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東急東横線10両化&関連工事(2015・2016年取材)
公開日:2016年08月03日12:05

2013年に開始された東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転に合わせ、東横線では優等列車の一部が10両化されました。優等列車の停車駅では直通運転開始前に10両編成に対応するためホームの延伸工事が実施されましたが、その後通過駅についても非常時に10両編成が停車できるよう追加工事が進められています。また、直通区間が広域になったことから、遅延防止のための折り返し設備の増設やホームドアの設置なども実施されました。今回は2015年以降の各所の変化についてまとめてお届けします。
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東横線・副都心線直通に伴う東横線の10両編成対応化(概要)


左(1):菊名駅で並ぶ東急5050系と東京メトロ7000系。2013年8月29日撮影
右(2):延伸工事中の自由が丘駅ホーム。2011年1月9日撮影
2013年3月16日、東急東横線は東京メトロ副都心線と相互直通運転を開始しました。この直通運転開始に伴い、東横線と以前から直通運転を行っているみなとみらい線では、副都心線に合わせる形で特急・通勤特急のほとんどの列車と、急行の一部が8両編成から10両編成に増車されました。東横線・みなとみらい線は列車・地上設備ともに最大8両までの対応となっていたことから、2009年頃よりホーム延伸や信号設備の改修といった10両編成への対応工事が実施されました。直通開始時点で10両化された駅は以下の通りです。
●ホームを10両編成対応に延長した駅
中目黒・学芸大学・自由が丘・田園調布・多摩川・武蔵小杉・日吉・綱島・菊名・横浜・みなとみらい・馬車道・日本大通り・元町・中華街
※この他に元住吉検車区についても一部の線路を10両編成対応に改修している。
さらに、副都心線直通開始以降は優等列車が停車しない駅についても、非常時に10両編成が停車した際乗客が安全にホームに降りられるようにするため、ホームから外れて列車が停車する部分(2両分)に簡易ホーム(正式名称は「優等列車対応通路」)を新設する工事が開始されました。現在完成または工事が行われている駅は以下の通りです。
●優等列車対応通路設置駅
代官山・祐天寺・都立大学・新丸子・元住吉・大倉山・妙蓮寺・白楽・東白楽・反町・新高島
※祐天寺駅は通過線新設工事が進行中のため未完成
優等列車対応通路はほとんどの駅で副都心線直通開始後に工事が開始されましたが、完成後に乗降可能なホームへ再改修が行われている代官山駅と通過線新設工事が行われている祐天寺駅を除き2014年までに完成しました。今回は前回(2014年)の調査以降変化があった代官山・都立大学・妙蓮寺・白楽・東白楽の各駅の状況をお伝えします。
優等列車対応通路が完成
●代官山駅

優等列車対応通路の拡幅が進む代官山駅。2016年7月31日撮影
代官山駅では2013年3月の地下線接続完了後、渋谷寄りで仮設桁を支えていた杭の一部を流用して2両分の優等列車対応通路が整備されました。一旦通路は完成しましたが、今年1月以降完成したコンクリートの側壁を再度取り壊して乗降可能なホームに改修する工事が進められています。前回の記事の続報になりますが、7月31日(日)現在下り線側は側壁の取り壊しが完了し、表面の再仕上げも終了しています。上り線側はホームの床に相当する高さで側壁が切り取られており、今後はコンクリート壁に代わる民有地との仕切り板が設置されるものと思われます。
●祐天寺駅
祐天寺駅では、現在優等列車の通過線を新設する工事が行われており、それに合わせて優等列車対応通路の新設も行われています。詳しくは7月16日公開の記事をご覧ください。
●都立大学駅

完成した都立大学駅の優等列車対応通路。2015年5月4日撮影
都立大学駅では、渋谷寄りに2両分の優等列車対応通路が整備されました。工事は2014年中に完了しています。この頃から完成済みの駅を含め、通路の床面にも接着式の点状ブロックが敷設されるようになりました。
●妙蓮寺駅


左(1):完成した妙蓮寺駅の優等列車対応通路。
右(2):優等列車対応通路の先端には10両用の停車目標が設置された。(撮影当時は使用開始前のためガムテープで覆われていた。)2015年4月5日撮影
2014年春時点でも全く変化のなかった妙蓮寺駅ですが、その後渋谷寄りで2両分優等列車対応通路が整備されました。妙蓮寺駅と白楽駅では、ホームの横浜寄りに踏切が接しているため、上り線は10両編成の最後尾が踏切を抜けたところで停車できるようホームの先に「鳴止10」と書かれた停車目標が立てられていました。通路整備後はこれが正規の停車目標(黒地に黄色のダイヤマークが描かれた標識)に取り替えられています。
●白楽駅

強固な構造に全面改築された白楽駅の優等列車対応通路。2015年4月5日撮影
白楽駅は、反町駅と並んで副都心線直通開始直後の早い時期に優等列車対応通路が整備されました。通路が整備されたのは渋谷寄りで、当初他の駅と異なり床面の高さがやや低く、細い鉄パイプや木板を組み合わせた明らかに粗雑な造りとなっていましたが、2014年以降他の駅と同様鉄骨や鉄板を使った強固な構造へ全面的に改築されました。
●東白楽駅

完成した東白楽駅の優等列車対応通路。2015年4月5日撮影
東白楽駅は、渋谷寄りに2両分優等列車対応通路が整備されました。ここも2014年中に工事は完了しています。
自由が丘駅の折り返し設備新設
東横線と副都心線の直通開始により、直通運転の範囲はみなとみらい線元町・中華街駅から東武東上線森林公園駅、西武池袋線飯能駅までの総延長約130km※1に広がりました。この結果、直通区間のどこか1か所で発生したトラブルが長時間に渡る遅延や運休を招くケースが多発しています。特に、東横線は渋谷駅から武蔵小杉駅までの11kmに渡り折り返し設備が無く、この区間でトラブルが発生すると広範囲で運転を見合わせる必要があり、交差・並行する路線にも多大な影響を及ぼしていました。そこで、大井町線との交点である自由が丘駅で折り返し運転ができるよう自由が丘~田園調布間に渡り線(ポイント)を増設する工事が実施され、昨年7月に完成しました。
▼脚注
※1:横浜高速鉄道みなとみらい線4.1km+東急東横線24.2km+東京メトロ副都心線20.2km+東武東上線和光市~森林公園40.1km+西武有楽町線2.6km+西武池袋線練馬~飯能37.7km


左(1):自由が丘~田園調布間に新設された折り返し用の渡り線。
右(2):田園調布駅上りホームの先には、自由が丘駅の着線指定標識と進入番線を予告する進路予告器(標識の後ろの電灯2個)が設置された。2016年7月31日撮影
渡り線は上り線から下り線に入線する方向で設置されており、横浜方面から来た列車が下り線を逆走して自由が丘駅下りホーム(3・4番線)に直接進入できるようになっています。この渡り線増設に伴い、田園調布駅上りホームの先には自由が丘駅の到着番線を予告する進路予告器※2が新設されました。ポイントは駅間にあり通過速度が高いことから、騒音・振動防止のためノーズ可動式分岐器になっています。また、下り線のポイントはカーブの途中に設置されているため本線側にも分岐角度が付いていますが、前後の区間とカーブ半径が変わらず角度も非常に大きいため制限速度は変更されていません。
▼脚注
※2:電球色のランプが2つ横に並んだ信号機で、両方点灯の場合は上りホーム(本線)、右側のみ点灯の場合は下りホームへの進入を示す。渡り線の直前には進入番線を数字で表示するランプも設置されている。


左(1):自由が丘駅下りホーム先端の出発標識。駅間の上り本線を引上線として使用し折り返す際使用する入換信号機が新設された。
右(2):入換信号機は駅間にも設置されている。2016年7月31日撮影
また、自由が丘駅下りホーム先端には入換運転用の信号機も用意されており、渡り線先の上り本線を引上線として使用することで渋谷方面への折り返し運転も可能になっています。田園調布駅のトンネル直前の上り線には入換用の停車目標も設置されているのが確認できます。なお、渡り線は自由が丘駅からかなり離れた場所にあるため、入換用の信号機は途中にも設置されており、最大3編成が続行で折り返し作業をできるようになっています。
なお、自由が丘~田園調布間には東横線と目黒線の走行電力を供給する奥沢変電所があり、架線には電力供給を区分するエアセクションが設置されています。エアセクション内で電車が停車すると、違う供給区分の架線をパンタグラフで短絡し架線が溶断してしまうため、ATCの閉塞境界や入換信号機はエアセクション内で停止しないよう配置されています。

自由が丘~田園調布間の信号システム概略図(一部省略・不正確なか所あり)
※クリックで拡大(2100×450px/80.7KB)
ホームドアが続々稼働開始中


左(1):ホームドアが設置された武蔵小杉駅。2015年5月17日撮影
右(2):横浜駅のホームドアははみなとみらい線方面となる1番線側のラインが紺色になっている。2015年4月5日撮影
東横線では、2014年に中目黒駅と学芸大学駅にホームドア(可動式ホーム柵)が設置されましたが、その後東急電鉄より2020年を目標に東横線・田園都市線・大井町線の全64駅にホームドアを設置することが発表されました。ホームドアの導入には、列車の停止位置をホームドアと正確に合わせるため、定位置停止装置(TASC)による駅停車操縦の自動化が必要です。東横線ではATOによる自動操縦を採用している副都心線との直通開始により営業列車は全てTASCに対応したことから、ホーム基礎の強化など準備が整った駅から順にホームドアの設置が進められています。現在までの設置済み駅と設置予定駅は以下の通りです。
<設置済み駅と稼働開始時期>
代官山:2015年2月
中目黒:2013年12月(下り1番線)・2014年3月(上り4番線)
学芸大学:2014年3月
都立大学:2016年6月
新丸子:2015年12月
武蔵小杉:2015年3月
元住吉:2016年2月
大倉山:2016年5月
菊名:2016年3月(下り3・4番線)
横浜:2015年3月
<設置予定駅>
祐天寺・自由が丘・田園調布・日吉・反町
※下線は現地でも工事を確認している駅
各駅のホームドア設置にあたっては、公共交通機関のバリアフリー化推進策の一環として国や神奈川県などの沿線自治体から一定割合の費用補助が行われています。
中目黒駅のホームドア設置に伴い、渋谷~武蔵小杉間では2013年11月よりTASCによる駅停車操縦の自動化が実施されていましたが、武蔵小杉駅・横浜駅のホームドア設置が決まったことから、残りの区間についてもTASC用地上子が設置され、2015年1月頃より使用を開始しています。みなとみらい線内は現在のところホームドアやTASC用地上子は設置されていませんが、TASCのスイッチ切替ミス防止のため同線内もTASCはONのまま走行している模様です。(駅停車時に自動でブレーキが動作しないだけで運転には支障はない。)
現在ホームドア未設置の駅についてもドア間に転落防止用の固定柵が設置されています。固定柵は将来ホームドアを設置することを考慮してホーム先端から若干内側に入った位置に取り付けられています。
なお、武蔵小杉駅4番線ではホームドアの戸袋部分に旭硝子が開発した55インチ超大型デジタルサイネージが今年6月より試験的に設置されています。同様の試験は溝の口駅大井町線ホームでも行われており、耐久性などを確認の上今後ホームドアが設置される駅に拡大されるものとみられます。
東急電鉄では、このほかに田園都市線宮前平駅でもホームドアが設置されています。田園都市線では、ホームドアの設置に伴い東急5000系の6ドア車を4ドア車に置き換えることになっていますが、現時点ではまだ6ドア車が残っているためホームドアをホーム内側に大きく寄せた暫定的なレイアウトとなっています。ワンマン運転のため全駅でホームセンサーを導入済みの池上線・多摩川線は、現在のところホームドアの設置予定はありませんが、最近になりホーム先端に設置している赤外線センサーを支障物の検知能力が向上した新型に更新しており、安全性向上が図られています。
東急電鉄では、これらの対策により2014年と比較してホーム上の事故による列車の遅延時分が25%も減少するなど大きな成果を上げています。2011年に国土交通省がホームの安全対策に関する指針を発表して以降、首都圏では大規模駅を中心にホームドアの設置が急速に進んでいます。データもかなり蓄積していますので、これについては近日中に別途記事を作成する予定です。
▼参考
2020年を目標に東横線・田園都市線・大井町線の全64駅にホームドアを設置します |東急線沿線ニュース|東急電鉄
田園都市線6ドア車を、順次4ドア車に置き換えて運転します |東急線沿線ニュース|東急電鉄
2016年度の鉄軌道事業設備投資計画 車両新造のほかホームドア設置、駅改良工事に総額489億円 |東急線沿線ニュース|東急電鉄
デジタルサイネージ一体型のマルチメディアホームドアを共同開発 |東急線沿線ニュース|東急電鉄
東急電鉄のホームドア設置計画 - JREA 2015年11月号 38~42ページ
※自由が丘~田園調布間の信号機器配置は以下の動画を参考にさせていただきました。
みなとみらい線東急東横線上り東京メトロ副都心線B線前面展望(元町・中華街→小竹向原)1/2 - YouTube
【4K】東急東横線前面展望 横浜~渋谷 - YouTube
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