました。
さらにその1か月後の3月8日(日)には、上りホーム端の改札口がバーミヤン奥沢店跡地に設けられた仮設の改札口に変更されました。これは元の改札口が新3番線(上り待避線)や上空に新設される横断デッキの予定地に重なっていたためです。
なお工事時間確保のためかは不明ですが、この直後の3月に実施されたダイヤ改正では日吉発最終電車の行先が奥沢駅から隣の大岡山駅に変更されています。


左(1):工事前に上りホーム端から目黒方面を見たところ。
右(2):2020年6月27日に下りホームから同じ場所を見たところ。下り線側でもホームの延長工事が始まった。
一方下りホームについても、この頃から目黒寄りで2両分ホームを延長する工事が開始されました。下りホームの目黒寄りには、留置線へ車両を引き上げる際使用する渡り線がありましたが、この渡り線は今後新設する新3番線の合流部部と重なってしまうことから渡り線が撤去されました。下りホームから留置線への入換信号機は引き続き残されていますが、このルートを使う場合大岡山寄りの駅間にもう1本ある渡り線まで500m近く本線を逆走する必要があります。


左(1):目黒寄りの歩道橋から見た新3番線と上り線の合流予定地。奥に準備されていたポイントは3月10日頃に挿入された。
右(2):改札口から上りホームへ向かう通路から見た建設中の新上りホーム。現ホームを避けるためカーブしている。2021年2月19日撮影
旧3番線・留置線4・5番線の取り壊しが完了した昨年秋以降は、跡地で新上りホームの建設が進められています。現上りホームの機能を維持したまま建設するため、新上りホーム(3番線)の線路は現ホームにギリギリ重ならない位置に敷設されており、小刻みにカーブを繰り返す線形となっています。この形状は工事終了後も残る予定です。(冒頭の説明中の図で通過線と3番線の間に妙な空間があるのはこれが理由)


左(1):12月20日に目黒寄りで3両分延長された上りホーム。手前では下りホームの延長も進む。
右(2):使用しなくなった上りホームの日吉寄りは突貫工事で取り壊し中。右上に見える屋根の鉄骨も新上りホームにつながるよう繋ぎ変えられた。2021年2月19日撮影
日吉寄りの新3番線と2番線(現上り線/通過線)の分岐予定位置は、現在の上りホームに完全に重なっていました。このままでは分岐部分を作れないことから、昨年12月20日(日)に上りホームを3両分(60m)目黒寄りに延長し、停止位置を移動しました。目黒寄りで延長されたホームは新3番線使用開始までのごくわずかな期間しか使用しないことから、ホーム端に屋根が無いなど必要最小限の設備となっています。年明け後の1月31日(日)には改札口との間の通路の形状も変更されており、不要となった現ホームの日吉寄りは急ピッチで取り壊しが進められています。
また、現在1・2番線の架線は両ホームの屋根間に渡された鉄骨から吊り下げられています。2番線ホームの取り壊し準備に伴い、この鉄骨が建設中の新上りホーム屋根につながるよう延長されています。


左(1):日吉寄りの駅端に出現した横断デッキの橋桁。
右(2):横断デッキの下り線側は現在の駅ビルを改造して階段・エレベーターを新設する。2021年2月19日撮影
さらに、日吉寄りの駅端では今年に入り現ホームの取り壊しと並行して線路を跨ぐ横断デッキの建設が開始されています。横断デッキは踏切の遮断時間増大対策として新設されるもので、階段に加えエレベーターが併設される予定です。下り線側は駅ビルを改造して階段・エレベーターを設置する予定になっており、一時テナントを退去させて壁に穴を開けるなどの工事が行われています。
奥沢駅の改良工事は新横浜線が開業する2023年までの完成が予定されています。現地では特に問題もなく順調に工事が進んでいることから、予定通りの完成が見込まれます。次回は目黒から先の東京メトロ南北線内で進められている8両化工事についてお伝えします。
▼参考
目黒線の混雑緩和と快適性向上を実現 当社保有車両の8両編成化による輸送力増強と新型車両3020系の導入 - 東急電鉄ニュースリリース(PDF/189KB)
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カテゴリ:相鉄・JR直通線・新横浜線の記事

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